2███年██月██日14時26分34秒873ミリ秒4マイクロ秒

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それは何の前触れもなかった。

いや、前触れはあったか。


異動命令

2███/██/██ 氷菓 棆 殿

貴方の異常性を有効に活用してもらうため、2███/██/██より研究員としての職を解き、生活・健康部門に配属、サイト-81██担当監査官として再任命します。貴方が監査官として、より多大な成果をあげることを期待しています。研究室の変更については追って伝えますので、私物の移動の仕度を済ませておいてください。


サイト-81██管理官 ██


「管理官、これは一体?」

受けとるや否やすぐに抗議しに向かった。

「どういうことと言われましても、そのままの意味です。左遷とかではないので安心してください。」

「そうでなくて、何故研究員じゃなくなるんですか?」

管理官は冷たく、しかもそれが当たり前であるかのように告げた。

「氷菓研究員、貴方は先日のSCP-███-JPの発生インシデントで、『時計等を見ずとも正確な時刻や期間を知覚する』という異常性を獲得しました。間違いありませんね?」

「…はい。」

「それは我々にとっては大きなプラスです。特に他の職員のスケジュール管理においては大きく役立つ。」

そんなことのために自分の夢を潰されるのは嫌だった。だから大声で言い返した。

「なんでそんなことの為に研究員の道を  

「氷菓さん。」

管理官はそれでも冷たく言った。

「財団は異常な物品を回収して一般市民を危険から遠ざける機関であって、貴方の好きな職を提供する場所ではありません。だから個人の要望よりも効率を優先する必要があるのですよ。理解してますか?」

「……」

正論だった。何も言えない。でも、だからってこんなのはひどい。

「そういう訳で、来週から頼みますよ。」

そう冷酷に告げると管理官は自分の仕事に戻った。

なんで。なんでこんなことに。嫌々ながらあの時、「異常」になった日を思い返した。



.
.
.


「███-JPだ!」

「サイト内は予想外だろ!早く高出力SRAを持ってこい!」

「急に用意できるか!今は開発中のスクラントン現実弾しかない!」

「それでも良い!貸せ!」

「3人巻き込まれた。2人は即死、1人は『無事』だったようだ。」

「生き残ったそいつ、運が良かったな。」



人々の走る音が聞こえる。

周りに何人か倒れている人が見える。

自分も倒れている。

……そうだ。SCP-███-JPが起きて、目の前にいくつもの時計が現れて倒れたんだ。確か、生きるか死ぬかの二択だったっけ。私は生き残った方みたい。

そう思った直後、その数値はいきなり頭に「浮かんだ」。

2███年██月██日14時26分34秒873ミリ秒4マイクロ秒

「……え?」

そして、それは動き始めた。

2███年██月██日14時26分40秒561ミリ秒943マイクロ秒

「……これは?」

倒れたまま、訳のわからない数字に戸惑う。

2███年██月██日14時26分58秒24ミリ秒667マイクロ秒

2███年██月██日14時27分06秒194ミリ秒74マイクロ秒

2███年██月██日14時27分12秒648ミリ秒916マイクロ秒

起きて振り向くと、時計の針は14時25分を少し過ぎた時間を示していた。

「まさか、今の時間?」

それを知った私は即座に悟った。

私も"異常"になったのだ。




.
.
.

管理官になってから、色々と変わってしまった。

遅刻はしなくなった。

「機械みたいだ」と言われるようになった。

そして、

「おはようございます、氷菓監査官、、、

研究員じゃなくなった。

憧れていた研究員だった私はいなくなってしまった。やる気に満ちた私は「止まって」しまった。

幸い、研究に立ち会うことはまだある。それでも、私はもう研究員ではない。監査官だ。

何か失敗した訳じゃないのに。誰かの策略に陥った訳でもないのに。

ただ、事故に立ち会い、生き残った。そのせいで私は研究員として「止まった。」
止まった。止まった。戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない戻らない

                   !!」











「氷菓さん?氷菓さん?」

聞き慣れた声が聞こえる。

「氷菓さん!大丈夫ですか?」

「……鴉羽さん。

「どうしたんですか?ずっと呻きながら寝てましたよ。」

「……夢?」

「はい。多分。数時間くらいでしょうか。」

なんだ。昔のことを思い出してたのか。

「大丈夫ですよ。怖いものは何もありません。」

「あ、いや、その、化け物とかじゃなくて……あ。」

気がついたら手を繋いでた。鴉羽さんもそれに気づく。すごく気まずい。

「……あ、すみません。」

「いえ、特に気にしてません。」

そう言って私はちょっとだけ微笑んだ



私の研究員としての時間は2███年██月██日14時26分34秒873ミリ秒4マイクロ秒、その時に止まってしまった。あの事件は、私の全てを変えてしまった。財団は、私の生き方を変えてしまった。時計はもう、動かない。






でも、少しだけ、微かに歯車の音が聞こえた気がした。


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