焦燥と葛藤

このページの批評は終了しました。

評価: 0+x
blank.png

高速道路上で湧き上がる異常の数々。それは刻一刻と変化し続けている。これに対処する財団、特に機動部隊は相当な激務に追われているのだ。
その被害者の一人であり財団機動部隊員でもある喜多村隊員は、ある重大な危機に直面しようとしていた。


「例のアノマリーに対するカバーストーリー流布並びに記憶処理を完了した。確認頼むよ。」

喜多村は一般車に偽装した車に乗りながら、財団の連絡用端末の先のオペレーター・小倉に言った。

「…はい!確認できました!しばらく休憩取ります?」

「ああ。少し近くのSA寄ってくよ。」

「分かりました。それでは一旦切りますね。」

「あいよ。」

電話が切れた。さて、これで一時の自由を得た喜多村は近くのSAをカーナビで検索し始めた。自分がいる場所からは約10kmの距離だった。

検索が終わったので走り出そうとしたときであった。喜多村は少しの腹痛と便意に襲われた。だが喜多村はそこまで急がなかった。この程度ならまだ1時間は耐えられると思っていたからである。

数分走り、SAに着いたのでトイレに行った。だがトイレには行列ができていた。このままでは埒が明かないので、一旦トイレは諦めて喜多村は職場へのちょっとしたお土産を買った。

土産も買ったところで、もう一度トイレに行こうとした。その時であった。喜多村の端末が鳴った。

「もしもし。」

「小倉です。休憩中すみません。喜多村さんのいる田沼SAに青鈍色の空が突如発生しました!」

「マジか。周辺の状況は?」

「はい。現状、トイレのトイレットペーパーが全てとろけるチーズに置換されているそうなんです。」

「トイレ行こうと思ったんだがなぁ。」

「とにかく、喜多村さんはこの青鈍色の空で発生した異常現象の確認と報告をお願いします!」

「分かった。こっちにも便意がある。早めに済ませるよ。」

「はい!お願いしますね。」

電話が切れた。少し、というよりかなり焦らなければならない。喜多村はとりあえず異常現象があるとされるトイレへと便意を誤魔化しながら向かった。幸い、トイレの大には1つだけ空きがあったのでそこで調べることにした。喜多村は証拠を撮るためにカメラを起動し、千切ったトイレットペーパーがとろけるチーズに置換されているのを収めた。一応、サンプルとして千切ったとろけるチーズをサンプルケースに入れる動画も一緒に撮った。その時、喜多村の便意はトイレによって余計に増幅してしまっているのは当然のことであった。

さて、かなりの便意はあるもののあとはトイレ以外の場所を調べるだけである。喜多村は自らの視覚や聞き込みを頼りに異常現象の有無を確認した。結果としては、特に何も無かった。あとは報告するだけである。

「もしもし。異常現象の確認、終わったぞ。トイレ以外は特に異常無し。今から証拠の動画送っとくよ。」

「分かりました!」

「あ〜それとこの青鈍色の空、どんぐらいここに居座るか分かる?」

「えっと…大体2時間ぐらいの予想が出てます。」

「分かった。自由時間にしていい?もう今の口調保ってるのが限界ってぐらい便意がヤバいから別のSA行きたいんだけど。」

「分かりました。それでは。」

やっと電話が切れた。喜多村は車に乗り込み、1番近いSAを調べ、動画を財団の方へ送っていた。この時点で、喜多村の便意はかなり大きく膨れ上がっており、時折腹から聞いたことも無い音が鳴り始めてしまっていた。これは流石にキツい。喜多村はSAまでの距離約20kmをこれまで感じたことの無い焦燥と共に全速力でかっ飛ばした。途中、喜多村の腹が時間と共に社会的な危機へと向かっているのは言うまでもなかった。

さて、どうにかこうにか青鈍色の空の範囲外のSAに辿り着いた。喜多村は車から降り、腹を刺激しないラマーズ呼吸で止まらない冷や汗と共にトイレへと駆け込んだ。そしてトイレの便器へと座ったときこれまでに無いほどの圧倒的な安堵と共に用を足した。

さあ最後にトイレットペーパーを使おうと千切った時であった。トイレットペーパーがなんと触ってみるにとろけるチーズへと変わっていたのだ。色、匂い、独特の若干のブヨブヨ感。間違い無い。実際、これはかなりマズい。どういうことなのか。そんなことをトイレで思い始めた瞬間であった。喜多村の端末が鳴った。

「もしもし。」

「こちら小倉です!緊急事態です!先程まで田沼SA上にあった青鈍色の空があなたのいる浜谷SA上にテレポートしてます!喜多村さん、何か影響はありませんか?」

「大アリだよ。トイレの紙がチーズになってる。」

「あ〜…そうですか。分かりました!喜多村さんは再び調査をお願いします。」

「…あいよ。」

電話が切れた。さて、この状況をどう乗り切るべきか。流石にチーズでケツを拭くのはしのびない。あまり好きではないが、ウォシュレットを使うことにしよう。そう思い、ウォシュレットのボタンを押した瞬間であった。明らかにウォシュレットとは違うね〜っとりとした感じ、かつ絶妙に温いものが尻に向けて発射されていることに気づいた。喜多村はすぐに使用を止めた。なんだこれは。若干の嫌な予感と困惑が喜多村の頭を過ぎる。確認しようと便器の水面をみたら、黄色い何かが浮いていた。実際、尻の発射されていた場所が黄土色と黄色を混ぜたような何かに塗れていたのだ。それを確認したらすぐに何やらチーズの香りが尻から漂ってきた。どうやらこれは液体チーズのようであった。嫌な予感は現実になってしまっていた。喜多村は思わず声を荒らげた。

「クソが!理不尽すぎんだろ!」

異常現象に理不尽も何もないことは分かっていたが、この時の喜多村は特にそれを感じていた。もう講じる手段はない。ヤケクソである。喜多村はとろけるチーズと化したトイレットペーパーを乱暴に千切り、それで尻を拭いた。

いや、まだだ。まだ手ならマトモに洗えるかもしれない。喜多村はそう思いトイレの入口右手側の蛇口を捻った。出てきたのは見たところ通常の水であった。良かった。これで手は洗える。そう思い手の側面を水に当てた時であった。水が瞬時にウォシュレットと同じようなドロっとした液体チーズに変化していた。両手は一瞬でチーズによって支配されてしまった。実際かなりマズい。喜多村はポケットに入っていたハンカチを取り出しどうにか拭こうとした。だが拭こうとした面が即座にとろけるチーズに変わってしまった。さっきまでケツを拭いていたのだ。仕方がなくそれで手を拭こうとしたものの、拭けば拭くほどハンカチだったチーズから液体チーズが染み出てくる。服も同様だった。どうやらこのトイレは一抹の希望さえも与えてくれないらしい。

さて、トイレから言い表せない程の嫌な気分と不条理に対する怒りと共に喜多村はチーズ塗れの手で出てきた。その後、その理不尽を凝縮したかのようなクソッタレな感情と共に仕事をこなし、もうどうでも良くなったトイレでの出来事を報告した。自暴自棄になってしまうのも当然だった。


「喜多村。あぁ〜…その…あれだ。災難だったな。」

同僚のエージェント・三田が喜多村に向けて軽々しく言った。

「うっせぇ。とろけるチーズでケツを洗って拭いたやつの気持ちなんて分かられてたまるもんかよ。」

三田は少し馬鹿にしたかのように笑う。

「確かにな。良し!今日はお前の憂さ晴らしも含めて、ちょっと飲みに行くぞ〜!いつもの酒屋なんだがなぁ、店主が趣味でチーズフォンデュ始めたらしくてよぉ、そいつがめちゃくちゃウマいらしいぜ。」

「悪い冗談は止めてくれよ。俺はもうケツからチーズ食ったっての。」

喜多村はそう言いつつも、小倉や三田といつもの酒屋へと繰り出すのだった。


ページコンソール

批評ステータス

カテゴリ

SCP-JP

本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

GoIF-JP

本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

Tale-JP

本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

翻訳

翻訳作品の下書きが該当します。

その他

他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。

コンテンツマーカー

ジョーク

本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。

アダルト

本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。

既存記事改稿

本投稿済みの下書きが該当します。

イベント

イベント参加予定の下書きが該当します。

フィーチャー

短編

構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。

中編

短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。

長編

構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。

事前知識不要

特定の事前知識を求めない下書きが該当します。

フォーマットスクリュー

SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。


シリーズ-JP所属

JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。

シリーズ-Other所属

JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。

世界観用語-JP登場

JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

世界観用語-Other登場

JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

ジャンル

アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史

任意

任意A任意B任意C
    • _


    コメント投稿フォームへ

    注意: 批評して欲しいポイントやスポイラー、改稿内容についてはコメントではなく下書き本文に直接書き入れて下さい。初めての下書きであっても投稿報告は不要です。批評内容に対する返答以外で自身の下書きにコメントしないようお願いします。

    新たなコメントを追加

    批評コメントTopへ

ERROR

The TOLPO's portal does not exist.


エラー: TOLPOのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:5230464 (11 Feb 2020 11:14)
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License