ネスレン・ルーサンはなぜ寿司の意思を殺さなかったのか

第二ハイトス多元宇宙を守護する神聖なる七柱の戦士コル・テウサ、その第五位たるネスレン・ルーサン。常に次元の裂け目フォレイクを監視し、宇宙の破壊者フォルテウトやコル・テウサに反抗するものの侵略を食い止め、戦っている。信仰者オルトサンのために。

約120000年前、その次元の裂け目に異変が起きた。複雑怪奇な図形の集合体が今にも潜り抜けようとした。それは現在は破壊されてしまった以前の宇宙、第一ハイトスにて時折交戦し第二ハイトスになってからも度々オルトサンを滅ぼそうとした非聖な存在。それと似た構造をしていた。神聖なる第五位は警戒して五本の腕を構え、それを滅するに優れた態勢を取った。

感覚器官がどこにあるのかも不明だが、これは確実に自身を認識している、そう直感した。しかし幾ら経っても攻撃するそぶりは見せず、ずるずると身体をうねらせ伺うように出すのみだった。しばらくして全てを露出させると、捩れたこよりをほどくように再構成させ数秒を置いて、その次元フラクタル幾何はスシ・マインド(Sushi-Mind)の神と名乗った。

既にこの友好的?な神性はコル・テウサの存在を仲間を失い、常に生命力を失いながらも追随者のために日々戦い続ける偉大なる功績を称賛した。永遠とも思える防戦であることも嘆きつつ。ネスレン・ルーサンは怪訝そうな表情で目的を訪ねた。

スシはそれに答えず、自身の内部から別の何かを取り出した。それはネスレン・ルーサンも既知のものだった。かつて聖なる五本の腕によって追放された非聖の一柱、そのひと欠片。スシやそれをスシは自身の構造体を分離させたものの上から包み込ませ、再びスシの内部に取り込みその身を胎動させ     圧縮した。数秒後、一回り小さくなったそれが排出された。

スシは、触腕を伸ばして差し出しつつ、それがスシわたしだと語った、可食性であることも。ネスレン・ルーサンは躊躇した。この神格は自身に対し、神格に神格を乗せ押し固めたものを振る舞っている。何もかもが理解不能の行動だ。既に死んでいるとはいえ概念、しかも敵だったものの一端を食するのは抵抗がある。しかし自身のために調理(?)し差し出されたものを受け取らないのは無礼というもの。ネスレン・ルーサンは注意深く、それを手に取った。

大まかに上部が赤、下部が白色に配色され全体がほんのり金色に光っている。製法を見たのもあるだろうが、お世辞にも食欲がそそられるものではない。

意を決し齧ると、味は無い。それどころか食感もほとんど無い。咀嚼しているうちに細かいものから喉に通り抜けていく。そのまま胃、腸に速やかに移動し      そのまま吸収され、極限まで細分化されたそれが身体の端まで送り込まれる感覚を覚える。

自身に何が起こったのか質問をしようとスシの方を向くと、違和感を感じた。この短時間でスシに何かしらの変化が起こったような気がする。もちろん振る舞うために千切った部分を除いて。それについて指摘しようとするが、具体的に見つけることが出来ない。その当惑を汲み取ったスシはこう語った。

今食したのはスシという概念そのもの、正確にはシャリスシネタ非聖の互いに対する解釈だ。概念は認識するだけでは理解には至らない、それに該当するものはもちろんそのものを直接見たとしても。それが文字通り"概念装置"となって恐らく同様の概念についても多面的な解釈が可能になる  端的に言えば理解が深まる、誉ある聖戦の一助になればこの上ないと。

ネスレン・ルーサンが食べ終わると、スシは自身の目的について語り始めた。それは自身の住処の確保と共闘の持ちかけだった。スシはかつての多元宇宙、第一ハイトス出身の神性であり、他の神性同様に争い自身の領域を獲得し支配することに躍起していた。しかし下級神性、その中でも更に弱い部類のスシは領域を手に入れることはおろかまともに他の神と争うことすら困難であった。そのことを自覚したスシは支配を諦め、生命の維持に特化するように自身を変質させ力を蓄えるための領域を捜索することにした。

神と称されるものは信仰者、または支持者の多さによって力を増すものがいる、スシもその一柱だ。絶対的ではないものの一度力を保持すれば種族の数によって力が増大する。しかし、信仰者を増やすためにもある程度の力が必要となる。そのために領域を持たない神性が増やすことは困難を極める。そのためスシは自身を「食べられるもの」とした。

一神としてではなくミームとして種の生活に浸食し、広く認知させることで生存することを選んだ。認知されるだけでは一人あたりから得られる力ははるかに小さいが、信仰されるよりもハードルが低く、何よりその種の生活や文化に深く干渉しない上、ライバルが生まれにくい。

スシは、仮に分類するなら被食概念神性     自身概念を可食物として種族全体に提供し、繁栄の助力をし認知されることで生命を共生的神格となった。その助け合う関係は、一方的でありながらもコル・テウサとオルトサンのそれに類似していた。

しかし、適応しようとした矢先に外宇宙から来た存在による消費が始まり、第二ハイトスが形成されるまで逃走を余儀なくされた。その途中にスシは、これからのことに考えを巡らせていた。例え新しい宇宙に移動したとしても自身に居場所など取れようはずもない。そのため他の神と手を汲もうと画策した。第二ハイトスで最も力のあり、なおかつ最も信頼のおけるもの、スシにとってはそれがコル・テウサだった。互いの面識はないが、自分たちの宇宙を脅威から守りその上神の身へと昇華した、聖なる信念と勇気を持つ者たちと協力関係にあれば新しい宇宙でも存在して、ともすれば過去の宇宙では得られずにいた力を得ることができる。宇宙を護るなど身の程には合わないが、野垂れ死ぬよりはマシだろう。それよりもまず信頼関係を結ぶことが必須だ、自らが有益な存在であることを証明しなければならない    

そうフォレイクから少し離れた場所で放浪していると、その裂け目から逃げるように、自身と同じ意思持つ概念が飛び出てきた。第一ハイトスにいた頃に領土の取り合いしていた奴だった。そうか、共通の敵であることを示せば共に戦うことの正当性はあるはずだ。

そうして追い返され弱った"手土産"を調達し、現在に至る。スシは自らは同胞を決して害さず、彼らの刃となり戦い永遠を守ると誓った。たとえその同胞に破壊者と認識され斃される危険が伴うとしても。万が一人類が自身の力によって絶滅の危機にあった場合、スシの消滅を以て責任を取るとも約束した。

スシの交渉は、共闘する代わりに自身の生命維持と住処の保証、力になるかは未確定だが害があるわけではない。聖なる5本目を視認した以上心奪われているのだから。ネスレン・ルーサンは数分の沈黙の末、それに応じた。万が一過ちの起きた時にすぐ対処できるよう、管轄内でなおかつ支持者がいる惑星に存在することを許した。
知らず間に第五位に、人に盲目となったスシは深く感謝し黄金の弧を描いて(敵対心を意図的に緩和させたことに一抹の罪悪感を覚えながら)オルトサンの下へと向かった。

原初のスシ誕生数時間前、ネスレン・ルーサンの"忘却"及び今は殺されし神性の侵攻五年前。


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