お見合いTale「お仕事ビデオを撮りましょう」

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「はあ?お仕事ビデオ?」
「そう。福路くんにお仕事ビデオを撮ってもらいたいんだ。」

サイト管理官、絵鳩羽織さんに呼び出され、何事かと駆け付けたらこんなことを言われるのだ。驚かない人はいないだろう。なに、お仕事ビデオ?

「お仕事ビデオとは、いったい?」
「名前の通りさ。職員が仕事をしているところを撮ってもらいたいわけだ。」
「なるほど。意味は分かりましたのだ。ただ用途が分からないのですが。」
「新人職員のためだよ。新人職員へのオリエンテーションが毎年行われてるのは知ってるだろう?」
「もちろん知っていますのだ。私も受けたことがあるし、何回か職員として出たことがありますので。」
通常業務の説明や各サイトの施設案内などを行うまさにチュートリアル。大事な通過点の一つだ。そこに使うということは……

「言葉で説明するよりも実際の動きを見てもらった方が分かりやすいだろう?だから仕事の風景を撮って投影しようと思ってるんだよ。」
「ふむ。用途も分かりましたのだ。しかし、それなら普通に業務しているところを実際に見るようにすればいいのでは?」
「それだと仕事の邪魔になってしまうだろう。緊急時の対応の時にも。それに……。」
「それに?」
「こういうお仕事ビデオって、学生の時の部活動紹介とかそういう昔を思い出せて楽しそうじゃないか!」

これ以上ないほど楽しそうな表情で腕組みをし胸を張る。……この人はそういう人だ。楽しければなんでも実践してみようとする。悪ふざけを真剣にしようとし、それをちゃんと実行して成果を出しているから質が悪い。我の所属するこのサイト‐8129に異常性持ち職員が多いのも大体この人が引き抜きをしまくるからだ。そう考えたら仕事に就けていることに感謝すべきなのだが、今回だけは文句を言わせてもらおう。

「楽しそうなのは分かったのだが、なぜ俺なのです。他にも適している職員は沢山いるだろうに。」
「え。だって君暇でしょ。」

思いっきり真っすぐな目で結構ひどいことを言われてしまった。この人は歯に何も着せていないし言葉を何にも包んでいない。人にものを頼むときはもっと適した言い方があると思うのだが。私だって一応捜索部隊長という肩書を背負っている。オブジェクトの捜索に追われたり、意外に書類業務も多いのである。それを暇という一言で済ませてしまうなんて!

「……まあ、今日はたまたま、たまたま仕事が無くフリーの日ですがね。それにしても言い方というものが……。」
「でも福路くんは職員のみんなから好意的な印象を得ているし、変に硬くならず自然体で撮れそうな感じがしたからこそ頼んでいるんだよ。それでも駄目かい?」
「……まあ、そこまで言われては仕方がない。やってやろうではないですか!」

しまった。ちょっと褒められて嬉しかっただけでこの依頼を受けてしまった。本当なら今から自室で最近取り寄せた本を開封しじっくり読もうと思っていたのに……しかし、やる気がないというわけでもない。わっちも楽しそうだとは思う。カメラ越しに財団の不可思議な日常を録画する。なんだか大仕事のような気もしてきた。

斯くして、僕は監督生活の第一歩を踏み出したのだった。


絵鳩さんから受け取ったごついカメラを持ちながら廊下を歩き考える。最初はどこに向かおうか。

「うーむ、やっぱり最初は研究業務が基本だからな。とりあえず国都さんのところに向かおうか。」

国都七星博士。日ごろからよく交流をして、いろいろとお世話になっている職員の1人である。業務に対しては非常に優秀な成績を残しているが、普段は極度の怖がりであるという不思議な人だ。彼女ならきっとちゃんとした業務の様子が撮れるだろう。早速私は彼女の研究室へ足を速めた。

「あれ、福路さん!そんな大きなカメラ持ってどうしたんです?どこか探索にでも行くんですか?」

綺麗な机上でパソコンに何かを打ち込んでいる手を止めてこちらに対応してくれたところを見ると、そこまで忙しくないようだ。多忙な時はわいが入ってきたことも気づかないほど熱中し、机の上にストローを差しこんだ栄養ドリンクが大量に乱立しているから。

「いや、実は頼みごとがあるのだ。」

簡単に要求を説明する。

「なるほど。そういう事ならお安い御用です……と言いましたが、研究業務って結構地味ですよね。絵面が心配ですね……。」
「いや、普通の業務でいいのだ。別に絵面の良さとか気にしないでいいのだ。」

やれやれとカメラを起動していると、とんとんと肩を叩かれた。はて、と振り向くと誰もいない。さっき開けた扉しかない。何かの気のせいかと前を向きなおす。

「これは福路捜索部隊長。どうもこんにちは。」

目の前に水槽が現れた。先ほどまで何もいなかった場所に突如現れた。それはホラー映画の怪異の登場方法と全く同じで、私はしっかりと驚いた。

「うわあ!な、なんなのだ!!」
「隈取さん!たまには普通に入室してください!」

国都さんの怒声から時間差で理解した。隈取千尋博士。頭部が水槽に差し変わっているいたずら好きな人だ。まんまと策略に乗っかってしまった。しかし、隈取博士はサイト‐8129勤務ではないはずだ。一体何故ここに来たのだろう?

「ちょっと暇ができたのでね。それにしても聞きましたよ。お仕事ビデオを撮るとかなんとか。まったく、先月行われたお見合いパーティといい、最近の催しは少々趣向が変わっていますねえ。」

確かに先月行われたお見合いパーティも奇妙だった。まさか財団内であんなにきらきらとした催しが行われるとは。おかげで隈取博士のように他サイトの職員と仲良くなれたし、いいこともたくさんあったなあ……そういえば。

「国都さん、確か隈取博士とよく話していたのだ。あれからどうなったのだ?」
「は、はぃ?」

7回くらい裏返った声が返ってくる。座っていた椅子をぎいっと軋ませながら立ち上がりこちらに近づいてくる。

「な、な、何を言っているのです。た、確かに話してましたが、別にどうもこうもないですよ!」
「あれ?そうなんですか?僕は仲良くなっていると思っていたのですが……。」

隈取博士がわずかに顔を俯けて呟く。水槽の水がちゃぷんと寂しそうな水音を響かせた。

「い、いえ、その別に嫌いとは言ってないじゃないですか?むしろ私は好きですし仲良くしたいし、迷惑じゃないんですよ?」
「あ、あの、さらっと好きと言われると照れるのですが……。」
「え、あ、その……。」

隈取博士がぽり、と水槽の表面を指で掻く。表情が分からなくても、その仕草で本当に照れているのだろうという事が良く分かった。それと相対して国都さんの顔は太陽のように赤くなり、こめかみに微かに汗が垂れている。

「ふ、福路さん!さあ、さっさと仕事の様子を撮ってください!そして隈取さんと一緒に早く出っててください!忙しいんですから!あー忙し……うわぁ!」

机の上に載っていた書類の束を崩し散らばせ、さらに自身の足に躓いてこけるという大ファインプレーをかましてしまった。隈取博士がしゃがんで耳元まで近づいてくる。

「あの……僕国都さんにどう思われてるんでしょう……?あそこまで焦られるとは思ってなかったのですが、もしかして嫌われて……。」
「それだけはないのだ。安心していいのだ。」

と、ここである考えが浮かんだ。先ほども言ったお見合いパーティで会った職員たち。様々な職種の人たちばかりだった。そこでだ。この人たちのところを回れば必然的にいろんな仕事場の映像が撮影できるんじゃないのか?

「……ただし、ここみたいなことにならなければ、だけど。」

まあ思い立ったが吉日。早速どこかに行ってみようか。

私は国都博士の弁解の声と隈取博士の困惑する声に蓋をするように扉を閉め、サイトの出口へと足を踏み出した。


「これはこれは福路さん。どうもこんにちは。どこかお怪我でも……?」

ハル薬剤師が心配そうにこちらを覗いてくる。まあ、薬品管理室にくる人物なんて怪我人か通院している人物かのどちらかだし、正しい反応だろう。

「いやいや、そうではないのだ。実は、仕事をしているところを撮影させてもらいたくて……」

とここまでの経緯を軽く説明する。

「なるほど。そういう事なら是非協力させてもらいますが、その、実際に仕事をしているところを映すというのは難しいかと……」

聞けば今週はあまり外部調査や実験が少なく、怪我人が少ないそう。

ころころポリゴン研究員群が


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