このページの批評は終了しました。
多和田研究助手は研究室のデスクで腕を組んで唸っていた。彼の唸りは目の前の得体の知れない東洋風の壺によって生み出されていた。そこへ研究員の一人が会議を終えて帰ってきた。
「森脇さん」
森脇と呼ばれた男は多和田に歩み寄った。
「なんだ」
「この壺なんですがね」
多和田は壺を渡す。初めこそ訝しげに壺を受け取った森脇だったが、持ち前の研究者根性を働かせて壺をしばらくためつすがめつした後、物知り顔で口を開いた。
「時代のつき方からして江戸時代初期の壺っぽいな。アノマラスの倉庫から持ってきたのか」
「違います。気づいたらデスクの上に置かれていたんですよ。アノマラスの帳簿を見ても該当するものがないし、何なんだろうなって」
「誰かの悪戯じゃないか?ひとまず宮川博士に報告して…」
森脇が受話器を持ち上げようとした手を多和田は制した。森脇は当然不審に思って睨んだ。
「なんだよ」
「ここはひとまず、僕たちでこの物品の処理について考えませんか」
「なんだよ急に。ただの壺だろ」
「よく考えてみてくださいよ森脇さん。急に現れた謎の壺。妙じゃないか。僕の研究者としての勘がそう囁くんです」
「勘ねえ…」
森脇にも、そういう勘が働かなかった訳ではない。ここは極秘裏に設営された財団日本支部のサイト。そこに謎の壺が突如現れた。まだ我々に危害を加えてはいないが、このみょうちきりんな壺には異常性があるかもしれない。このまま他の人間の手に渡れば、壺の未知なる異常性が蔓延し、このサイト、ひいては日本支部全体の存続をも危うくしてしまうかもしれない。そして実務的な面では、上司の宮川博士に変な壺を研究者で発見した、というだけの半端な報告を上げるわけにもいかない。博士は忙しいのだ。
以上の事柄を勘案して森脇は多和田に言い渡した。
「よし、まずは俺たちで調べよう」
30分後。
手持ちの機材を大方動員して調べたがどうにも成果が上がらなかった。未だにこの壺の未知なる異常性を暴けないでいるのだ。先ほどの江戸のなんたらは飽くまで森脇が勝手に言っていることで客観性に欠けるし、かと言って議論がそこから進展するかと聞かれたら首を傾げざるを得ない。
森脇は痺れを切らして言った。
「佐々木を呼ぼう」
佐々木研究員の領分は非破壊検査と放射年代測定だ。それで組成が分かればよりこのアイテムの真の姿に近づけそうだと考えたのだ。
早速佐々木を呼んできたものの、彼は検査の後あっさり言った。
「よく分からない」
「分からないってなんだよ」
と森脇。
佐々木は弁解する。
「壺である事は確かだ。だが情報が少ない。考古学研究室の連中を呼ばなくては」
そして考古学研究室の連中が呼ばれたが分からず、次いで歴史学研究室の連中が呼ばれたがそれでも分からず、どんどん人が呼ばれても分からず。やがて部屋はすし詰めになったがそれでも人が呼ばれた。結果として窓が割れ棚が倒れ複数の負傷者が出た。
以下は本事案の報告書の抜粋である。
当該壺の出所について、別件にて尋問中のPOIが関与をほのめかしたため更に追及したところ、研究室に侵入し多和田研究助手の机に安置したと自供した。その異常性は軽微な認識災害によりその壺の処遇を話すという名目の下、人を一つの部屋に呼び寄せ、最終的に圧死させるという財団職員を狙い撃ちにした異常性と言える。また、この認識災害は曝露した者が他人に口頭で依頼した時点で伝播するものと考えられる。現在壺は暫定的に低脅威度物品収容ロッカー内で保管されているが、この壺の詳細な収容プロトコルの策定については、後日収容担当者、サイト管理官等を参集のうえ、協議を行うものとする。
ページコンソール
批評ステータス
カテゴリ
SCP-JP本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
翻訳作品の下書きが該当します。
他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。
言語
EnglishРусский한국어中文FrançaisPolskiEspañolภาษาไทยDeutschItalianoУкраїнськаPortuguêsČesky繁體中文Việtその他日→外国語翻訳日本支部の記事を他言語版サイトに翻訳投稿する場合の下書きが該当します。
コンテンツマーカー
ジョーク本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。
本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。
本投稿済みの下書きが該当します。
イベント参加予定の下書きが該当します。
フィーチャー
短編構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。
短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。
構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
特定の事前知識を求めない下書きが該当します。
SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:4440715 (17 Dec 2019 13:00)
標記のとおり、批評の受付を開始いたしますので、
よろしくお願いいたします。
なお、こちらの下書きはTsukiyomizuku様の「神速抜刀コンテスト」の参加作品として投稿させていただく所存です。
以下に批評をしていただきたい点を掲載させていただきます。
・誤字脱字はないか。
・言い回しに不自然な箇所はないか。
・この他気づいたこと。
以上です。
改めまして批評のほどよろしくお願いいたします。
読ませていただきました。現状NVかなと思います。
個人的に1番引っかかったのが「怪しい壺があるから調べてほしい」と呼び出された財団の人間が、呼び出している人間が認識災害に曝露している可能性を考慮せずに現場へ直行するかという点です。呼び出された時点で認識災害が発動してしまうのならば納得ができるのですが、そこまで強大なものではなく「軽微な認識災害」との説明があったため引っ掛かりました。もしも自分が異常と隣り合わせの現場で「突然研究デスクに怪しい壺があったから一緒に調べてほしい」と言われてしまうと、まず罠の可能性を疑います。簡潔に申しますと佐々木や考古学研究室の連中が何の警戒もなくホイホイ部屋に入っていくのはおかしいと思いました。
メタタイトルのセンスや短い中でとんとん拍子で進んでいくテンポはいいと思いました。参考になりましたら幸いです。
早速ご批評をいただきありがとうございます。
こちらのご意見を基に、呼び出された時点で認識災害が伝播するという旨の文言を追加いたしました。
また、上記以外の箇所にも文字数調整のため内容を大きく変えない範囲で言葉遣いを改変しましたのでよろしくお願いいたします。