自由になれなかった翼のない鳥の死体たち(仮題) 改稿前参照用
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捕獲され、現在飼育中のSCP-XXXX-JP-A・B群の一例。

アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXXX-JPの収容方法は確立されていません。財団はSCP-XXXX-JPの発生とその異常性の民間人への露見を防止するため、カバーストーリー「投身自殺防止」を流布し、全国の中層建築物及び高層建築物の屋上・窓への柵・安全ネットの設置を推進しています。SCP-XXXX-JP発生の瞬間を記録した映像やSCP-XXXX-JPに関連するSNSへの投稿等は財団Webクローラーによって削除され、投稿者には記憶処理が行われます。

SCP-XXXX-JP-A・B群に関しては、それら自体の生態において異常性は確認されていないこと、それらが生態系へ与える影響はほぼ存在しないことの2点を理由に、その捕獲は必要とされていません。研究を目的に捕獲されたSCP-XXXX-JP-A・B群に関しては、サイト-81██の低危険度生物飼育セルにおいてそれぞれの種に応じた適切な飼育が行われています。

説明: SCP-XXXX-JPは、日本国内において人間(以下、対象)が高所から落下した際に不定の確率で発生する異常現象です。また、対象への身辺調査やSCP-XXXX-JP発生時の状況等から、SCP-XXXX-JPは、対象が所謂「投身自殺」を行う予定であった際に発生するものと考察されています。

以下はSCP-XXXX-JP発生時の流れです。

フェーズ フェーズ内容
フェーズ1 投身自殺を目的に高所に来訪した対象の下に、鳥類に分類される何らかの生物(以下、SCP-XXXX-JP-A)が1羽飛来する。この時に飛来するSCP-XXXX-JP-Aは非異常個体であり、確認されている種は後述のSCP-XXXX-JP-B群のものと類似している。
フェーズ2 対象がSCP-XXXX-JP-Aの存在を認識する。この時、対象はSCP-XXXX-JP-Aに対して動揺する、接近する、対話を試みるといった様々な反応を示すが、その大半はSCP-XXXX-JP-Aに対して好意的なものである。
フェーズ3 SCP-XXXX-JP-Aが移動を始め、対象はそれに追尾する。その後、SCP-XXXX-JP-Aは自身が立っている高所から飛び立つ。この段階までであれば、対象を高所から引き離す・SCP-XXXX-JP-Aを捕獲する等の方法でSCP-XXXX-JPを中断させることが可能である。
フェーズ4 対象がSCP-XXXX-JP-Aを追い、高所から飛び降りる。その落下中、対象の肉体及び衣服が鳥類に分類される何らかの生物(以下、SCP-XXXX-JP-B)へと急速に変異を始める。変異が終了したのち、SCP-XXXX-JP-Bは空中で飛翔を始め、SCP-XXXX-JP-Aの横についてしばらく飛行を行う。その後SCP-XXXX-JP-A・Bは別れ、それぞれ通常の個体と同様の生態を示すようになる。

対象のSCP-XXXX-JP-Bへの変異は現在まで、スズメ(Passer montanus)への変異が24件、ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)への変異が18件、カワラバト(Columba livia)への変異が15件、ハシボソガラス(Corvus corone)への変異が14件、ツバメ(Hirundo rustica)への変異が12件、ウグイス(Horornis diphone)への変異が5件、トビ(Milvus migrans)への変異が4件、オオハクチョウ(Cygnus cygnus)への変異が3件、オカメインコ(Nymphicus hollandicus)・ウズラ(Coturnix japonica)・ブンチョウ(Lonchura oryzivora)への変異が1件ずつ確認されています。このことから、SCP-XXXX-JP-B群は十分な飛行能力を有しており、日本国内において散見される種であるという傾向にあると推測されています。SCP-XXXX-JP-Bには身体面・精神面共に対象との連続性は確認できず、それぞれの種の非異常個体と完全に同一の生態を持つようになることが判明しています。

補遺1: 2020/09/18に、SCP-XXXX-JP発生時のフェーズ3の段階で対象が自発的にSCP-XXXX-JPを中断させた事例が確認されました。これにより、SCP-XXXX-JPの異常性に対象への行動の強制は含まれないことが判明しました。

以下は、当該の事例の記録です。

概要: 当記録は、全国の中層建築物及び高層建築物の屋上に設置されていた監視カメラの映像を、SCP-XXXX-JPの調査のために財団が確認を行っていた際に発見されたものである。撮影場所は東京都大田区に所在する███マンションの屋上であり、対象は当時32歳の舘内 明夫氏。撮影日は2020/09/14。

<記録開始>

[舘内氏が画角内に映る。屋上の外縁部に向かって歩いている様子である。歩行速度は遅く、時折ふらつきも見られる。]

[外縁部のフェンスから約3m程離れたところで舘内氏が座り込む。床を殴りながら嗚咽交じりに発言を行っているが、内容は判別不能。]

[1分22秒後、舘内氏の下にSCP-XXXX-JP-A(ハシブトガラス)が飛来する。SCP-XXXX-JP-Aは舘内氏に向かい、複数回鳴き声を上げる。]

舘内氏: カーカー、カーカーうるっせぇな!んだよ。お前に何が分かんだよ鳥公が!
[SCP-XXXX-JP-Aは鳴くことを止め、舘内氏を見続ける。]

舘内氏: [舌打ち]……アホらし。鳥に怒鳴ってどうすんだ。大体、[判別不能]だしよぉ。[5秒間の沈黙]あーあ!カラスはいいよなぁ!好きなように空飛んで、人間様のおこぼれにあずかってりゃ生きていけるんだ。
[SCP-XXXX-JP-Aが1度、舘内氏に向かって鳴き声を上げる。]

舘内氏: ああそうか、なるほどな。俺も自由に空を飛べたらなぁ。それで、あのクソ会社から逃げてやるんだ。
[SCP-XXXX-JP-Aが舘内氏に50cm程接近する。]

舘内氏: おうよ。俺が居なくなってもあの無能上司と同僚どもしか困る奴はいないからな。ったく、いつも俺を見下しやがって。せいぜい俺の重要さを思い知れってんだ。
[SCP-XXXX-JP-Aが舘内氏に向かって1度鳴き声を上げた後、屋上の外縁部に移動を始める。舘内氏はそれに追尾する。]

舘内氏: おうおう。案内ご苦労さん。はっ。これでアイツらも[判別不能]なあ。[4秒間の沈黙]あーあ。なんでこんな人生になっちまったんだろ。

[SCP-XXXX-JP-Aがフェンスに飛び乗る。舘内氏はフェンスに手をかけ、身を乗り出して下方を覗く。]

舘内氏: 高ぇな。ここから落ちりゃ、確実に死ねそうだ。
[SCP-XXXX-JP-Aは舘内氏に向かって1度鳴き声を上げ、氏を見続ける。舘内氏の足は震えている。]

舘内氏: 急かすなよ。ちょっと、その、色々振り返ってんだ。
[舘内氏は37秒間下方を覗いた後、ため息をついて体を反対側に向け、フェンスにもたれかかる。]

舘内氏: こっから飛べば、本当に全部終わりなんだな。……終わっちまうんだな。

舘内氏: ……なぁ、鳥公。本当に、これで合ってんのかな。やっぱ、こういうのは、さ、駄目なんじゃねえかな。
[舘内氏がフェンスにもたれかかったまま座り込む。]

舘内氏: 俺さ、稼ぎだけなら悪くはないんだよ。その稼ぎを使う暇は無いんだけどな。ハハ。……今はこんな無精髭の冴えないぼっちリーマンだけどさ、中学の時はダチが多くて、彼女だっていたんだ。だからさ、ちゃんとやれば結婚だってできるんだよ。多分。

舘内氏: 仕事もまあ、キツいけどさ。土方とか警備員とかやってる奴らよりはマシだろ。それに、結構褒められたことだってあって、「その調子ならすぐ昇進だな」なーんて言われたこともあって……。あ、それ言ってくれた上司さ、すぐ異動になって今の無能野郎が来たんだよな。上司があの人のまんまなら俺は多分もっと伸びてたよな。
[SCP-XXXX-JP-Aが舘内氏から視線を逸らす。舘内氏がフェンスに背を向けたまま立ち上がる。]

舘内氏: きっと、今死んだらさ。あっちで母さんにも怒られると思うんだ。ああそうだ。人生まだまだ可能性があるのに、こんなとこで死ぬなんて良くないよな。うん。ああ、ちょっと悪酔いしてたんだよ。いやー、目が覚めたなあ!
[SCP-XXXX-JP-Aがフェンスの外側を向いたまま、複数回大きな鳴き声を上げる。]

舘内氏: [小さい悲鳴を上げ、フェンスから離れてSCP-XXXX-JP-Aを見る]んだよ。だから、さ。……怖えんだよ。死ぬとか、できる訳ないだろ。まだ、何とかなるかもだし……。
[SCP-XXXX-JP-Aがフェンス外に飛び立つ。]

舘内氏: あっ![フェンスから身を乗り出し、SCP-XXXX-JP-Aに向かって手を伸ばす]……ああ、いや。これでいいんだ。俺は生きる。生きて成功してやるからな!
[舘内氏が屋上から退出する。]

<記録終了>

終了報告書: 当記録の回収後に舘内氏にインタビューを実施したが、記録中の内容に関して氏は明確に記憶していないことが判明した。これは当時の氏が泥酔していたためか、SCP-XXXX-JPの異常性によるものかは不明。今後は類似の事例の存在について重点的に調査が行われる予定。また、舘内氏には2020/10/14まで経過観察が実施される。

補遺2: 2020/10/07に、舘内氏の所在が不明となっていたことが判明しました。これはSCP-XXXX-JP担当外の職員からの指摘により判明したもので、調査の結果、2020/10/02以降は舘内氏の経過観察が行われておらず、SCP-XXXX-JP担当職員はそれに一切の違和感を抱かないまま業務を続行していたことが判明しました。

財団はSCP-XXXX-JPの異常性により何らかの認識災害が発生したものと仮定し、担当職員全員に記憶補強材を服用させた上で舘内氏の所在について調査を実施しました。その結果、舘内氏が居住していた地区の監視カメラから以下の記録が確認されました。

概要: 撮影場所は東京都大田区に所在する███ビル付近の交差点。撮影日は2020/10/04。

<記録開始>

[舘内氏が画角内に映る。遅い足取りで横断歩道前に移動する。]

[歩行者用信号が青に変わる。しかし舘内氏は横断歩道を渡らず、やがてその場に座り込む。舘内氏の行動について、他の通行人は反応を示さない。]
[歩行者用信号が点滅を始める。舘内氏の向かい側から走って横断してきた歩行者が舘内氏と衝突する。歩行者の膝が舘内氏の顔面に当たる形となり、舘内氏は痛みに顔をしかめている。歩行者はその場で転び、立ち上がってから一度振り返るがすぐにその場から立ち去る。]

[舘内氏がうずくまる。その様子から、泣いているように見受けられる。]

[歩行者用信号が赤に変わる。舘内氏の横に信号待ちの通行人が数名集まるが、全員、舘内氏に対して反応を示さない。]

[舘内氏が立ち上がり、車道へと歩みを進める。ある程度進んだところで立ち止まり、空を見上げる。通行人は舘内氏の行動に対して反応を示さない。]

[舘内氏が横断歩道上で大型トラックと衝突する。トラックは衝突前後で減速などを一切行なっていない。通行人は舘内氏に対して反応を示さない。]

[舘内氏が消失する。舘内氏がトラックと衝突したと見られる場所には両翼が根元から切断されている、死後1週間程が経過しているように見えるカワラバトの死体が残されている。]

[再度、歩行者用信号が青に変わる。以降、横断歩道上の上記の死体について通行人は基本的には関心を向けず、死体を踏んだ/踏みかけた一部の通行人は死体に対して嫌悪の表情を向ける様子が確認されている。]

<記録終了>

当記録の確認後、財団は記録中に登場したカワラバトの死体の回収に成功しました。その後の調査の結果、この死体からは微弱な反ミーム性が検出されることが判明しました。

これにより、準超常現象-280012としてこれまで調査が行われていた、「微弱な反ミーム性を持つ、両翼が根元から切断されている鳥類の死体が各地で発見される現象」とSCP-XXXX-JPの関連性が指摘され、現在、当該の死体をSCP-XXXX-JP-Cと定義した上で調査が行われています。


付与予定タグ: scp jp keter 死体 鳥類 認識災害 反ミーム 変身 未収容 予知


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