セプテンバー・イレブン

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朝の陽光がコンクリートとガラスと合成鋼材の巨塊を心地よく照らし、その日は何事もなく始まった。

「今日この日、我々がこの場所に集う意味を、改めて問い直すべきでしょう」

マンハッタンの一等地に聳え立つ国連本部、3棟のうち最も背の低い理事会議場ビルは奇妙な熱気に揺れている。
長らく使用されていなかった信託統治理事会の議場は、17年ぶりに満員の聴衆を迎えていた。

「かつてここに在った理事会がその役目を終えてから、16年と10ヶ月が過ぎました。そして今、新たな取り組みが始まろうとしています」

壇上。金灰色の短髪と目尻の笑い皺が特徴的な男──ドナルド・トゥスクは、十分な抑揚と効果的な身振りで議場の注目を一身に浴びている。
演説が始まって2分。これから本題に入ろうかというところでありながら、彼の一挙手一投足がその場のすべてを支配しているのだ。
それを理解して、満足げな笑みとともに彼は議場を見渡した。

十分に広いはずの議場はしかし、後方に増設された簡易座席すらも満席となる大入りだ。
メディアスペースが足りず、知名度と政治力と資金力で劣るいくつかのメディアは自ら椅子を持ち込んで、必死にカメラを回している。
各国の外交官たち、複数の連合組織の代表、いくつかの大企業と宗教団体、医療スタッフ、国連特使、特別報告者。
その中に見知った顔が不機嫌そうな表情で座っているのを発見し、トゥスクの笑みは一層深まる。

「──本題に入る前に、ゲストを紹介しておこう」


そのとき、ジャック・ブライトの脳内はこの馬鹿げた対都市超常テロリズムにおける記憶処理ベース理論の構築で一杯だった。彼の耳は確かにそれを捉えていたが、理解には到底及ばないままにその情報は彼の海馬に留め置かれた。
彼には脇を足早に通り過ぎた連合の高官たちの囁き声は理解の外にあったし、ナンタラ手順プロシージャがどうとかいう内容はいかにもくだらないものだ。
だから彼の盟友にして悪友が唐突にラウンジを駆け下り、高級スーツの一団に追いついてうち1人の首根っこを物理的に抑え込んだとき、彼は口を開けてごたごたを眺めているだけだった。

「な、何だ、貴様は! ウクレレ、なぜここに──」
「今なんと言いやがった、手前!!」

クレフの胴間声はラウンジを席巻した。誰もが注目する中で、拾を抜きかけた1ダースのボディガードと数人の同僚に囲まれて、世界オカルト連合の高官は己の軽い口を呪った。
だがクレフはそれに輪をかけて全てを呪っていた。

「手前、言いやがったな」クレフは叫んだ。

ピチカートだと、おい! 本当にやるつもりか、この街のど真ん中で!!」

どよめきは地のそこからのさざめきのようにやってきた。数人の男女が恐怖と動揺でグラスを取り落とした。何人かが顔を隠してラウンジを足早に立ち去っていった。それ以外の者は、成り行きを見守るしかなかった。

ブライトはおっかなびっくり近づき、友人の注目を引くにはどんな奇抜な仕草が必要か真剣に考えていた。

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