或る日常

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    昨日、君はここで死んだ。
    ある実験途中におきた不慮の事故で。
    私がそのことを聞いた時には、もう、遅かった。
    何で、どうして、と。
    私は君の顔に布をかけてあるのを見てしまって。
    私は泣きじゃくっていた。

    覚悟しているつもりだった。
    この仕事は甘くない。楽な仕事なんかじゃない。
    死と隣り合わせなんだと。入社当初の講習でも聞いた。
    わかってるつもりだった。先輩が死んだときも、気にも留めなかった。
    人は死ぬときは死ぬと。
    当たり前だ。
    死ぬときは死ぬ。何か一歩間違えれば、そんなこと、この仕事でなくとも起こり得よう。

    君は言ってた。
    「先輩、僕が死んだ時は机の3番目の引き出しの手紙を読んでください。
     内容ですか?
     言うわけないじゃないですか、まだ死んでないんですし。
     それに僕は、まだやりたいことあるので死ぬなんてごめんですよ。」

    そんな話をしてた気がする。すぐに君の机の引き出しを開けた。

    そこには、1通、私に宛てた手紙が入っていた。

    先輩、
    これを読んでるということは僕は死んでしまったのですね。
    死因は何でしょう、実験中にオブジェクトに殺される、自殺、そしてほかの職員に殺される、くらいでしょうかね。

    先輩、辛いかもしれませんが現実は変わりません。僕が死んでしまったという事実は覆らないのです。

    この手紙を読んでほしかったのは、先輩に感謝しているからなんです。
    僕がここに入ったとき、先輩は報告書の書き方、インタビューの仕方、そしてオブジェクトとの向き合い方などいろいろな大切なことを教えてくれました。
    まだ、はいって間もない、何もわからなかった僕を導いてくれた。何でかは、わかりません。
    でもうれしかった。すごく、心細かった。周りの雰囲気はピンと張っていて、居心地が悪かった。
    でも、先輩がいたから僕は毎日頑張れました。


    どこかで警報が鳴り響いている。

    僕は先輩のことが好きでした。でも、この手紙がまだあるということは、それを伝えれなかったみたいですね。


    最後に君と話したのは、あの日だったか。
    「先輩。今日の実験、終わったら一緒に食事でもしませんか?」
    「ああ、別に構わないけど、いつも一緒に食べてるじゃない。」
    「ま、まぁそうですけど…。今日は話したいことがあるんです。じゃ、またあとで、先輩!」

    君が伝えたかったのは何だっただろう…。


    先輩は…


    赤い光がともっている。
    気づいてしまった。
    さっきから鳴り響いてるこの音はオブジェクトが収容違反を起こしたときのだ。

    君のもとに行けるのならとどまっていてもいいだろうか。
    そう思ってしまい、手紙を持ったままその場に立ち尽くしてしまった。

    君は知ってた?初めは君のこと嫌いだったって。
    急に他愛のない話を振ってきて。だから私は、そっけなく返してた。
    でも、いつの日かそんな気持ちも薄れていったんだ。
    ありがとね。こんな私でも先輩をできていたんだね。
    私も好きだったよ。
    すぐに会いに行くからね。███君。










はぁ。私は何を書いてるんだろう。
Enterキーを叩いて、メールを送る。

「おーい、███、言ってたやつ書けたぞー。」
「へー、うまく書けてるじゃないですか。先輩の中の。」
「ふんだ、どうせ1年で私の上司になった███にはわからないですよー。」
「へー、そんなこと言っていいんですね。先輩」
「あなたのほうが上なんだから先輩って呼ぶのやめなさいよ。」
「じゃあ、僕のこと呼び捨てにするのやめてくださいよw」


時は流れていく。
出会い、関わり…….ときには別れるだろう。
彼らはまだ知らない、その後の出来事を。


tale-jp



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執筆者: R74
文字数: 4460
リビジョン数: 26
批評コメント: 3

最終更新: 16 Oct 2021 17:23
最終コメント: 06 Aug 2020 16:19 by R74

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