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世界が終わる。
O5-1からそう連絡されたのは終焉のおよそ2ヶ月前だった。O-5と言えど人の子である(少なくとも半数は)。多くの者達は驚き、そして嘆いた。サイト-01へと向かう途中、各々が財団を率いてきた頭脳を駆使し、対応策を考えていた。シックスも、例外ではなかった。しかし、シックスの頭の中には自分でも驚くような考えがふつふつと湧き出し始めていた。
世界が終わるなら、自分は世界と共に終われるのでは、と。
シックスは、どこまでも真面目な性格だった。財団に勤務して50年、ひたすら真面目に世界を守ろうと働き続け、ついにはO-5の地位にまで登りつめた。長く勤務していれば、命を落としかけた事も一度や二度では済まない。それでも彼が働き続けたのは、単純に、世界を愛していたからだった。物心ついた時から彼にとって世界は美しいものだった。親からそう教育されたわけでも、テレビの中のヒーローに憧れたわけでもなく、彼は世界を愛していた。
そんな彼だからこそ、生まれた考え。自分は自分が死んだ後の世界を観測できない。それならばいっそここで運命を共にすべきではないか。
ダメだ。考えを振り払う。私はO-5として人類を守る責務がある。今まで世界終焉の危機など何度も救って来たじゃないか。今回も死力を尽くすだけだ。何度振り払っても消えない思いを考えないようにしながらシックスは世界を救うための会議へと臨んだ。
会議は、O-1によって提案された世界を造る計画が可決され、幕を閉じた。
シックスは最後の最後まで賛否を迷った。世界を全て造り直すのは、世界のレプリカ造りではないか。今、我々が住む世界をそのままに護るのが我々の責務ではないか。迷った末に、彼は賛成した。それ以外、道はなかった。
会議を終えた男の心中では、再度あの考えが湧き上がっていた。それも、先程よりも強く。再現された偽の世界で生きるしか道がないなら、なおさら共に滅びたいと。
「よう」
会議室を出たシックスにそう話しかけたのはファイブだった。
「どうした?あんまりに突飛なもんかもしれねぇが一応目処がついたんだ。もっと明るくしたらどうだい?」
「君はいつも能天気だね。昔からずっとそうだ。小4の夏、蝶を取りに行った君が…」
「おいおい、もう半世紀も経ってるんだ。そんな昔の事は忘れてくれよ」
いつものような他愛もない会話をしながらシックスは考える。彼になら、この思いを話しても良いのでは。
「ファイブ…いや、A█████。悩みを聞いてくれるか?」
「…そっちの名前で呼ぶってことは、友人として、か。いいぜ。聞くだけ聞いてやるよ。J███」
シックスの心に産まれた考えを聞いたあと、ファイブは言う。
「なんだ、そんな事か!」
「そんな事とはなんだ!私は必死に考えて…」
「てっきり追い詰められて気でも狂ったのかと思ったぜ」
「悪かったな、正気で」
「いいや結構。ただ、それなら答えは一つだと思うぜ、YESだ」
あまりにも簡単に言い放った事にシックスは少し驚く。
「最終的に決めるのはお前だけどな。」
「それならなぜ言い切れる?」
「お前が俺に相談する時は後押ししてほしい時だ。相談しているように見えて心の中ではもう決めてるのさ。本当はただ一歩踏み出す勇気がほしいだけ」
思い返せば確かにそうだ。今まで自分が相談した意見を変えたことがなかったと気付く。
「…ありがとう」
「いや、腐れ縁が役に立ってよかった。それじゃあな。あと2ヶ月、有意義に生きろよ」
シックスは、もう迷わなかった。
時は流れた。筐体は完成し、世界を造る準備は整った。特に優秀な者は次の世界へと記憶を引き継ぐ事になり、イエローストーンには世界の頭脳が集結していた。
「本当に、いいんだな?ここは、もう開かないぞ」
忙しそうにしているO-1が言う。筐体の扉が、今まさに閉められようとしていた。
「ああ、最高の気分だよ」
O-6であった男、Jackは晴れやかな笑みを湛えながら答えた。
過剰すぎるほど厳重な機構を内から外へと進む。あと1日、他の財団職員は準備に大忙しだろう。しかし、すでに任を解かれた自分には関係のないことだ。大地を踏みしめ、雲一つない青空を見上げる。今まで紡がれてきた世界の歴史とは比べ物にならないほど僅かな、しかし十分な残された時間をどう使おうか。幸い、ここは私の生地に近い。私にとって最初の、小さな世界を見て歩こう。私の物語には、始まりも終わりもあの場所がふさわしい。男の足が、軽やかに地面を蹴った。
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- portal:4242012 (03 Nov 2019 11:16)
筐体造りカノンのtaleで、ルーキーコンテスト参加予定です。
批評よろしくおねがいします。
dvです。他の筐体作り記事とは違う側面(参加する気がない側)の視点から攻めたのは面白いと思います。ただし、それゆえに感情の薄っぺらさが気になりました。
「世界が大好き」なので「世界と一緒に終幕を迎えられる」ことに対する喜びはわかりますが、同様に今まで世界を守ってきたことから考えると世界を救えない苦しみもあるはずです。それを抜きにして小躍りするほど喜ぶのは不自然な気がしました。この点から、僕は全体的に狂人が自分の好き勝手やっているような印象を受けました。感情の薄っぺらさというのはこのことを指しています。
もう少しその人の感情や思想の細部を詰めて、通達以前から感情がどのように変化したかを丁寧に書いてみるとよいかもしれません。そもそも物語というのは基本的に「変化」を描きます。大雑把にいうと、変化前を書いて、きっかけを書いて、変化後を書くのです。起承(変化前)/転(きっかけ)/結(変化とその結果)ともいえるでしょう。この主人公特有の葛藤や悩みを描き、その結果として「世界と終われるなら幸せだ」と思えるようになったという構成にすれば、厚みが出てクオリティの高いTaleになると思います。
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k-cal氏と概ね同意見です。アプローチ自体は素晴らしいので、人物像の掘り込みさえできればかなり良くなると思います。
カノン上での主流カノンとの相違も大きなものは見受けられませんでした。が、以下に小さな相違を示します。
絵が良いのは分かりますが、おそらくその時点での「優秀なもの」はイエローストーンに集結しているはずなので、そこが引っかかります。
ここは少し引っかかります。2000のクリアランスは独自の「4/2000」クリアランスであり、(おそらく)通常の4クリアランスより上位です。サイト管理官全員を記憶保持させる理由は特にないように思います。これの解決策としては、いっそのこと主人公をO5の1人にするか、何な特別な功績を残していて、だから記憶保持をする権利があった、のようにするべきです。
総評としてはnvです。改稿頑張ってください。