SCP案 代わりはいくらでもいる

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SCP-XXX-JP-A

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが存在する区画は工事中の名目で封鎖されます。常に監視員1名以上を設置し、一般人の侵入を防いでください。

SCP-XXX-JP-1内の調査を希望する場合、調査目的の事前申告と担当者の許可が必要になります。SCP-XXX-JP-1内で取得した物品はSCP-XXX-JP調査本部の資料室にて保管されます。閲覧を希望する職員は申請を行ってください。

SCP-XXX-JP-1世界における財団との連携のためSCP-XXX-JP外交部門が設置されます。週に1回職員がSCP-XXX-JP-1に派遣され、情報交換を行います。

説明: SCP-XXX-JPは日本国東京都の国立███研究所の敷地内に存在する、直径2.02mの円型のポータルです。基底次元とは異なる異次元(以下SCP-XXX-JP-1と呼称)に接続しています。

SCP-XXX-JP-1は後述するSCP-XXX-JP-Aの存在と歴史や文化、社会構造の違いを除き、基底次元との差異はほぼありません。生態系や地理条件を含む自然環境や物理法則は全て基底次元のものと一致しています。

SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JP-1社会を主に構成する人型実体群です。生物学的構造は基底次元における通常の人間(以下、人間)とほぼ一致していますが、不明な理由により全身が黒色に見えます。人間と同様に出生し、成長し、そして死亡するため、幼児や成人、高齢者にあたる個体がそれぞれ確認されています。またSCP-XXX-JP-Aは人間とほぼ同様の生活を営み、各々の社会的役割を果たしています。また娯楽や芸術といった概念も存在しています。

SCP-XXX-JP-Aの有する主な異常性として、不定期にその生体構造を変化させ"別人になる"ことが挙げられます(以下"変身"と呼称)。この"変身"は全SCP-XXX-JP-A個体に対して同時に発生し、また変化後の外見や人種、能力や保持する知識等はランダムに決定されているようです1。ただし"変化前と同程度の年齢の別人になる"ため、個体の"年齢"だけは唯一保持されSCP-XXX-JP-Aの寿命が極端に縮む/伸びることはありません。SCP-XXX-JP-Aが"変身"前の記憶を有しているか否かは不明です。

SCP-XXX-JP-Aは人間と同程度の知能を有しますが、感情や主体性に乏しい傾向があります。またSCP-XXX-JP-Aは未知の言語を用いて個体間で会話を行ったり、記述を行います。言語解析班による言語の解読は失敗しました。SCP-XXX-JP-Aの使用する言語には通常の言語に見られる単語や文法構造のパターンが一切なく、SCP-XXX-JP-Aのみが不明な要因で理解できるものであると結論付けられました。

SCP-XXX-JP-1社会には基底次元に対して様々な差異が見られます。以下はその一例です。詳細については文書XXX-1を参照してください。

・通貨や私有財産の概念は存在するものの、社会主義、共産主義的な傾向をもつコミュニティや国家が多い。これは"変身"の存在により、「競争」や「社会階級」の概念が存在しないためと考えられている。全てのSCP-XXX-JP-Aは何かしらの労働に従事しているが、全個体が"変身"したタイミングでそれぞれの社会的役割が変わると考えられている2。"変身"の発生にもかかわらず社会的な混乱が発生しないことから、変身後のSCP-XXX-JP-Aに割り振られる社会的役割の分布はある程度調整されているものと思われる。しかしながらSCP-XXX-JP-Aが従事する職務は概ね"既存の社会基盤やシステムの保守"等であることが多く、"個性的" もしくは"創造的"な職務に就く個体は少ない3

・民主主義や共和制を採用しているか否かはコミュニティによって異なるが、これらは形式的なものになる傾向がある。前述のようにSCP-XXX-JP-Aが主体性に乏しいことが要因とされ、大半の政治決定は十分な議論を伴わないまま認可される。

・学校を始めとした教育機関に似た施設が存在する。しかしながら"通学"した年少者の個体は単に別個体と交流をしたり、一般的な遊戯を行うだけで、一定の方針に従った教育や指導は行われていない。これは"変身"によって年齢相応の能力や知識が自動的に得られるために、あらゆる経験や訓練の必要がないからだと考えられている。これらの施設は、単に年少者が生産が可能な年齢に達するまでの活動の場として与えられている。

・SCP-XXX-JP-Aは個人的なイデオロギーを持たない傾向にある。宗教的または民族的な対立がほぼ見られないため、資源をめぐって発生する国家間対立が戦争等の主な要因となっている。このような違いにもかかわらずSCP-XXX-JP-1に存在する国家は基底次元のものと概ね似通っており4、国家間の経済的格差も存在する。

SCP-XXX-JP-1にはSCP-XXX-JP-Aの他に異常性を持たない通常人間(以下、人間)が少数存在し、SCP-XXX-JP-Aと共存しています5。特筆すべき点として、SCP-XXX-JP-1に存在する人間は全て基底次元に実在する人物の形態をとります6。SCP-XXX-JP-1においても存在する人物の主な特徴として人類全体に寄与をした、または何かしらの功績を有している人物であることが挙げられます。彼らは基底次元におけるオリジナルの人物と概ね同じ場所で育ち、同じ場所で活動を行い、オリジナルの使用する言語と同じ言語で会話を行います。しかしながらSCP-XXX-JP-Aの言語を解することはできません。SCP-XXX-JP-Aは人間(基底次元の人間も含む)に対して従順であり、SCP-XXX-JP-Aの側は人間の言語を解することができると考えられています。

SCP-XXX-JP-1世界において繁殖行動をとることが確認されているのはSCP-XXX-JP-Aのみであり、SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JP-Aのみを出産します。それにもかかわらずなぜ人間がSCP-XXX-JP-1内に存在しているのかは不明です。SCP-XXX-JP-1内の人間は自らの出生に関する質問に対して答えることができません。これらの人間は幼少期や青年期は専用の養育施設で保護され、教育や訓練を施されます。

SCP-XXX-JP-1に存在する記録資料はSCP-XXX-JP-Aによって書かれた解読不能なものと、通常の人間によって書かれたものの2通りが存在します。SCP-XXX-JP-Aは後者を重要視しているようにみえ、人間による資料を保管して継承するための施設が各コミュニティに存在します。この資料によりSCP-XXX-JP-1の歴史について分析をすることができます。

以下はSCP-XXX-JP-1に存在している人間についての情報の一部です。こちらも詳細は文書XXX-1を参照してください。名前が歴史資料に残っていた人物に関してはSCP-XXX-JP-1においても存在していたことがわかります。

・自然科学 "人口"の大半がSCP-XXX-JP-Aで占められているのにもかかわらず、自然科学や科学技術は小数の人間によって基底次元のものと同等に発展してきている。また科学史の資料からは自然科学の歴史が概ね基底次元のものと変わらないことが判明している。 例:基底次元と同様、ヨハネス・ケプラーが天体の運動を論じ、その後ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートンが体系を作り上げたことが物理学の端緒になったことが確認されている。

・政治 各国の政治関係者の一部は人間である。SCP-XXX-JP-Aが比較的従順であることから、持ちうる権利を最大限に利用して強硬的な政治を行う国家も存在する。多くの戦争はこれら政治機関首脳部の人間の決断によって引き起こされ、戦闘には軍人にあたるSCP-XXX-JP-Aが動員される7。歴史は基底次元のものと大きな差異があるが似通っている部分もある。歴史において主要な民衆の指導者は全て人間である。 例:基底次元と同様、アメリカ合衆国の初代大統領はジョージ・ワシントンであり、またエイブラハム・リンカーンが奴隷解放を命じている。マハトマ・ガンジーによるインド独立運動が行われた旨の記載があり、ガンジーがSCP-XXX-JP-Aの集団を率いる写真が存在する。

・文学、芸術 "芸術"という概念はSCP-XXX-JP-1においても存在するが、生み出される作品の総数はSCP-XXX-JP-Aが基本的に"創作"を行わないために基底次元と比べて少ない。人間側が作成した作品をSCP-XXX-JP-Aが継承、流通させている。芸術史は基底次元のものと似通っており、現存する作品も多くは基底次元と似たものだがSCP-XXX-JP-Aの記述や描写がある点について差異がある。 例:シェイクスピアやバッハ、レオナルド・ダ・ヴィンチの存在が確認されており、基底次元と同様の作品を残している。レオナルド・ダ・ヴィンチの"モナリザ"らしき作品が存在するが、被写体がSCP-XXX-JP-Aになっている。

・スポーツ等競技 基底次元と同様、大衆娯楽としての競技観戦が存在し、国際的な大会も開催されている。観客はそのほとんどがSCP-XXX-JP-Aであり、選手は人間であることが多い。

SCP-XXX-JPは200█/02/20に発見され、安全性が確認されたのちにSCP-XXX-JP-1への第一次調査が実施されました。遭遇したSCP-XXX-JP-Aの言語がわからなかったため、調査担当者はSCP-XXX-JP-1における国立███研究所に勤務していた人間に対してインタビューを行っています。以下はその記録です。

インタビュー記録XXX-1

対象: 基底次元における██ ██氏と酷似した人物。

インタビュアー: エージェント・斎藤

付記: 基底次元の██ ██氏も国立███研究所に勤務しており、国内の████分野における第一人者である。インタビューは研究所内の応接室で行われている。

<録音開始>

インタビュアー: 先ほどはいきなり呼び止めてしまって申し訳ありません。

██氏: いえ、大丈夫ですよ。で、聞きたいことというのは?

インタビュアー: ありがとうございます。ではお伺いしたいのですが、研究所の外にいる黒色の人たちはいったい何者なのでしょう?

██氏: [4秒沈黙] 何者、とはどういうことですか?彼らは彼らでしょう。

インタビュアー: 見たところその「彼ら」と一緒にあなた方は生活しているように見受けられるのですが。

██氏: そりゃあそうですよ。あなただってそうでしょう?

インタビュアー: [6秒沈黙] とすると、あなたには彼らの言っていることがわかるのですか?

██氏: いや、わかりませんよ。[4秒沈黙] 先ほどから質問の意図がよくわからないんですが。[何かに気づく] あ、入ってきて大丈夫だよ。

[██氏が部屋のドアに向かって手招きのジェスチャーをする。1体の茶を乗せたお盆を持ったSCP-XXX-JP-Aが入室し、テーブルに茶を置いてから退出する。]

インタビュアー: 彼らの言っていることがわからなくても意思疎通ができるようですね。

██氏: まあ彼らが我々に合わせてくれているわけですしね。

インタビュアー: [10秒沈黙] なるほど。では、次の質問です。彼らは普段は何をやっているんでしょう?

██氏: さあ、知りませんね。それを知って何になるんです?彼らには彼らの生活があるだけですよ。[4秒沈黙] どうも些細なことを気にかけるんですねあなたは。哲学的というかなんというか。

[██氏が時計に目をやる]

██氏: すみません、もう時間みたいなので僕はそろそろ。発表の準備をしないといけないので。

インタビュアー: 発表、というと?

██氏: 学会で今月の成果を報告しないといけないんです。僕には役割がありますから。では。

[██氏が退室する]

<録音終了>

この後の調査の継続により、SCP-XXX-JP-1の諸性質が明らかになりました。またその過程で調査活動がSCP-XXX-JP-1側の財団の目に留まり、あちら側の財団と接触するに至りました。SCP-XXX-JP-1世界での財団はSCP-XXX-JP-Aを異常とみなしていません。現在SCP-XXX-JP-AやSCP-XXX-JP-1世界のさらなる情報を得るために交流を継続しています。

補遺: 基底次元での功績が現時点では確認されていない人間(主に年少者)が存在するため、これを利用し将来的に功績を残す人物を予め特定することが可能であると推測されています。実用性については現在審議が行われています。


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