チームコンtail下書き 『我は神なり』

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我は神なり。

白き我が身が黒き森を駆けるその様は、まさに地を奔る稲妻の如く。
視界に入る命を喰らい、潰し、引き裂いて、我が力を世の果てまでも轟かせる。
恐れ慄け生ける者共。
その畏怖こそが我が糧となり力となる。

我は神なり。


我が名は『白虎』。
風と雷の化身にして西方を司りし神獣なり。

しかし、あの国作りの末裔共め。神たる我をこのような場所に封印するとはなんたる侮辱か。
されど、甘ったるい花の匂いに包まれたこの泥沼の底のような空間では立つことは叶わず、泳ぐこともできず。踠くように、足掻くように、山をも揺らす我が咆哮も響くことなく霧散していく。神の眼を持ってしても漆黒の闇の先を見通せず。気を抜けば自身が闇に溶け出すような微睡みの宵闇。これより脱け出す目処は一向に立たず。
まぁ良い。末裔共は我を捕らえたと喜んでいることだろう。
だが、我の様子を見に来た時が奴らの最期。それはそれは惨たらしく、腹腸を撒き散らしながら喰らうとしよう。
今はその時に非ず。
我は神なり。
我を侮ったこと、心の底より後悔するがよい。


 
 

あれからどれだけ経ったろうか。
四季も一巡した頃合い…いや、もっと経ったかもしれぬ。この新月の夜よりも暗き世の狭間は我の感覚を狂わせる。時の流れを見ること叶わぬ。
されど、我が怒りは増しゆくばかり。収まる気配は微塵も無し。
心せよ。我の眼前に姿を見せたその刹那、我の牙が脳天を貫くことだろう。
我は神なり。
神の怒りを思い知れ。
 
 


 
 
 

抜かったわ…。
徐々に神としての力が抜けていく。
この狭間に捕らえられ百は季節が巡ったろうか、ここまで気付かなんだとは…。
これが奴らの狙いであったか。現世より我を隔離することで他者からの信仰心を削いでいくとは。
我が力を示せぬならば、他者は我を怖れなくなる。恐怖で得ていた神としての信仰心は次第に薄れていく。百も年を重ねれば世代も代わる。我を直接見て恐怖していた者も皆いなくなる。我を知るには口伝に頼らざるを得ない。
このままでは神としての権能も使えなくなる。我の強大なる力を怖れ、力を削ぐことが目的だったとは。
我は神なり。
我は神なのだ。

 
 
 


 
 
 
 
 
…我が爪で横に薙ぐ。躱されすぐに反撃が来る。毛皮で弾き、そのまま突進。倒れて怯んだ喉笛を噛み千切る。
…他方向からの巨岩の投擲…一、二…十ときた。躱し…きれぬか。岩を足場にして上へ退避。一番近い投石機を襲撃…伏兵か! 岩の裏、死角、ならば尾で振り払う! おのれ、数が多すぎる。ならば、残った神力で一掃してくれる!

…勝てたか。しかし、我の想像と言えど神の戦と言うには辛勝よな。
…よし、もう一度最初から策を練り直す。
まずは我に対し奴らは百万の軍勢を用意し…

 
 
 
 
 


 
 
 
 

……………………あ……あ、ああ!
い、意識が、途切れていた!
どれだけ経った!
今はいつだ!
おのれ、おのれ、おのれ、おのれ!
神は恐怖しない!
我は神だ!
我は我なのだ!
ふざけるな!
絶対に許してなるものか!
この怨み、決して忘れんぞ!
 
 
 
 


 
 
 
 

……石、心臓、羽化、神、水底、琴、虎、雷鳴、稲穂、ほ…骨、猫、粉……な…な、なぁ…………あ、あ、あぁ? あ、あ…………飽きた。

我は何をしているのだろう?
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 

   
……赤い光

遠くに、赤い、点のような光。

……どうでもいい。

我は……?

光……光! 誰かいる!

待って! 行かないで!

ここにいる! ここだ!

……何か聞こえる?

……ひ、人の声だ!

ら…ど? …れっど? れっど!

ここだ! ここだ!

行かないでれっど! れっど!

我を見るんだ、怖れてくれ! ……嫌だ、行くな! 一人にしないで! 待って、待って待って待って!

あ、ああ……あああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああぁああああぁああああああああああっ!

 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
我は……なんだ?
 

 
 
 
 
  
 
 
 
 


 
 
 

 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「白虎さ~ん。聞こえますか白虎さ~ん。」

……。

「白虎さん聞こえますか?」

あ、ああ……。

「私、久斯動物医療センターの前川と申します。白虎さんの現担当医です。」

涙が止まらない。誰かは知らないが、私を見て、認識してくれている。

「白虎さん、聞こえていますか?」

私はここだ、ここにいる!

「ああ、無理して声を出さなくても大丈夫ですよ。キチンと伝わってますから。」

孤独ではないことがこれほどの喜びだとは知らなかった!

「本来であれば前担当者が来る予定だったのですが、諸々の事情がありまして。いやホントに、酒は飲んでも呑まれるなと言いますか、悪い人にお酒を教わっちゃったもんだから……。酔った勢いで病室代わりの空間を別の空間に繋げちゃうし、朱雀さんも青龍さんも勝手に退院させちゃうし。あ、ごめんなさい、患者さんに愚痴ることじゃないですよね。」

なんだっていい。我はもう一人ではない。

「千年間の入院生活お疲れ様でした。現世から隔離することで昂った精神を落ち着かせ、破壊衝動を抑える治療は無事に成功しました。」

外に……出られる! 光の中を駆け回れる!

「つきましては、これから仮退院の手続きをおこないます。」

……仮?

「はい。仮退院です。入院前の白虎さんの暴れっぷりは有名ですし、もしまた千年前と同様に他の人を傷つけるようなことがあれば再治療になります。」

……は?

「なので、誰かを負傷させないようにしてください。死なせるなんてもってのほかです。」

待て、我は怖れられて力を得ていたのに? それはできないというのか?

「安心してください。我々の治療は完璧です。白虎さんなら現代社会へ適応できるはずです。」

無理だ! 怖れられねば我は我では無くなる!

「白虎さん、できなければ再入院ですよ? もう一度千年間の入院がしたいんですか?」

嫌だ!

「大丈夫。貴方は千年の時を経てただの破壊神から誇り高き神獣になったんです。千年耐えた自分を信じてください。」

待て、待て!

「それでは、白虎さん…お大事に。」


我は古井戸の中で静かに過ごす。
奴はリハビリ施設とか言っていたが、そんなことはどうでもいい。

我は怖い。
孤独でいることが。
忘れられることが。

我は怖い。
誰かを傷つけることが。
誰かを死なせることが。

我は怖い。
再びあの空間に閉じ込められることが。

井戸より外へは踏み出さぬ。
傷つけるとは何をもって傷なのか。
ちいさな猫でも爪はある。他者の皮膚に爪をたてるなど容易きこと。

故に我は待ち続ける。
終わりの見えぬ無間地獄に比べれば、いつかは誰かがやって来ることを待つなど瞬く間と等しい程よ。

ほぅら、誰かがやって来た。
我を見てくれ。忘れないでくれ。
あの日見た暗闇を貫く赤い光のように、我も井戸の底で白くあり続けよう。
赤と白でめでたいではないか。我の退院を祝福しておくれ。

これからは誰も傷つけない。
誰かに寄り添って、いつまでも、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、皆のそばにいる。

いや、寄り添うならばこの姿は相応しくない。
故に、我は残った神の力を絞り出して姿を変える。
我は神でも虎でもない。
小さくか弱き猫なのだ。
少し歪な気もするが…こんなものだろう。猫など千年は見なかったからな。

喋り方も変えようか。
寄り添う生き方を望むならば親しみやすさも必要だろう。
ああ、久々に声を出すものだから、ちゃんと喋れるのだろうか。
我を見てくれ、忘れないでくれ。届いておくれ、我の言の葉よ。
 
 
 
 

我は……いや、私は神ではありません。

ねこです

皆さん、どうか私を忘れないでください。

よろしくおねがいします

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