道を紡ぐ廃忘

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タイトル: 道を紡ぐ廃忘

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが出現する建造物は民間人の侵入を防ぐため周囲を2 m以上の柵で囲い、カバーストーリー「解体工事予定」を適用してください。調査のためSCP-XXX-JP内に侵入する人間は、直前にミニメンタルステート検査およびウェクスラー記憶検査を行い、認知機能や記憶力に異常がないか確認してください。内部調査を行う場合、懐中電灯、作成済みの地図と筆記具を装備し、自身の通行した順路を記載してください。また、SCP-XXX-JP内に存在する街灯のスイッチは一人につき4個以上押すことは禁じられています。

説明: SCP-XXX-JPはケヤキ(Zelkova serrata)やイロハモミジ(Acer palmatum)が並び、街灯下以外では0.01ルクス以下の照度となっている夜間の並木道です。道はコンクリート製の壁で囲われており、複数の分岐路が確認されています。空間内では常にケヤキやイロハモミジが落葉しており、地面にはそれらの枯葉が堆積しています。これまでSCP-XXX-JP内の物体の持ち出しは成功していません。そして内部では録音、録画装置や通信設備は一切機能しないため、現在SCP-XXX-JP内部の情報は帰還者の証言によってのみ得られています。

SCP-XXX-JPへ侵入する唯一の方法は、各地の建造物内に出現する金属製の扉(以降SCP-XXX-JP-Aと呼称)を経由することです。SCP-XXX-JP-Aには破損したガラスの覗き窓が配置されていますが、内部は暗く様子を伺い見ることはできません。SCP-XXX-JP-Aは対象となる建物内に存在する人間が1人のみの時に出現します。SCP-XXX-JP-Aを通じて人間がSCP-XXX-JP内に侵入した時、そのSCP-XXX-JP-Aは侵入者がその扉から帰還するまで出現しません。これまでSCP-XXX-JP-Aは██箇所で発見されており、その発見場所は廃校となった建物の廊下、廃コンテナ、老朽化した美術館の踊り場、団地地下に設置された小部屋など法則性は見出されていません。現在出現をさせることが可能なSCP-XXX-JP-Aは█個です。

SCP-XXX-JP内には複数の街灯が確認されており、街灯には「ここは○○街△丁目□番地」と書かれた金属製プラカードが取り付けられています。現在街灯は35個発見されており、うち3つは電球部分が破損しています。また側面にスイッチがついており、押すことで街灯をつけることができますが、消すことは不可能です。このスイッチを押した人間は海馬内の脳神経細胞が減少し、記憶の喪失や混濁が発生します。スイッチを何個も押すにつれ記憶障害の重度化やアルツハイマー型認知症の進行がみられます。そのためSCP-XXX-JPから帰還しなかった侵入者は帰還方法を忘却したことが原因と考えられています。また街灯をつけることで稀に周囲に何らかの物体、現象が発生することがあります。以下はそのリストです。

街灯のプラカード 発見された物体または現象
葬諦街4丁目8番地 節分用の鬼のお面。
警訂街10丁目33番地 緑色のウサギ(Leporinae)のような生物。どこかへ走り去った。
瞑夜街2丁目1番地 一本のモクセイ(Osmanthus)の木が立つ広場。
寥蔽街11丁目4番地 突風が吹いた。吹き抜ける音は風鈴の音のようだった。
追憶街4丁目6番地 人型実体を伴うおでんの屋台。詳細は補遺XXX-JP.1を参照。
謳醒街7丁目6番地 人骨と紫色の手帳。手帳の内容は補遺XXX-JP.2を参照。
綴冥街21丁目14番地 風景が一瞬オレンジ色に彩られた。
怪奇街99丁目99番街 何かがあったが忘却した。


補遺XXX-JP.1: インタビュー
「追憶街4丁目6番地」と書かれた街灯の付近で木製の屋台が発見されました。屋台では”女将”と自称するコーカソイド系女性が営業を行っており、おでんおよび日本酒の提供が確認されています。おでんの具材は大根やこんにゃく、鶏卵など一般的な食材ですが、日本酒は「月楸」「屋烏之愛」「沈下橋」「とわの雪」など存在しない銘柄が並んでいます。以下は”女将”に対する小泉研究助手のインタビューを筆写した記録です。

”女将”: あら……いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。

小泉助手: ここは……?

”女将”: おでん屋ですよ。何がいいですか?

小泉助手: すみません、今は仕事中なので。今日はやめておきます。

”女将”: 残念。じゃあ何か御用?

小泉助手: えっと、少しインタビューさせて頂いてもよろしいでしょうか。

”女将”: インタビューなんていつ以来ですかね。いいですよ。

小泉助手: では────

”女将”: あ、ちょっと待って。一つ条件。今度来たらうちのおでんを食べる。どうですか?

小泉助手: (微笑) わかりました。ではまず名前を教えてください。

”女将”: 名前かぁ。覚えてないんですよね。

小泉助手: 覚えてない?

”女将”: そうなんですよ。私が誰なのか何にも思い出せないんですよね……。それとも元から名前なんて無かったのかも。そうだ、お姉さん私に名前つけてくれます?
小泉助手: ええっ、私には荷が重いです。まだ貴方のこともよく知らないので……。

”女将”: そうですよね。元からあったものに新しく何かを付け足すのって勇気がいりますよね。次の質問は?

小泉助手: えっと、では、この場所は何なのでしょうか。

”女将”: よくは知らないですけど……私にはただの道に見えます。

小泉助手: 道、ですか。

”女将”: えぇ。色んな人が電球をつけてくれたおかげで、いっぱい新しい道ができる。最初は細い小路でもそこから伸びて、枝分かれして、また繋がっていって……。そうして街を作っていってるんです、きっと。
小泉助手: 面白い話ですね。でも元から一つの真っ暗な街というわけではないのです?

”女将”: ちがうんです。照らされて見えるようになったんではなく、あなたたちが作ったものが現れたんです。道も、壁も、そしてきっと私も。
小泉助手: それは誰かから聞いたの?

”女将”: いえ、でもわかるんです。
小泉助手: でも私たちはスイッチを押しただけです。なにもしてはいません。

”女将”: 記憶を失くしたんじゃありません?

小泉助手: 確かにみな何かを忘れたと強く主張しています。

”女将”: たぶんその人たちは忘れたんじゃないですよ。

小泉助手: どういうことですか?

”女将”: 忘れたなら思い出せばいいんです。記憶が頭の中でかくれんぼしているだけ。でも失ってしまったなら、それはもうあなたの中から無くなってしまっていると思うの。

小泉助手: ……だからみなあんなに記憶を失ったことに動揺していたのです?

”女将”: たぶん、ですけどね。

小泉助手: それで失った記憶から道が作られたというわけですか。

”女将”: そうです。記憶から何かをカタチに表現して外に出す。そういうことだと思います。出てしまった記憶はもうその人だけのものじゃないでしょう?いろんな人に解釈されたり、そこから新しい物語が付け加えられたり。

小泉助手: ‥‥あなたは何者なんですか?

”女将”: わからないんです。……昔”女将”と呼ばれていたことがあった、気がしますけど。

小泉助手: そうですか……では、そろそろおいとまします。ありがとうございました。

”女将”: こちらこそ。今度は食べに来てくださいね、おでん。


補遺XXX-JP.2: 発見文書
「謳醒街7丁目6番地」と書かれた街灯の付近で、落ち葉に埋もれた白骨死体が発見されました。また、死体が纏っていた衣服のポケットからは紫色の手帳と鉛筆が発見されていました。以下は手帳内のSCP-XXX-JPに関与すると考えられる箇所を筆写したものです。

8月17日 (火)
夜に第六小学校に忍び込んだ。ぼろぼろにはなってたけど卒業した時と変わっていなかった。
でも見たことが無いとびらがあって入ったら別の場所につながってた。すごい暗くて携帯のライトでも全然照らせなかった。なんか押せるスイッチがあったから押したら明かりがついた。
でも明かりがついたら何かを忘れてしまった気がする。忘れたのは分かるのに、何を忘れたかわかんないこわい。
それで道を引き返して帰ってきた。なんだったんだろう。だれにも相談しちゃいけない気がする

8月19日(木)1
左に手をついて進む 迷わないように
スイッチあった どうしよう
また忘れてる 何
ちょっと寒い
帰ったら焼き芋
スイッチ また忘れるんだろうな
名前 岩野雄太
年令 14才
8月9日山形県生まれ
大丈夫覚えてる
ここどこ
目印がない




ママ?

手帳に記載されていた第六小学校出身の「岩野雄太」に該当する人物は現在37歳であり、8月20日から行方不明となっています。25日に友人の家に滞在していることが判明しました。岩野氏は、氏の出身校である第六小学校跡地には卒業後訪れておらず、また発見された手帳にも心当たりがないと証言しています。行方不明になっていた理由は借金取りからの逃走であり、数日間の彼の行動に不審点はないことも明らかとなっています。また第六小学校跡地にはSCP-XXX-JP-Aは確認されていません。なお、手帳の発見者と岩野氏および第六小学校には一切の関連性が認められていません。


補遺XXX-JP.3: 考察
SCP-XXX-JPからの帰還者に、SCP-XXX-JPに関与しない記憶の齟齬が発生していることが複数例報告されています。その多くは対象が知り得ないエピソードを記憶として有するというものでした。この症例と補遺XXX-JP.2からSCP-XXX-JP内部の実在性が疑われています。

現在までSCP-XXX-JP内部の探査は証言に依存している。撮影や録音など客観的な証拠は何もない。
せめて内部で発見した物品を回収できればいいのだがどういうわけか探索者はそうしようとしない。ただの落ち葉1枚ですら、だ。
これで内部の膨大な空間を信じよ、というのは科学的であるとはいえまい。
SCP-XXX-JPの正体は別空間への転移でなく、探索者に一種の夢を見せるような精神影響である可能性もある。
おでんの屋台も中学生の手帳も並木道も、探索者が集団で見る夢の話だったというわけだ。
むしろ空間の存在を示す物証がない以上、後者が有力だろう。
今後の調査は空間内の探索を主とせず探索者の心的作用や精神影響について重きを置くことを提言する。
— SCP-XXX-JP担当責任者 蔵元博士


補遺XXX-JP.4: インタビュー
小泉研究助手の2度目の探索時、再び屋台が発見されました。屋台の様子は依然と差異ありません。以下は”女将”に対する小泉研究助手のインタビューを筆写した記録です。

(重要性の低い会話のため割愛)

小泉助手: おでんありがとうございました。美味しかったです。

”女将”: こちらこそありがとうございます。それで今日は何かインタビューはありますか?

小泉助手: はい、お願いします。でも……気分を害してしまったら申し訳ありません。

”女将”: 大丈夫です。気にせずどうぞ。

小泉助手: では、あなたとこの世界は実在しているんですか?

”女将”: ……難しい質問ですね。あなたはどう思います?

小泉助手: 私は……、この道を実際に見ていますから、存在すると思っています。でも現実世界に戻ってもここにいた証は記憶しかない。何も残ってないんです。他の人は夢まぼろしを見ていただけなんじゃないかって。今私はホントにあなたと話しているんですか?この美味しかったおでんも幻想ではないんですか?すべては私の想像の中……?

”女将”: ここが実在するか、現実に残るかは私にはわかりません。でも自分の思いを信じるしかないと思います。

小泉助手: ……あなたは。

”女将”: はい?

小泉助手: あなたはどう思うんですか?自分は存在していると思ってますか?

”女将”: 私にだって……私にだってわからないんです。私は自分のことは何もわかりません。気づいたら、ここにいて、屋台をやっていて。私が持っている数少ない記憶も、ただ何かの役目のために植え付けられたみたいで。

小泉助手: 役目ですか。

”女将”: 前におでんを食べる約束しましたよね?それで実際あなたにまた会えておでんを食べていただけました。でもこれは私がおでんを食べてほしいと思ってした行動なんでしょうか?ただ何者かにあなたと再びお話させるためにやらされたような……。そもそもなんで屋台やおでん、今私がしていることの目的がわからないんです。

小泉助手: 私だってどうして今の研究をしているのか、目的は何なのかなんて簡単には言えないですよ。でもそれは各自で少しずつ見つけていくものだと思います。

”女将”: あなたにはこれまでの経歴や出自、役職、設定などがあるじゃないですか。私には何もないんです。覚えてないんです。いったいどうしてここにいるのか、どうやってここに来たのか、名前は何なのか、わからない、何も……。私が忘れてしまっているのか、それとも最初から空っぽで何もなかったのか。それすらもわからないんです……。

小泉助手: すみません、変なことを聞いてしまいました。忘れてください。

”女将”: いや、もう忘れるのも忘れられるのも嫌なんです。私はここにいるだけで、考えることも、進むことも、死ぬこともできない。

小泉助手: ……。

”女将”: あっすみません、ちょっと熱くなってしまいましたね。えぇと、先ほどの質問。私が夢の存在じゃないかでしたっけ。この私が夢なら醒めた現実の私は何をしているのでしょうね。いっぱいのお客さんと楽しく過ごしているのでしょうか。それともお店はやってないで、たくさんの仲間と鬼ごっことかかくれんぼとかして遊んでいるのかもしれないですね。

小泉助手: ……”女将”さん、あなたは前に記憶から街が作られていくと言っていましたね。

”女将”: はい、それが何か?

小泉助手: この街を訪れたヒトは記憶を失うだけではなく、新しく手に入れることもあると判明しています。その記憶がどこから来たのかわかっていません。でもそのまま考えるなら街を作っていた記憶が表れているんじゃないかって。

”女将”: ええと……つまり?

小泉助手: あなたの記憶はこの街のどこかにあるのかもしれません。

”女将”:

小泉助手:

”女将”:

小泉助手:

”女将”: ねぇ小泉さんお願いです。私に何かを下さい。私に意味を、未来を、存在を下さい。私の中に道を灯す明かりを下さい。

小泉助手: 努力してみます。

小泉助手はSCP-XXX-JPからの帰還後即座に胃洗浄を行いました。その結果、証言に一致するおでんの構成物が回収物から発見されました。


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