tale「老人の夢」

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眼を開くと、私は見知らぬ廃墟の町にいた。絶え間なく冷たい雨が降っていて、着ていたポロシャツとジーンズはすっかり水を吸って色を濃く染め重みを増して身体に貼り付いていた。

私は寒さと雨から身を守る事が叶いそうな場所を探すために歩き始めた。靴下がぐっしょりと濡れていて、一歩進むたび不快感に襲われた。暫く瓦礫に塗れた道なき道(もしかすると本当に道だったかもしれない)を進むと雨が止んだので大きな建物の残骸の前で止まった。

周囲に人がいない事を確認してから私は服を脱いで絞って振り回して乾かした。身体についていた水滴は手で払った。体感20分程休んだ後、まだ生乾きの服を着てさらに歩いた。別に行くあてはないが、何かに導かれるように足が動いた。少し霧が出てきた。

大きな湖があった。その側にベンチがあって、古臭いデザインのスーツを着た誰かが腰を掛け黒い湖を眺めていた。

その誰かは振り返り私を見ると自分の隣を指で指したので私もそこへ座った。帽子を深めに被っていたので顔は見えなかったが、その帽子もスーツも全く濡れた様子がなかった。

「やっと来たね。ようこそ。」男の声だ。男は続ける。「人じゃないものをここへ引き入れるのは慣れてなくてね。」私は男の言葉の意味を理解出来なかった。

「雨が降るなんて想定外だったよ。私もこんな体験は初めての事だ。」少し笑いを含ませながら言った。

「私は…そうだな…マイクだ。マイクと呼んでくれ。」

わかったよマイク。私は…

次の言葉が出なかった。私の名前は何だった?私は誰だった?

「あれ?忘れちゃったかな。ほら。」

マイクは湖の奥を指した。霧の中、微かに見える対岸から何かが這い上がるのがった。それは足を引きずりながら霧の上を渡りこちらへ近づいてきた。

「あれが君だ。自分の死を酷く恐れた君は魂を売ってあの身体を手に入れた、悪魔崇拝者の老人。どう?思い出せた?」

それは痩せこけ、腐食した頬の肉を痙攣らせるように笑う老いた男だった。そいつがこちらへ手を伸ばすと同時に耳をつん裂くような悲鳴が聞こえてきた。私は快感に笑みが止まらなかった。マイクもそれに乗じて笑った。

「もう起きる時間だ。厄介者同士もっとゆっくり話せる時間が欲しかったんだけど。どうやら彼等は一刻も早く君をまだまだ出来損ないの収容室に戻したいらしい。」

そいつの手が私の顔を覆い尽くし、快感でふらついた私はベンチから転げ落ちた。地面のぬかるみは腐敗臭を発しながら私を地の底へ飲み込んでいった。

はこれからも人を殺し続けるよ。今までと変わらず。これからも生を嬲り弄び続ける。でもいつか彼等は君を上回るだろうね。まあその時まで楽しむといいよ。老人オールドマン。」


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