falsehood-19--b5b6

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「第28区画、現実性0.83Hmまで低下しています」
「M級SRA1の出力を75%まで引き上げろ」
 彼が幾つものサイトの総指揮を担う様になったのは、いつからだったろうか。
「次の低現実波到達まで、残り300秒です」
「第1、2、4防衛区の対低現実波措置完了を確認、広域現実励起範囲から除外します」
 地下3,000メートルに位置する第一仮設発令室に報告が殺到する中、監督官の背後にあるドアの電子ロックが解除される。
「特任管理官、状況は如何ですか」
 臨時監督官、もとい特任管理官である道策は、背後の黒尽くめを一瞥した。
「緊急事態である事を理解しての戯言か?」
「特任管理官の業務を何ら邪魔する言で無い、と言う事は理解しています」
「買い被らないで貰いたい」
 一見無駄に思える会話をしつつ、現れた男は道策の横に立ち、懐から一本のメモリーを差し出した。
「『校閲』した報告書です。ファイルを開けば即座に関係各位へ送信されます」
 道策はそれを受け取り、躊躇無く端末に差し込んだ。手早くフォルダを展開、ファイルを開く。
「……成る程。アフターサービスまで完璧だな」
「恐れ入ります」
 現れた男はそのまま、黙って発令室の様子を眺める。道策と異なり、目を瞑ったまま、各報告をじっと聞いている。
「"稲妻"」
彼岸花で構いません。倫理委員を辞してはいませんし」
 肩書きを即座に否定する。彼が財団日本支部理事"稲妻"代行を拝命したのは、先代が行方不明となった四ヶ月前。
「仕事も、就任前と変わりはしません」
「流石、理事会直属の特殊校閲班出身は違うな」
 冗談とも皮肉ともつかない口調に、"稲妻"は微笑で返す。
「ええ。財団日本支部理事会特殊クリアランスは、レベル4クリアランスより便利なんです」
 その時、オペレーターの一人が、次の低現実波到達までのカウントダウンを開始した。
「残り、9、8、7、6」
「待機SRA、起動完了」
「3、2…到達を確認。次の低現実波到達まで、残り2,000秒です」
 何事も無かった様に、全てが進行している。
「慣れた物ですね。サイトを二十以上は潰している現象でしたが」
「我々は学んだ」
 一言だけ返し、手元の端末に向き直る。
「43のステージⅣはどうなった」
 43とは、現在確認されている『穴』の通し番号、ステージはその規模を示している。
 現在SCP-1280-JPと呼ばれている異常空間が現れた時、誰も、世界中に危機を及ぼす脅威になろうなどと、思いもしなかった。現実性の局地的な低下、それを齎す2何らかの未知の物質が存在するのだろう。そう考えられた。
 場当たり的な特別収容プロトコルを実施していた或る日、それが只の3低現実性空間では無いと明らかになった。
 他の世界のSRAの現実性吸い込み元。それが『穴』の正体だった。そして、穴は連鎖する。本来、SRAの現実性吸い込み元は、既に"死んだ"世界になる様プログラムされている。しかし、どこかで機能不全に陥ったSRAが、吸い込み元の空間座標設定を間違えたまま作動し、まだ"生きている"世界から吸い込み始めた。現実性の高さとは、つまり"変化への耐性"と言い換えても良い。座標軸と制御の壊れたSRAは、「現実性を移す」と言う命令の履行だけを続け、そのまま自らの現実性により固定化される。結果、崩壊する事も機能停止する事も無いままに、現実を奪い続ける略奪者と化す。
 そして、略奪された世界のSRAもまた、略奪者へと身をやつすのだ。
 ステージⅣに分類されている43番は大型且つ強力な低現実点であり、その向こう側には超大型SRA、恐らくは世界維持現実網を構築する基幹機体であろうと推測される。
「43は、既に処置が進行中です」
 彼岸花は懐に手を入れると、一枚の紙を取り出した。一見して英語で書かれた通知書の様に見えるをれを覗き込んだ道策は、情動を顔に浮かべる事も無く目を離す。
「わざわざ持って来るとは、随分と用意が良いじゃないか」
「そろそろ知りたがっておられる頃かと思いましたので‘」
 片手で器用にプリントを畳むと、再び懐へ戻す。
「詳細は省きますが、簡潔に言うと、GOCの所有するルーン式アストラル場撹乱砲弾を用いてポータルを吹き飛ばします」
 道策が始めて、僅かに眉を動かす。
「可能なのか?」
 ゆっくりと頷く、元倫理委員。
「非常に不安定な手段ですが。現状の見立てでは、我々の保有する異空間開通技術と補完すれば、84%程度の確実性を確保出来ると推測されています」
 事務方の持参した申請書に手早く署名し、道策は端末から待機中機動部隊の補給中フラグを解除した。
「失敗すれば?」
 管理官クラスの権限を持っていても、財団の技術全てに関して知識を持っている訳では無い。まして世界の存亡を賭けた臨時優先収容プロトコルの最中、他の部署が仕入れた他の組織の技術など、把握していよう筈も無い。
「確認した者はいません」
 必要十分な事実。それ以外の要素は語るに及ばず。
「つまり、空間閉鎖の用意中だと」
「ええ」
 自分が出すべき指令を全て出し終えた事を確認し、臨時監督官不在のスイッチを押す。彼岸花に目配せすると、発令室のドアを潜った。

---

SCP-1153-JP改三型封鎖装置を建造中の模様です。無論、私は知らされていませんが」
 所変わって、サイト管理官室。嘗て道策が着任していたサイトのそれに比べて僅かに広く、そして頑強な作りだ。彼が元いた場所は、世界維持現実網を形成するには些か4地の利に乏しく、臨時監督官が座すには不適当であると判断された。その為、既に複数のサイトを掌握する特任管理官となっていた、彼が管理するサイトの一つに拠点を移している。
「改三型か……どこで研究しているのやら」
「理事会も掴んでいません。"獅子"の手の者が調査を進めていますが、何せこの状況です。どこの誰が何を知っているのか、これまで得たリソースは、ほぼ無駄になったと言って良いでしょう」
 管理官室のマイクやカメラは、室外からのアクセス権が存在しない。その為、機密に関わる会話をするには最適である。
 当然ながら、財団日本支部理事会は、SCP-1153-JPについて知らない『事になっている』。知る手段が存在する事も、それに対抗措置を講じた事も、全ては秘密裏に。
「物理的のみならず、空間力学的に完全な分断を行う事が可能な仕上がりの様です」
「で、それはGOCには伝達済みなのか?」
「恐らくですが……」
 首を横に降る彼岸花。財団は、相手の信用を失う事を先んじて行わない。有事に際しては、複数の交渉カードを用い、或いは強硬手段でもって事態を打開する。
「しかし、これは画期的な試みです。防戦一方であった我々が、『穴』に対して攻勢に出る、唯一の手段やも知れません」
 或いは、空間を破壊する他の手段が発見されるかも知れない。しかし、それまで人類文明が存続している保証は、どこにも無いのだ。
 無論、『穴』の向こう側に存在するSRAを破壊する試みも検討された。だが一部の世界でのSRAは、現実性の安定した供給を実現する為、その世界特有の特殊な設備を備えている事がある。43の向こう側のSRAがその一例であった。双方向性断絶技術が用いられていると思われ、開いたポータルは吸い込む側からしかアクセス出来ず、吸われる側からは、現実性以外の如何なるエネルギー・物質の通過も出来ない。従って、『道』その物を破壊する以外の手段は存在しない。
「ポータルを重複開通してSRAを破壊した方が確実では?」
「空間が引き千切れますよ」
 そう言いつつ、彼岸花は懐からもう一つUSBメモリーを取り出した。道策が開いた端末に突き刺す。
 複数の警告ダイアログが現れては消え、数枚のPDF書類が表示された。
「……先日の事故か」
「はい。幸い死者はゼロ、研究員一名が左小指を喪失するのみで済みました」
 添付された写真には、部屋の中央から半径2メートル以内の物品が綺麗に消滅した研究室が写っている。
「この机のエンブレム、F4サイト群のどこかか」
「ええ。有事の際のリスクが最も低い研究施設です」
 道策がデスク後ろの壁を叩くと、一部が横にずれ、ワインセラーが出現した。一本を取り出すと栓を抜き、グラス二つに注いでデスクに置く。
「これはどうも」
「事前予測の結果は?」
「成功率は5.2%でした」
 グラスをクルクル回した後、ほぼ同時に鼻へ運ぶ。
「高確率で世界が滅ぶと分かっていて実験したのか?」
「もう滅びかけています」
 事も無げに言うと、素知らぬ顔で葡萄酒を口にした。
「理事会のする事は分からんな。大陸の方は今どうなっている?」
 大陸とは、中国支部の事。
「現在はO5-8が遠隔で陣頭指揮を執っています。当面は問題無いでしょう」
「現場入り、と言う訳には行かないか」
「勿論」
 O5評議会員は、常に安全な場所にいなければならない。現在、世界中でO5評議会員が出張出来る場所と言えば、81地域位のものだ。
「で、先程拡散した報告書の件だが」
 初めに受け取ったUSBメモリーを返却する。受け取った彼岸花は、そのまま尻ポケットに滑り込ませた。
「監視は継続しているか?」
「撒かれました」
「"い"・"ろ"・"は"、それぞれ幾つになった?」
 "い"・"ろ"・"は"とは、現状を打開する為、或いは失敗した際のフェイルセーフティとして財団が認定した事象の区分である。"い"が「財団主導で行う事象」、"ろ"が「要注意団体或いは人物主導で行う事象」、そして"は"が「主となる実行者の如何に関わらず、他の要注意団体或いは人物及び如何なる存在にも情報共有が行われない事象」と定義される。
「"い"に七件、"ろ"に八件、"は"に三件、いや、未分化だった先程の報告書を合わせて四件が登録されていますね」
 道策が、改めて報告書を開く。
「情報流出の危険性は」
「全て排除済みの筈です」
「筈、か」
「"千鳥"の専門ですので」
 本来は、理事がそれぞれオブジェクトの責任を分担し、重要なオブジェクトに関してのみ、関連するすべての情報を理事会内で共有する。しかし、世界が今わの際に立たされている現状、些細なオブジェクトに要人を割く余裕、全員で一々全てを共有する余裕は無い。
 その時、管理官を呼び出すブザーが鳴り響いた。
《管理官、レベル4セキュリティクリアランス相当の通信が来ています。繰り返します---》
 管理官はグラスを一気に呷り、ボトルと共に背後の棚に置いた。理事が続けてグラスを空ける。
「申し訳無い、行かなければ」
 軽く頭を下げる。
「いえ、私も長居し過ぎた様です。業務に戻らなければ」
「次は、ゆっくりと飲んで頂ける様にしましょう」

---

「音声通信か?」
 怪訝な顔を向ける道策に、壮年の記録官は首を縦に振る。
「ご覧の文面の通りです。認識災害/情報災害ベクター対抗措置は万全です」
 手元のパネルに表示された文書には、これまでのやり取りの責任者と直接話したい、と言う旨が書かれている。
「ふむ……」
 高位機密通信室で、道策はマイクのスイッチを押した。
「こちら財団特任管理官道策。どうぞ」
 ノイズが酷い。しかし、辛うじて声は聞こえる。
《ヴォルタール、キレーネ》
 落ち着いた、若い女性の声。
「ヴォルタール、現状の説明を願う」
 背後で、記録官がキーボードを叩き続ける。
《現実が失われ、動いていた物は全て溶けた肉となり流れています。生えていた物は骨の如き白色になり、機械は奇怪な叫びを上げている様です》
 音声が次第にクリアになる。通信用エネルギーポータルが安定して来たらしい。
 内容は、おおよそ財団が事前に調査した結果と共通しており、目新しい点は無い。
《首尾は?》
「問題無い」
 これは、彼女らに関する情報の統制に関わる話。先刻彼岸花が持参した『校閲』済み報告書は、この一件に関する物だ。
 現在通信が繋がっている空間は、サーカイトが発見した物では無く、財団が世話した物である。更に言えば、彼女らが移動する際、全面的にサポートし、他の超常組織から隠蔽した。
《あと一月あれば、こちらの体制は整う予定です。それまで順調に履行される事を期待します》
 もしGOCが、「サーカイト達が別の"死んだ"世界に逃げ出して理想郷を創ろうとしている」と知れば、必ずや追っ手を差し向けるだろう。壊れた神の教会は言わずもがなである。境界線イニシアチブは、或いは最も優先順位に関して聡明な組織である為、信徒の保護を優先するかも知れない。
「最大限の努力はしよう」
 超常組織は基本的に独自の哲学を持ち、それに反する事を滅多に行わない。それは人類の守り方にも反映される。危機に際して、GOCは"排除"と"断絶"で対処し、蛇の手は"共有"によって集合知を集めようとする。しかし財団は"管理"と"適応"、"バックアップ"(後者に関しては、日本支部がより色濃くその要素を見せている)をもって対応する。
 彼女らもまた、財団が収容に失敗した際のバックアップと位置付けられている。異なる空間で、異なる方法で、人類が存続する可能性。であれば、道策の関心事は一つだ。
「手に負えそうか?」
 通信先の空間には、財団が把握するサーカイトの中でも、かなり高位に位置する現実改変者達が送り込まれた。キレーネと名乗る女性は完全にノーマークだったが、恐らくはそれに類する存在だろう。
《我らが血肉は流れる者達の命となり、この身は世界と合わさり、更に高位の存在となるでしょう》
 プロト・サーキックでは、今でも自己犠牲が非常に尊い物として認識されている。先の言葉を意訳すれば、「自らの力でこの低現実世界を改変する、過程で自らが希釈されたとしても、それは世界の礎として身を尽くす神格化へのステップなのだ」となるだろうか。
「見通しは立っているのか?」
《いずれ肉の川は再び形を取り戻し、城となり街となり国となり、繁栄の礎となる事でしょう》
「順調ならば何より」
 記録官の一人が、通信用簡易ポータルの有効期限が近くなっている事を伝える。無言で頷く管理官。
《ここからは、公的な言質では無く、私個人の私的な文章として解釈下さい》
「理解した」
 背後でスタッフがキーボードを操作し、何かを切り替えた事が分かる。
《今回の、通常在り得ない寛大な取り計らい、改めて感謝します。全てが秩序を取り戻した暁には、再びそちらへ凱旋し、世界へ光を灯す力となりましょう。この借り、忘れる事はありません》
「それは楽しみだ」
 道策は、彼女流の皮肉だと理解した。「財団らしからぬ甘い事をしたな、態勢が整い次第凱旋し、そちらも肉に満ちた理想郷へと変えてくれる。忘れるなよ」と、彼には聞こえた。
《扉が閉まります。では》
「再開を祈る」
 ノイズが途切れた。

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 ゲートの位置を示すマークが、霧になる様に霧散した。ありがとうございます、と、声に出さずに口を動かす。
 目を開き顔を上げると、紫に染まる空、流れ続ける灰色の肉、深紅に変色した地面が瞳に移る。普通の人間ならば、パニックに陥ってもおかしくない様な景色である。しかし、彼女らにとって、何ら驚くべき物では無い。先の大戦で落とされたアディウムの要塞は、この様な状態であったと聞く。ならば、この状態から『我々の国』を創造する事に、何の問題があろうか。
 立ち上がり、振り返る。そこでは五人のサーカイトが、地で紫色に光る巨大な紋章を囲み、祝詞を詠唱している。キレーネは円陣に加わると、黒いローブを脱ぎ捨て、大量の刺青に埋め尽くされた肌を露わにした。
「サァルンの巫女の名の下に願う。我らが肉を薬とし血を毒とし、形無き者に再び操りの糸を齎さん事を……」

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「これにて本日の定例会を終了致します。次回は三日後の同じ時間に。では」
 様々な超常組織の、現実に関して造詣が深い者達が一斉に立ち上がる。この定例会はJAGPATOが発展的解消を遂げた、"日本国及び地域に於ける超常組織連絡会"(通称"日超連")の会合であり、現実性消滅の危機に際して設立された。財団が要注意団体としてマークしている組織も複数加盟しており、日超連の規約によって、所属団体同士の"表立った"紛争は禁止されている。
 それぞれの組織がどの程度情報や技術を提供しているのか、或いはどれだけ秘匿しているのか、完全に未知数である。お互いに牽制し合っている状況故、世界を守る為に一枚岩となっているとは到底言えないのが現状である。それは財団も例外では無く、互いが秘匿する情報の諜報合戦が進められている。
「早く帰って、闇子ちゃんの新曲聞かないと……」
 この男が、財団の代表にして、財団日本支部で最も現実をよく知る研究員。日本支部から派遣すべき人材は、彼を除いて他にはいないだろう。
 今日の報告内容は、現実性の喪失が与える影響についてだった。文化的な作品も変化の影響を受け、SCP-835-JPやSCP-1139-JP関連の楽曲も、複雑な曲調や理解困難な歌詞に変化している事例があったが、元々"電波な"と形容される様な作品が多かった結果、有名作品の派生の様にしか見えないそうだ。
 彼が会議室の扉を潜ろうとした時、横から声を掛ける者があった。
「博士、お話があります。この後、予備研究室にお越し頂けますか?」
「分かりました、すぐに伺います」
 他の参加者との挨拶回りを終えた博士は、一つ上のフロアにある予備研究室のドアを叩いた。
「どうぞ」
「失礼します」
 中では、先程声を掛けて来た男が、壁に凭れて5コーヒーを啜っている。
「よおキョウちゃん」
 来訪者に軽く挨拶をすると、カップを手にしてコーヒーを勧める。
「やあ」
 キョウちゃんと呼ばれた男、土橋は笑顔で頷き、カップを受け取る。
「最近どうだい?」
「全然だね。何が起こっても、お役所はお役所さ。上は下に責任押し付ける事しか考えてねえし、下はちっとも統制が取れねえ」
 愚痴の様に吐き捨てる彼は、日超連の研究員である。JAGPATO時代からの所属であり、どこかの組織からの出向では無い、純粋な日超連職員だ。
「で、昔のよしみで訊きたいんだけどよ」
 彼は昔、現実性に関するセミナーを受講する為、財団へ出向していた時期がある。当時研究員であった土橋博士がその時同じく聴講生であった事から、二人の交友が始まった。と言う建前を二人で共有し、現在は『可能な範囲で情報を共有する協力者』として互いに位置付けている。
「ずっと気になってたんだ」
「勿体ぶるな」
「どうして日本は滅ばない?」
 その質問に、博士は首を傾げて見せる。
「まだこの世界自体滅んでいないだろう?」
「そんな事を言ってんじゃない。分かるだろ?」
 土橋は、適当にあしらう事を諦めた。言いたい事は分かる、それは彼自身が知っている情報の筈であったが、彼もまた、それに疑念を抱いていた。
 81地域は、先述の通り、地球全体でも有数の安定したヒューム値を維持している。無論、日本支部による必死の収容活動の賜物なのだが、それだけでは説明がつかないのではないか、と考えている研究者も少なくない。
 回答に悩んだ上、彼は正直に伝える道を選択する。
「すまない、私もまだ、その全てを知っている訳では無いんだ。今知っている事を伝えても良いが、それでは不完全な、ある意味で誤った情報となるかも知れない。もう少し待って貰っても良いか?」

---

「……と、言う訳です」
 彼は、この一件に関わっている人物の内、自分が声を掛けられる中で、一番真相に近いであろう人物に話を伺う事にした。
「成る程ねぇ……まず確認するけれど、どこまで知ってるの?」
 説明を始めるポイントを確定させる為、訊き返される。
「以前、宇喜多女史が中心となって行われたアポテオシス・プロトコルが、最も大きな要因であると認識しています」
 SCP-1682-JPによる人類文明崩壊を回避する為行われた、アポテオシス・プロトコル。土橋もまた、人類学、考古学の専門家と言う観点から、その一端を担っていた。そして、記憶の消去・埋込のプロフェッショナルである宇喜多が、このプロトコルの最重要部を知る人物の一人だった。
「それを知っているのなら、一体何が疑問なの?」
 自分の頭の中で情報を整理し、不明な点を簡潔に纏める努力をする。
「アポテオシス・プロトコルを実行する際、"鵺"を中心とした検討会が、集団による現実改変の効果を利用して、81地域の現実性強化を試みる決定をしたと聞いています。しかしながら、たとえ信じている人間が数億人に上ったとしても、これ程の効果になるのでしょうか」
 土橋は続ける。
「加えて、現実強度を増加させる現実改変は極めて稀な事例であり、"守る"と言う漠然とした認識が、これ程明確な影響を示すとは思えません」
 聞き終えた宇喜多は、ニヤリと小さく笑うと、土橋の目をじっと見詰めた。
「博士も、そこを疑問に思うのねぇ」
 も、と言う言葉に怪訝な顔をする土橋。
「いや、前にも同じ質問をして来た研究者がいてね。貴方達の研究分野からしたら、尤も6な疑問だけれど。人間の記憶ってのはね、結構愚直なのよ」
 彼女は立ち上がると、机の上の整理を始めた。
「守ると言う事は、現状を維持すると言う事。それはつまり、変化を拒む事。脳ってのは、知識で知らない事でも、直感的に理解している事が結構多いのよ。変化の拒絶と、現実の確定。何が安定を齎してくれるのか、深層心理では認識しているの。学問的に理解出来ないから、意識は知らないだけ。だから、宗教として刷り込めば、殆ど全員、同じ方向を向くのよ」
 彼女は当然の事の様に説明するが、土橋には新鮮な内容であり、同時に若干信じ難くもあった。
「直感的に現実子の概念を……あり得るのですか?」
「何、私の言う事が信じられない?」
 口に手を当て「いえ……」と口篭もる土橋に、宇喜多は笑いかける。
「まあ、無理無いわ。普通は信じれないもんよ。専門家でも、分かってたって信じたくない、そう言う奴は結構いるわ」
 卓上に残った最後のファイルを棚に入れると、土橋に向き直った。
「さ! 疑問が解けたら、世界を救いに戻りなさいな」
 礼を言い、退出する男。席に座り見送った後、老女は溜息を吐いた。
「全く、"鵺"め……世界の危機だからって退職予定延ばした挙句、面倒臭い仕事を押し付けるのね」
 先の説明、その様な仮説が存在する、と言う意味では間違っていない。しかし、質問に対する回答としては、全くの嘘と言うより他無かった。彼女が説明した内容は、所謂7カバーストーリーであり、彼が知る事が出来る範囲に於いて、彼にとっての真実となる。だが事実は異なるのだ。
 "鵺"並びに、宇喜多を含む極一部の職員しか知らない事実が存在する。財団でSCP-1111-JPと呼ばれる、信仰を力に変えるシステム。土橋のセキュリティクリアランスでは、日本を守っている三種の神器が存在する、と言う記述までしか知る事は許されないが、それは事実ではない。
 以前は日本の元首に対する信仰によって支えられていた、日本を守る力。しかし大戦後、元首は人間となり、神々は力を失った。それ以降は財団の努力により、財団職員のみが細々とSCP-1111-JPを支えて来たが、その転換点となったのがアポテオシス・プロトコルであった。日奉眞菰の神性として、81地域を守る力を付与する。これにより、日奉教の普及が即ち81地域を守る力の強化となり、日本は現実性の低下、現実改変者から保護される。
 そして今、日奉眞菰の守りは現実の物となり、世界中に出現し続ける『穴』から、この国を守っているのだ。
 土橋を含め、違和感に気付いた職員がこれまで二人いる。その様な存在に対する危機回避要因として、彼女が説明役を担っているのだ。
「賢い男は大変だねぇ」
 彼女は、再び大きく溜息を吐いた。

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 パソコンのファンが喚き散らす部屋で、女性は一人、山盛りの唐揚げを摘まむ。食堂で「山盛りテイクアウトで!」と、常連特権で(或いはいつも唐揚げしか頼まない彼女に食堂のおばちゃんが呆れて)作って貰った大皿だ。
「成る程ねぇ……」
 解析された文字化けだらけの文書。しかし、断片的ながら、大体の事は読み取れた。
「皆同じですねぇ……」
 ここで、唐揚げをもう一摘まみ。
 彼女は、日本支部の活動に関するアーカイブを閲覧している。本来ならば日本支部倫理規定に関わる禁則が掛けられているのだが、先日秘匿監視官から倫理委員に転属した来栖は閲覧を許されていた。
 今調べているのは、最近の極秘活動について。外部は疎か、財団本部や他の支部にも共有されない、極一部の活動。
 黙々と読み進めていると、背後で誰かが扉を叩いた。
「どうぞ」
「失礼します」
 入室して来たのは、来栖に呼び出されていた等岩次席交渉官。彼女が調べている活動の多くに関わっていた為、非公式ながら聴取を要求された。
 部屋に漂う濃厚な煙草の臭いに一瞬反応するも、卓上の灰皿、止められた換気扇を見て納得した様だ。
「ごめんなさい、煙草の臭いがする方が落ち着くんです」
「そう言えば、以前そう仰っていましたね。お気になさらず」
 交渉官と倫理委員、仕事上これまでに複数回顔を合わせており、その折多少の私的な会話もしている。
「どうも。さて、よく来て下さいました。取り敢えずこちらに」
 パイプ椅子を取り出すと、自分のデスクの目の前に置き、これまで座っていたデスクチェアを勧める。交渉官はパイプ椅子、デスクチェア、倫理委員の顔を順に見た後、「ありがとうございます」と言って、自らもパイプ椅子を出し腰を下ろす。来栖は一瞬きょとんとした表情を浮かべた後、何事も無かった様にパイプ椅子に座った。
「等岩さん、唐揚げはお好きでしたっけ?」
 山盛りにされた唐揚げをちらりと見、「ええ、とても」と笑顔で返す。
「良いですよねぇ、唐揚げ。ここの食堂のは特に」
 一つ摘まみ上げると、大皿を自らと等岩の間に滑らせ、空いている手で勧める。等岩は会釈し、同じく素手で掴み取った。
「食べながら聞いて欲しいんだけど」
 そう言いつつ、来栖は片手で器用にキーボードを操作する。
「近頃、かなりの頻度で交渉の任に当たられていますね」
「ええ、時節柄、対外交渉が増えますので」
 二つ目の唐揚げを摘まむ。来栖はそれを見て「遠慮しないでね~」と、積み上げられた資料の後ろから、もう一皿山盛りの唐揚げを取り出す。
「まだあったんですか……」
「唐揚げは数揃えてなんぼですから」
 手を紙ナプキンで拭くと、来栖は複数のファイルをモニターに写した。
「内、特殊なクリアランス制限が設けられた交渉記録が百九十八存在します。交渉内容を、覚えてらっしゃいますか?」
 等岩は黙り込み、数秒後、念を押す様に言った。
「これは恐らく、来栖さんの権限では知る事が出来ない情報が含まれる案件です。それでも良いですか?」
 来栖は得意げににっこりと笑い、足を組む。
「倫理委員は特殊状況下で特別なクリアランスを許可されます。これは特別です」
 数秒の沈黙。灰皿の煙草が燃え尽きそうなのに気付いた来栖が、追加で煙草を放り込む。
「……どの程度閲覧出来ましたか?」
 手元のメモを見返す来栖。
「要注意団体との非公開の交渉、現実改変能力者の有無の確認、空間開通能力の提案。ここまで来れば、何をしようとしているのかはおよそ想像がつきます」
 卓上の大量の資料は、来栖が倫理委員として抱え込んでいる仕事の量を示している。そんな中、情報を無理に抉じ開けなければ8閲覧出来ない様な記録を調査していたと考えた等岩は、何と無く可笑しい気分になった。
「どうして危険な要注意団体を、手の届かない所に放り込むのか、ですか?」
「他にも色々ありますが、それからでも構いません」
 幾つものウィンドウを最小化する。
「私達にはスペアが必要なんです」
「スペア?」
「ええ。どんな手段を使っても、人類は生き残らなければなりません。それと……」
 言葉を切ると、唐揚げをもう一摘まみ。
「……美味しい。私達には、恐らく人類は滅ばないだろう、と言う確証があるんです」
 交渉官は財団職員用のスマートフォン型デバイスを取り出すと、幾つかのメモを開いた。
SCP-710-JP。ご存じですか?」
「はい」
 一時、財団の倫理委員会で大きく取り沙汰されていたオブジェクトである拳銃。当然、監視官だった来栖も知っている。
「あれ、まだ撃ってないんですよね」
「……ふむ」
 SCP-710-JPは、将来誰かが撃つ事が確定している。誰が撃つのかは分からないが。 
「標的年月日は着弾予定日からずらしてあります。偶然あの日に向けられる事はありません」
「成る程」
「ただ、不確定要素がまだありまして。人間が撃つ、とは限らないんですよね」
 この世界には、生命/非生命を問わず、無数の知性体が存在する。その内のどれかが撃つだろう、では、人類を守る確証とは言えない。
「で、人が生きてれば良い訳です」
「だから、あちこちに人を派遣している、と」
「はい」
 財団、特に日本支部の活動は、サーキック・カルトの派遣に留まらない。財団職員の人格を保存した表象サーバーの設置、サーバーの生産が間に合わない宇宙は日本生類創研へ『実験場』として提供する等、可能な限りの『可能性』を生み出している。しかし、当然それらに反対する職員も存在する。その為、財団でも一部(特に日本支部の上級職員)しか閲覧出来ないクリアランスを設定している。
「最悪の場合は、人類以外の知性体を全て終了しないといけないかも知れませんが……それは余り検討すべきでは無いので、SCP-710-JPか人類以外の知性体か、いずれかを他の宇宙へ移送する計画もあります」
 全ては、人類がSCP-710-JPを発射する、その可能性を増やす為に。
「それと、もう一つあるんですよね、確証」
「と言うと?」
 等岩は、端末に一枚の絵画を表示した。
「ご存じですか? SCP-990
「えぇ、まぁ」
 度々財団職員の夢に現れては、近未来の危機を予言し、或いは財団職員の質問に答える、スーツ姿の男。彼の助言によって、これまで幾つもの危機が回避されて来ている。
「これまで彼、回避出来そうな危険に関してしか伝えにいらしてないんですよね」
 無論、全ての危機を回避したと言う事とイコールでは無い。
「それで、SCP-990が最近、私達が直面している問題について伝えにいらしたんです。81地域内で」
「彼は英語圏にしか現れないと思っていましたが」
「そうでも無い様ですよ? 日本語も案外上手でした」
「……成る程」
 まるで聞いて来たかの様な物言いに、等岩自身が対象だったのだろうと理解した。
「どんな危機が訪れると言っていましたか?」
「それも報告書に纏めてありますが……要約すると、全ての物質は輪郭を失う。あらゆる存在は同化し、無との境が無くなる。果ては世界を隔てる壁が崩壊し、全てが可能性の海になる、と」
 大方、財団の予想している通りの将来だ。現実性とは、エヴァレト多世界解釈に基づいて考えれば、可能性で分岐した多世界同士を隔てる仕切りだ。もし現実改変とは仕切りの向こう側の可能性をこちら側に引き込む事であり、仕切りが破れれば、互いに流れ込み、混沌とした概念だけが残る。
「私達は、私達が為すべき事をしています。私が話せる事は一旦ここまでですが、宜しいですか?」
 少し考えた後、「ええ、ご協力ありがとう」と、席を立つ来栖。等岩も腰を上げ、扉に手を掛けると、最後に言った。
「ご馳走様でした。今度、美味しい唐揚げ屋さん教えて下さいね。では、失礼しました」

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「初めまして」
 扉を開けるなり、彼岸花は礼をした。椅子につまらなそうに腰掛けていた男も、応えて頭を下げる。
 出自不明の男が突然財団施設の門を叩き、理事、それも"鵺"か"稲妻"に会わせろと言うのだ。無論取り敢えず拘束されたが、「世界の希釈について話したい事がある」と言い、その上尋問官や交渉官の問い掛けに一切応じない。仕方が無いので、万全の防備を整えた上で、彼岸花が面談する事となった。仮に何かあったとしても彼は所詮代行である。
「本当に"稲妻"か?」
 怪訝な顔の彼に、彼岸花は会釈で返す。
「申し訳ありませんが、先代は行方不明となりました」
 男は腕を組むと、数秒考え込んだ。少し目を泳がせる。
「……まあ、業務引継はしているだろう?」
「読める報告書は全て読みました」
 訪問者は頷き、椅子に深く座り直す。「どうぞ」とでも言いたげに、手で"稲妻"代行を指し示した。
「では、幾つか質問させて頂きます。何とお呼びすれば良いでしょうか?」
「アギ・アスノと名乗る事にしている」
「良い通り名ですね。アスノさん」
 一切の逡巡無く、本名を聞き出す事を諦めた。そもそも真名に意味など無い。それよりも余程意味のある名だと、彼岸花は理解した。
「今まで、何を見て来ましたか?」
「温度を失った、無数の何かだったモノ」
「貴方は我々の敵性存在ですか?」
「消極的否定」
「友好存在ですか?」
「消極的否定」
「成る程」
 口元に手を当て、机の周りをクルクルと歩く。
「貴方は"観測者"ですか?」
「正確には"観察者"だ」
「世界を救う事は、もう辞めたのですね」
「私には合わなかった。私は『あれら』と会うより前から、ずっと財団の一員だった」
 表情一つ変えず答え続けていた男は、初めて小さく笑った。
「『彼等』が何をしているか、何かご存知ですか?」
「さあな、最後に会ったのは13ヶ月も前だ。或いは、既に全滅しているかも知れない」
 笑い捨てる様にそう言うと、懐から水筒を取り出し口にする。それがタンポポ酒だと、"稲妻"は知る由も無い。
「成る程。本隊の所在は知れず、ですか……」
 アスノは聞き捨てならぬと言わんばかり、片眉を上げた。
「分隊があるのか」
「その呼称が正しいかは不明ですが、我々の下で四人の"Saiga"が協力してくれています」
 男は椅子に凭れ掛かり、大きく溜息を吐いた。
「……成る程。生き残りを確保したか」
「かも知れませんね。彼ら自身は離反者だと名乗っていますが」
 どうだか、と、男は小さく笑う。
「犀賀派の仕事では無いならば、貴方は何をしに来たのですか? AGIAS NOSaiga では無いさん」
 アスノはゆっくりと息を吸う。何かに耳を傾けているかの様だが、部屋には換気扇の音と蛍光灯のノイズだけが響く。
忠告を無視した者の末路を見に来た」
 そう言うと、彼は鞄から、一つの缶詰を取り出した。彼が旅の途中出会った、最後の"まともな"人間に貰った食糧だ。妙な物ばかり摂食していては精神が参ってしまう。その為、その内食べようと一つ取っておいた。
 忠告と聞いて、彼岸花は、SCP-1280-JPの観測中に現れた男の事を指していると認識した。しかし、今それに関して論じても意味が無い、そう判断する。
「貴方は、アスノさんは、恐らく"彼"と同じ内容の任を受けているのではないですか?」
「ああ。だが、伝えるべき事は無いらしい」
「成る程」
 目を細めてアスノを眺める彼岸花は、腰にぶら下げられたストップウォッチらしき装置と、それが配線でどこかに繋がっているのを確認した。
「存在確立を変動させる事で、宇宙を移動していたんですか?」
「よく分かったな」
 一般に、観測される時間が長い程存在確立はあがる。しかし、現実性が低ければ、観測自体も不確かとなり、存在確立の上昇が低減される。その為、移動元の宇宙の現実性によって、滞在時間を変えているのだろう。"Saiga"の名を持つ者の一部が持つ、体内の現実性を僅かながら引き上げ維持する現実改変能力があるからこそ可能な、余りに無茶な旅。
「他の世界を訪れる必要は無いのですか?」
 問い掛けに、男は首を横に振る。
「散々移動して回ったが、他に生きている世界は無かった。統計的に見ても、残っているとしたら僅かだ、そこが生きている間にに辿り着く可能性の方が低いだろう」
 男はストップウォッチを持つと、そのスイッチを切った。
「さあ、無くなりかけた宇宙をどうやって守るのか、見せて貰えるかな?」

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 草原が広がる広大な丘で、スーツや喪服に身を包む人々が、一つの碑を前に立っている。
 その先頭の男性が、手元のメモを読んでいる。
「貴方方は我々と共に戦い、我々よりも一足先に『向こう』へ旅立たれた。貴方方が守り抜いた物は世界中にあり、感謝する者は世界中にいる。そして、貴方方はこの世界と一つとなり、今尚、我々を見守り続けているのだろう。貴方方が支え、今も生きるこの世界を、我々は守り抜くと誓おう」
 見晴らしの良い丘からは、静かな街並みと、その中にあるサイトが見渡せる。
 石碑には、こう記されている。
「亡骸無き英霊達、ここに記す」
 一分間の黙祷。その時、近くで再び『穴』が現れたのだろう、衛星から光が降り、轟音が響いた。それはまるで、大きな弔砲の様に聞こえた。
 約束の拳銃は、まだ撃たれていない。

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