トイレの花子さん

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この学校の便所には花子さんが住んでいる。ここの花子さんはよくある都市伝説の花子さんとは違って4つの腕を持った女性なんだって。出会える可能性は低いけどたまにふらっと現れる。花子さんに出会えると何かいいことがあるらしい。

トイレの神様なんて呼ばれることもあって、ちょっと興味がわいて調べてみたこともあるけどとてもそんなたいそうなものであるとは思えなかった。だって有名な神様がこんな学校の便所にいるなんて落ちぶれたにも程があるじゃない。だからきっと、神様なんていうのは嘘っぱちで、いやいやそもそも存在してるかどうかすら怪しいものだ。なんにせよ私にとってはどうでもいいものであった。

花子さんがたまにいるという噂以外は普通の便所であるから、私はこの便所をよく利用していた。なぜなら教室のトイレからちょっと遠いし、なにより大便の音を聞かれるのは恥ずかしい。そういう理由で本日もここのトイレを使っていたのだが、なんだか雰囲気が怪しい。何が、と問われるとはっきり説明することは難しいのだが、気温は高くないにも関わらず体が熱くなるような気がするのだ。早々に済ませてしまおうと下着を降ろした瞬間にそれは現れた。

「お前よくくるのう」

とっさに返事をすることができなかった。もしかして彼女が花子さんなのか。驚いた拍子に全身が強張る。意識した時にはもう遅かった。

「あ…」

宿便が体内から排出される。1度出始めたらそれはもう止められない。涙目になりながら便が出尽くすのを待つしかないのだ。花子さんはそれをじっと見つめている。何を考えているのだろうか。こんなところを見られるなんてもう消えてしまいたい。そんな私の考えと裏腹に彼女はとんでもないことを言い出した。

「不浄を浄化するのも久しいのう」

…信じられない。花子さんは私の便を手に取りぎゅっと握りしめた。すると便はころんとした石になり、他の部分は消えてしまった。

「石は持って帰るといい、願いが叶うぞ。それとお前のこれ全部もらってもいいか」

私は頷くことしかできなかった。目の前に4本腕の女性が突然現れ、自分の宿便を掬ってそれを石に変えたのだ。混乱するのも無理はないだろう。聞きたいことは山ほどあったが、とっさにこの一言のみが紡がれた。そしてこの時これを聞いたのは間違いではなかったのだ。

「あなたもしかして神様なんじゃ」

「今はただのトイレの妖精よ」

そうして花子さんは寂しそうに笑った。


1か月後、私は便秘に悩んでいた。病院に行って腹を下す薬を貰い飲んだのだが腹痛に悩まされるだけで一向に出てくる気配がない。病院の先生もお手上げ状態だ。こうなった原因には心当たりがある。つまりはこういうことだ。あのとき花子さんが言っていた「全部」とはこれから将来的に出てくる便全部ということなのだろう。彼女に出してもらわないと便をすることもままならなくなってしまったというわけだ。

私は苦しさに耐えられなくなり彼女の元へと訪れた。

「随分遅かったのう」

彼女と目が合った瞬間、それは決壊しあふれ出した。とめどなくあふれる宿便。それを花子さんは丁寧に丁寧に掬い上げる。なんだか楽しそうにやるもんだなあ、なんて感想が出てくるくらいは混乱していたんだと思う。ようやく全ての便が石に変わったころ花子さんはこちらを向いてにっこり笑った。

「本来の力を使うのも悪くないもんだ。これからも頼むな。なあにただとは言わんこいつをやろう。本当はまだ胎内にいる赤子に使うもんだが、まあ問題ないだろう」

なんだか股間がむずむずする。あわてて下を向いたらそこには女性にはないはずのソレがついている。胸の膨らみもなくなってこれじゃまるで…。

「な、なにこれ」

「なんだ知らんのか。使い方を教えといてやろう」

花子さんは私のソレを自分の股間に押し当て、そして挿入した。そこから先の記憶はほとんど残っていない。ただひたすらに気持ちがよかったことだけは覚えている。股間に残ったソレだけがあれが現実であったことを物語っていた。


それから10年の月日が流れた。私が男性に変わったことは誰も気にしていないし、むしろ最初から男性であったかのように振舞われた。私といえばお腹が張ってくるたびに学校のトイレに忍び込んでは花子さんに会いに行った。そしてその後、私はこの学校の教師となっていた。これならば人目を忍んで学校にくる必要はないし、花子さんにも堂々と会いに行けるというものだ。

「今年度、先生にはこちらのクラスを担当してもらいますが、よろしいですか?」

「はい、何か問題でも?」

「いえ、問題というほどのことでもないのですが、性同一性障害の女生徒が1名いるのです」

「なるほど、それなら私に任せてください」




少し待ってから扉を開ける。

「よお、今日は連れがいるのかい」

「ええ、この子にもしてあげてほしいんだけど」

この学校の便所には花子さんが住んでいる。私が行くと必ずいる。ここの花子さんはよくある都市伝説の花子さんとは違って4つの腕を持った大人の女性。花子さんに出会えるととてもいいことがあるらしい。

かつて烏枢沙摩明王と呼ばれたそれは力を取り戻すのにあとどれくらいかかるのだろうか。私にはわからない。


四辻喜劇 tale-jp


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