担当職員: D-13612
監査職員: 真幌博士
所持品: 通信機器、小型音声記録装置、回収物収納鞄
<再生開始>
D-13612: っと、ついた。ここからどうすればいい?
真幌博士: とりあえず、周りに見えるものをこちらに伝えてください。
D-13612: えーっと……真っ白な建物がいっぱい建ってる。崩れてるやつもあるな。床も真っ白だ。材質は……コンクリート、よりは少し柔らかい……良く分からない。あと、空が真っ黒だ。星は見えない。これぐらいかな。
真幌博士: 分かりました。では、とりあえず建物内の捜索を行いましょう。
D-13612: 了解。……お、ここ扉が壊れてるな。それじゃ、おじゃまします……中はきれいだ。机が1つ、棚があるが、中には何もない。……あ、机の引き出しになにかある。……本だな。ぼろぼろだ。
真幌博士: 後で解析を行うため、回収しておいてください。
D-13612: はいよ。……あ、屋上に上れるはしごを見つけた。上るぞ。……おお、一面見渡せる。基本的に同じような建物ばかりだが、たまに植物が繁殖してるところがあるな。あとは、特に……あ、すごく大きな建物が向こうにある。どうする?
真幌博士: どのぐらいで行けそうですか?
D-13612: うーん、ざっとだけど10分くらいか?結構近いかも。
真幌博士: ふむ……では、本日はその建物内の捜索を目標にしましょう。ということで、その場所へと向かってください。
D-13612: はいよ。
真幌博士: 向かう最中に気が付いたことや、何か見つけたらすぐに報告してください。
D-13612: へいへい……。
[5分32秒会話無し]
D-13612: なあ、気が付いたんだが。
真幌博士: 何ですか?
D-13612: ここ、さっきから気配がないんだ。建物とか、文明っぽいものはあるのに、使う者が1人もいない。抜け殻みたいだ。
真幌博士: なるほど、生命体が存在しないと……しかし、隠れてあなたを狙っている可能性も否めません。十分に注意してください。
D-13612: ……注意してどうにかなるもんかねえ。
[3分13秒会話無し]
D-13612: さてと、ついたぜ!近くで見るとさらにでけえなあ。あ、入口近くになんか書いてる。……「市役所」だってさ。
真幌博士: 待ってください。字が読めるのですか?日本語で書かれているのですか?
D-13612: あ、言われてみりゃ、日本語ではないな。でも、読めるんだよ。
真幌博士: そういえば、先ほどの建物の探索時も本のタイトルが読めていましたね。
D-13612: そうだなあ。……うーん。字はやっぱりひらがなや漢字とは全く似てないし、アルファベットでもない。でも読める。意味が分かる。どういうことだこりゃ。
SCP-XXX-JP-2: それは、共有語ですよ。[突如D-13612ではない、若い男性の声が記録される。便宜上この声をSCP-XXX-JP‐2に指定する。]
D-13612: だ、誰だ?!
SCP-XXX-JP-2: と、これは失礼を。急に声をかけてしまいすみません。しかし、困っていたようなので、手助けをと思ったのです。
真幌博士: D-13612、誰かそこにいるのですか?
D-13612: あ、ああ。小さい、10歳くらいか?そのぐらいの男の子だ。話しかけてきた。
真幌博士: とりあえず、落ち着いて、冷静に対応を行ってください。
D-13612: 了解。……なあ、えっと、共有語、だっけ?それって、なんなんだ?
SCP-XXX-JP-2: 共有語とは、いかなる種でも共通して意味を認識することができる、画期的な言語……らしいです。
D-13612: らしい?曖昧に言うな。ひょっとして君はここの住人ではないのか?
SCP-XXX-JP-2: いえ、私はずっとここにいます。かれこれ8年は。
D-13612: は、8年。てことは、今何歳なんだ?
SCP-XXX-JP-2: ……分かりません。目覚めた時にはすでにこの体で、すでに私は生きていたので。
D-13612: ふむ……てことは8歳なのか?……なんかすまんな、いろいろと聞いてしまって。
SCP-XXX-JP-2: いえ、その疑問は生まれてきて当然のものです。あなたが謝る必要はないのです。
D-13612: えっと、それじゃあ。ここがどこかは、分かるか?
SCP-XXX-JP-2: そのぐらいはお答えできますとも。ここは、小惑星T-105という名前の、小さな星です。
D-13612: ほう。ここは、星の上なのか。
SCP-XXX-JP-2: ええ。この星について書かれた資料を発見しましたので、確かだと。
D-13612: 資料?というか、ここはいったいなんなんだ?どうしてこんなに何もかもが崩れている?
SCP-XXX-JP-2: ……快く答えたいのはやまやまなのですが、まず、あなたのことを教えてくれませんか?あなたはどうやってここに?
D-13612: んえーっと……先生、これ正直に話していいか?
真幌博士: ……構いません。新たな情報が得られる可能性があるので。
D-13612: 了解。……えっと、ここの近くに、スズラン、あー、スズランで通じんのか……?えっと、白い花が咲いてるのを知っているか?
SCP-XXX-JP-2: ああ、あの花ですか。なるほど。そこからやってきたと。
D-13612: ……話が早くて助かるよ。その通り。俺はあの花を使ってここにやってきて、あたりを探してたところなのさ。
SCP-XXX-JP-2: 珍しい方ですね。いつもあそこから来る人はすぐに帰ってしまうのに。
D-13612: いや、そこはなんだ、俺好奇心旺盛だからさ。ついつい探しちゃったんだよ。
SCP-XXX-JP-2: そうですか、成程。
D-13612: すまないな。急に現れて。
SCP-XXX-JP-2: いえ、いえ。謝る必要はありません。私はむしろうれしいのです。こんなに長く話すのは、目覚めてから、初めてだったので。
D-13612: 初めて?じゃあ、目覚めてからずっと1人だったのか?
SCP-XXX-JP-2: はい。私が目覚めてから、この星の住人を見かけたことは、ありません。
D-13612: そうか……辛くなかったのか?
SCP-XXX-JP-2: 辛い、ということはなかったです。幸い、植物の種や植物園が残っていたため、植物に囲まれることで、多少の心の隙は埋めることができましたので。
D-13612: ……そうか、それは……
真幌博士: D-13612、そろそろ帰還してください。この先の探索は、後日行うことにしましょう。
D-13612: お、おう、了解した。……あーっと、俺、そろそろ帰ることにするよ。
SCP-XXX-JP-2: ……そうですか。そうですね。あなたにはあなたの世界がありますからね。
D-13612: ……えっとな。1つ頼みがあるんだが、いいか?
SCP-XXX-JP-2: 頼み。何でしょう。
D-13612: また、ここにきてもいいか?気に入ってさ。ここ。
SCP-XXX-JP-2: そ、れは。もちろん。もちろん!いいですとも!いつでも、来てください。今度はこの星について、たくさん案内しますよ。
D-13612: そうかい。それはうれしいね。じゃあ、また。
SCP-XXX-JP-2: あの。
D-13612: ん?
SCP-XXX-JP-2: 約束ですよ。忘れないでくださいね。
D-13612: もちろんだとも。
<再生終了>
終了報告書: SCP-XXX-JP-2については、かなりD-13612に対し友好的であることから、今後の探索に秘匿的に協力してもらうよう、計画が立てられています。また、今回の探索により回収された物品の分析結果は下記に表示しています。
瓦礫の欠片: 材質はセメントや砂利といった通常のものとは別に、未知の成分が37%配合されており、解析が進められている。ゆっくりと接触した際には浅く沈むような感触だが急激な衝撃を受けると硬度が上昇するというダイラタンシー現象のような特性を持っている。
本: 表紙、背表紙が茶色くすすけており、字の書かれた跡は見えるが判読は不可能。中身は黒鉛のような筆記用具で古い童話のような物語が書かれていたが、ところどころに「モセル」や「クフォ」など意味の理解ができない単語が出てきた。
写真: 白い背景に男性らしき後姿が撮影されている。この人物が何者か、またどのようにこの写真が撮影されたのかは不明。上記の本の間に挟まっていた。裏面に「最愛の人」と書かれている。
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