遺棄

アイテム番号: SCP-9988

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-9988-Fの進入口は封鎖されています。SCP-9988-Fへの進入後、7日間が経過した人員は回収不可能と見做されます。SCP-9988との関連が疑われる不可避的な事故/事件は、適切に隠蔽されます。

説明: SCP-9988-Fは、埼玉県██の集合住宅に内在する異常空間です。███号室の玄関扉が唯一の進入口となっており、内部の構造は各部屋と相同です。任意属性の人物1名が内部に存在する場合、SCP-9988-Fは基準現実から緩やかに位相を変化させ、未解明の平行現実に転移します。転移のトリガー及び速度は不定ですが、過去に行われた実験では進入から72時間以内に転移が完了しています。

SCP-9988-Fの内部には2体の人型実体が存在します。一方は20代後半の女性、一方は生後3ヶ月前後の乳児の外見を取ります(それぞれSCP-9988-γ、SCP-9988-δに指定)。状況分析から、SCP-9988-γ/δは過去に███号室に居住していた家族の2名と対応関係にあると考えられています。当該家庭は父・母・子の3名で███号室に居住していましたが、現在では3名全員が所在不明です。

SCP-9988は、以下に挙げる同集合住宅で発生した複数の暴力事件を発端として発見・確保されました。

  • 幼児1名が餓死に至った児童虐待事件。
  • 乳児の泣き声に関する苦情を契機とした傷害事件、重傷者1名。
  • 児童相談所職員の転落死。

対照実験: 無人機観測

玄関扉を開放した状態で実験が行われる。空間外から見た内装は、人の居住している形跡のある一般的な集合住宅の一室に準ずるように観察される。靴箱の上には、出掛ける際に用いる日用品が並べられている。土間には女性用の靴が一足並べられている。居間に繋がるとされる廊下の先の扉の向こうは、磨りガラスによって見えない。

██研究員が操作するSET-87000が進入。廊下は掃除が行き届いているように観察される。SET-87000を用いて順番に扉を開き、各部屋を簡易的に観察する。廊下左の扉を通じた洗面室には化粧品や衛生用品が置いてある。男性用の品は置いていないように観察される。換気音が微かに聞こえる。廊下右の扉を通じた洋室には、未開封の段ボールが山積みになっている。箱のプリントから引っ越し用段ボールであると推察される。

廊下の先の扉を通じてLDKに進入。居間には三人家族が十分に生活可能な家具が配置されている。各製品の状態から、比較的低い経済水準もしくはインテリアへの無頓着が伺われる。掃除は行き届いている。

リビングのマットレスの上に、SCP-9988-γが座り込んでいる。γ実体はSCP-9988-δを抱えて、俯いている。SET-87000を通じて██研究員が当たり障りのない呼びかけを行うが、反応は見られない。

リビングでは、絶えず乳児の泣き声が微かに聞こえる。実験が早朝に行われているにも関わらず、窓からは夕焼けが観察される。

LDKから第二の洋室に移動。部屋の壁沿いに一台の揺り籠が置かれている。周辺に育児用品は見当たらない。

SET-87000がSCP-9988から退出。空間外から南側の窓を観察すると、変わらず夕焼けの赤が映っている。玄関扉を一度開閉すると、内部が進入以前の状態にリセットされたかのように、LDKに繋がる扉は閉ざされ、夕焼けの赤も確認されない。

機器による時刻の確認が行われるが、時空間の乱れは観測されなかった。

進入実験: 長期曝露/1

(長期滞在に伴う影響を見定める為の実験。2週間分の食料を持参したDクラス職員が進入。γ/δ実体との接触を最小限とし、長期生存を目的として活動する。活動は音声及びヘッドマウントカメラを通じて記録され、SCP-9988の内外に設置された無線中継器で伝達される。)

(D-22333はSCP-9988に進入後、リビングにて両実体を視認している。)

D22333: 思ったことは口に出して言えば良いんだな。

コマンド: はい、実験の趣旨として。

D22333: 親子の幽霊のことは気にしなくて良いのか?五月蠅くして怒らせたくはないが。

コマンド: 積極的に話しかけることをしなければ、危害を加えられることは無いと推測されます。

D22333: そうか。それで、滞在するってのは、ここの部屋全体のことなんだな?リビング、台所、洗面所、寝室、ベランダ、自由に使って良いってことか。

コマンド: はい。事前の説明通りです。

(D22333はキッチンのシンクに目を付ける。D22333は荷物を床に置き、シンクへ移動。試しに蛇口を捻ると、水が流れ出す。)

D22333: 水道も通ってるとは……拍子抜けだってのが正直なところだ。2週間か。そうか。

コマンド: 実験の内容に関しては宜しいでしょうか?

D22333: 一つだけ。どうしても無理だってなった時は表の扉は使えるのか?

コマンド: ええ。確認しますか?

(D22333は玄関口に戻る。)

D22333: ドア、いつのまに閉めたんだ?

コマンド: 開放したままでは防犯上宜しくないと思いまして。1

(D22333はドアを開く。付き添いのエージェント██が会釈する。)

進入実験: 長期曝露/2

D22333: 定期報告を始める。今のところ、問題なく生活ができている。食べ物と水は問題無い。電気とガスも供給されている。部屋は昨日の時点で一通り見て回ったが、そこまで変なものはない。生活感がある、というには少し物が少ない気がするが、とりあえず生きていけそうな場所だ。

D22333: 異常というと、まあリビングの二人だが、何もしてこない。動きもしないし、話しかけても来ない。こちらの独り言にも反応しない。赤ん坊の泣き声が遠く聞こえるが、あくまで遠くからだ。この部屋じゃない感覚だ。あそこにいる幽霊二人とは関係無いと思うことにしている。

D22333: 後、気になることと言えば、台所に知らない間に食べ物が補充されていたことくらいか。あー、昨日戸棚を確認していたら、保存食のスナックがあって、それを確認がてら少しだけ齧ったんだ。味は問題無かったが、今日もう一度見たら中身が丸ごと変わっていた。それが、少し、気になっている。説明が下手で申し訳ない。以上だ。

コマンド: ありがとうございます。懸念点は以上でしょうか?実験は始まったばかりですが、どうか無理をなさらぬよう。

D22333: ひとまずは、ああ。正直今のところ、実験としてはマシな方だ。どうにかやっていくよ。……そうだ、ベランダの方には出ない話だったが、カーテンを閉め切っていなくても良いんだよな。

コマンド: はい。周囲から見て不審でなければ、ベランダに長時間出るようなことが無ければ、構いません。

D22333: 分かった。少し換気でもしようと思うよ。今日は気持ちの良い天気だからな。

(注記: 同時刻、SCP-9988-F外では小雨が降っている。無線装置上では、時刻のずれは確認されない。)

進入実験: 長期曝露/3

D22333: 定期報告。疲れてきてはいるが、健康に問題は無い。流石に退屈が辛くなってきたのと、気になったことが幾つかあった。まず、今日起きたら寝室がやけに埃っぽくなっていた。部屋ってのはそう急に汚くなるものじゃない、と思うんだ。暇を持て余して部屋を歩き回っていなければ気付かなかったかもしれないくらいだが、きっと気のせいじゃない。何かに部屋が弄られている。多分、そっちの言うところの異常だ。

D22333: キッチンにある食べ物が変わっているのも今日確認した。昨日あった保存食が無くなってた。何かあった時の為にレーションを浮かせられると思ったんだが、まあそれは良い。

D22333: あの幽霊が何かしでかしたんじゃないかとは考えたが、その痕跡は見つけられなかった。流石に不気味で四六時中見張ってはいないが、多分、あれは動いてない。胸の上下はあるが、座ったままだ。寝てる間の映像も取ったが、何も映って無かったよな?

コマンド: はい。少なくとも、実験開始より3日間に、貴方が睡眠中に何らかの実体が活動していた形跡は記録されていませんでした。それ以後の記録も、追って確認を行います。

D22333: ああ、よろしく頼む。この場所が何かおかしいのか。色々と気になってくる。時間感覚が狂ってきた感じもする。

コマンド: はい。ところで、そちらの空模様はどうですか?

D22333: 天気は……曇りだな。雨は降っていない。しばらく曇りだった気がする。

進入実験: 長期曝露/4

(壁を叩く音が絶えず響いている。D22333の視線の動きから、玄関扉から音が発生していると推測される。)

D22333: いよいよタチが悪くなってきた。

(数十秒の沈黙。玄関扉を叩く音が止む。)

D22333: 色々報告させてくれ。まずさっきの音だ。明け方頃からゴンゴンと叩くような音がしている。怒鳴り声もあった。「中にいるのは分かってるんだ」「子供を出せ」そんな感じのことを言っていた。今は無言だったが。借金取りを思い出すよ、目的はよく分からないが、まあ嫌な感覚だ。次に来た時は、覗き穴から確認してみようと思う。来たらだが。

D22333: 次。起きたら変な匂いを感じて、台所にいったら、流しに生ごみの山があった。量はそれほどでもなかったが、いつから放置されていたのか分からないくらいに蛆が湧いてた。多分食べ物が補充されてたのと原理が同じだろう。全くタチが悪い。

D22333: 赤ん坊の泣き声、あれが大きくなってる。そっちでもはっきり聞こえるよな?

コマンド: はい、記録にも残されています。

D22333: 初日はどこか隣の部屋から来てると思うこともできたが、今は家中からだ。トイレに籠っていようが、すぐ近くに赤ん坊がいるみたいに五月蠅い。幽霊を見たが、やはり動いていない。赤ん坊の方はロクに口を開いていなかった。二人とも、息をするだけの木偶だ。じゃあこの泣き声は何なんだって話だが、それはきっとそっちが考えた方が良いことだ。こっちは何も知らされてないんだ。勘弁してくれ。

D22333: で部屋が汚れているって話か、間取りも変わってるって言った方が正確か。昨日まで普通だった寝室が十年物の廃墟みたいに埃塗れになっていたり、窓枠が錆びついてたり、コンセントが切れたり。そこら中にガタが来てる。そこの壁の染みとか、今ちらついてる蛍光灯とか。最初はこんなじゃなかった。

D22333: で、これが極めつけなんだが、水道が止まった。言いたいことは分かる。水は用意してあるし、すぐに困ったりはしない。

D22333: でも時間の問題だ。ここまで急に状況が変わると、残り1週間弱は長すぎる。申し訳ないが降りさせてもらう。部屋を出る。

コマンド: 実験と事前の契約に反しますが。

D22333: 出たら射殺される覚悟でいろと。

コマンド: そのような許可は下りていません。

D22333: そうか。そうか。……信じるよ。

(D22333は寝床の脇に置いてあった荷物を取り、玄関へ移動。)

(扉の接写が映し出される。D22333はドアスコープを覗き込んでいると推測される。)

(玄関扉が開かれる。SCP-9988-F外の時刻が午前9時であるにも拘わらず、空は夕焼けの赤に染まっている。)

(D22333は用心深く周囲を確認し、SCP-9988-Fから出る。)

(D22333は扉を閉めようと振り返り、スプレーで描かれた落書きを目にする。扉を覆うように、「ヒト(人)ゴロシ」、「こどもをわたせ」「許サレルトオモウナ」等の文言が記されている。)

D22333: 全く治安が悪い。これ、いつからあったんだ?

コマンド: お答えできません。

D22333: そんな物音は無かったんだよな。知らない?そういうことにしておくか。

D22333: 天気が悪くてすぐには気付かなかったが、やはり時間がおかしくなってる。こっちがおかしくなってるのかもしらん。

(D22333は不安げに周囲に目配せをした後に、右に進み始める。)

(乳児の泣き声は一層大きく録音される。)

D22333: うるさいな。

(D22333は廊下を進み、外階段へ差し掛かる。不明瞭な女の声が録音される。)

(D22333は音に反応してか、一瞬立ち止まる。)

(鈍い音と共に、映像が左方向に急激に移動する。荷物の散乱と推測される音がほぼ同時に録音される。廊下の手すりを乗り出す形で、地上が映し出される。)

(D22333は廊下に座り込み、視界を揺らしながら激しく呼吸する。)

(散発的な物音の発生源を探すように、D22333は周囲を見回し続ける。暫くした後、D22333は階段を長時間見つめる。)

(D22333は床を這って、SCP-9988-Fの進入口に戻る。D22333は立ち上がり、扉の落書きを暫く見つめた後、再度SCP-9988-Fに進入する。)

D22333: タチの悪い幽霊屋敷は初めてじゃないが、結局、死にそうな目に遭うのが一番怖いんだ。

D22333: もし他に方法があるなら。

D22333: しばらく黙っていてくれ。

進入実験: 交信試行/1

(乳児の泣き声により、D22333の発言は不明瞭にしか聞き取れない。)

D22333: 聞こえるか。誰か聞こえるなら返事をしてくれ。君でも、そこの赤ん坊でも、この家自体でも良い。話をしよう。

D22333:

進入実験: 交信試行/2

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