破棄予定

OK。あんたはこの薬のレポートの結果が知りたい。俺はこの薬を廃棄したい。いいね、利害はたいして衝突してない。レポートなんてクソッタレ書いてる暇があったらさっさとこの薬をできるだけ誰も使えないようなところにぶん投げて次に行きたいんだ。俺の口頭でいいだろ?よし。物分かりがいいのはお互いのためだ。

この薬は俺をカラスにしてくれる。ワタリガラスだ。Corvus corax。動物実験も大成功。いざ自分で人体実験だってね。どうせ安全性確認は嫌なくらいやったんだ。俺がやる分には誰も止めやしない。それに、俺は他人の言い分なんざ信用できない。過去の自分の気持ちすら現在の自分じゃ理解できないことも珍しくないってのに、どうして他人に薬の実験なんぞ任せられる?今回こそは対象動物の思考のトレースができたはずなんだ。やっぱり被験体自身が感じるモノを俺が知らなきゃダメだろ。

俺はいつもと同じ実験環境を整えた。紙とペン、液体インクを少々、キーボードを用意。出来る手段で自分の状況を伝えるために。そしてこれもいつも通り予備のクローンに俺の思考のコピーをコンバートした。

さて、実験開始だ。俺は俺がカラスになる薬をウキウキしながら飲みこむ姿を見届けた。薬を飲んでから3分くらいのたうち回った後、筋肉がねじれ、DNAが書き変わり、急速な代謝を経て何もかもが変わる姿を観察した。ここも動物実験と一緒。なーんも変なことはない。苦痛は神経の遮断で感じてない。ただ焼死体みたいに筋肉が勝手に動いていく影響でバランスがずうっと崩れ続けるだけだ。

そうして薬を飲んでから5分もすると目の前の俺はしっかりカラスになった。クローンの俺からしても立派なカラスだったよ。俺は。そして、何を言い出すかとわくわくしながら見てた。

カラスになった俺は何も言わず、足にインクを浸して、器用に三つの点と三つの棒、そして三つの点を書いただけだったね。残念。今は飯も食わず、消極的自殺してるよ。あいつは。実験は失敗だね。人間の自我が残ってた。こんなつまらん薬、残す価値もない。今回も失敗だね。

次はウサギなんかいいと思うんだ。今までの実験の失敗はやっぱり人間から遠すぎたことだと思うんだよね。ヘビの俺とか、自分の尻尾飲み込むだけでヘビになった気分を教えてくれないんだ。だからウサギ。自由に使える足が4つ。

あんた、ついでだから俺の意識のコンバート施設の予約取っといてくれ。これで15回目だし、名前だけ言えばセットアップしてくれるよ。

ERROR

The H0H0's portal does not exist.


エラー: H0H0のportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:4094174 ( 07 Jun 2018 14:20 )
layoutsupporter.png
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License