不吉な鏡合わせを目で行う
何個か先の瞳には死ぬ前に見る光景が映る
普通見えないけど財団の超技術眼鏡で見える
不確定性原理
見ることで未来が確定して日舞う
Need to know
見なければ起こらなかった
safeと思って油断してたら
シャイガイが映ってしまい目合わせしてた2人が死ぬ
試してみたいエージェントの死生観
死=負けなのが悔しい
覚悟して臨みたい
「合わせ鏡、はご存知ですか?」
ブラウン研究員は語り掛けた。
入れられたコーヒーに口をつける間もなくのことであった。
「合わせ鏡」
カップを机に置いてエージェント・ビショップは彼の言を繰り返した。
「鏡を向かい合わせることか?映したものが繰り返し映るように」
「ええ、そうです。ではこの合わせ鏡、ある地域では縁起が悪く避けられていることはご存知ですかね」
「ああ、前確か日本人の友人が言っていたような。幽霊が出るとかなんとか」
「そういう言い伝えもありますね。ですがそれですと遊園地のミラーハウスがお化け屋敷になってしまいます」
「確かにな」
相槌を打つ。冷房の温度は適温で暑さも寒さも感じないちょうどいいものだ。
「まあそういった類の迷信が合わせ鏡にはいくつもあるんです。その殆どは根も葉もない噂話なんですが、実は一つだけあながち嘘とも言えないものがあるんですよ」
「ご存じですか?合わせ鏡の3番目に映る顔が自分の死に顔だという話なんですがね」
「なるほど、大体話が読めて来た。それがこのSCP-49AY-JPに関わってくるわけだな」
SCP-49AY-JP。オブジェクトクラス: Safe。ある条件を満たすことで映し出される、対象が死ぬときに見る光景およびその現象。蒐集院の廃拠点から回収された書物に記されていた異常現象であり、現在ブラウン研究員のもとで異常性の確認が実施されている。
ブラウン研究員の友人であるエージェント・ビショップは
「ええ。ただし普通の鏡でやっても死に顔は見えません」
「ふむ、特殊な鏡を使うとか条件が限られてるとかか」
「そう。とは言っても鏡ではなく眼。人間の眼を使うんです。見つめあうと相手の瞳に自分の顔が映るでしょう?これで合わせ鏡をするんです」
ブラウン研究員は何やらモニターを確認している。
「ここに用意した装置は両者の眼の位置を正確に合わせて合わせ鏡ならぬ合わせ眼が起こるようにします。とはいえ人間の視力では瞳に移った顔の瞳の中なんてまず見えないので、配置された特殊なカメラによって眼の中を覗き込み、SCP-49AY-JP──死の間際の光景を映すわけです」
「あれ、合わせ鏡で映るのは死に顔じゃなかったのか?」
「ああややこしくてすみません。その死に顔の瞳をさらに見ることで、死ぬときに目に映るものが見えるって寸法です」
「なるほどなぁ。しっかし瞳の中の瞳の中の瞳の……とにかくもの凄く小さいのを見なきゃいけないんだろ?財団の超技術でもないとまず確認できないから収容する手間が無いのはいいが、どうやって蒐集院はこんな現象見つけたんだろうな」
「そこは謎なんですよ。我々は彼らの覚書の一部を見ただけなので……。さて、装置の準備ができましたよ」
ブラウン研究員はヘッドマウントディスプレイが向い合せに2個連結したような機械を取り出し、机の上のスタンドにセットした。
「そちら側から装置を覗き込んでください。私はこちら側から覗いてあなたと目を合わせますえ。するとちょっと画像処理の時間があった後、こちらのモニターにSCP-49AY-JPが移ります。ショッキングな画像になるかもしれませんが……覚悟はいいですか?」
「覚悟……覚悟か。いちおう改めて確認させてほしいんだが、危険性はないんだよな」
「ええ、もちろん。Dクラスを用いた実験は何度もやってますけども特に危険な性質は見つかっていません。ただ最期が見えるだけですからね」
「今のところサンプルがDクラスだけで多様性が薄くてですね。他の死にざまが欲しいなと思い今回有志の被検体を集ったわけなんです」
「ふーん……あれ?自分は被検体にはしなかったのか?」
「そうですね。私は死の前の光景とか見たくないですから」
「へぇ……さっき言ってたショッキングなのにビビってるのかい?」
ブラウン研究員はひらひらと手を振る。
死に対しては皆傲慢になる。
「死は避けられない運命ですからね。わざわざ知るだけ時間の無駄です。そんなことに貴重な思考を費やしたくない」
「思考が費やされる……ってことは死に際が気になるってことじゃない?やっぱりビビってるんじゃん」
「俺は避けられない運命だからこそ死がいつか知っておきたいんだ。何か負けたような気がするだろ、死ぬって。だからこそ来るのは知ってたぜ、って中指立てて負け惜しみをしたいわけよ」
「エージェントなんて死が隣り合わせだからな。死生観とかそういうやつがだいぶ変わっちまったのかもしれねえ」
2人はゴーグルを覗き込み目を合わせた。
「目が真正面で合わないとSCP-49AY-JPは生じません。うまいこと合うまでしばらく真っ直ぐ見ていてください」
「しばらくってのはどのくらいさ?」
「これまでですとだいたい10分くらいはかかってますね。まばたきはしてけっこうですよ」
「けっこう長いな。そんなに長いこと人の眼を見つめることもなかなかない」
ピーというブザー音。
「はいOKです。顔を外して頂いて大丈夫ですよ。画像処理を行いますので少々お待ち下さい」
「あなた、昔はタバコ吸ってませんでしたよね?」
「精密機器が多い環境ではタバコは吸いづらいですから」
画面に映ったのは引き延ばされた人間の顔のようなものだった。青白い肌に虚ろな黒い目、大きく縦に開いた口……。これはなんだろうと2人が首を捻っていると──遠方から
インシデント記録: 49AY-JP
発生日時: ██年█月█日█:█
発生場所: サイト-██
概要: SCP-49AY-JPの異常性確認実験中、同サイト内に収容されていたSCP-096の収容違反が発生。SCP-096は専用独房の壁面を破壊して脱走後、叫び声をあげながらブラウン研究員およびエージェント・ビショップのいる精密機械実験室まで走りその2名を殺害。その後鎮圧までに死者24人、重傷者8人の被害を生じた。現在SCP-096は専用独房にて収容されている。
付記: 想起されないインシデントが発生する可能性を踏まえ、SCP-49AY-JPに関する異常性調査は打ち切りとし、以降SCP-49AY-JPの新規実験は無期限に停止とする。なおオブジェクトクラスはSafeのまま変更はなされない。
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