SCP-XXXX-JP 松待つ夜鳴き鳥

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Safe Neutralized

特別収容プロトコル: オットリーノ・レスピーギもしくは「ローマの松」の歴史に関する研究は全て財団によって監視されます。「ローマの松」の初版の楽譜は全てサイト-8146の文書保管室に保存されており、閲覧は自由です。

説明: SCP-XXXX-JPは、オットリーノ・レスピーギ作曲の交響詩「ローマの松」1の初版の第3部「ジャニコロの松」において、通常の演奏を実施した場合に発生する異常な現象の総称です。██小節目にて「夜鳴きナイチンゲールの鳴き声の録音の再生」を実施した時、室内の不定な場所からSCP-XXXX-JP-1が出現します。この現象を撮影する試みは、後述の異常性によって全て失敗しています。

SCP-XXXX-JP-1はサヨナキドリ(Luscinia megarhynchos)2と同一の外見をしています。SCP-XXXX-JP-1は出現した後、指揮台の前に着地し、本来再生される音源の代わりに通常のサヨナキドリの鳴き声を発します。演奏者・指揮者を含む鳴き声を聞いた人間(以下、対象)は、何らかの活動をしていた場合はそれを停止し、SCP-XXXX-JP-1の鳴き声を静聴します。この際の物理的な干渉によるSCP-XXXX-JP-1の鳴き声の遮断の試みは全て失敗しています。この他、「夜鳴きナイチンゲールの鳴き声」の音源装置、SCP-XXXX-JP-1を認識可能な範囲に存在する録音機器・撮影機器に致命的な破損が発生することから、この鳴き声には音声そのものでなく、音声により発生する振動に異常性があると考えられます。

特筆すべき点として、対象はSCP-XXXX-JP自体に注意を払わず、また事前に異常性の説明を受けていたとしても、SCP-XXXX-JPの対処を行いません。また、その後のインタビューにおいても対象はSCP-XXXX-JPに無関心であるように振る舞います。記憶補強薬の摂取によるSCP-XXXX-JPの観測・記憶の保持は可能ですが、SCP-XXXX-JP-1の鳴き声を認識した際に肉体的な脱力感を訴え、これによってSCP-XXXX-JP中の発声、SCP-XXXX-JP-1の捕獲・妨害は失敗しています。

SCP-XXXX-JP-1は鳴く行為を終えた後、その演奏に対して情動的な反応を見せます。例えば、奏者がミスをしていた場合はその奏者を嘴で突く、通常の演奏に比べてテンポが大きく変更されていた場合はその変更の度合いに比例させて行動する速度を変える、などの反応を示します。また、多くの奏者の自己評価が高かった演奏では、奏者の上を旋回する・奏者の頭上から頭上へ飛び回るなどの通常と異なる反応を見せることから、SCP-XXXX-JP-1には知性が存在し、SCP-XXXX-JPを発生させた演奏を評価して行動を選択しているものと推測されます。この反応の間SCP-XXXX-JP-1は鳴き声を発しませんが、対象は上述の状態を保ちます。

SCP-XXXX-JP-1は上述の行動を終えた後、消失します。その後対象は通常の状態に戻ったかのようにふるまい、演奏は中断されていた箇所から再開されます。

発見記録-XXXX-JP
SCP-XXXX-JPは「ローマの松」の初演が1924/12/14にローマで行われて以来、その異常性によって財団が観測不可能なまま発生していましたが、19██年に記憶補強薬の量産が開始されたとともに、それを摂取したエージェントが1968/2/15の██████交響楽団定期演奏会を訪問した際に発見されました。その異常性から既に多くの人がSCP-XXXX-JPに遭遇していましたが、当時の財団はその想起の困難さを鑑みて、広範に渡る記憶処理の案を否決しました。1968/3/21をもって、レスピーギ研究家、また「ローマの松」を指揮・演奏した経験のある人物への記憶処理が完了しました。
「ローマの松」の真の原本、またコピーの楽譜は全て差し替えられ、サイト-61内に収容されました。現在は██████の部分を█小節改変し、SCP-XXXX-JPが発生しないように改変されたものが販売・配布されています。

補遺: 2013年4月、サイト-61の老朽化による建て替えに伴って、SCP-XXXX-JPの管轄がサイト-8146に変更されました。以下はその際に、サイト-8146の多目的ホールで実施されたSCP-XXXX-JPの実験記録です。

実験記録XXXX-JP-15

場所: サイト-8146の第二多目的ホール

実施方法: 30人のDクラス職員で構成された小編成の楽団が、一部のパートを省略して「ローマの松」を演奏する。

結果: SCP-XXXX-JPは発生せず、指揮台の上に非異常のサヨナキドリの死体が出現。

分析:

水祭博士の付記

SCP-XXXX-JPの実験が50年以上も行われていなかったことについて、サイト-██の元SCP-XXXX-JP担当者にヒアリングを行おうとしていましたが、既に退職しているか死亡しているかで連絡がつかなくなっていました。音響学の部門の方にも連絡しましたが、このオブジェクトについて実験は行なっていなかったということです。この結末に私たちの研究室は非常に憤慨しています。継続的な実験を行なっていればSCP-XXXX-JPの破壊は防げたのです。

確かに確保・収容・保護は財団の使命ですが、我々は・・・それを為したと思い込んで、オブジェクトを破壊に追いやってしまう危険性と常に隣り合わせなのです。現在も継続的な実験が行われていないまま放置されている低脅威度の現象系オブジェクトがあります。我々の活動において、確保・収容・保護の定義を見直す必要があるでしょう。

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  1. portal:4741073 (15 May 2021 08:23)
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