水槽越しの恋

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国都七星は困惑していた。今自分がお見合い会場にいるという状況に。

いや、参加申し込みをしたのは自分だし、存在ももちろん知っていたが、まさか本当に財団内でお見合いという華々しいイベントが開催されるとは思わなかったのだ。会場は思いのほかたくさんの職員が犇めいており、同じサイト内で働いている職員もちらちら見受けられる。みんなが思い思いに会話をしたりしている中、私は壁際でそれをずっと眺めていた。元来私は知らない人と話すのが怖いのである。ではなぜお見合いなどという苦手なものの塊に参加したかというと、実に単純。「何か変われるかもしれない」という甘い希望だ。しかし現実は全く甘くなかった。

「やはりハードルが高かったですね……」

はあ、とため息をついていると、ちょいちょい、と肩をつつかれた。つつかれただけなのだ。それなのに。

「うわあああ!!!」

心臓は跳ね上がり体に衝撃が伝わり、つついてきた人の方へ飛びついて抱き着いてしまう。……これが私が知らない人と話すのが苦手な理由である。極度の怖がりなのだ。何でもない、ただの呼び止めにもびっくりしてしまい、人に抱き着くことで安静を保とうとする。そんなことを初対面の人にしてしまったら……そう思うとなかなか話しかけることができなくなってしまったのだ。今日はせめて静かに静かに過ごして乗り切ろうと思ったのに……やってしまった。きっと引いてるだろうな、と心臓のどきどきを抑えながら考える。

「あの……ちょっと声をかけようとしただけなのですが、脅かしてしまいましたか。すみません……。」

頭の上から申し訳なさそうな声が聞こえてきた。

「い、いえ!こちら勝手に怖がっただけで──」

後に続く言葉は喉の奥で堰止まった。顔をあげると、そこに水槽が現れたからである。正方形のガラスに囲まれ、中には水が溜まっている、完全な水槽だ。そこにあるはずの頭や目、口などがどこにもなかった。せっかく平静に戻りかけていた心臓がまた跳ね上がる。

「えっ、す、水槽!え、ええっと、どういうこと!?」

初対面の人に対してしてはならない行動ナンバーワンを見事獲得したところではっとする。異常性持ち職員など、私の所属しているサイトにもたくさんいるのに、いまだにこんなに失礼な反応をしてしまう。

「……申し訳ないです。こんな見た目していたらそりゃ驚きますよね……。」
「い、いえ、すみません!あの、急に出てきたから驚いただけで……。」

だめだ。口下手すぎてフォローがうまいことできない。こういう時は話題転換だ。話題……何か……そうだ!

「あの、私、国都七星といいます。あなたの名前は、何というのですか?」

名前を聞けばきっとなんとかなる。何かの本に書いてた、ような気がする!

「ああ、これは遅れました。僕は隈取千尋といいます。初めまして。」
「あ、ああ、初めまして!」

……これ以上何も広がらなかった。そうだよね。名前からどう話を広げればいいかわかんないよね。

「あ、あの!急に抱き着いてしまってすみません!私すっごい怖がりで、すぐにああいうことしちゃって……。」
「いやいや、急に声をかけてしまった僕が悪かったですし、全然気にしてませんよ!むしろ、嬉しかったです。」

嬉しかった?この人、隈取さんには初対面の人に抱き着かれる趣味があるのだろうか。普通そんなことされたらドン引くか、ムッとするか、びっくりされたことに泣くか。このどれかに行きつきそうだ。実際、私がやってしまった時の反応は大体そんな感じだ。でも、そう考えたら確かに隈取さんは私とちゃんと話してくれる。

「いや、僕ってこんな見た目だから、皆さん多少怖がってしまってるみたいなのですよ。せっかくお見合いに来たのに、みんな僕を避けているようで、寂しかったんです。だから、なんでしょう。理由はともかく、久しぶりに向こうからこちらに近づいてくれて、嬉しかったんです。」

指で水槽のガラスをぽりぽりと掻く。そのしぐさからは気を使って私に弁明している雰囲気は見られない。純粋にそう思っていることがよく伝わってきた。なんだか、隈取さんは私と似ているような気がした。

「……私は、隈取さんと逆ですね。この怖がりな性格のせいで、人に不信感を抱かれたくない。変な目で見られたくない。そんなことばかり考えて、なかなか話しかける勇気が出なくて……だから、隈取さんが話しかけてくれて、嬉しかったです。ありがとうございました。」
「そ、そう、ですか?それなら、良かったです……。」

隈取さんがふいっと顔をそむける。ちゃぷん、と水が揺れる。その照れたようなしぐさを見た瞬間、心に何かが跳ねた。隈取さんと同じような水音を出しながら、その何かは心の奥へと沈んでいく。深く深く潜る度に、鼓動がゆっくりと、しかし大きくなっていく。これは、この感情は……。

(いやいや、ちょっと話しかけてくれただけだ!それだけでこんな……。)

ちょっと惹かれてるなんて。ちょろすぎる。しかし、この鼓動だけは正しい真実だ。とくん、とくん、と揺れる。

「……あの、国都さん。……国都さん?」

ひらひらと目の前に手が現れる。

「わっ、っと……す、すみません!ちょっとぼーっとしてしまいました……。な、なんですか?」
「いえ、国都さんがよろしかったら、お見合いの間、お話してくれないかな、と思ったのですが……どうですか?」

先ほどまで目の前でひらひらしていた手のひらが差し出される。願ったり叶ったりというやつだ。この感情が何なのかを探るためにも、そして純粋に。私は隈取さんとお話してみたい。

「ええ、是非!」

差し出された手を握る。その瞬間。隈取さんの袖の隙間から何かがしゅっと飛び出してきた。黒くて小さい何かだったが、それの正体を知る前に、私は叫んでまた隈取さん抱き着いてしまっていた。

「あ!しまった、いたずら用のゴキブリのおもちゃが……す、すみません!驚かせるつもりは……あれ、あとどこに入れてたっけ……。」

隈取さんがあらゆるポケットに手を突っ込み、ぽいぽいぽいぽいといたずらに使う?ためのおもちゃを放り出す。どこにそんなに入れてたの?そもそもいたずらに使うって?疑問がぽんぽんと生まれてくる。

「さ、さあ!これでもう大丈夫です!びっくりすることはない!……と、思います!」

ばっと手を広げてこちらに向いてくる。その必死さに思わず笑みがこぼれる。隈取さんのことはまだあまり知らない。それでも、きっと。悪い人じゃないだろう。私は希望を9割、そしてまたいたずらをされるのではないか、という不安を1割抱えて、隈取さんとのお話へ足を踏み出した。


「カキフライ定食1つお願いします。」

食券を差し出しトレーをかちゃ、と取って待つ。そう時間を空けずに「カキフライ定食の方ー!」と声をかけられる。急いで受け取り口に行き、トレーに乗せてもらう。揚げたてのカキフライの表面にぷちぷちと油の泡が弾けては消える。添えられたキャベツはカキフライと対称的に瑞々しい。いそいそと定位置の席を捜しに行く。無事に空いてるのを確認して座る。そして、隈取さんのことを待つ。

あのお見合いから数週間が経過した。あの日のお話から色々なことを知った。隈取博士が私の所属するサイト‐8129に来たことがあること。最近は実験などで特に来る頻度が高いこと。そして、私の行きつけの食堂によく昼食を食べに来ていることを。何回も食堂に行っていたのに気づかなかったのは、きっと食事を早く早く終わらせようと周りを見ていなかったからなのだろう。そして、お見合いが終わる直前に、隈取さんに言われた。

「良かったら、昼食、一緒に食べませんか……?いえ、時間があったらでいいんですけど!せっかくだし、もう少し話してみたいな、と思いまして!」

隈取さんは優しい。きっと、一人でご飯を食べる私を憐れんで提案してくれたのだろう。もちろんすぐに許諾して、あれから一緒にご飯を食べるのが習慣になった。最初に話した頃よりは多少会話の堅苦しさは和らぎ、世間話もできるようになった。そして何より、ご飯が楽しくなった。今日は何の話をしようか、ただ考えながら待つ。それがこんなに楽しいとは……。

しかし、今日はなかなか隈取さんが現れない。いつもは私より先にいることが多いのに……目の前のカキフライのぷちぷちという音が小さくなっていく。冷めないうちに先に食べようか。そう思い割りばしに手をかけた。その瞬間。

「ばあ。あれ、またカキフライですか?」

突然目の前にさかさまの水槽が現れた。ぬう、と妖怪みたいに現れた。思わず声を出しそうになるが、さかさまになったのに水槽から水が溢れないところから、隈取さんだという事を察してぎりぎり飲み込む。

「くっ、隈取さん!こういう公共の場所でいたずらはやめてください!」

ひそひそと抗議の声をあげる。時刻は午前11時半。食堂には結構な職員が集まっていた。


プロット

1部
とりあえず始まりはお見合い会場から。そこで隈取さんと少しお話する。いたずらもされる。で、そこでお互いに親近感というか、仲良くなれそうな予感を感じる。秘密にしてお見合いは終わる。

2部
ご飯を食べていると、頭上からぬう、と隈取さんが現れる。(水はこぼれないらしいからいけるはず……?)だいぶここで時間が経ったことを示唆して、仲良し雰囲気多め。そして一緒にご飯を食べる。国都さんはカキフライ定食(私の好物)を食べて、隈取さんはコーンフレークとヨーグルトを和えたものを食べる。ここで栄養の心配の前にどうやって食べるのかを見る。(どうやって食べるんだろ……ヘッカでは口元に接触したら消える感じ)その後、栄養の心配をし、お弁当でも作ろうか、と言い、お互いに照れる。かわいい。付き合え。

3部
廊下を歩いていると隈取さんが後ろからおどかすが、あまり驚かない。お互いに不思議がる。きっと、耐性が付いた?隈取さんじゃなかったらこわい。隈取さんなら安心できる。そういう結論に至る。またまた照れてると、隈取さんがご飯の約束を取り付ける。そうして二人は分かれる。そこで実験内容を確認する。元職員のカウンセリング。隈取さんもひょっとしたら……場合によっては死んじゃうかも……。そう思うと心配になる……。せつないねえ

4部
視点は隈取さんに移転する。沖波人事部長に国都博士の死を告げられる。愕然。混乱。沖波さんに案内されて死体安置所へ。国都さんの顔を触る。
答えない死体に告白。立ち去ろうとすると国都さんが「ばあ」と後ろからおどかす。どうやらいたずらだったよう。申し訳なさそうな雰囲気が伝わってくる。そこで隈取さんが国都さんに抱き着く。
「いつも国都さんがしてくるんです。だから、僕もするんです。いいでしょう。」
あああ~~~~~~~良き
そして二人はハッピーエンドで幸せでラブラブで最高~~~~~~
~終わり~

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