お肉最終章: カイン編

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リオネラ・イールズの公開遺言状、報道差し止め済み、1997年

……以上の目録が、わたくしリオネラの所有する正当な財産のすべてであり、そしてイタリア共和国とその自治体への正当な支払いを除いては、死後すべての財産を、ベッラージョ湖畔教会に寄付することを遺言いたします。これはひとえに52年前、小娘をお救いくださった、銅の手の神父様への御恩返しにございます。

わたくしはコモの湖畔に生まれ、湖とともに生を歩んでまいりました。あの恐ろしき年の4月、わたくしは公会堂で街の子供たちに筆記を教えておりました。南では戦争が続いていましたが、わたくしは兵士の娘でしたから、いざというときの覚悟はしておりました。

けれども、湖を腐った水の臭いが渡り、白い森が落ちてきたときのことを、なんと表現するのがよろしいでしょう? 川藻がまるで数百倍になり、雲の中から逆さになって湖に突き立ったようでした。沸き立つ水の中からは、牙と甲羅を生やした巨きな蟹たちが這い出でて、たちまち辺りは白く染まりました。

エティがあれらに捕まったのを、今でも夢に観ることがあります。血の一滴も流れることはありませんでした。彼女はこの世からいなくなりました。声が消えた後に、白い羽根が舞ったのでございます。わたくしは子供たちを湖畔教会に隠しました。湖の只中で、主の御心だけがよすがでございました。

わたくしはただ子供たちを抱えて、説教壇の影で震えておりました。懐にはナイフがありました。兵士たちがやってきたときのための護身用でございます。礼拝堂の扉が煙を上げて腐り落ち、乳色の陽光が差し込んできたとき、私は無我夢中でした。ただナイフを突き出して、少しばかりの間だけ、子供たちのためにあろうとしたのです。

神父様は見たこともない肌の色で、兵隊とも、街の人々とも違う服装でございました。赤黒い銅の腕をして、優しげな目をしておいででした。かれは私を押し戻し、子供たちの背に外套を掛けて、それから外に出ていかれました。彼が歩くところ、白い羽根が舞い散り、けだものたちはかれを避けていくようでした。それで私はその方のことを神父様だと知ったのです。

わたくしは神父様とはほんの一言を交わしたきりでした。それでも、白い羽根の夜のすべてが記憶の彼方に過ぎ去った今となっても、わたくしは神父様のお言葉を憶えているのでございます。

意志ある人、あなたに訪れる終わりが、心安らかであるように。

旅の後、二度とベッラージョに戻ることが叶わなかったことだけが、わたくしの心残りでございます。しかしながら、この告白によってそれが雪がれるならば、何よりの慶びです。白い羽根は未だわたくしの肺に居着いておりますが、わたくしも子供たちも、こうして遠い地で生きております。わたくしたちの終わりは主のみもとに見守られ、安らかであることでしょう。

親愛なる蛇の友により、この遺言状が世界に向けて開かれんことを願います。

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