外宇宙支部ハブ・歴史部分

誕生期(1910年~1920年代)

財団の外宇宙計画は、まずツィオルコフスキーの研究をもとにした軌道上飛翔体の可能性を追求することから始まりました。すでに多くのアノマリーを抱えていた財団は、地球外アノマリーに対して無力であることを自覚し、そして宇宙の闇に立ち向かうための第1歩を踏み出したのです。
財団は1911年に「ムーンショット計画」とされる一連の軌道上飛翔体開発プロジェクトを開始しました。当計画では、第1宇宙速度まで加速可能な方式として、超巨大カノン砲のほか、ムカデ砲、ツィオルコフスキー型多段ロケットが候補として選択されました。技術的に最も困難だったのはツィオルコフスキー型多段ロケットでしたが、将来性に優れるのもまたこの方式でした。1919年にはツィオルコフスキー型多段ロケットによる軌道上飛翔体打ち上げがO5評議会で決議され、財団の宇宙開発は本格化しました。
「ムーンショット計画」は第1次世界大戦と世界大恐慌により途中ペースを落としますが、1933年には多段ロケットの基礎となるエタノールと液体酸素混合燃焼型型ロケットエンジンの開発に成功します。これはヴェルナー・フォン・ブラウンのA2ロケットに1年先んじるものでした。これに応じ、「ムーンショット計画」委員会は「宇宙開発部門」に発展的解消され、財団の正式な部門としてその巨大な資産が宇宙開発に向けられることとなりました。

停滞期(1930年代後半~1940年代前半)

しかし、財団は宇宙開発部門に関する関心を持続することができませんでした。欧州でのナチス・ドイツの台頭により、アーネンエルベ・オブスクラ軍団によるソロモンの儀式の遂行を目的とした第7次オカルト大戦が勃発したためです。財団はAOCと協力し、この大戦に大きな資源を注ぎました。結果、平和であれば用い得たであろう様々な資産――巨大な資本と莫大な資材、パラテクノロジー、奇跡論、はてはSCiPに至るまでが――宇宙開発部門から奪い取られていったのです。
このため、宇宙開発部門の研究開発は遅延を余儀なくされました。多くの研究室や設備が閉鎖され、より戦争向きの部門に博士や研究員たちは動員されました。それでも、残された僅かな人員は宇宙開発部門を守りきり、次の時代への橋渡しをしたのです。

躍進期(1940年代後半~1960年代後半)

停滞の流れが変わったのは、第7次オカルト大戦終結後の米国と財団、AOCが共同して行った「ペーパークリップ作戦」からでした。ナチス・ドイツのミサイル兵器V2やジェット戦闘機Me262などの先端テクノロジーの驚異と脅威を見て取った米軍のナチス・ドイツテクノロジー奪取作戦を、財団とAOCは裏から操作し、できる限りのものを自らの資産に加えました。それら奪取資産の中には、財団が所有するテクノロジーより先進的な、あるいは補完的なテクノロジーと、優れた研究者たちが含まれていました。
「ペーパークリップ作戦」と、それに続く米ソの宇宙開発競争の激化により、財団の宇宙開発は停滞から一気に躍進へと切り替わりました。財団は米ソの宇宙開発に便乗する形で、多数の試験ロケットを打ち上げ、より安全かつ強力なエンジン及び、ロケットによって打ち上げる各種飛翔体の開発に邁進しました。
そして、財団は1956年1月に、人類初の地球上から打ち上げられた軌道上飛翔体にして有人宇宙船「オーロラ」の打ち上げに成功します。極秘裏に行われたこの偉業は、当然世界の誰もが知らないものでしたが、財団にとっては大きな一歩でした。
しかし、米ソの宇宙開発競争はますます激化します。財団の既知宇宙より彼らの既知宇宙が広がれば、LK-クラス:捲られたヴェールシナリオが発生する蓋然性が飛躍的に高まります。財団は米ソに先駆けて月に有人宇宙船を降下させ、なおかつ恒久的基地を構築する計画を60年代末にまで実施する必要に駆られました。ますます多くの資産が宇宙開発部門に注ぎ込まれ、1960年には「月着陸及び仮設サイト建設」を目的とする「アルテミス計画」が立ち上げられます。そして、1965年にはアルテミス12号による月「裏側」のツィオルコフスキー・クレーター中心部への着陸が行われ、1969年までには臨時サイト0001~0006が月「裏側」を中心に建設されました。このころ、HLVやスペースシャトルの概念を取り入れた汎用軌道往還船が開発され、大質量ペイロードの地球からの打ち上げが可能となりました。1969年のアポロ11号の月着陸は、人類にとって大きな1歩と称されましたが、財団はすでに人類一般に先駆けて更にその先へと進もうとしていたのです。ただし、強力な超常組織のライバルとの対立をはらみながらですが……。

緊張と拡張期(1970年代~90年代末)

アポロ計画後、すっかり近地球軌道の経済的利用に終止するようになった両大国に対し、財団は火星以遠の内外惑星探査とサイト建築、そしてそれらを行いうるNERVA熱核ロケット推進型汎用惑星間航行宇宙船の建造に邁進していました。そして、太陽系に存在するアノマリーの探査・発見・観察体勢を作り上げつつありました。
しかし、アノマリーに対する立場の違いから、世界オカルト連合との衝突が発生するようになりました。世界オカルト連合は、財団とともに「人類をヴェールの外の闇に触れさせないため」宇宙開発に邁進していましたが、探査・発見・観察(可能ならば確保・収容・保護)を目的とするに対して、生存・隠蔽・保護・破壊・教育の5大任務を目的としており、特に「破壊」の点において利害が衝突する傾向が宇宙開発の発展によって増大するようになったのです。
財団は、世界オカルト連合に対抗するため、宇宙船の大型化と武装化を行いました。世界オカルト連合側もそれに応じ、宇宙における軍拡と、抗争は激化する一方でした。
財団は、世界オカルト連合と対立する中で、度々戦闘に遭遇し、大きな犠牲を払いました。特に、1973年2月に発生した、収容サイト-0008「マレ・ネクタリス」に対する世界オカルト連合の神経ガス攻撃は、財団宇宙史上でも有数の犠牲1をもたらすものであり、宇宙における財団と世界オカルト連合の全面宇宙戦争に至る危機を招いたのです。2
このような事態は、当然宇宙におけるヴェール崩壊の危機につながります。財団とGOCは数度の会合を経て、1979年のホテル・シュヴァイツァーホフ合意による暫定的停戦と交戦規則を締結し、1989年のツィオルコフスキー協定により全面的休戦並びに限定的宇宙探査協力を締結します。これにより、危機は去ったかと思われましたが、財団宇宙開発部門は外患を排除してなお、内憂を抱えていたのです。
内憂は、日々拡大する宇宙開発部門にO5評議会が過剰に干渉するようになったことです。1970年代から80年代末にかけて、宇宙開発部門の予算は膨大なものとなり、そして独立採算すら可能な開発水準に達しつつありました。O5評議会は、宇宙開発部門を掣肘するため、O5命令を乱発するとともに、宇宙開発部門の持つ潜在的権力基盤を取り込もうとする監督者たちの陰謀が繰り広げられたのです。
しかし、O5評議会は宇宙開発部門の扱いで紛糾し、誰もが自らの手駒にしようとした結果、宇宙開発部門は宙に浮いた駒となってしまいました。その政治的真空を埋める形で、O5-12より「宇宙開発部門の一部を『外宇宙支部』として独立させ、独自運用させる」提案がなされました。宇宙開発部門の扱いを巡る抗争に辟易していたO5評議会は提案を可決し、1991年、正式に「外宇宙支部」が設立されました。外宇宙支部はO5評議会の定める7人の理事からなる理事会と事務局、各種実働機関とサイト群からなる組織で、人類の未踏宇宙の外側のみを職掌範囲とする組織として再構成されました。これに伴い、月のサイト群は司令サイト-0001、教育サイト-0006など一部を除いて旧来の宇宙開発部門へと残置されました。
こうして、宇宙開発部門は内憂外患の難局を逃れ、「外宇宙支部」へと生まれ変わりました。財団による宇宙開発の前途は洋々と思われました。そして、プロメテウス・ラボの崩壊が、更に追い風となったのです。

疾風怒涛期(21世紀初頭~現在)

プロメテウス・ラボの倒産とパラテク・バブルの崩壊は、財団にとって大きな資産獲得の機会をもたらしました。財団はプロメテウス・ラボの多数の資産とパラテクノロジー及びオブジェクトを回収し、技術レベルを飛躍的に進歩させました。その恩恵を預かった中には、もちろん外宇宙支部も含まれていました。
外宇宙支部はプロメテウス・ラボの遺産である航空宇宙部門を吸収し、核融合技術、超高温超電導技術、重力波制御技術、悪魔工学、プロメテウス・ラボ宇宙部門の最大の計画であった「星間科学船の建造のための認可計画」の資料と機材一式を入手するなど、多大な成果を得ました。これにより、外宇宙支部は新世代の核融合宇宙船、はては重力波制御による限定的FTL推進船まで建造可能となったのです。
現在、外宇宙支部は人類の未踏領域である木星以遠にその活動の中心を移しています。レーザー核融合炉による核融合ロケット船が月と火星、両トロヤ群アステロイド、木星、土星などの主要サイトを行き交いし、最新の探査船はカイパーベルトまで足を伸ばしています。しかし、外宇宙支部にとってそれはさらなる一歩、恒星間の帳を切り開くための準備に過ぎません。また、世界オカルト連合も独自の奇跡論的技術で外宇宙を目指しています。そして宇宙には人智の及ばないアノマリーが無数に存在しています。それがある限り、闇に満ちた宇宙に人智の光をもたらす、外宇宙支部の挑戦は終わりません。

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