約二時間のフライトを終えて

昔から旅行するのが好きだった。
今では財団とかいう訳わからねぇ場所で、意味の分からねぇことをさせられたりしてるが。
それでも限られた自由時間は旅行雑誌を読み漁るのに使ったり、旅行番組を見るぐらいには旅行が好きだ。
そんな俺にとって今回の実験はまさに天からのお恵みと言えた。
GPSでの監視付きだし、通信機での報告もしなきゃなんねぇがあの狭苦しい所から出て娑婆の空気を吸えるんだ。しかも、聞いた話によると俺は外国に行ける。嬉しくない訳がない！
そう思ってた。……実際にフライトが始まる前までは。

「お、おい！なんだこれ、飛んで、飛んでる！速い！」
説明によるとこのクソッたれのフライトは二時間ぐらいで終わるらしい。
外国旅行だと考えたら妥当な時間だろうな。青い空を眺め、白い雲の海を航海する。
最高だね。……こんな椅子に座ったままの状態で動けない状態じゃなければな！
なにが恐ろしいって、俺の身体はピクリとも動かねぇのにコレっぽっちも苦しくねぇってことだ。
普通は血流がどうとか、エコノミークラスがどうとかでヤバイってのに。
「うおっ、何かぶつかったぞ、白い鳥みたいな……」
地獄のようなフライトを続けていると漸く大陸が見えてきた。
……そういえばあの黒服ども「着弾」するとか言ってたよな。

「ぐあぁ！死ぬ……死んでない？何処だここ？」
当然の疑問を呟くと、通信機の向こう側の連中が職員と合流しろとか言い出した。
訳が分からねぇ。周りをどれだけ見渡しても人っ子一人いやしねぇ。
その事を伝えると、向こう側の連中は大慌て！
とにかく目立つところにとか言うから、とりあえず目についた街灯に向けて脚を進める。

やっとの思いで街灯の下に辿り着くと、デカい道路が通っていることに気づいた。
道路があるという事は、それがどこかの標識に地名が書かれているはずだ。
連中も確認しろって言ってくるから、近くにあった標識に近づいてみた。
そこに書かれた地名を見て、思わず俺は叫んだ。
「おい！ふざけんじゃねえぞ！話が違う！」
アイツら、俺をだましてやがったのか。ふざけんじゃねぇ‼
「ここはノースカロライナなんかじゃねぇ！サウスカロライナだ！」

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