視界が開ける。明順応していない目はまだ何も捕えない。私はあまりの眩しさに思わず目を瞑った。すると鳥のさえずりが聞こえた。草の匂いがした。風邪が頬を撫でた。ああ、いいものだ。サイトの中の鬱屈な、無機質なあの感じとは違い、ここは空気がすんでいて、とても心地がよい。目を再度開けると、私は野原に立っていて、空は何者の邪魔をも受けず、悠々としていた。長旅で凝り固まった体を伸ばし、自然に見とれていると、所持していたトランシーバーに反応があった。
「もしもーし、着きましたかー?」
「ええ、無事に着きましたよ。こちらに特に異常はありません。」
「了解でーす。ちょっと待ってくださいね、情報確認するので。」
忙しないタイピング音が聞こえてくる。いつも騒がしい彼女ががちゃがちゃキーボードを触っているのを想像するのは容易だった。
たーん。エンターキーを押した音がした音がした後に彼女から応答がある。
「なーんで笑ってるんですか!」
「いえいえ、なんでもないですよ。」
「いやいや、絶対笑いましたよ!」
彼女はいつも通りで、私は少し安心した。
「そんなことより。どうです?着いた感想は。」
「久々にこんないい場所に来ましたよ。空気は澄んでるし、空はのびのびとしている。本当に来て良かったです。」
「へー、そうなんですか。へー。いいですねぇ、私は、じめじめした部屋でパネルに向かって話しかけているのに。」
「それは……確かに貴方のおかげで私はここに来れたというのもありますし、一緒に来れたら良かったですけれど……。どうしてもモニターする人が必要でしたし……」
「分かってます!分かってますよ!分かってますけど……」
彼女が頬を膨らましてるのが分かる。
「うーん、困りましたね……」
「……」
静寂が、草が風に揺られ掠れるのを聞こえさせる。気まづくなり口を開く。
「……お土産で手を打ちまんか。」
応答がない。思わずなにかまずかったか、と思い謝辞の言葉を投げようとしたその瞬間、彼女が口を開いた。
「まあ……それが当然ですよね。と!う!ぜ!ん!ですよね!」
やはり彼女、チョロいのではないか。いつか餌に釣られて危ないものに関与してしまうのではないか、彼女が少し心配になった。
"なににしようかな"という彼女の発言は無視して、トランシーバーのボタンを押した。
「そろそろ、出発しようと思います。」
「あ、了解です。えっとですね、北西の方向に進むと道があると思うんでそれに沿って移動すれば目的地に着くと思います。」
「分かりました。何かあったら連絡しますので支援お願いします。」
「ええ、よろしくお願いします。」
トランシーバーをホルダーに戻そうとすると、彼女は最後にこう言い残した。
「あっ、お土産忘れないでくださいね!!」
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