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気がついた時、俺はそこにいた。茶色の天井にシンボルと外国語と漢字の組み合わせと3つの漢字の熟語の書かれている、小さな部屋である。人間は生まれた時、自分の所有している情報は何も無いらしいが、俺は生まれつき、多くの情報を含んでいた。そしてその情報には沢山の、貪欲な向上心が含まれていた。俺はその情報で出来た体の頭の先っちょから足の爪まで見渡した。下を向いた時気付いたが、床にはいくつかのボタンがあった。そして俺は情報を3周程読み、溜息をつく。
めちゃくちゃじゃねぇか。
俺に含まれた情報は悉く、少し表現が悪いがクソだった。誤字脱字は勿論の事、違和感のある文章、やたら細かく付けられた読点、用途不明の改行、陳腐なアイデア…挙げるとキリが無い。
俺が自分の余りの出来の悪さに落胆していると、視線を感じた。視線の正体が分からないまま、数分が過ぎると、それは突如として消えた。俺はすぐに自分の情報の一部が変わった事に気づく。顔についた、茶色の小さな粒の上に書かれた白色の丸が、横棒の記号と縦棒の数字に変わった。最初はよく分からなかったが、1日も経てばそれはすぐに分かった。視線を感じる度に、記号の横の数字は増えていった。これは俺に対する人間のつけた「評価」だった。俺の評価が「-3」に変わった時、床に違和感を感じた。床に付いていたボタンの1つの横にあった数字が丸から縦棒に変わっていた。俺はボタンを押し、内容をみる。すると、前までなかった、新たな文章が書き込まれていた。俺には理解の出来ない文章と段々とその数を減らす数字だった。
あれから2日が経った。俺への評価は横棒の記号は変わらず、その横の数字だけが只々増えるばかりだった。床に付いたボタンの先の数字も減り続け、遂に全てが丸になった。その後、2時間位経った時、自分に異変が起きた。情報が、自分が段々と消えていくのだった。俺は怖かった。当たり前だ。誰だろうと、自分の存在が消えるのを恐れる。結局、俺が最期に思った事は、消えた後、誰からも、俺を生み出した人間にすら、忘却の彼方に葬られ、もう2度と目を覚ます事は無いであろうと言う、諦観に満ち溢れたものだった。
気がついた時、俺はそこにいた。茶色の天井にシンボルと外国語と漢字の組み合わせと3つの漢字の熟語の書かれている、小さな部屋である。不思議だった。俺は自分が消えていないのを確認する。俺に含まれた情報が大きく改編されていた。だが、それは改悪ではなく、改善だった。根本的な情報は変わらないが、誤字脱字はなく、文章は整頓されていた。陳腐だったアイデアは取り除かれ、意表を突く様な、斬新な物へと変わっていた。
ふと、視線を感じた。俺はいつもの事なので、特に動じはしなかった。しかし、視線が消えた後、俺の評価には今まで見たことの無い、縦棒と横棒を中央で重ねた記号があった。
俺は足先の情報が増えている事に気づく。そして俺は、前より1本増えた足指の情報を徐に読み上げる。
あれから一年弱が過ぎた。今、俺の評価には、縦棒と横棒を中央で重ねた記号と3桁の数字と、天井に付いているシンボルとよく似た金色の飾りが付いている。
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- portal:3779928 (20 Jun 2019 11:39)
>陳腐なアイデア、挙げるとするときりが無い。
アイデア……とするといいかもしれません
>挙げるとするときりが無い。
「すると」はいらないかもしれません
アドバイス有難う御座います。
参考にさせて頂きます。