SCP下書き「鬼懸り」

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アイテム番号: SCP-2694-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2694-JPは私有地として閉鎖されます。SCP-2694-JP周辺には安全上の理由を名目に周囲に高さ2mのフェンスを設置し、民間人の侵入を防いでください。SCP-2694-JP内での実験を行う際にはクリアランスレベル3以上の実験責任者の許可を得てください。

収容下にある全てのSCP-2694-JP-1はサイト-8177の標準的人型生物収容棟に収容され症状に応じた対症療法が行われます。SCP-2694-JP-2の発生時期である7月から9月の間、SCP-2694-JP-2の出現リスクが高いSCP-2694-JP-1は北東方向に70m以上の広さを確保した専用収容セルへと移送されます。死亡したSCP-2694-JP-1は標準的な死体廃棄プロトコルに則って処理してください。

説明: SCP-2694-JPは岩手県九戸郡久慈市██町██第█地割に存在する約4700 ㎡の領域です。SCP-2694-JPの大部分は神社の跡地であり、内部には木製の鳥居及び礎石が存在します。神社本殿は1945年に火災によって焼損し、安全上の問題から地元住民によって完全に撤去されました。SCP-2694-JP内で鬼ごっこ、かくれんぼ等の「鬼」と呼称される役割が存在する遊戯を行った際1、鬼の役割を担った対象(SCP-2694-JP-1に指定)は特異な精神障害を発症します。SCP-2694-JP-1は主に解離性障害に類似した現実喪失感・離人感、間欠性爆発性障害的な衝動的な暴力性を示します。これらの精神障害は緩やかに進行し、著しい自我の喪失、攻撃性・暴力性の増大が観察されます。

SCP-2694-JP-1の大脳真皮質、脳幹にはレビー小体2の形成が認められます。SCP-2694-JP-1はレビー小体型認知症に類似した進行性の認知機能障害、振戦、幻視、睡眠障害、体性感覚失調等の症状を示し、症状の進行とともにレビー小体の増加が認められます。現在までこれらの症状の根治には至っていません。

SCP-2694-JP-2

SCP-2694-JP-2

これらの症状の発症から20年程度が経過したSCP-2694-JP-1は、7月後半から9月前半にかけて3の不定期なタイミングで突発的な意識障害に見舞われ昏睡します。昏睡直後、SCP-2697-JP-1の体表からSCP-2694-JP-2に指定される存在が出現します。SCP-2694-JP-2の出現と同時にSCP-2694-JP-1は脳幹を中心とした多発性脳出血、多臓器不全に見舞われ死亡します。SCP-2694-JP-2はおおよそ人型の体長2 m程度の存在です。外見上、SCP-2694-JP-2は高密度の黒色のガスが流動しながら人型を保持しているように観察されます。SCP-2694-JP-2は物質透過性を示し外部からの物理干渉を受け付けません。移動する際は地面を歩行することから、選択的に物質を透過している可能性が示唆されています。SCP-2694-JP-2は外部からの刺激に一切の反応を示さず、知性の有無は不明です。SCP-2694-JP-1から出現したSCP-2694-JP-2は、体を不規則に激しく動かしながら北東方向へと移動を開始します。SCP-2694-JP-2は進路を塞ぐ物体を透過しながら直進し続け、およそ40~50 m程度の距離を移動した後に瞬間的に消失します。消失の直前、SCP-2694-JP-2の周辺現実性が0.75~0.85 Hm程度にまで瞬間的に低下することが確認されていますが、消失後は速やかに回復します。

SCP-2694-JP-2が移動時に人間と接触、透過した場合、接触者は即座に昏睡状態に陥ります。その後接触者は数時間程度で意識を回復しますが、レビー小体型認知症に類似した進行性の認知機能障害を負います。この認知機能障害はSCP-2694-JP-1の症状との関連性が疑われていますが、接触者にそれ以上の異常な影響は現在まで確認されていません。

SCP-2694-JPは1990年7月27日に正式に収容されました。財団は1970年頃から、岩手県北部地域において多発していた特異な精神障害者の死亡時に出現する異常な存在の報告についての調査を行っていました。調査の過程でこれらの対象の大部分が岩手県九戸郡久慈市██町██、またはその周辺地域に居住していたことから当該地域での調査が開始されました。当初、SCP-2694-JP-1の認知機能障害及び精神障害により聴き取り調査が困難であったこと、条件を満たす遊戯が極めて一般的であるが故に生活歴の調査上で重要視されなかったこと、またSCP-2694-JP-1の経過が長期的かつ緩やかであった為に発症のタイミングを推定できなかった事などが原因で、当該地域での調査開始から18年に渡り原因を特定できていませんでした。1987年になり当該地域住民の観察、及び縦断的な生活調査によりSCP-2694-JP-1が共通の遊び場としてSCP-2694-JPを利用していたこと、SCP-2694-JPでの特定の遊戯が異常性発現のきっかけとなっている可能性が浮上しました。SCP-2694-JPは私有地として封鎖され、Dクラス職員を用いた長期的な検証試験が実施されました。試験に参加したDクラス職員への継続的な精密検査によって精神障害、神経変性の発症、進行が確認されたことでSCP-2694-JPの明確な異常性が判明し、正式な収容に至りました。

補遺1: 以下はSCP-2694-JP内での遊戯を通してSCP-2694-JP-1となる条件を検証するために行われた実験の結果です。なお、結果は遊戯に参加したDクラス職員の神経変性、及び精神症状を元に判定しています。

検証実験によりSCP-2694-JP-1となる明確な条件は、単に「鬼」という名称の役を遊戯内で担うことであると確認されました。役名を適当なものに置換することで異常性は回避可能であり、遊戯内容は異常性と直接関連しないと推測されています。

補遺2: SCP-2694-JP異常性検証実験においてカント計測器が複数回、周辺現実性が0.79~0.84 Hm程度にまで瞬間的に低下しその後速やかに回復する異常な現実性変動を記録しました。これらの現実性変動は実験に動員されたDクラス職員が遊戯に従事している際に記録され、特に鬼役に任命される際、または鬼役が交代する際に対象から40~50 m離れた地点でSCP-2694-JPの内外を問わずに発生していたことが確認されています。特筆すべき点として、これらの現実性変動は一貫して鬼役の対象を中心として北東方向で発生していたことが確認されています。

補遺3: 当該地域の調査により、SCP-2694-JPには1940年頃まで「渡朔どさく神社」とされる神社が存在していたことが判明しました。渡朔神社は修験道系の流れを汲む神社であったと推測され、住民の間ではドサクサマもしくはゴンゲンサマと呼称されていたとされており、詳細は不明であるものの何らかの鬼を祀っていたとの証言が多数得られました。 渡朔神社を知る地域住民から得られた口伝的伝承は、話者により細部は異なるものの、ほとんどの場合で「丑寅の方角からやってきて牛や村の人々を襲っていた黒鬼を山伏が調伏し、鬼を祀り神楽を舞えば鬼は満足して暴れることは無いと村民達に助言する」というものであり、大部分が修験道的伝承と陰陽道的解釈に基づいた鬼門観によって構成されています。また渡朔神社にまつわる複数の逸話には青森県弘前市の鬼神社の鬼神伝承、岩手県盛岡市三ツ石神社の羅刹伝説との部分的な類似性が認められるものもあり、渡朔神社と東北地方での鬼信仰との何らかの繋がりが示唆されています。一方、渡朔神社に関連する伝承上の鬼は一貫して「黒鬼」と表現されていることが特徴的であり、これは東北地方における他の鬼信仰との明確な相違点です。

鬼懸り

1910年頃。渡朔神社。鬼コ神楽。

証言、及び写真により渡朔神社では鬼コ神楽と呼称される神楽が踊られていたことが判明しています。当該地域と隣接する洋野町には山伏神楽の一つである八龍権現和座神楽が伝統的に継承されており、渡朔神社の山伏伝説と何らかの関連性があると考えられています。鬼コ神楽は旧暦7月15日~17日に行われる村内の例祭に際して、渡朔神社で行われた物とされています。現在では失伝しているため鬼コ神楽の詳細な内容は不明であるものの、先述の黒鬼に扮した神主が伝承を準えた神楽を踊っていたとの証言が得られています。渡朔神社の例祭は少なくとも1940年まで行われていたことが判明しており、太平洋戦争中は例祭を自粛し、神事のみを執り行っていたとされています。渡朔神社は1945年8月に火災に見舞われ全焼したことで地域住民によって撤去され、その後は空き地として放置されていました。

以下は渡朔神社の火災時の状況について唯一詳細な言及があった当該地域住民の金ヶ沢米助氏に対して行われたインタビューの逐語録からの抜粋です。なお可読性確保の観点から、金ヶ沢氏の発言には標準語訳を記載しています。

<前半省略>

インタビュアー: 1945年に渡朔神社で火災があったという話を聞きました。その時のことを教えてください。

対象: あーあー。んだんだ。別当様亡くなった時だな。あの時はおらぁ、かぁれだ神社の片付けさかだったったなぁ。みんなして片付けしたっだね。うん。
( 訳: あーあー。そうそう。神主様が亡くなった時だな。あの時は私は、壊れた神社の片付けに参加したなぁ。みんなで片付けした。うん。 )

インタビュアー: 火災の原因は結局なんだったのでしょうか。

対象: なんだったんだべなぁ。兄貴は蝋燭だべって言ってだったけど、普段から神社さいる訳じゃねがったはずだすきゃあなぁ。だいたいみんなして罰っこあだったんでねぇがって笑ってだけど。
( 訳: なんだったのかなぁ。兄貴は蝋燭じゃないかって言ってたけれど、普段から神社にいる訳じゃなかったはずだからな。だいたいみんなは罰が当たったんじゃないかと笑ってたけど。 )

インタビュアー: 罰ですか?何故でしょうか?

対象: いやぁ、あん時ほら、戦争だったべ?んで兵隊さんがどぉが頑張ってるのに祭りもなんもやってらんねぇべってよ、別当様ぁしばらくお祭りやんながったのよ。んだども、何年かは神社さわらすどぉ集めで神楽やったりもしてだったけど。いつの間にかやんなくなってだったな。んだすきゃあドサクサマがごんぼほったんでねぇがって。
( 訳: いや、あの時ほら、戦争だったでしょう?それで兵隊さん達が頑張ってるのに祭りも何もやってられないって、神主様はしばらくお祭りをやらなかったんだよ。でも、何年かは神社に子供達を集めて神楽をやったりもしてたけど。いつの間にかやらなくなってた。だからドサクサマが怒ったんじゃないかって。 )

インタビュアー: なるほど。それでその罰が下ったと皆さんは言っていたということですね。

対象: 本気して言っでだ訳じゃねぇすきゃあね。冗談よ冗談。まぁ、おらの考えだと別当様が火っこつけたんでねぇがなっても思うよ。
( 訳: 本気で言ってたわけじゃないからね。冗談だよ冗談。まぁ、私の考えだと神主様が火をつけたんじゃないかなって思う。 )

インタビュアー: それはつまり、神主が神社に放火したということですか?

対象: そうそうそう。別当様よぉ、元々こったりない人だったのよ。いっつもごんぼほって。気にぃらねことあればすぅぐぼっきれ持って追っかけて来たりよ。今思うと、なんかの病気だったんでねぇかなって。
( 訳: そうそうそう。神主様は、元々おかしい人だった。いつも怒っていて。気に入らないことがあればすぐに棒切れを持って追いかけて来たり。今思うと、何かの病気だったんじゃないかなって。 )

インタビュアー: なるほど。精神に問題があってそれで放火に及んだのではないか、ということですね。

対象: そうそうそう。別当様もゆぐねんだけど、その親父もじ様もゆぐねがったっておらの親父から聞いだったよ。みんな狂っちゃってて、そんでみんなしてコロンってへんでばぁるのよ。
( 訳: そうそうそう。神主様も良くないんだけど、その親父も爺様も良くなかったって私の親父から聞いた。みんな狂ってしまってて、それでみんなコロンと死んでしまう。 )

インタビュアー: ころんと死んでしまうというのはどういうことでしょう?

対象: 別当様も、親父もじ様も、みんなして大して歳っこもとってねぇのさへんでばったのよ。んまぁ別当様ぁ火事で死んだのだども。親父は鬼コ神楽で鬼コやるからだって言ってだった。
( 訳: 神主様も、親父も爺様も、みんな大して歳もとらないうちに死んでしまった。まぁ神主様は火事で死んだけれど。親父は鬼コ神楽で鬼をやるからだって言ってた。 )

インタビュアー: 短命なのと神楽はどのような関係があるのでしょうか?

対象: 鬼コやるって事は、鬼コ体さ降ろすことだって親父が言ってだった。鬼コの名前借りて、鬼コさなりきんのは悪いのを体さ入れんのと同じだってよ。んだすきゃあ、別当様も神楽衆も長生きできね。んまぁ、昔だがらね、そっただ迷信みたいなの信じてる人もいっぺぇいだったんだよ。
( 訳: 鬼をやるって事は、鬼を体に降ろすことだって親父が言ってた。鬼の名前を借りて、鬼になりきるのは悪いものを体に入れるのと同じだと。だから、神主様も神楽衆も長生き出来ない。まぁ、昔だからね。そういう迷信みたいなのを信じてる人もいっぱいいたんだよ。 )

<後半省略>


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