スズランの花、その後

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私が彼の背後に立つようになったのは、私が死んでからしばらくしてからのことです。
もうこの世界のどこにも私を受け入れてくれるところはありません。もし誰かに正体を明かされでもしたら彼から引き離された上に監禁され、実験につかわれるのが精々でしょう。しかし、どうやらその心配はないようでした。私の姿は誰にも見えてないようですし、彼の背後でしばらく過ごしてみても勘づかれることはありませんでした。

彼は私の葬式の後、喪服を脱ぎ捨てると食事も摂らずにシャワーを浴び寝てしまいました。顔には焦燥の表情が感じ取られ、私のことを思ってくれていることが感じ取られ嬉しかったことを今でも覚えています。彼が寝入ったことを確認すると、私は風呂場へ赴きシャワーの栓を捻り体を洗う真似事をしました。幽霊だから汗をかいたりするわけではないのだけれど、彼の傍にいるからには例え幻覚であっても清潔にしておきたかったのです。彼の元に戻り、彼が起床するまで彼の頭をなでながら待ちます。これ以来、私の大事な日課となっています。

私はそれから毎日、彼を抱きしめ、慈愛の言葉を呟き、彼を見守り続けました。しかし、彼の隣に常に存在するのは私ではなく彼の恋人の女性でした。私の居場所はいつだって彼の背後だけでした。

私には何もできません。黙って彼の少し後をついて回るしか、それしかできないのです。彼がベッドの中で屹立した性器をしごきながら私ではない他の女性を夢想しているときも、実際に彼女の股間を貫いているときですら、そうなのです。
私は黙って彼の背後から彼女を見つめるだけ。彼を止めることなんて私にはできないし、今の私にはそんな権利もない。

でも、嫉妬してしまうのは仕方ないでしょう。

私は行為の後に、彼の耳元でそっと彼女に対する憎悪の言葉を呟きました。ほんの出来心でした。もうこの時には私の存在なんかこれっぽっちも覚えていてくれない彼に対してちょっぴり意地悪がしたかっただけなのです。この言葉が効いたのかどうかはわかりませんが、彼は行為の後、彼女を殺しました。遺体は彼の自宅の地下室に打ち捨てられました。
それから彼は人が変わったように女性関係に対し、だらしがなくなりました。どこかで女性をひっかけては自宅に連れ込み性交渉を行うようになりました。そのたびに私は憎悪の言葉を呟くのです。そうして彼は女性たちを殺害し続けます。

私のせいでしょうか。でも、彼に貫かれ、汗にまみれ、はしたない嬌声を上げる女たちが今ものうのうと生きていてもよかったとは、どうしても思えませんでした。若い肉体で彼を誘惑し、もて遊んだ挙句、快楽を貪っていた女たちの顔が恐怖にゆがみ、生を懇願しながら死んでいくのは当然のことのように思えるのです。でもそれも彼の意志です。私は彼を直接操って女たちを殺したことなんて一度もないんですもの。

私が彼の背後に立つようになって、彼の陰影は濃く、深く、大きくなっていきました。これは比喩ではなく実際のことです。彼に落ちる影はより深みを増していき、それは女性たちにとって非常に魅力的に見えるのでした。彼はより美しく、優雅に変貌していき、彼に近づいた女性はもはや彼を愛さずにはいられませんでした。そんな彼の背後にいられる私はなんだか誇らしくなってきており、彼が女性を抱くのを楽しみにすら思えてきていました。

彼が女学生に手を出したときなど歓喜に震えました。未成熟な果実ですら彼の魅力の前には花開かずにはいられないのです。彼は彼女を部屋に連れ込むと唇を貪り、制服をこじ開け、犯し始めました。彼女も最初は多少抵抗しようとしていたようでしたが、彼の魅力の前では無力でした。すぐに体を開き、彼の上で腰を振り始めました。未熟なその動きに満足できなかった彼は彼女に覆いかぶさり、腰を動かしたかと思うと、しばらくして体を震わせながら射精しました。私はその間、彼の背後から彼女のあえぐ姿を観察しながら自分と重ね合わせて夢想するのでした。

彼は一通り事が済むと、すぐに女性を殺害します。行為の後でうっとりとした女学生の顔が急に恐怖に引きつり、抵抗しはじめます。しかし、その抵抗もむなしく彼の手は彼女の首を絞めつけ続けます。彼をまっすぐ見ていた瞳がぐるんと回転したかと思うと彼女は抵抗をやめました。彼はそのまま彼女の頭を灰皿で何度も叩きつけました。頭が割れ脳漿が零れ落ちます。こうして彼は女性を殺害した日は死の匂いにつつまれたまま眠るのです。

このころになると彼も慣れたもので、目覚めると一日かけて遺体の処理を行います。彼は自宅の地下室で遺体を数日かけ煮溶かします。骨だけになった遺体はそこいらへ山積され、溶かした液体は山へと捨てに行くのです。こうして彼は怪しまれることなく彼女たちの遺体を処理していました。
不思議と私以外の幽霊は見たことがありませんでした。幽霊はお互いを認識することができないのか、はたまた私が特別なのかそれはわかりません。でも、それでよかったのかもしれません。もし彼女たちの幽霊が彼に付きまとおうものなら嫉妬で狂ってしまうかもしれませんもの。

彼は何人もの女性をその手にかけてきました。しかし、首を切り落とし滴る血を飲み干したときも、生きたまま火にかけ消し炭にしたときも、開いた腹腔に手を突っ込み生の温かさを感じているときですら、彼は満足した様子は見せませんでした。その日はゆっくりと眠り、また次の獲物を探す日々が始まるのです。あれだけ多くの女性を殺害しても彼は満足することができないのです。
私が慰めてあげることができれば。何度そう思ったことかわかりません。どうか神様願いを一つだけ叶えてくれるなら、私に不死の肉体を与えてください。そうすれば、彼が私を押し倒し、射精し、殺したとしても、いつまでも一緒にいると慰めてあげることができるのに。

ああ、神様。願わくは彼に私を殺す機会を与えてください。
私も彼に殺害される愛される歓喜を「もう一度」実感したいのです。


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