Tale-JP - サッカーボールおじさん
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8月の暮れ、秋田県の山間部でのことです。

「パパ聞いてよ! 明日学校でねー!」
「あのね、2くみのおとこのこがー!」

転居が済み1週間。息子と娘が学校に通い始めて、2人は毎日のように小学校での出来事を話してくれるようになりました。最近は妻と2人、晩御飯を食べながら話を聞くのが日課です。

私の仕事は農機具の売り込みと買い取りで、家族と一緒に地方を転々としています。息子たちは明るい性格で  あるいは落ち込むまいと、それか外回りで疲れて帰ってくる私を気にしてくれているのか、いつも元気に転居先での出来事や土地の様子を教えてくれるんです。

この日も学校でもうすぐ始まる行事、川遊びのこと、学校の古い校舎、ヤンチャな友達のことを話してくれました。

そんな中、息子が思い出したように話し始めました。

「そういえばパパ、◯◯川の上の方の道って行ったことある?」

「ん? どこだって?」

◯◯川は隣の集落へ向かうバイパスの途中を流れる川で、私も外回りの途中にこの川にかかる橋を渡ったことがあります。聞くと、どうももう少し上流の話をしているらしく、地図アプリで確認すると近くにもう1本道があり、小さな橋がかかっているようでした。

息子が言うにはその橋のわきから川に下る道があると言います。ストリートビューで確認してみると、こちらの道や橋は細くずいぶんと荒れた様子で、たしかに、橋のわきには下り坂があります。辛うじてアスファルトで舗装されているのが草の合間に見えますが、地図にも載っていないような本当に細い道のようです。

「そこにね、サッカーボールおじさんが出るんだって」

なんでも、サッカーボールを持ったおじさんがそこに立っているのだそうです。毎日朝も夜も、坂道でボールをバウンドさせて遊びながら、そこを通りかかる人に声をかけ、一緒に遊ぼうと誘うんだとか。もしその誘いに乗ってしまうと◯◯川まで連れていかれ、行方不明になる。と。

学校の怪談・噂話ですね。あるいは……地域ごとに時々いる "名物不審者" とでもいうような人物か。個性的で有名になった変人の噂に尾ひれがついて、学校で怪人か何かのように語られていることはこれまでにも何度かありました。実際にそんな人がいてもいなくても面白がって拡散され、場合によっては世代を超えた定番の怖い話になるのです。

娘もサッカーボールおじさんの話を聞いたと言います。細部は違いますが、似たような風体でサッカーボールを持ったおじさんが、その橋の横にいると。

「お父さん、通りかかったら今度見てきてよ」

「ははは、そうだな。やっつけて来るか」

良い団らんの種です。

ただ少し  こういう不審人物の怖い話は学校の近くや通学路の話がほとんどなのに、徒歩や自転車で行くにはあまりにも遠い、民家も無くバスも通っていない場所にいるおじさんは不思議だな、とは思いました。



翌日の昼下がり。

数人の同僚・上司と昼食をとる折り、子供の話のついでにサッカーボールおじさんについて話しました。すると、何人かの同僚が自分の子供からも聞いた、自分は孫から聞いたと言うんです。

「俺ゃんだがわらしであった頃は今走ってらバイパスねくて、車でだばそっつの旧道通ってあったども、そんた話ゃねがったな。今だば通ることねぇどごだし、なんだば木で埋まってらってねが?」

1番年上の上司は言います。

「おめ今度あっち行ったら帰りに見でこばやってね」

上司はいたずらっぽく笑っていました。



それから1週間ほど経ったある日。

16時を回った頃、隣町からの帰り道。社用車に乗って◯◯川の手前の交差点で信号待ちをしているとき、ふとサッカーボールおじさんの話を思い出しました。あとは会社に戻って片づけをして帰るだけで、右折してちょっと回っていくだけだったのもあり、日が完全に暮れる前に様子を見て帰ることにしました。

少し山道を登り、◯◯川があるあたりまで道を下ります。路肩はすぐ雑木林で、センターライン寄りに走らなければいけないほど雑草や気の枝葉が道路に大きくはみ出していました。そのセンターラインもほとんど掠れて消えていて、ゆっくり走っていても路面にところどころあるアスファルトのくぼみを避けきれず、社用車がガタガタと音を立てます。

そんな音の中に、何か異音がした気がしました。

窓を少し開けると、じっとりと湿った夏の湿気が入ってきて、同時になにか高い音が聞こえます。エアコンを消して窓を全開にすると、ざわざわと抜ける風の中、前方から聞こえるそれがよりハッキリとわかります。


ターン…… ターン……。

それは固い地面の上を何かが跳ねる音です。

驚きました。本当に "いる" 。


ターン…… ターン……。

ブレーキを強めに踏み込み、ゆっくりと近づきます。

橋はもう目の前に来ました。


ターン…… ターン…… ターン……。

茂みの陰、期待半分不安半分で



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  1. portal:4601815 (02 Aug 2019 03:33)
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