宴の後、闇夜に走り

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こはひどく乱雑な空間だった。

さして広くなく、かと言って大人一人が生活するには困らない程度の面積。
所狭しと床に──本棚ではなく──並べられた書籍や雑誌、コピーされた論文の束。その山の間に詰め込まれた生活の痕跡は、滅菌布で乱雑に拭われた食器やレトルト食品のパッケージ、飲みさしのペットボトル、放り散らされた一日分の衣服といったもの。
およそ整理整頓という言葉の欠片も存在しない混沌は、主を失って2週間を経ても尚その威容を保つ。
薄っすらと表面に積もったまだ埃とも言えない塵屑が、闖入者の足元からふわりと舞った。

「…………、」

僅かな呆れと困惑を滲ませて、同僚たちからユーリィと呼ばれる男はその景色を見ている。
焦点を悟らせない黒瞳がすいと細まり、瞬きが終わった時には既に彼の貌から表情は消えていた。
平素から絶やさぬ柔和な笑みは勿論、彼にとって表情などと呼べるものではない。

スーツの懐が振動する。制式支給品の携帯端末だ。
誰も見ていないというのに優雅かつ大仰な所作で取り出して、受信を許可する。

「はい、私です」
『現状は?』
「変わりなく。2週間前の立ち入り以降、誰も侵入した形跡はありません」
『センサーは誤魔化せる。記録は改竄できる。証拠は偽装できる。確かなものは少ない』
「しかし難しい、でしょう? この部屋にはもはや何もない」
星鳥が啼いた日に、私の指示を受けて君が捕らえた女の部屋だ。彼女は脳に装置スイッチを埋め込まれ、敵の尖兵となって財団に牙を剥いた。この件について、君の所見を述べたまえ』

凍り付いたように穏やかな声が、盗聴防止のためのミーム処置による僅かなノイズを乗り越えて響く。
今やサイト中で毛嫌いされている上司の言葉に、エージェント・ユーリィは静かに同意する。

「逮捕された全ての職員の部屋を回りましたが、どこも同じでしたよ。突入の時と何も変わらない、というよりは──変わらなさすぎるのです」
「書類上、彼女らはまだ正規職員だ。サイト-81JAでの処置次第では復帰の可能性すらあるだろう。職員寮をそのまま残置するとした管理部の決断は評価しよう、しかし」
「未だに清掃員も入らず、証拠採取も最低限しか許可されていない。この部屋の立ち入り許可エンターパスは医療政策局にのみ発行されています。私も今はその身分証を」
『──医療政策局か。成程』

訛りのほとんどない日本語に、一瞬だけ昏いかげが宿る。
巨大な機械と陰気な変温動物の合いの子じみた雰囲気を有するその男が、次なる獲物を見定めつつある──それ自体には何の感慨も抱かず、彼は長い足を出口へと向けた。
これから始まるだろう熾烈な暗闘に彼が関わることはあるまい。彼はあくまでもエージェントであり、噛み合った大いなる歯車どもの間を泳ぎ回り錆を取り除く指先なのだ。
頭脳が何を考えているかなど、技師の指先は知らなくていい。

「お渡しされたリストにあった対象は全て調べましたが、この後はどうしましょうかね? 残念ながら今のIDは限定品でして、あと50分で用を為さなくなってしまう」
『追って指示する。今日は休むといい』
「了解です、マクリーン次官

一言の返事もなく通話は切れた。すぐさま内部保安部門特製の保全暗号化プロトコルが立ち上がり、自動録音された会話を解読不可能な暗号列に置き換え始める。
無遠慮な上司に薄く溜息を吐いて、エージェントは部屋を出て行こうとした。
薄暗い部屋の中でその視線が玄関先に止まったのは、彼の優秀さの表れだ。

上がりかまちの脇、壁に張り付いた備え付けの白い靴箱の上に、小さなトロフィーが飾られていた。
簡易なミーム刻印が施された当たり障りのない偽の文字列。その上に、財団職員にしか読めない文字が金色に浮かび上がっている。

2012年度、超常医療局記憶定着技術部前期先端技術カンファレンス、技術奨励賞。

目を細め、その文字列を存分にめつけてから、黒のスーツ姿は部屋を出る。
静かな部屋だけがそこに残され、帰らない主人をただ待っていた。


視庁公安部は不夜城だ。そう評されるようになって幾年か、もう覚えている者はいない。
日本国内唯一の公安"部"として君臨することからも明らかなように公安警察最大の組織力を有するこの部署は、その虚実入り交じった外聞とは裏腹に、常に人手不足に悩まされている。
時刻は11時過ぎ。終電もそろそろ危ういかという時間帯になっても、オフィスにはまだ人影がちらほらと残っていた。

霧島きりしまはまだ残っているか?」
「先程帰宅されました、明日は朝から紀尾井町だとかで」
「クソ、入れ違いか」

頼りにしていた後輩の不在に、大屋柾継おおやまさつぐは思わず舌打ちした。慌てて片手で謝意を示す。幸い、年かさの女性事務員は分かってますよとばかりに微笑んでくれた。
この忙しいときに何を悠長な──とまでは思わない。いかに人手不足の特事課といえども、捜査員が人並みに自宅に帰って家族との時間を過ごす程度のことは許されて然るべきだ。しかし同時に、霧島の不在が痛いのも事実だった。

彼は大屋が手ずから指導に携わった異常事件調査人員のひとりだ。近年は課内における"G連合"案件の第一人者として活躍しており、その功績からノンキャリアとしては異例の警部昇任が間近ではないかと囁かれている。ことが"F財団"案件に留まらないのは明らかだ。今回の事案では、彼の知識とコネが必要になるだろう。

「一昨日の品川のクスリ案件だが、やっと科警研から話が来た。十中八九うちの案件だろうってな。前の3件に臨場したやつでまだ残ってるのは?」
「葛木さんがいらっしゃるかと。先ほど資料庫に行かれました」
「よし、おれは第4会議室にいる。後から来る佐宗に伝えてくれないか」
「わかりました。今夜もお疲れ様です」
「そっちも」

笑顔の女性事務員に軽く手を振る。事務方の夜勤職員は増え続ける書類に忙殺される刑事たちの長年の要望に応えて最近やっと導入されたが、業務の効率化以外にも案外役に立つ──こういう伝言には特に。そこら中に得体のしれない連中が紛れ込むこの業界では、近頃流行りの無料通話アプリだとか業務効率化ツールなどというものは忌むべき情報漏洩の火元であり、最も頼れるのは人づてなのだ。夜食を買い込んでいる年下の相棒の猫背を思い浮かべつつ、大屋は"退席"札が掲げられた課長補佐──昨年5人に増えた──のデスクから会議室のカードキーを取り上げた。

連日の激務と中途半端な機密保持制度によって部屋貸出管理のシステムはこのところ完全に崩壊していて、年嵩の公安警察官たちはほとんど自由に会議室を臨時の捜査拠点として使いまわしている。第4会議室は資料庫に近い部屋で、様々な事情で面倒な確認作業が必要な事案に用いられることが多い。何の因果か、ここ数年の大屋の定位置はそこにあった。

定年間近の老刑事は、ふとカードキーの縁をなぞる。貧相なテプラのラベルが貼られた脇、微かな焼け焦げの痕跡に触れて、彼は少しばかりの感傷を振り払った。
夜はまだ長い。老体には少々堪える仕事だった。

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第4会議室は薄暗く、蛍光灯の白色光に照らされてなお陰鬱な雰囲気が抜け切らない。
殺風景な部屋を少しでも居心地よくしようとする捜査員たちの涙ぐましい努力の結果としてどこからともなく運び込まれたソファや簡易ベッド、大量の書棚、ヤニの染み付いたパーティション、観葉植物、その他諸々によって会議スペースは半分以下に縮小している。控えめに言って、会議室というより駐在所の居間に似た雰囲気だった。

少ない人員を絞り出すようにして方々からかき集められた7人の公安刑事、それが大屋班の全貌である。年齢も性別もばらばらの7人中、今は半数がそこにいた。

「あれ、葛木さんじゃないですか。珍しい」
「まあな」

大屋に資料庫から引きずり出されてきた葛木久隆かつらぎひさたかは、あまり聞きたくなかった声に少しばかり眉を顰めた。
長身にパンツスタイルの引き締まった体躯、しかしどこか幼気な顔立ちの女性刑事が事務机の上に腰掛けて、黒縁眼鏡の下の瞳を悪戯っぽく輝かせている。
かつて指導を担当したこの後輩のことが、葛木はどうも苦手だった。

騰川とがわ、大屋班に戻ったのか。てっきりまだ京都だと思っていた」
「いやあ、暫くはそのはずだったんですが。ここのところ事件続きだっていうんで呼び戻されちゃいました。葛木さんもお元気そうで」
「亭主元気で留守が良いってのは死語か?」
「奥さんもお元気ってことですね、何よりです」

うはは、と楽しげに笑う女の額には、前髪の下からざっくりと額に走った海賊傷が覗いている。

「静かにしてろ、騰川。眞城さなぎ朝比奈あさひな、席に着け。情報を整理する」
「了解…………」
「はいはいっと」

何か人を集めて話を始める前に、大きく手を叩くのが大屋の癖だ。それを区切りにしてか、各々の業務に勤しんでいた捜査員たちが立ち上がり、部屋の一角に集まってきた。

線の細い神経質そうな面持ちの男性刑事、眞城。
大柄で泰然自若とした壮年の男性刑事、朝比奈。
それに騰川と外出中の佐宗、班長である大屋を加えて5人。さらに今は東京に居ない2人を加えたのが、大屋班の全メンバーだ。

「葛木には情報共有も兼ねて来て貰った。早川班はこいつ以外出払ってるからな」
「今はアリムラ連中の担当でしたっけ」
「応援だけどな。協定の括りもある、組対には任せてられん」
「最近調子いいですからねー、あの連中。一体どこから資金が湧いてるやら」
「無駄口叩くな、資料配るぞ」

大屋から渡された資料を葛木は順繰りに配っていく。A4で20枚ばかりの紙資料に辟易とした顔の眞城が、表紙を捲った途端に仰け反った。こめかみを抓るようにして歯噛みする彼の額には、じんわりと汗が浮いている。

「…………っ、何だこれ。新手のミームですか」
「科警研の発明品だそうだ。この件で超常捜査単体としては初導入されるらしい。今後の捜査資料は部外者への漏洩を避けるため、発話忌避のミームが織り込まれる──そんな顔するな、俺は向こうの会議で言われたことをそのまんま繰り返してるだけだ」
「大屋さんに言っても仕方ないですけど…………これ、酷いです。第五部1の人たち、治験やったんでしょうか。舌がおかしくなりそうです」
「眞城ほど敏感な体質じゃないが、読んでると私も少しばかり頭痛がしますね。それだけ重要案件ってことかな」

ぼやきながら朝比奈がページを繰っていく。全員がミーム入りの中表紙を読み終えたことを確認し、大屋が改めて口を開いた。

「今回の件だが、また飲食店だった。今度は飲み屋だ、それも大学生や背伸びした高校生が使うような流行りのやつ。隣同士で3軒同時に23人倒れた。症状や胃の内容物から察するに全員同じ薬を同じ時間に、それも犯行現場で飲んでる。摂取を強制された形跡もトラブルの目撃情報もなかったことから、何らかの組織的な教唆行為か、あるいは精神影響が疑われている」

ああ、という溜息が誰からともなく漏れた。
見えない凶器、増える死体、覚えられない顔、消える証拠、エトセトラ──お決まりのパターンだ。
しかめ面をした葛木が面倒臭げに補足する。

「前の3件もすべて飲食店だったが、それぞれ系統が違った。最初は個人営業の定食屋、2軒めはイベントの屋台、3件目はファミレス。同時に複数人が自分で薬を飲んで倒れ、その日も含めて数日分の記憶を失う。原因不明、年齢層も被害者の経歴も一度の被害人数もバラバラ。被害者自身の記憶がないせいでなぜ薬を飲んだのかも、その出処も分からないと来た」
「簡易分析の結果、正式に超常事案と認定された。薬剤の作用機序が明らかに異常であり成分自体も市場に流通しておらず緊急性が高い、らしい。おそらく、今後の捜査はウチに回ってくる」
「まだ確定してないんですか、班長?」

にやにやと嫌味に笑う騰川は別段大屋のことを揶揄しているのではなく、決断の遅い上層部に対して笑っているのだろう。
大屋もそれが分かっているのか、特に注意しなかった。代わりに小さく肩を竦める。

麻取マトリ2との調整が難航してる。向こうは非異常の麻薬案件ってことにして厚生労働省で引き取りたいんだ」
「摂取した場合の症状は多幸感、多様な幻覚、傾眠、長期の記憶障害、後進型健忘……確かに一見すると麻薬か、睡眠薬成分の抽出物に思えますなあ。葛木さん、こりゃあ4件とも同一成分ですか?」
「最初の2件は早川班で臨場したが、回収されたサンプルはどれも錠剤だった。どうやら中身も一緒だとよ」
「もう最初の事件から2ヶ月経ってるからな、錠剤の成分分析はとっくに上がってるらしい。異常薬物なのは間違いないんだが、どうにも妙だ。科警研に上から圧力がかかって、情報共有を渋ってる」
「…………訳有り、ですか」
「それどころか真っ黒だ。一昨日、現場で財団の接触を受けた」

財団、という単語に、全員の視線が書類から大屋へと移った。
暫しの沈黙の後、代表して眞城が手を挙げる。大屋の頷きが部下への発言許可の合図だ。

「…………もしかして、記憶処理薬?」
「可能性は高い、が、それだけだ。確証は何もない。精神影響との関連は不明だし、何より財団の手口じゃない」

まあそうですよね、と騰川が頷く。

「連中、市街地だろうと構わず記憶処理やらかしますがこんな雑なやり方、しかも一般市民がそこら中で倒れるようなのは確かにやりませんね。組対ソタイ3はどう考えてるんです?」
「マル暴絡みの線は確かにあるが、それも今の所証拠はないそうだ。葛木、どうだ」
「渋谷の現場に入った時、早川さんはアリムラを疑ってた。異常薬物は奴らの十八番だからよ。だが、今は違う。連中はクスリの流通ルートを掴ませないような上手い手管は持ってない」

そりゃあそうだよなあ──全員に納得したような空気が流れる。
ふと首を傾げ、朝比奈が小さく手を挙げた。熊のような巨体ながら、愛嬌のある仕草と垂れた目元のせいで行動に圧迫感を与えない男である。

「被害者に何らかの暗示をかけてるなら、異常宗教や外国人関連の可能性はありますかね」
「不明だが、現場には声明文も宗教的なアイコンもなかったから可能性は低いだろう。港区に人をやって入管庁4の資料を調べさせるのがいいだろうな。大屋よ、そのへんはお前のコネが強いだろ」
「近隣の事情通にはいくらか伝手がある。池袋のマクスウェリストの共同体コミューンに六本木のMC&D、有楽町のマナあたり。界隈の事情に詳しい数少ない好意的な情報源だ」

捜査員たちが素早くメモを取る。資料の外枠に織り込まれたミームが速やかに作用し、彼らのメモ書きをも取り入れて、機密保持のベールの内側に投げ込んでゆく。特定の対抗ミームを事前に接種し、認識を補強された人間にのみ意味が読み取れる文字列だ。捜査資料が完全に電子化されるまでの繋ぎとして考案された、科警研肝煎りの──そして若手からは古臭いと大不評の──手法である。
ホワイトボードに大屋がいくつかの文字列を書き込んだ。組織名、名前、想定される居場所等の情報が、意外にも小綺麗な楷書体で記されていく。

「財団から受け取った情報は第五部で解析中だが、暗号化の解除にもう暫くかかる。俺たちの捜査対象は被害者、現場になった店舗、目撃者、医療関係者。都内の暴力団関係者を締め上げるのは早川班に任せる」
「しかし班長、被害者だけでも120人近くいます、おまけに殆どが記憶を吹っ飛ばしてると。どうします」
「所轄がやった聴取のログをかき集めてある。妙な発言をした被害者だけピックアップしろ──もし財団絡みなら、遅かれ早かれ連中が完全な記憶処理をしに来る。その前にもう一度事情聴取しなきゃならん」

騰川、お前が聴取の指揮を取れ。上司からの指名に、騰川がにやりと笑う。
そのまま自慢気に肘で突つかれて、眞城が不満げに身を捩った。確かこいつら同期だったな、と葛木はぼんやりと考える。

「眞城には裏取りを頼みたい。今回、ネットは使えると思うか?」
「いえ…………ネット上の書き込みは財団の統制でほとんど出てきませんから…………無視してもいいと思います」
「なら流通ルートだ。これまでの4件は盛り場で、被害者も多かったから人目を惹いたが、裏で少数が流通してるかもしれん。闇営業の酒場や暴力団に金を渡してないモグリの連中に薬の出どころを当たれ。早川班とも連携しろ」
「…………了解です」
「朝比奈は何人か引き連れて池袋だ。マナの連中も事務所が近い。宗教周りで情報を集めろ」
「財団絡みだとしたら、異常団体との情報交換はJAGPATOの介入を受ける可能性がありますな。その場合は」
「捜査資料は共有してもいいが、連中に専有はさせるな。話が大きくなると証拠隠滅に走るかもしれん、適当なところで妥協するか、俺を呼べ」
「了解」

さあて大変だ──どこか楽しそうに朝比奈が呟く。

「仮称だが、今回の案件はディープホワイトと呼ばれてる。あれだ、化粧品の乳液あるだろ? アレみたいに記憶が真っ白だからだそうだ。科警研のセンスはよく分からんが、一応今後はこれで行く」
「早川班は別行動だが、情報共有はする。捜査過程はいつものファイルにアップロードしておくとさ」
「有り難い──俺と佐宗は引き続き財団とこの件の関連を探る。差し当たっては現場巡りだ。お前たちは仮眠をとって、明日から本格的に動け」

そこまで言って、ゆっくりと大屋は部下たちを見た。
三対の視線が彼の瞳を貫く。日々異常と対峙する、公安刑事たちの目。
一度目を閉じ、明日からの苦難を想像して、再び大屋は目を開けた。

「ここが分岐点だ、次はない。これ以上の市民の被害を許すわけにはいかない。何としても解決するぞ」

返答は静かで、しかし熱が籠もっていた。


じた瞼をすり抜けるようにして眼球に突き刺さる陽光が、宮部武揚みやべたけあきを覚醒に導いた。
午前7時20分。いかに霞が関とはいえど、大抵の職員は出勤していない時間帯である。しかし万年人手不足の公安調査庁第三部、特異案件対策室A  I  Dともなれば話は別だ。上席調査官として課長待遇を受けている宮部だが、最近は特異案件絡みの事件続きでこうして執務室で夜を明かすことも多い。昨晩も品川の薬物騒動のカバーに追われ、業務を終えた頃には日を跨いでいた。

ゆっくりと伸びをする。私費で購入したソファベッド──厳密には服務規程違反だ──は執務室への夜間滞在を非常に快適なものにしてくれたが、国家公務員として何かが間違っている気がしなくもない。まあいいさ、どうせ将来のあてもない独身貴族、国家への献身こそ我が務め。よれたシャツの襟を直しながらそう独りごちる。

薄手の毛布を畳んでソファの下に押し込み、ウェットティッシュで汗を拭き取って、昨夜とは違う柄のネクタイを締めれば身支度も終わる。まるで朝早くから登庁する勤勉な若手官僚のようだ。実際には30代の下り坂に差し掛かり、休暇を取れるものなら今すぐにでも申請するのだが、外見というのは取り繕って悪いことがない。

さて朝食前にメールの確認でも、そう思ってPCの電源を入れ、鍵付きのファイルケースを開いたところで、猛烈な勢いでドアが開いた。
最近目をかけている若手の1人が、まるで今まさに戦争が始まったような表情でをして肩で息をしながら立っている。

「み、宮部さん、これ」
「どうした? まだ勤務時間前だ。あと1時間くらい待てないのか」
「そんなこと言ってる場合じゃありません、第一部の監視対象者への接触が──」

落ち着かせようにも軽い冗談も通じない。朝から碌でもない話のようだが、特異案件の中には張り子の虎が相当な数紛れ込んでいるのも確かである。
次の日には核戦争を引き起こしそうな案件であっても、よくよく腰を据えて調査してみればなんでもない事象だったというのはよくあることだ。そして何より、大事に繋がる案件の多くは財団か連合が先んじており、AIDが関与する余地はほとんどない。
今回もそのようなものだろう。若手のうちは経験不足ゆえの勘違いもあるものだ──そう納得して先を促す。ところが彼は張り詰めた表情のまま、無言で手に持ったファイルを差し出した。

怪訝に思いつつ目を通し──1分が経過した辺りで、宮部は胸騒ぎを覚えた。
下腹のあたりがずんと重くなる感覚。背中にじんわりと冷や汗が浮く。

「…………これ、まだ誰にも話していないだろうな」
「第一部の同期に教えて貰ったネタです、向こうでもまだ共有されてません。宮部さんの前にはまだ誰にも」
「でかした。その同期には口止めを」
「もうしてあります」
「いいぞ。よくやった」

デスク脇の電話機に手を伸ばす。2つある電話機のうち黒──特異案件専用のそれを、宮部は迷うことなく掴んだ。

「もしもし──こちらAID、上席調査官の宮部です。認識IDは6893327。特事調査部の敷島しきしま理事官に繋いでください」
「ありがとうございます。ええ、呼び出しを。大至急お願いします」
「敷島さんですか? 宮部です、先日はどうも──いえ、面倒事です。早急に合同調査班を編成するべき案件です」

電話口で相手の困惑が伝わってくる。回線の信頼性はいかほどだろうか? 盗聴を警戒するべきだろうが、定時の清掃は済ませている。それに何より、今は時間が惜しい。
秘匿回線を構築した技術班を信じることにして、宮部は重い口を開いた。

「うちの第一部の重要監視対象に超常事案関係者の接触を確認しました。JAGPATOで手配済みのロシア人の元F財団職員です。現所属は超常軍事企業──ロゴス・コーポレーション

通話相手の盛大な舌打ちが、今日ばかりは愛おしく感じられた。


日前の狂騒など無かったかのように、朝方の繁華街は静かだった。
ネオンサインは消灯し、人影もまばら。数人の酔っ払いが道端で鞄や車止めを枕に眠りこけているが、起き出してきた堅気の店の店主たちに迷惑げに突き起こされて、覚束ない足取りで去っていく。
総じて平和な、週中の駅前によくある光景だ。

「刑事さんよ、まさかお前さん、俺らが話し掛けられンのを待ってるとでも思っちゃいねえか?」

高架線路下の小さな公園。茂みの隅で座り込み、見るからに迷惑気な表情で"あっちへ行け"のジェスチャーをするホームレスの老人に、佐宗は腰が引けている。大屋さあん、と後方で見ているこちらに助けを求めてくる様子は普段の気楽な仕事ぶりとは大違いだ。
先に連中の素性を教えておいたのは失敗だっただろうか? こちらとしては誤った先入観を持たないように気を回したつもりだが、どうも気後れさせてしまったようだ。
仕方がない──このままでは埒が明かない。

「そこらへんで勘弁してやってくれ、草加さん」

大屋が近寄ると、老人は半開きの目をすがめた。
薄っすらと白い膜がかかったような左目が一瞬だけ見開かれ、顔見知りの存在を認めるなり渋面を形作る。

「──その声、その顔、手前てめえは大屋か。こんな所で何してやがる、所轄外だろが」
「前にも言ったろ草加さん、俺らに所轄はないんだよ。公安だからな」
「そうかよ。で、手前が来たってことは……面倒事だな」
「ああ。葦の輪5の知恵を借りたくてな」
「何が借りるだ、留置場に叩き込むのを勘弁してやるって話だろうが」
「まだ何も言っていないが、そういうことにしてもいい。話す気になったか?」
「クソッタレだ。おいそこの、手前だよ若いの、お前の上司は昔っから本当に碌でもないやつだぞ」

もごもごと呻く草加は、やがて抵抗を諦めたようだ。
老齢のためか胡乱げな眼差しに、理知的な光が灯る。

「あれだな、この前の大勢倒れた騒ぎだろう。俺たちは何もしちゃあいない」
「分かってる。あんたらはこういうことはしないってな」
「当たり前だ、そもそもこの辺は夜中に煩くて敵わない。残飯も塩っ辛いばかりで腹が膨れんし、店員に見つかれば袋叩きだ。この時期は日雇いの仕事が多いから俺たちみてえなのが集まるが、もう少し経ったら皆離れる」

俺も慣れたもんさ、と呟く老人は、身震いして汚れた毛布を引き寄せた。
節くれ立った右手が所在なげに揺れ、公園の砂の上に意味のない模様を描いていく。
風もないのに小波の立つように震える砂粒に気付いたのは大屋だけだろう。どうせ仲間が何人か、近くで様子を伺っているはずだ。弱々しい老爺のごとき演技は年々上達しつつあるらしい。

「騒動のあった日も俺はここにいた。もう何人か、駅前で寝てたと思う。だがよ、お前らと違う……普通の警察に話を聞かれて、その時に全部答えたぜ。何も知らねえんだ」
「事件の真相を教えてくれっていうんじゃない、なにか気づいたことがあるかもしれんだろ。怪しい人や車が通ったり、風が妙だとか、匂いがするとか」
「何もねえ、あん時は寝てたんだ。珍しく静かでよ、いつもよりマシだと思ってたら急に騒がしくなって、暫くしてサイレンだ。最初は仲間が倒れたんだと思ってた」
「実際には違った。他には何かないか?」
「妙な連中が来た。目つきの鋭い、知らねえ言葉で話す──ああそう、たぶん財団だ。俺たちが見つからねえんで、散々探して帰っていった」
「帰った?」
「仲間内にちょっと鼻が利くやつがいる。神さんに愛されたってえのかな。連中から隠れんのは一筋縄じゃいかねえが、その日は上手くいった」

その口ぶりから見て、仲間のことを話す気はなさそうだ。
草加とつるんでいるホームレスや車上暮らしの労働者、住所不定の浮浪者の中には異常な物品を隠し持っている者や超能力者──現実改変者という言い方はどうにも慣れない──が多い。だからこそ、公安警察は所轄による彼らの逮捕や強制排除に介入し、見逃す代わりに情報源として利用する。

"葦の輪"と呼ばれる彼らのグループは全国に点在しているが、東京を根城にする集団に財団を出し抜けるような超能力者が所属しているというのは初耳だった。どうも脅威度を見直す必要がありそうだ。
しかしどうしたものか? ホームレスの結束を崩すのは簡単だが、彼らは異常非異常問わずあらゆる司法組織を全く信頼していないため、証言から自己保身のベールを剥ぎ取るのに時間がかかりすぎるのだ。
だが他に有力な情報源があるわけでもなし。さて留置するか否か、するとしたら罪状は──考え込んでいた大屋に、佐宗が恐る恐る声をかけた。

「あのう、僕からも、いいですか」
「俺は構わないが。草加さん? もう少しだけ捜査にお付き合い頂いても」
「似合わねえ丁寧語をやめたらな、刑事どの」

そっぽを向く老人に笑顔で話しかける佐宗は、どうも調子を取り戻してきたらしい。
どのみちここは空振りのようだ。老人は何も喋らないだろうし、かといって立場上、縄張りの中で公安刑事とことを構えたりもしないだろう。

『先に行くぞ』と手振りで示し、後輩を残して大屋は公園を離れる。
これでも管理職なのだ。部下との報告・連絡・相談は欠かすことができない業務であった。


袋の街の良いところはどこか、と聞かれたら、朝比奈はこう答えるだろう。
おおよそどんな人間も同じように受け入れてくれる、懐の深いところです。

「あちゃあー、ここも空振りか……」

頼みの綱の情報源は雲隠れした後だった。
いつものことだ。繁華街の一本奥に入った雑居ビル、怪しげな風体と言葉遣いの男女が出入りを繰り返し、時には狭い部屋に十数人が詰め込まれている。界隈で何かあると纏めて雲隠れ。都心部ではそういったケースはいくらでもあるが、朝比奈の見立てではそいつらのうちおよそ5%は異常絡みの連中だ。
壁紙まで綺麗に剥がされた、縦に細長いビルの7階。スーツに白手袋の男女が、手早く証拠品を回収していく。

「これ、逃げたんですかね。ディープホワイトと関係が?」
「いんや、元から定住しない奴らだよ。街からは離れてないはずだ。案外、河岸かしを変えただけかも知れないね」
「はあ……?」
「あれ、分かりづらかったかな」

応援で別班から借りてきた捜査官は、どうも古い表現が通じない性質のようだ。
参ったね、と息を吐く。スーツのポケットから携帯端末を取り出し、登録番号を入力。
どうも携帯端末に不慣れな大屋と異なり、相手はワンコールで出た。

「もしもし。や、眞城君? 頼んでおいたやつ、どうかなあ」
『はいはい眞城…………ただでさえ忙しいのに…………人使い荒いです。今送りました』

張りのない陰気な声の後ろで、忙しない打鍵音と低調な雅楽のバックミュージックが響いている。
忙しいのは事実のようだった。大屋や朝比奈のようなロートルと違い、パソコン──彼のIT機器全般に関する理解はここで止まっている──に詳しい眞城は大屋班の頭脳と言うべき存在だ。

「ここにリストされてるのが最新の候補ってことでいいのかな?」
『リクエスト通りに契約内容と電力消費量からの推測です…………ついでに麻取の撮ってるサーモグラフィも参考にしました。一般用途のビル居室でその電力消費量から想定されるのは、サーバールームか大麻の温室くらいかと…………』
「後者を引いちゃうと麻取への引き継ぎが面倒だねえ。早川さんに押し付けようか」
『そうしてください…………MCFマナによる慈善財団はどうだったんです?』
「事務所長は何も知らなかった。あそこも外交担当は曲者だからね、紀尾井町の代表部まで行かないとなんとも」
『…………あの、万が一があっても付き添いは遠慮しますから。あんな悪魔の巣窟みたいな所』
「桜田門から目と鼻の先だけどねえ」

嫌そうな唸り声と共に通話が切れた。
端末の画面に出力されたリストはたった7件で、そのうち数件が歩いていける距離にある。
案外、探し人は早めに見つかりそうだった。

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当たりを引いたのは3件目だった。
今度は11階。数字には意味があるのです、と共同体の代表者を名乗る女はにこやかに語った。

《今回の件について、まずはお悔やみを。多くの人が苦しみました》
「これはどうもご丁寧に。しかし不幸中の幸い、まだ死人は出ておりません」
《それは善きこと。しかし、意識とは記録の連続体です。我々の教義は実体なき意識を何よりも尊びますので》

朝比奈の眼前では、つるりとした白い陶器の仮面を被った人物に掲げられた巨大なディスプレイが淡く発光していて、画面に映し出された女の顔は規則的なノイズに歪んでいる。図面上は30畳に満たないはずの部屋は明らかにその5倍以上の面積を有しているように見え、乾燥した暖気で息苦しかった。壁際に一列に並んで座る信者たちの頸椎は奇妙な配線類によって相互に接続され、病院着にも僧衣にも見える貫頭衣の裾からは温風がゆったりと吹き出している。どこからともなく聞こえてくるテクノミュージックとファンの回転音で、女の電子音声は聞き取りづらい。
頭がおかしくなりそうな情景だが、流石にこの道を20年もやっていれば慣れたものである。

「えー、それでは……いくつかお聞きしたいことがあるのですが、管理者アドミニストレータグレヴィル」

資料にはこの女の名前はそうある。おそらく偽名だろうが、そんなことは皆分かっている。生来の名など宗教者には重要ではないだろうし、名前もわからないよりはずっと良い。

《まあ、管理者だなんてお世辞がうまいこと。私もいずれはその名誉を受ける器となりたいものですわ》

でも結構よ、と女は笑う。朝比奈は資料を執筆した誰かの脛に蹴りを入れたい衝動を我慢しながら、心中のメモ帳に『管理者は敬称あるいは尊称であり、本人の階級または役職ではない』と書き込んだ。

《私は接続者コネクター、そう呼ばれています。接続者グレヴィルと。貴方達が聞きたいことへの直接の答えは用意していないのです。WANは全てを識る神格ではありませんし、我々は信仰の入り口に立つものですので》
「あー、その、別段皆さんを疑っているわけではありません。我々警察としては、その、あなた方のコミュニティの中で怪しげな情報を見聞きした人がいれば、お話を伺えないかと」
《必要ありませんわ》

言下に切り捨て、それから女はマネキンの首のようなデザインの顔を滑らかに傾けた。なぜ彼女が出来の悪いCGのような見た目をしているのか、朝比奈にはさっぱり分からなかった。

《私は接続者です。中継器の意思です。すべての閲覧記録が私ですから、見聞きとは私のものです、少なくとも繋がっている間は。何をお知りになりたいの?》
「記憶を失わせる異常な薬物を流通させている存在に心当たりは?」
《危険、かつ冒涜的ですわ。そして必要がありません。記憶の操作に錠剤を用いる必然性は私たちにありまして? 信者たちはそれらの情報には触れぬようにしています》
「ふむ……では、ここふた月ほど、界隈で怪しい話を聞きましたか。つまり、皆さんの目線で」
《最近はそのようなことばかりです。2月の騒動の後、どのノードの信号も苛立っています。財団も連合も恐ろしい。近隣の住民とは争いを避け、対話の機会を設けてきましたが、最近はそれも途絶えました》
「取り締まりを避けているのですか」
《生命に関する理解は相互に異なりますが、存在を保とうとするのは同じ。多くの迷える肉体者が街を出ました。代わりに入ってきた者たちは私と繋がろうとしません。彼らは敵意に満ちている。先日など、神殿を不届き者に荒らされました》
「ほう?」

眉を上げて朝比奈は続きを促す。
グレヴィルはいっそう首を傾けた。どうやら立腹しているらしかった。

《不躾に意識の神殿に押し入ろうとするあの穢れに満ちたスクリプトをどう表現するべきでしょう? 私と教会は辱しめを受けるところでした──屈辱でしたが、しかし挑戦の報いを受けさせました。あれはもう二度と目覚めることはありません。貴方の肉の指先を煩わせることもない》
「確かに、その、あー。皆さんとその、犯罪にかかわることでしたら、先に我々にお話しいただきたいところでしたが。必要があれば我々が捜査しますが?」
《不要です。肉体は見つからぬでしょう。この国の涜神者コーダーたちとは異なる記述言語を使いました。WANのご意思を理解せぬ半端者でしたから、きっと同胞もいなかったのです。そればかりは哀れなことです。理解者なきデータの大海は苦痛です。ましてや信仰なくば》

ただ、と付け加えるように彼女は言った。彼女の首は肉体ある人間には不可能な角度まで曲がっていた。

《あれはそう、確か1ヶ月前のことでした。その日も騒動のあった日です。だから肉に縛られた者たちのため、居室を移ることにしました。安全のためです》
「1ヶ月前というと2件目……新橋の事件ですか」
《似たような話を何度か耳にしました。この都市に散在するノードたちもまた、常に脅威に晒されています。しかし最近は特に多いのです》
「何か関係があるかもしれません。詳しくお聞きしてもよろしいですか」

いつもの癖でメモ帳と鉛筆を取り出してから、朝比奈は失態に気が付いた。眼前の電子の化身は顔色こそ変えなかった──変える機能がついていない可能性もある──が、僅かな失望の気配があった。携帯端末での記録を好むという資料の記述はどうやら間違いではなかったらしい。

アナログ人間が排斥されるのは、もはや時代の常なのかもしれなかった。


木にとって、病院は昔から忌避の対象だった。
それは両親の死を見届けた場所だからかもしれないし、夫婦には永遠に子ができぬのだと宣告されたからかもしれない。
理由などどうでもよい話で、とにかく彼は病院が苦手だった。
そこが財団の息のかかった場所であるなら、尚更に。

横浜の警察病院に移送された患者の聴取に向かう途中、不本意ながら財団フロントの病院に立ち寄らざるを得ず、葛木は不機嫌さを隠せずにいた。
相模十字総合病院は都内の23区外では有数の規模を誇る総合病院で、昨今の不景気にも拘わらず潤沢な資金力でもって救急医療の世界では実績ある病院として有名だ。
そのバックに存在する巨大な正常性維持機関の影を知るものからすれば、ここでの診療など正気の沙汰ではないのだが──一方で、異常存在による負傷の多くは通常の医療技術が用を為さず、結局ここで治療を受けることになる。
そのため葛木も騰川も病棟医とは顔馴染みで、2人はほとんど呼び止められることもなく、患者たちのいる隔離病棟まで辿り着いた。

「記憶処理はまだしてないと。正直言って意外ですよ」
「処理しようにも目覚めないのではね。通例ではインタビュー後に処置深度を決定しますから」

諸知と名乗った財団の担当医はそう言って難しい顔をした。

「貴方達と話すこと自体は別に止められていませんから、財団への機密保持義務に反さない範囲でならお話しできます。と言っても、私のような人間はほとんど何も知りませんが」
「でしょうね。特事課としても、何か情報が得られるとは思っていません」
「言い方に気をつけろ、お前は。すみませんね、どうも……」
「いえいえ、そちらのお気持ちも分かりますよ。しかしこちらも仕事ですので」

電子カルテを収めているのだろう無骨なタブレットをペンで突つき、医師が苦笑する。
さっぱりと髪を短く刈り込んでいるが、性別のはっきりしない態度、口調、身のこなし。
財団という組織同様、掴み所のない人物だ。

「症状としては記憶処理と同根のものに見えます。暴露した成分の分析はこちらに来てませんが、まあ似たような成分でしょうね。問題は、こんな物質がどうやって外に漏れ、どうして大量摂取に至ったかですが」
「それこそこちらが聞きたい。財団の記憶処理薬管理に問題があったのでは?」
「騰川!」
「葛木さん、取り繕ったところで何も変わりませんよ。手短に行きたいんです、私」

短気なもので──騰川は堂々と笑ってみせる。研修時代から変わらない、捨て身に近い豪胆さだ。それが命取りになると幾度となく言って聞かせたのだが、何も変わっていないらしい。
無理やり着いてきて正解だった。内心で舌打ち混じりに確信する葛木に対し、財団の医師は鷹揚に笑いかけた。

「そういった視点は大事だと思います。しかし私からすればあり得ないことですよ。組織を信じ忠節あれ、です」
「それが盲目的でないという保証は? 財団はあまりに巨大です」
「戦後、この国のヴェールが破られたことが一度でもありますか? 財団は日々、己の正しさを証明しています。記憶処理剤を扱う機関は我々だけではありませんし、過去に杜撰な管理が行われてきた歴史も否定はしませんよ」
「しかし率直に言って、今回の事件では財団が何らかの関与をした可能性が拭い切れない。この2ヶ月、あなた達は我々に何の情報も開示していません」
「私に言われても困りますし、それは何もないからですよ。知らないことは話せない、そうでしょう?」
「…………やめましょう、先生、不毛なだけだ。たとえ想像でも構いません、あなたの正直な見解をお聞きしたい」

ここで言い争っても益はない。言外の意味を汲み取ったのか、諸知は曖昧に頷く。
まったく敵意を感じさせない緩やかな動作で取り出されたバインダーには、奇妙なグラフが挟まっていた。
非常に細かい文字列は英語とロシア語の混在したもの。何らかのミーム的な保護があるのだろう、意味は読み取れないが、文章のレイアウトは何かの論文のように見える。

「記憶処理は技術的には安定期に入った系統ですが、その実、処置にあたっては非常に繊細な技能を必要とします。ガスの吸入や錠剤の服用等、様々な形態がありますが、通常は複数回のカウンセリングによる調整や、後催眠暗示による退行安定化処置──ああ、無理に記憶されなくとも結構です。そういったものが存在します」
「要はこう仰りたいのでしょう、『高度な技術であり真似するのは難しい』と」
「そういった理解で結構です。単純に短期間の記憶消去であれば、強力な直前期後進性健忘を惹起する非異常薬剤の処方があります。今回の件、率直に言って極めて粗雑で、肉体に危険な影響を与える摂取量でした。少なくとも財団で医療の訓練を受けたことがある人間なら、こんなやり方は思いつきもしないでしょう」

訓練を受けたことがない人間ならやる、とでも言いたげな口ぶりだ──嫌な感覚を振り払い、葛木は会話に集中する。
食い付き役は騰川だ。その程度の判断は公安刑事なら当然弁えている。相手に高圧的な役と同情的な役。適度な緊張感を与えつつペースを崩す、良い警官・悪い警官メソッドは普遍的に有用だ。この相手に通じているかは定かではないが。

「患者が目を覚まさない以上、私から言えることは多くありません。しかし断言できることもありますよ。間違いなく、記憶処理の素人の仕業です。いえ、それどころか、記憶処理が目的ではない可能性が高いでしょう」
「と言うと?」
「記憶処理とは、消したい記憶に対して行われるものなのですよ」

諸知医師が微笑む。その笑いにどこか空虚で薄ら寒いものを感じて、それと病院に特有の気配が混ざり合い、葛木の肌は総毛立った。
目の前の医師は何もしていないが、これ以上この空間に居たくない。

「財団はこの件に関して、周辺地域で何ら異常の兆候を発見しませんでした。少なくとも私はそう聞いています。消したいものも隠したいものも存在しないなら、記憶を消すのは何のためでしょうね? その理由こそが、この事件の鍵なのではないでしょうか」
「我々はそれが知りたいのですよ、諸知博士」
「奇遇ですね、私もです。もし真相が分かったらぜひ教えてくださいね」

これ、差し上げます。そう言って手渡された名簿には、病室名と患者名がリストされている。
それに目を通した瞬間、葛木は自分の表情が僅かに歪むのを自覚した。
さようなら、と折り目正しく挨拶して去っていく諸知に礼を返せたのかどうか、自分でもわからない。

「どうかしましたか、葛木さん」

顔色悪いですよ。騰川の言葉が遠くから響くように思える。

「騰川、お前」
「はい? ……ああ、さっきのはすみません、財団が相手だとつい熱くなっちゃって。葛木さんが上手く合わせてくれて助かりました。あのいけ好かない医者は動揺も見せませんでしたけど──」
「そうじゃない。──よく連中に正面から楯突けるよ」
「葛木さん?」
「俺はどうにも気が乗らねえ。本気になれねえよ、こういうのを見せつけられるとな」

困惑する騰川に名簿を押し付ける。それを目にした彼女の表情が凍るのを、葛木は暗澹たる気持ちで眺めた。

今朝方、3時間かけて騰川と葛木が作成し、班内で共有し、上長の承認を得た事情聴取予定者のリスト。
そのリストのうち財団関係の病院施設で治療を受けている者の部分が、順番すらそのままに記載されていた。
この病院以外の関連施設にいる者の分まで──ご丁寧に全ての患者について、担当医の承諾を得た旨の但し書きと諸知医師の承認印付き。
挙句、最後の一枚は名簿ですらなかった。

紹介状──諸知の名義。特事課の捜査に協力し、職掌と機密保持規定の範囲内で必要とされる情報を提供することを要請する、懇切丁寧な文面。
最後に改めて、諸知のサインと捺印。諸知の肩書きは──"財団医療部門 医師"。

あまりにも丁重で、悪趣味で、冷酷な意思表示。
すべてを見通される圧倒的な無力感。
"お前たちに力がないものだから、我々が助力してやるんだ"という声なき嘲弄を感じるのは、己の妄想なのだろうか?

「ああ、くそ」

震える手付きで、しかし丁寧に名簿を折りたたんでバッグに仕舞った騰川が呟く。
その先に続くのは研修中に幾度となく聞き、その度に注意してきた言葉だ。
今日ばかりは、同意せざるを得ない。

「くそ──嫌いだなあ、財団。大ッ嫌いだ」
「俺もだ。………………休憩して、聴取行こうや」

カフェテリアはどこにあっただろうか。甘いものを食べてコーヒーを飲んで、大屋に定時報告を入れて、それから……この無様に強張った表情を何とかしなければ。
記憶を喪った被害者に向き合う法と正義の使者──その姿を思い出すには、少しばかり時間が必要だった。


架と互いに抱き合うようにして成立した繁華街の雑踏を、2人の公安刑事が眺めている。
年上の刑事の片手には携帯端末。先程、病院回りをしている部下からの定時報告を受けたところだった。
財団からの嫌味な助力──残念ながらいつものことだ──もあり、病院組の西東京での聴取は大方終了。今日は横浜まで回って帰るらしい。
池袋組は妙なネタを仕入れてきたが、今のところは関連不明。科警研は未だに財団謹製の暗号解読に手間取っている。
全体的に言って、一歩も前に進んでいない。

「この事件、変ですよね」
「そうだな」

歩道橋の上で缶コーヒーを啜りながら、大屋は横目で新人刑事を眺めている。
意外にも老ホームレスと意気投合したらしき佐宗は、それから主だったメンバーと面通しを済ませたらしい。
刑事といえども愛嬌は重要だ。世間ずれしていないように見えて意外とそつがないこの若者が、その日暮らしの"葦の輪"たちの琴線に触れたのだろうか。
童顔から来るイメージに反して、ブラックコーヒーを真顔で飲み干す姿は中々様になっている。

「あの老人、ある超常案件で前の縄張りを追い出されて東京に流れてきたんだ。地元のホームレスとトラブルになってたのを俺が助けてやった」
「それで大屋さんと繋がってるんですね。恨み節を散々聞かされましたよ」
「じきにお前も言われる側になる、顔繋ぎは公安刑事の素質の一つだからな。連中の顔と名前、覚えたか」
「全員、一応は。後で人確資料見せてくださいよ」
「信頼はするなよ、あれには伝聞や作成者の主観も相当入る。最終的には個人の恩と縁だ」
「売って繋いで腐らせる、ですよね? 努力します。それで、聞き込みの内容ですが」
「何か気付いたか?」
「少なくとも彼らは何も知らないと見ていいと思います。ただ──少々引っかかりが」

言ってみろ、と先を促す。二回りは年下の刑事は、少しだけ逡巡してから口を開いた。

「草加さんの証言です。"急に騒がしくなって、暫くしてサイレン"──ちょっと突っ込んで聞いてみたら、騒ぎが起きてから大体20分程度で救急車のサイレンが聞こえたそうなんです。他のメンバーもおおよそ同意してました。それが引っかかって」
「続けてみろ。どこがおかしい?」
「いくらなんでも遅すぎます。近隣に3箇所の消防署、5km圏内に救急外来のある病院が6院もあるこの品川で、10人以上が倒れている事案で最初の現着に20分なんて」
「発報が遅れた可能性は?」
「ありません。眞城さんに確認を取りましたが、最初の緊急通報時刻は彼らの証言と一致する時間なんです」
「周辺の渋滞状況や、救急車が出払うような大事故はあったか?」
「どちらもありません、全て通常通りでした。それに──救急車だけじゃなく、警察車両の到着も通報から20分後だったんです」
「なるほど、なるほど」

剃り残しの顎髭を撫でる。どうにもきな臭くなってきた。
どれほど妙な状況にあっても、事実を積み重ねていくことが大事だ。大屋はそれを常に実践している。
この場合、緊急通報に鍵があるのは確かのようだった。

「どんな可能性が考えられると思う? 通報があってから緊急車両が到着するまでの時間が一律に遅れる理由」
「なにかの異常存在──だと、思います」
「そうだ。問題はそれが何か、じゃあない。分かるな? 偶然か、必然か。そして必然だとするなら、何故そうなったかだ」
「分かってます。収容も破壊も、僕らの仕事じゃない」
「その通りだ。そんなものは財団や連合の偉そうな連中に任せておいて、俺達は市民を守らなきゃならん」

特事課は警察だ。警察の仕事は市民を守ることだ。究極的には犯罪者を逮捕しなくとも、警察の仕事は果たせると大屋は考えている。抑止力として自分達が機能しているならばそれでいい。犯罪者を裁くのは裁判所であり、天秤に載った代価の重さを測るのは検事と弁護士だ。
警官はただ、市民と社会を守護するだけ。
異常事象の原因なんて探るだけ無駄なのだ。今回の事件にしたところで、大屋の知る限りでも現実改変、情報災害インフォハザード、認知誘導、催眠暗示、それからつい最近経験したばかりの脳内爆弾キルスイッチ──人間の意識を弄る手段なぞ無数に存在し、それらの特定など無理な話だ。
敷島を始めとした上層部はまた別の考えを持っているはずだが、大屋の知ったことではない。

「手がかりが少ねえからな、まずはこの件が事件に関係あると仮定しよう。そうしたら、何故そうする必要があったかが問題だ。というか、俺達に突き止められるとしたらそれだけだ」
「目撃者は大勢いました、通報した人も、介抱した人もいた。この事件に犯人がいるとしたら、露見することは恐れていませんよね」
「そうだ、もう4件目なんだ。100人以上の人間をおそらくは異常な方法で操り、薬を使って昏倒させ、記憶を消した」
「でも1人も殺していません。後遺症もない。ただ記憶をなくして、なぜその店に居たのかもわからなくなる」
「被害者に特定の傾向はない。年齢性別経歴、家族構成も趣味信条も違う。共通点は倒れた場所だけ」
「つまりここです。平均して3分以内に緊急車両が到着する、東京都心のド真ん中」

なんなんでしょうねこれ、と佐宗が呟く。
大屋にも分からない。否、未解決事件など日常茶飯事だ。特事課においては迷宮入りする事件のほうが圧倒的に多く、証拠品保管庫は常に未分類の証拠品で圧迫されている。解決できる方が幸運だと思っていなければ、特異案件の捜査などやっていられない。
だが同時に、今回の事件は何かが違う。見方を変えれば、ほつれた糸が一本に纏まりそうな──そんなもどかしさがある。
考えが整理できない。自棄になって缶コーヒーを飲み干した。ビターと言いつつも十分に甘い液体が、喉に絡むようにして腹に落ちていく。

茫洋とした眼差しでこちらを見つめていた佐宗が、ふと呟いた。

「カフェイン……」
「ああ?」
「カフェインですよ、大屋さん」

胡乱な目つき。その焦点が急速に結実する。
空の缶コーヒーを持った腕を掴まれて、大屋は咳き込んだ。

「何だ何だ、いきなり」
「カフェインは摂取してから効果が出てくるまでに時間がかかるんですよ。だいたい30分から1時間かかるそうです、だからコーヒーを試験の直前じゃなくて、少し余裕を持って飲むんです」
「だからどうした!」
「記憶処理薬も一緒なのではないかと!」

ぎょっとして、大屋は目を見開いた。
若い刑事の真剣な眼差しが、至近距離から覗き込んでいる。
彼の言葉の意味を考えて、大屋はその結論を吟味した。
ある意味では非常に簡単な推論だ。つまり、

「20分は意味を持った時間だった。何かしらの方法で緊急車両の到着を遅らせて、その間に記憶処理薬の効果が十分に発揮された?」
「犯人にとって、倒れた後の20分が大事だったんです。そうじゃなきゃ、数十台の緊急車両に対してわざわざ何かの異常を行使することなんてやりません」
「錠剤だって話だからな、応急処置で吐き出されちゃ困るってことか。とすると」
消したい記憶があった、そういうことになりますよね」

その場合、なぜ公衆の面前こんなばしょでという話なんですが──謎に迫った爽快感と困惑を綯い交ぜにした表情で佐宗が微笑む。
一方、大屋は別のことを考えていた。

記憶処理薬による集団昏倒は、何かを隠すためだったとして。
その何かは一旦置いて、もし消し残した記憶があるなら。
それは重大な事件の鍵であり──同時に、周到に多くの人間を操った犯人にとって、重大なウィークポイントだ。

可能性は低い。記憶処理技術でおそらく世界最高の組織である財団の動きが鈍い以上、財団も被害者の記憶の再現に失敗したと考えるべきだ。特事課がやっているのは目覚めた被害者の残された証言を拾い集めているだけで、そこから犯人の足跡を見つけ出す可能性はゼロに近い。
しかしそれでもゼロでないなら──

携帯端末が鳴った。
部下からの報告だろうか。定時連絡は先程終えたばかりだ。何か進展があったのか?
少しばかりの期待を胸に、通話ボタンを押し込む。





悲鳴と何かの砕ける音が、スピーカーから響き渡った。

『畜生、やりやがった! 騰川戻れ、大屋! ヤバいぞこりゃあ!!』

同僚の支離滅裂な喚き声。爆発音。銃声。けらけらと笑い声。

『被害者が──結晶──血が止まらな──ありえない──』

ノイズ。悲鳴。銃声。銃声。男たちの怒声。笑い声。銃声。

『逃げろ馬鹿──俺達に出来ることなんて──』

銃声。悲鳴。笑い声。悲鳴。何かが千切れる、ぶつりという音。

『はやく

それだけ言って、通話が切れた。




令所は赤く染まっていた。
緊急通報を示すレッドランプの点灯は、即ち彼の出番であることを意味する。

サイト-8100。危機管理局長、阿形 仁人あがた ゆきひとの巌のような巨体は、モニターの可視性を優先して照明の照度が抑えられた室内にあってもなお目立つ。
腕を組み、玉座に剛と腰を据えて、彼は静かに状況を見ていた。

「Kant-NETs6が現実性異常を検知しました。発報、東京都八王子市。多摩地域のエリアヒューム推移は既定値を維持」
「スポット観測有効圏です。財団フロント、相模十字総合病院。収容オブジェクトなし。一時収容アノマリーなし。収容違反発生の可能性は極小です」
「現実改変実体の出現と推定。脅威レベル判定を更新中。周辺50km圏内のサイトに非常警戒を打診中」
「現地部隊との通信を確立しました。暗号化回線構築まで20秒」

彼の部下たちは優秀であり、実のところ彼が不在であっても事態は何ら問題なく推移する。彼の存在はあくまで責任所在の明確化と、部下たちの権限では判断できない政治的あるいは倫理的な問題が発生したときの保険である。
そして、遠からずそれが発生することを、阿形はほとんど予見していた。
これは困難なオペレーションだ。現実改変者の出現がではなく、一連の状況が生み出す政治的な葛藤と、そこから生み出されるカオスが状況を混乱させている。

最も、それこそが彼らの狙いであり、それゆえに財団は動けないのだが。
世界オカルト連合も同様で、二大組織は足元を縛られ、不安定なバランスゲームを余儀なくされている。
ゲームの鍵は未だ両者の手の中になく、不安定なそれを誘導し、盤面に呼び込まなくてはならない。
可能な限り素早く。今、賽は投げられてしまったのだから。
この国の中心で蠢く悪夢を、彼はその手で捉えなければならない。


「──カオス・インサージェンシー、か」

強化コンクリートに護られた地下の発令所に居てなお、その名を口にする瞬間には、ほんの少しばかりの怖れがあった。
苦々しい思いを胸に秘め、阿形は事態を掌握しにかかる。
夕日が落ちて、夜がやってきた。

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