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財団最後の軍事施設、PM-81の巨大格納庫のタラップ(足場)にて青年が少年に別れを告げる。
「太一くん、ここでお別れだ」
太一少年は大事そうに抱えている人型ロボットの模型をぎゅっと抱き直すと、青年へ震える声を絞り出す。
「負けないよね?翔兄ちゃんとまた会えるよね?」
翔青年は一瞬ためらうが、穏やかな笑みを浮かべてしっかりと告げる。
「負けないさ。ザイダーンZは正義のロボットだ」
太一少年の顔は晴れない。今度の戦いが決戦であり、一番厳しいものになるということを子供心ながら感じていたのだ。すると、翔青年は少年のロボットに手を添える。
「この戦いから帰ったら、色を塗ろう。きみのザイダーンZを完成させよう」
「本当……?」
「ああ、これで俺のザイダーンZとお揃いだ!」
翔青年の手が太一少年の手を包む。少年の顔がゆるみ、笑顔を浮かべた。
「約束だよ!ぜぇったい手伝ってね!」
翔青年は笑みを浮かべたまま少年の手を放す。
「スプレー買っといてくれよ」
「うん!」
太一少年は青年へ手を振り、タラップから去っていく。彼はこの施設の最奥、超至近距離からの核爆発にも耐えるシェルターへ避難する。
バババン、と無数のライトが点灯する。巨大な格納庫の暗闇は瞬く間に光に満ちて、中心にある存在があらわになる。
全高90メートル、質量50キロトン、光を鈍く反射する、あらゆる現実改変を無力化可能な超スクラントン合金の体を持つ財団の人型最終兵器、《ザイダーンZ》。シルバーな体全体に黒のスプライトがアクセントで走っている。そして何より、胸部には巨大な真紅の『Z』字の放熱板が固定されている。鋼の巨人はタラップに立つ翔青年を静かに見下ろしていた。
青年は胸部ハッチを開けてコクピットに座る。音もなくモニター類が点灯し、外の景色が映し出される。タラップから手を振る太一少年の姿が見えた。青年が手を振りかえすと、ザイダーンZを載せたリフトが緩やかに上昇を開始する。
コクピット内にピピピ、と電子音が鳴り通信が開始される。油汚れに塗れたツナギを着た老齢の男性、鈴玉博士がモニターに映る。
『お前の言うとおり、全部の在庫をつぎ込んだ!もうこれ以上はスペアも何もない!』
「正真正銘、最後の出撃ってわけだ」
『だが、無茶するなよ!生きてさえいれば、生きてさえいればいいんだ!』
「分かってるよ!」
コントロールルームから十分離れた途端、リフトが急加速する。激しい振動がコクピットを揺らし、地下との通信が不安定になる。鈴玉博士は爽やかな笑顔を浮かべ、こう叫ぶ。
『そうやってお前は、いつも無茶をするんだ!』
プツリと通信が途絶する。代わりのように、レーダーに巨大な赤点が点灯する。青年は息を呑む。程なくして、擦過音を轟かせながら急上昇するリフトは地上、富士山の麓に到達した。日はすでに落ちかけており、富士山が夕焼けに輝いている。巨大な足音である地響きがコクピットの翔青年にも伝わる。レーダーの赤点が近づいてくるのがわかる。
「来たな…」
モニターに映る富士山の頂上が盛り上がる。いや、とてつもなく巨大なモノが富士山に覆い被さるように現れたのだ。
“それ”は山脈のような巨大な体躯と四肢を持つ。夕日を乱反射する鎧たる鱗を持つ。海を割る太刀のような尻尾を持つ。そして何より、牙を持つ。
「SCP-682!」
無限に成長した死神の爬虫類は鋼の巨人を見据えると怨嗟に満ちた咆哮を轟かせる。怒りの叫びは青年を圧倒する。この憎しみが世界のほぼ全てを滅ぼしたのだ。
だが、青年は震えながらも、おぼつかない指先でレバー先端のカバーを開き、スイッチを押し込む。
モニターに戦闘システム起動確認画面が立ち上がる。
《God is dead.神は死んだ。》
続く言葉を翔青年は幾度となく叫び……恐れを受け入れてきた。神ではなく、ここに立つ己のみが世界を救えるのだ!
「But here we are!されど我らは此処に在り!」
コクピットが真紅の光に包まれる!
《THE ID : TURN Z ACTIVATE!!》
巨人の目が激しく光る。両肩部から極太のキャノンが展開する。背中からロケットのようなスラスターが現れる。腰に履く大質量の剣つるぎを抜剣し、赤熱させる。最後に胸部のZの文字が火花を散らして回転することで反転して、がちりと固定された後、放熱板の役割として真っ赤に染まる。
ザイダーンZはSCP-682の真正面に立つ。その姿はまさしく人類の城壁であり、防人であり、財団の精神そのものである。財団は何もかも失ったが、根底にある勇気だけは誰にも奪えなかった。
熱く沸騰している翔青年の魂と共鳴するように、ザイダーンZの巨大な機構が唸り、ジェット噴射を煌かせながらSCP-682へ突撃を開始する。
夕日がSCP-682に深い影を落とし、駆けるザイダーンZを鮮やかに照らす。
翔青年は、幾度となく、終局Zをひっくり返してきたTURN己の魂の名を叫ぶ!
「ザイダアァァァァァァンッ!!!!」
かつてない戦いになる。剣は折れ、砲身が溶け、エネルギーは底を尽くだろう。まさに、友も未来も消え去ろうとしている。
だが、それでも!
ザイダーンZ正義が!負けるわけがない!
守りたい世界が、ここにあるのだから!
「ゼエェェェェェェェェット!!!!」
紅蓮の剣と、死の牙が!今!激突する!
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- portal:3776694 (04 Jun 2018 22:14)




批評ありがとうございます。
・構文を調整して大幅な文字数減少を実現できたため、終盤の盛り上がる部分の描写を盛ることができました。
ただし、結末だけ書くことは熱さを冷ましてしまうことになるので、できませんでした。
・「剣」にルビ構文を適用しました。忘れていたので、指摘していただきありがとうございます。
大変助かりました。
拝読致しました。
リビジョン60時点での批評です。
面白かったです。ただ強大な敵に立ち向かうのだと言う描写で少し緊張的な描写が足りないのではないかなと思ってしまいました。最終決戦なので簡単に立ち向かおうとしてしまっても描写的にどうなのか……ということですね、ですので文字数が許すならばなのですが一度SCP-682に怖気付く様な描写(いつもの忌まわしいという決め台詞を言わせてたりした時?)でその怖気を振り払って前に一歩前進する姿が映えそうだなと思いました。
記事作成頑張ってください。
批評ありがとうございます。
文字数が限られてますので、少しではありますが
682に対して怯える描写を追加しました。
がんばります。