アイテム番号: SCP-2309-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: 現在、SCP-2309-JP・SCP-2309-JP-C群の存在は確認することができず、SCP-2309-JP-A、SCP-2309-JP-B群に指定されていた人物にも異常な点は確認されていません。特殊なSCP-2309-JP-C個体に関する調査は継続して行われていますが、現在までに有力な情報はほぼ入手できておらず、2021/3/31に調査は中止される予定です。流布していたカバーストーリー通り、旧██高等学校の校舎を多目的施設に改装し、財団フロント企業で運営する計画については現在協議中です。
旧██高等学校の敷地にはスクラントン現実錨を一基設置し、現実世界で現実改変現象が発生することを防いでください。SCP-2309-JPへの民間人の侵入を防ぐため、旧██高等学校の敷地は、カバーストーリー「改装工事」を流布して封鎖してください。正門・裏門にはそれぞれ警備員が配置されます。また、SCP-2309-JP-Aによる現実改変の影響とSCP-2309-JP内に残存しているSCP-2309-JP-B群の数を確認するため、週に一度、財団エージェントにより、SCP-2309-JP内の調査と各ポイントに配置されている小型監視機器の回収・再配置が行われます。
SCP-2309-JP-B群が増加していた場合は当該の人物の身元を調査し、確認済みのSCP-2309-JP-B群のリストに追加を行なってください。SCP-2309-JP-B群が減少していた場合、当該の人物の特定を即座に行なってください。特定後はその人物に異常な点が存在していないか、また、SCP-2309-JPに関する記憶を保持していないかを確認するため、一週間の監視期間が設けられます。
説明: SCP-2309-JPは、██県███市に位置する旧██高等学校の正門または裏門を、旧██高等学校の敷地外から通過することで侵入が可能な異常空間です。SCP-2309-JP内には現実世界と相似した空間が広がっていますが、不明な原理により旧██高等学校の敷地外にあたる領域への侵入は不可能です。侵入者はSCP-2309-JP内の正門・裏門を通過するすることで本来の世界に帰還することが可能ですが、その際、SCP-2309-JP内に元から存在していた物品を持ち出す試みはすべて失敗しています。
SCP-2309-JP内に存在する旧██高等学校の設備は、廃校となる以前の十分に整備された外観を有しています。また、それらが劣化する兆候は見られていません。SCP-2309-JP内に存在するいくつかの物品や、SCP-2309-JP-A、SCP-2309-JP-B群の証言は、SCP-2309-JP内では2009/4/1から2010/3/31が繰り返されていることを示唆しています。
SCP-2309-JP-Aは、戸籍上は十河 道幸(Sogou Michiyuki)と記録されている日本人男性で、現実改変能力者です。SCP-2309-JPは、SCP-2309-JP-Aの現実改変能力によって生成・保持されていると考えられています。SCP-2309-JP-Aは、クラスAに相当する現実改変能力者であると推測されていますが、その能力の影響が及ぶ範囲は一部の例外を除き、SCP-2309-JP内のみです。SCP-2309-JP保護の観点からSCP-2309-JP-Aの終了計画は恒久的に保留されています。
SCP-2309-JP-Aは旧██高等学校の平成21年度卒業生であり、2010/4/1以降行方不明とされていましたが、調査により、SCP-2309-JP内で常に生活していたことが判明しました。現在まで、SCP-2309-JP-AがSCP-2309-JPから帰還を試みようとする様子は確認されていません。
SCP-2309-JP-Bは、SCP-2309-JP内に滞在している人物群です。SCP-2309-JP-Bは、高等学校からの卒業を経験している点、卒業式に出席した翌月の4/1に行方不明となっている点が共通しています。SCP-2309-JP-Bは全員、SCP-2309-JP-Aの現実改変能力によってSCP-2309-JP内に転移したものと推測されています。
SCP-2309-JP-Bは、SCP-2309-JP内に侵入した通常の人物と同様に本来の世界へ帰還することが可能です。しかしその際、「SCP-2309-JP-BがSCP-2309-JP内に滞在していた」という事実が、「SCP-2309-JP-Bはずっと本来の世界で通常の生活を送っており、行方不明にもなっていない」と改変される過去改変プロセスを経ることが確認されています。そのため、SCP-2309-JP-Bは本来の世界に帰還する際、自身がSCP-2309-JP内に転移する直前に存在していた時間・場所に出現すると推測されています。また、帰還したSCP-2309-JP-Bは、上記の過去改変の影響によりSCP-2309-JPに関する記憶を保持しておらず、異常性も一切確認されません。
SCP-2309-JP-Cは、SCP-2309-JP-Aが現実改変能力によって生成した、SCP-2309-JP内に存在する人型実体群です。SCP-2309-JP-Cの容姿・性格・記憶・行動は、旧██高等学校の歴代卒業生の学生時代のものか、過去に旧██高等学校に勤務していた教師のものを模していることが確認されています。
SCP-2309-JP-Bの退去などによってSCP-2309-JP内のSCP-2309-JP-A・B・Cの総数が、教師としての役割を担うSCP-2309-JP-Cを除き910人未満になると、新規のSCP-2309-JP-Cが即座に生成されます。この人数は旧██高等学校の生徒数が最多であった年度の生徒数と一致していますが、詳細は不明です。
SCP-2309-JP-A・B・Cは、老化の兆候を一切見せず、SCP-2309-JP-A・Bは、SCP-2309-JPに転移した当時と同様の容姿・身体機能を有しています。
追記: SCP-2309-JPの起源に関する情報を有していると推測されている、特殊なSCP-2309-JP-C個体(暫定)の存在が確認されました。詳細については、2020/4/1に回収されたSCP-2309-JP内監視記録を閲覧してください。
発見ログ: SCP-2309-JPは、2017/10/24に、旧██高等学校付近でのヒューム値の中規模な変動・それに伴う、現実改変現象の多発・校舎内の空間のSCP-2309-JPへの接続が観測されたことによって発見されました。2007年頃から2010年頃まで、旧██高等学校付近ではヒューム値の微細な変動が観測されており、定期的な調査が行われていましたが、明確な異常性はこれまで確認されていませんでした。
上記の異常現象は、SCP-2309-JPの存在が希薄になり、現実世界と同化しかけたことによって発生した現象です。SCP-2309-JP-A・Bの証言から、この現象の原因としては、2017/10/16に発生した台風第21号による、現実世界の旧██高等学校校舎の一部倒壊が挙げられています。このことから、SCP-2309-JPの存在の成立にはSCP-2309-JP-Aの現実改変能力のみでなく、旧██高等学校校舎の存在も深く関連していると考えられています。
SCP-2309-JP発見後、財団はSCP-2309-JP-A・Bと協議を行い、
- 財団が旧██高等学校校舎の補修・保全を行い、SCP-2309-JPの存在を保護する。
- その見返りとして、SCP-2309-JP-Aは、SCP-2309-JPへの侵入口を常に開放し、財団がSCP-2309-JP内の調査を行えるようにする。
- SCP-2309-JP-A・Bの精神衛生のため、財団がSCP-2309-JPの調査を行うのは、緊急事態時を除き、週1回まで。
といった協定を結びました。しかし、SCP-2309-JPに関連する異常、特にSCP-2309-JP-Aによる現実改変の影響の円滑な調査のため、財団は長時間駆動可能な小型監視機器をSCP-2309-JP内の24箇所に秘密裏に設置しています。
以下は、旧██高等学校校舎補修工事後、SCP-2309-JPについてSCP-2309-JP-Aに行なわれたインタビューの記録です。
対象: SCP-2309-JP-A
インタビュアー: エージェント・葉木(以下、葉木)
<録音開始>
葉木: それではまず、君がこの異常な空間に転移してしまった経緯について、話してくれるかな。
SCP-2309-JP-A: えっと、はい。と言っても、自分でもよく分かっていないんですけど。
葉木: よく分かっていない、とは?
SCP-2309-JP-A: うーん。2010年の3月31日に、卒業生全員でうちの高校に集まったのは覚えてるんですけど、その後、気付いたらここの校庭に居たっていうか……。
葉木: どうして卒業生全員で高校に集まったのかな?
SCP-2309-JP-A: 俺達の代で██高校は廃校になるんで、最後に思い出作りのつもりで。校舎を一通り回った後、体育館で皆と駄弁ってたり遊んでたりしてたら、いつの間にかここに来てました。……あっ、そうだ。ちょうどその時、皆と話してたんです。「俺達の██高校が無くなるなんて嫌だ。何ならずっとここの生徒でいたい」って。
葉木: その言葉が本当になってしまった、ということかな。
SCP-2309-JP-A: はい。馬鹿げた話ですけど、今の俺には、その、何でもできる力があるみたいなんで、その力のせいでこうなってしまったのかな……なんて。
葉木: ああ、その力についても詳しく聞いておきたいな。その力を持っていることに気付いたのはいつからだい?
SCP-2309-JP-A: ここに来てからです。本当に、ここに来るまではこんな力はありませんでした。あっ、でも、この力のせいでこの世界が生まれたんだとしたら、ここに来る直前、皆と駄弁ってた時に使えるようになったのかも。
葉木: その力に限界はあるか、試してみた?
SCP-2309-JP-A: いえ。必要以上に凄いことをし過ぎて、取り返しのつかないことになってしまうのが怖くて。……ただ、今まで、やろうと思ってできなかったことはありません。ここの中だけでなら。
葉木: なるほど。それで皆が望む通り、██高校での生活が永遠に続く世界ができて、そこに皆転移して……その後、皆はどうしたんだい?
SCP-2309-JP-A: やっぱり、皆パニックになってました。ただ、この世界を作ったのが俺だからか、俺はなんとなく、ここがどういう場所か分かってました。なので、ここの事を皆に説明してその場を収めて、帰りたい奴は帰らせて……って感じでした。その時は、大体半分ぐらいの奴が残りましたね。今はもう、元から██高校の生徒だった奴は、俺含めて3人だけになっちゃいましたけど。
葉木: 中々とんでもない話だと思うけど、よく皆は君の話を聞いてくれたね。
SCP-2309-JP-A: 一応、生徒会長やってたんで。あー、でも、違うかもしれません。今思うと、その時もこの力で皆を信用させていたのかも……。自分、無意識にこの力を使ってしまうことが、たまにあるみたいなんです。
葉木: 無意識に?例えば?
SCP-2309-JP-A: 大体は、ここの生徒を増やす時です。自分の意志で増やす時もありますけど。でも、大抵自分の知らないうちに増えてます。コピー生徒の時も、外から来た奴の時も。
葉木: その、外からやって来た生徒達は、一体何なんだい?なぜ彼らはここに来るのかな。
SCP-2309-JP-A: 俺も明確には分かんないです。毎年4月1日に来るので、新入生として扱ってますけど。どうしてここに来るかっていうのも、ちょっと……。まぁ俺としては、コピーじゃない、新しい生徒に来てもらいたいって気持ちはあります。それに、あいつらも望んでここに来て、ここで生活してるんです。
葉木: 望んで、とは?
SCP-2309-JP-A: 今ここにいる奴らは皆、高校生のままでいたい、大人になりたくない奴らなんです。ここから出れば、自分達がここで生活していたことは無かった事になる。いつでも元の生活に戻れるなら、むしろ自分たちの気が済むまでここに居よう。授業はサボってもいいし、学食はタダみたいなものだし、行事の時は皆と盛り上がれる。そんな夢みたいな高校生活を送ろうって。……ほとんどの奴は、1年しない内に満足して帰っていきますけど。
葉木: なるほど。それで、君はここに最初からいるみたいだけど、ここから出るつもりは無いのかな。
SCP-2309-JP-A: もちろん。……俺だけじゃない、星司も花音もそうだと思います。こんな形だけど、俺は、俺達は、██高校を残していきたい。
葉木: 君たちがここで生活するようになってから、もう7年半が経つ訳だけど……。大人になりたくない。この学校を残したい。本当にそんな理由だけで、家族や外の友達とずっと離れて暮らしていくのかい?
SCP-2309-JP-A: [5秒間の沈黙。]はい。少なくとも俺は、この力でここを残していかなくちゃいけないし、大人になんかなれない……絶対なりたくないです。それにいざとなれば、いつでもここを無かった事にして帰れますし。
葉木: 分かった。色々聞かせてくれてありがとう。これからも僕や僕の仕事仲間がここに来ると思うけど、その時はよろしく。
<録音終了>
終了報告書: これまでの調査・インタビューから、SCP-2309-JP-Aの現実改変能力の会得・SCP-2309-JPの発生の原因は、2007~2010年頃の旧██高等学校付近でのヒューム値の微細な変動と、2010/3/31に行われた旧██高等学校平成21年度卒業生の集会であると私は推測する。ヒューム値が不安定な領域で複数人の類似する表層意識が現実改変のトリガーとなった現象には、前例が存在する。SCP-2309-JPが生成される際、SCP-2309-JP-Aが現実改変能力者へと変貌するというプロセスを経た点については疑問が生じるが、彼が生徒会長という役職を担っていた点、自校への帰属意識が人一倍高かった点から、彼がSCP-2309-JP生成・保持の要石としての役割を担うことを自他共に期待していた為に、このような結果になったのかもしれない。
また、SCP-2309-JP-Aが、SCP-2309-JP内の旧██高等学校の生徒数を保つため、無意識に現実改変能力を行使する事例が存在することについては、より詳細な調査が必要であると考える。SCP-2309-JP-Aが、外部からここで生活したいと願う人間を呼び寄せるのは、現実改変によって生成された存在でない、実在する人間の存在によってSCP-2309-JPという空間の現実的強度を保つためだろう。しかし、それをSCP-2309-JP-Aは意識して行なっているわけではない。SCP-2309-JP-CのほとんどがSCP-2309-JP-Aと面識がない、かつて旧██高等学校に通っていた人間を模している点。SCP-2309-JP内の生徒数が910人以上である状況が自動的に保持されている点。SCP-2309-JPの存在の成立には、現実世界の旧██高等学校校舎が深く関連していると考えられている点。これらを考慮し、私は、SCP-2309-JPの保持にはSCP-2309-JP-A以外の旧██高等学校に関連する存在の意志が深く関わっていると推測する。 -一鍵博士
補遺: 2020/4/1以降、SCP-2309-JPの存在が確認できなくなり、侵入が不可能となりました。また、SCP-2309-JP-AとSCP-2309-JP-Bの全てがSCP-2309-JP外に退出したことが確認されました。様々な調査により、SCP-2309-JP-Aの現実改変能力は消失しており、全てののSCP-2309-JP-Bと同様に、SCP-2309-JPに関する記憶も消失していることが判明しています。SCP-2309-JP-Aには3ヵ月の監視期間が設けられましたが、その間、異常な点は一切確認されなかった為、一般社会に解放されています。これによりSCP-2309-JPに関連する異常な存在は全て消失したと見なされ、オブジェクトクラスはNeutralizedに修正されました。
以下は、SCP-2309-JPが消失した経緯に関連していると考えられているSCP-2309-JP内の監視記録の抜粋と、SCP-2309-JP消失後、2020/4/6にSCP-2309-JP-Aに行なわれたインタビューの記録です。
文書:2309-JP/監視記録の抜粋を閲覧する。
対象: SCP-2309-JP-A
インタビュアー: エージェント・毛呂宮(以下、毛呂宮)
<録音開始>
毛呂宮: お忙しいところ、申し訳ありません。
SCP-2309-JP-A: いえいえ、大丈夫ですよ。それで、私の高校卒業後の話がお聞きしたいんでしたっけ?
毛呂宮: はい。当時、何か不思議な体験をしたというような記憶はございませんか。
SCP-2309-JP-A: うーん、特にこれといったことは……ああでも、その頃から、夢を見る機会が増えた気がしますね。
毛呂宮: その夢の内容は?
SCP-2309-JP-A: ただ普通に、高校で仲間たちと共に過ごすだけの夢です。まあ、夢なので、全然知らない奴がクラスメイトだったりするんですけど。いやぁ、そんな感じの夢を今になっても時折見るんですよ。余程、高校生活が印象に残っているんでしょうね。本当にいい学校でしたよ。……その当時通っていた母校は、私達の年で、廃校になってしまったのですが。
毛呂宮: その夢で、何か気になる点はありませんか。
SCP-2309-JP-A: えっ。いや、さっき言った通り、知らない人がクラスメイトとして出てくること以外は、特に……。でも、夢の中では、彼らと昔からの友人のように話したりしています。本当に、会ったことは無いはずなのに。
毛呂宮: 分かりました。では次に、あなたのご友人である、小羽 星司さん、櫻野 詩歩さん、……空野 花音さんについて、高校卒業後に気になったことはありませんか?
SCP-2309-JP-A: いえ、特には。星司とは大学も同じでしたけど、変なことは……。あっいや、そういえば昔、星司と花音も高校生活の夢を見たとか言っていたような。どれぐらいの頻度でとかは、覚えてないか聞いてないかで、分からないですけど。
毛呂宮: それはいつ頃のことでしょうか。
SCP-2309-JP-A: ……花音が生きていた頃なんで、8年前……2012年頃ですかね。
毛呂宮: その、すいません。空野さんは……。
SCP-2309-JP-A: ああ、こちらこそすいません。気にしないで下さい。ご存知みたいですが、花音は癌で、2012年末に亡くなってます。でも別に、故人の話を避けたりとかは、しなくていいですから。
毛呂宮: では……先ほどの、夢の話について。星司さんと花音さんは、どのようなことを話していたのでしょうか。
SCP-2309-JP-A: 確か、自分と同じような感じでした。母校で知らない人達と共に学生生活を送る、不思議な、でも楽しい夢であったと。ああでも、詩歩はそういった夢を見たことが無かったみたいで、自分だけ仲間外れのようだと、怒っていましたね。ははは。
毛呂宮: なるほど……。では、夢の話以外でご友人の方々に関する気になる点はございませんか?
SCP-2309-JP-A: いえ、3人揃って同じ夢を見るという、奇跡的なことがあった以外は……。ああ、まぁ、奇跡と言えば一つだけ、印象深い出来事があります。
毛呂宮: それは、どのような?
SCP-2309-JP-A: 友人4人だけで病室で行った、花音の誕生会です。知ってますか?再発した癌の治療の成功率ってとても低くて、余命もおよそ半年とか言われてるんですよ。で、花音の癌は、彼女が18歳の時に再発したものだった。
毛呂宮: それは……お辛いですね。
SCP-2309-JP-A: ええ。まず、次の誕生日は迎えられないだろうと、誰もが信じていました。でも、花音は次の誕生日どころか、その次の誕生日を迎えて、20歳になった。あいつは、大人になれたんです。病状もすごく安定してたんで、花音の病室に幼馴染4人で集まって、はしゃぎあって、一緒に乾杯したりして……。ああ勿論、花音に酒を飲ませたりはしてないですけど。その日はとても楽しくて、一分一秒が愛おしくて……奇跡というものが、本当にあるのだと実感した一日でした。……ただ、その次の誕生日は、迎えられませんでしたが。
毛呂宮: そんなことがあったのですね……。色々聞かせていただき、ありがとうございました。
SCP-2309-JP-A: いえいえ、こちらこそ、思い出話を聞いてもらっちゃって悪かったです。
毛呂宮: そんな。お忙しいところ、押しかけたのはこちらです。今、十河さんは、癌の治療の研究を行なっているのでしょう?
SCP-2309-JP-A: ええ、はい。主に小児癌や、若年層の方々の癌を。理由は……既に分かってもらえているかもしれませんね。彼女のように、病で苦しむ人々が居なくなるように。誰かが、病のせいで大人になれずに亡くなってしまう、そんな悲しいことが起こらないように。まだまだ未熟ですが、自分の夢のため、頑張っていきたいです。
毛呂宮: ……なるほど。では、これ以上お時間をいただくわけにはいかないので、これでインタビューを終了します。本日は、本当にありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書: 当インタビュー後も、SCP-2309-JP-Aに対する調査は複数回、長期間に渡って行われたが、SCP-2309-JPに関する明確な記憶の保持は確認できず、現実改変能力を行使していた形跡も見られなかったため、十河氏に対する、SCP-2309-JP-Aへの指定は解除された。
ファイルページ: 学校
eagle-yuki
ソース: http://scp-jp-storage.wikidot.com/file:3981783-1-ejrt
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
タイトル: 学校
著作権者:
公開年: 2021
Discordでの批評を受け、SCP-2309-JP-Bに関する説明の修正と、最後の監視記録に登場するSCP-2309-JP-Cの描写の追加を行いました。引き続き、ご批評よろしくお願いいたします。
追記: SCP-2309-JP-Aと監視機器についての描写の修正・SCP-2309-JP-Cの描写の更なる追加を行いました。引き続き、ご批評よろしくお願いいたします。
ご批評ありがとうございます!
おお。良かったです。
正しくその通りだと思います。SCPとしては珍しい部類の話であるとは思いますが、この形式でのこういったストーリーが受け入れられるかどうかが一つのネックですね。こればっかりは、実際にVoteがどうなるかを見ないと分からないかもです。
全力で同意します。
感想
本気で泣きました。いい話です。ストーリー性や記事の記録を含めた上でメタタイトルを見たらもう一度泣きました。
SCiPで青春したっていいじゃないか!
そう思います。いい青春を楽しませていただきました。これからも執筆頑張ってください。
やっぱり、王道を行く物はいつ見ても面白いです!
ご批評ありがとうございます!
そこまで言っていただけるとは……!メタタイトルの意味に関しても触れていただけて嬉しいです。
ただ、やはりまだ捻ってみたい所はあります。もう少し推敲してみる予定です。
拝読しました。
内容
良くも悪くも王道のストーリーラインだと思います。オチまでしっかり書き切れているため、話として成立していますね。ただ、その分オブジェクト自体のオリジナリティが弱く、予想可能なストーリーであるために感動に至るまでのインパクトが薄く感じました。
前者のオブジェクトのオリジナリティですが、ストーリー上必要な舞台であるのは理解できます。しかし、ありきたりであるが故に以降のストーリーへのフックにならず、説明部分が冗長に感じました。オブジェクトを目新しくするか、ある程度短くしてサッサと次に行かせる方が効果的かなと思います。
後者のストーリーですが、-Aが選ばれた理由や-Aが直面する問題、-Aと他の登場人物たちとの関係性が弱く、人同士の部分をメインにするには愛着の湧くキャラクター性や、彼らの間で発生する問題が薄いのが気になります。特に-Bのメインである星司と花音が-Aのための舞台装置に感じられました。彼らは相当長い付き合いのようですが、その間の時間に何もやっていなかったような感覚を得ました。これは、そのような長い付き合いがあればもっと別の手段で、あるいはもっと-Aに寄り添って脱出という選択を取るだろうと思うからです。これまでの彼らに何があったのかを想像できる余地を作り、彼らのキャラクターに深みを出したいですね。また、-Aがこの場所にこだわる理由が抜粋記録の最後にある部分だけでは弱い気がします。現実改変者らしい(?)己のエゴを出した理由付けでもないと、正義感、もしくは奉仕精神だけで何年もこの空間の運営はできないんじゃないかなあと思いました。最後の抜粋で全部ネタばらししちゃうのも想像の余地を失くしているため、あまり効果的な表現じゃないように思います。全部書かれていると、読者はそれを受け取ることしかできず、感情の動きに発展しません。明示を減らしたいところです。
細かいところ
無くても成立しそうな部分が結構多いです。例えば、-Aを終了しない理由については箇条書きにせず、「SCP-2309-JP空間を維持するため」と一言書いてしまえば事足ります。現状では発見経緯部分が特に物語上あまり重要ではなく長いところなのでカットor短縮したいですね。
ちょっと引っかかります(宗教上のあれかもしれません)。「外部の」「本来の」などの表現への置換、もしくは「現実世界の」という装飾を取っ払った方が綺麗に読めるような気がします。
不適切な表現です。何年何月何日に発生した台風何号かをしっかり記載すると、報告書らしさが出ます。
説明と二重になっている部分や、このオブジェクトの肝になっている部分を明示しすぎな気がします。ここをカットor最低限にして、抜粋に全てを託したい気持ちがあります。
僕からは以上です。散々色々なことを書きましたが、文章自体はちゃんと書けているため、あと一捻り、もしくは一深みあればどうにかなりそうに感じます。改稿頑張ってください。
ご批評ありがとうございます!現状の問題点をハッキリ明示していただけて、本当に助かりました!
話として面白くするならば前者ですが、執筆難易度は中々高そうですね……。もう少し考えてみて、自身の力量では難しそうでしたら、後者の方法でいきたいと思います。
私が漠然と感じていた問題点を、明確に文章にして指摘していただけて、感動しております。記録中のストーリーを、より彼らの過去・人物像を掘り下げる方針で改稿してみようと思います。(ただ、これ以上記録が長ったらしくなると、報告書としての違和感がいよいよ天元突破しそうなので、不要な描写の削減も並行して行いたいと思います)
個人的にここに関しては、現状の、「そんな理由だけで!?」感を保ちたいので、あまり弄らないかもしれません。もちろん、良い改稿案が浮かんだ時や、同様の指摘を複数いただいた場合は、この限りではありませんが。
全くその通りであるとは思うのですが、「明示しすぎ」と「分かりづらい」の境界を見つけるのが非常に難しい(現状、特殊な-C個体周りの描写に関して特に苦戦中)ので、描写の改善に全力は尽くしますが、明示している点を大幅に減らすことはないかもしれません。極端な話ですが、何もかも有耶無耶にするよりは、全てを語り尽くしてしまう方が、読者ウケは良いと思うので。
全般的に言うことは無いです……って言っちゃうと、なんかアレですね。書かれていることは概ねその通りだと思うので、指摘された点は大体そのまま修正しようと思います。
拝読した上で、大抵はhasuma_sさんと同意見です。加えて言うとすればかなり句点が多いことです。
これを、
ここまで削っていいです。具体例全てあげるとキリがないので意識的な話として。
総評としてはやはりストーリーラインが想定の域を出ないのでdvとなります。
ご批評ありがとうございます!もう少し可読性を考慮してみたいと思います。また、全体的なストーリーに関しても改稿を続けようと思います。