補遺4に関する直し

補遺4: 補遺3時に見つかった文章。

遺書の文字書き起こし



以下の文章はSCP-XXXX-JP-1によって、見た人に映像を認識させる魔法陣が仕掛けられており、以下はその書き起こしです。


こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
村に安全は取り戻されたでしょうか。それならば私は幸せです。

私がこの村に来たのは6年ほど前ですね。私は帝国の追手に追われ、この村に迷い込みました。きっと疲労困憊であった私は倒れてしまったのでしょう。目が覚めると、私はベッドに寝させて貰っていました。体を起こして周囲を見回すと、部屋にいた男性(きっと見張り番だったのでしょう)は外に飛び出していきました。人々が話し合うような声がぼうっと聞こえていました。私は状況を掴みかねていると、老けた男性が幾人かをつれ、私の前に現れました。そしてこう訪ねました。
「旅の者よ。ゆっくり休めましたか。」
私は少しずつ状況を理解しながら頷きました。
「ええ、久しぶりによく眠れました。」
老人の後ろにいる方々がすこし騒がしくなりましたが、老人はそれを気にせず、こうおっしゃいました。
「それは良かった旅の者。随分と疲れていたものですから、我々も心配していました。」
「それはそれは、心配をお掛けしてすいません。」
「いえいえ……」
部屋は静かになりました。私はその静けさに少し不安を覚えました。
「どうかしたのでしょうか。」
老人は後ろの人々と顔を見合わせた後、申し訳なさそうに言いました。
「実は貴方が倒れた時、貴方の鞄に入っていた荷物が散乱しまして、それを整理しようとしたら……」
私の不安は的中していました。

次の瞬間、私は頭を垂れていました。

「すいません、見逃してください!」
私は私の身元を帝国側に渡されることを心の底から恐れていました。死にたくありませんでした、私は何も悪くないのに。
私は叫びました。
「本当にお願いです。見逃していただけませんでしょうか!」
逃げようと思っても、私は疲れすぎてしまっていました。
すると、老人は私を慰めるように声をかけました。
「落ち着いてください。私達は貴方を彼らに引き渡そうなど、一切考えておりません。」
私は顔を上げました。
「な、何故ですか。」
あの頃は魔道士の首に高い賞金がかかっていたばかりか、[あの災害(渦の発生)]のせいで、村の方々にも被害が発生したはずだったからです。私は憎まれ者だったのです。
老人は優しく語りかけてきました。
「貴方のノート、僭越ながら拝読せていただきました。」
ノートといえば私が研究を纏めていたあのノートです。
「ノートには、あの空の禍々しい渦について、研究や考察が書いてありました。詳しくは分かりませんが、私には、貴方があの渦の消滅を心の底から望む貴方の決意が伝わってきました。私は貴方のその心に惹かれました。」
私は唖然として聞いていました。私は、これまで、恨まれて、嫌われて、迫害される運命にあったからです。
「私達は貴方をこの村に匿うことにしました。貴方が欲しいものはなんでも仰ってください。私達は貴方を全力で手伝います。あなたには本当に頑張って欲しい。」
私は震える声で聞きました。
「ほ、本気ですか……」
「ええ、本気です。貴女にはそれほど惹かれたのです。」
私は感無量でした。夢でも見ているようでした。しかし、老人の次の言葉で現実に引き戻されました。
「しかし、ただとは言いません。一つだけ条件を飲んでもらいます。」
「え」
頭の中がぐちゃぐいゃになりました。もしかしたら、彼らは、彼らは
「貴女はあのノートに人を癒す方法を模索していることを書き記していましたよね。」
「は、はい」
彼らは、彼らは、彼らは、彼らは、彼らは、彼らは、彼らは

老人がニヤッと、いや、ニコッと笑いました。
「私の肩もみをして欲しいのです。」
「え?」
今度は、不安は的中しませんでした。私はその素っ頓狂な返事に唖然としました。
「……」
扉からは村の方々が顔を覗かせ、子供は窓からこちらを覗き、皆が笑っていました。
そのあとは何も聞こえませんでした。
彼らは、貴方方は、本当にいい人たちなんだな、と心の底から感じました。
「ひっ、あぐっ」
自然と涙が出てきました。良かった、良かった、良かった。そのあとはもう覚えていません。ただ暖かかったのだけは覚えています。


そのあとも皆様には感謝することばかりでした。村に帝国の追手が来た時には、村総出で、私を匿うために彼らを欺いてくださいましたし、私が村に馴染めるように、村の女性方は私を家事や洗濯の輪に入れて下さって、やり方を手取り足取り教えて下さったり、他愛もない話で盛り上がる面白さを教えてくださいましたし、子供は良く私の元に来て、私の話を面白そうに聞いてくださったり、一緒に食事を食べたのは楽しい思い出の数々です。

だからこそ、私はここ最近、[渦]の強大化によって、貴方方が苦しんでいるのを看過できませんでした。未熟な私には出来ることはほとんどありませんでした。1つを除けけば。

私は今から最終兵器として、私は自分自身を殺めます。私が生きていると、私を匿って下さった皆様に危害が及ぶでしょうし、私は私の仲間を裏切るなんてことは私の心が拒みます。何よりも、貴方がたとの約束を裏切ることになってしまう、そんなことは絶対にできません。だから私は自分自身を殺すのです。私なりの恩返しです。

私は貴方がたのために死ねて幸せです。

最後に、一つだけお願いをここに記します。もしこの森の霧が晴れているのなら、そこにある装置を破壊してはくれないでしょうか。最後まで手間を掛けさせてしまってすいません。

貴方方助けになれたのなら光栄です。さようなら。


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