呪いが解けた日

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ギリギリある何かと言ったら、珍しい名字くらいだった。小さなころから、僕はいつも誰かの影に隠れて埋もれてしまっていた。

僕は周りよりも勉強のできる子供だった。高い点数を取れば両親は褒めてくれるし、先生も褒めてくれたから。そんな幸せを感じたくて、放課後のかけがえない時間は勉強ばかりに充てていた。

小学生にして、勉強できるだけでは他人から好かれないと知った。小学校の6年間で、友達という友達はできなかった。たまに遊びに行けば、自身の行動や発言がどうにも白い目で見られているように感じた。勉強できることを凄いと言ってくれる同級生もいなかった。クラスの中心にいる人は不良のような髪型で成績も良くなかったが、誰もが彼についていった。僕は少し羨ましかった。

中学生にして、僕は別に勉強できるわけではないと知った。名のある私立中学校に通い始めてすぐ、そこにいた「不良のような見た目の子供」たちが僕よりも勉強できる真実を突きつけられた。彼らには何より「個性」があった。勉強ができるだけじゃない、バイオリンが弾ける、英語を話せる、サッカーがとても上手い、そんな僕にはない個性が。取柄だった「勉強ができること」は個性には成りえなかった。そのとき、自身には何もないということを知った。僕は羨ましかった。

高校生にして、個性が何かわからなくなった。僕はそのまま進級して高校生になった。別に成績優秀というわけではなかった。いまだ友達はなく、クラスでも孤立したまま。昼休みにやることは参考書を開いて問題を解くことばかりだった。クラスメイトはみな、いつも遊んでばかりいるように見えた。昼になれば部室へ行き部活動をつまみ食いしていた。それでも彼らは僕より勉強ができた。周りにとって勉強できることは当たり前で、誰しも他に打ち込める何かを持っていた。あの日々あの場所で僕は、どこにもいなかった。僕はとても羨ましかった。

知らないうちに爆発しそうなほど膨らんだ劣等感と承認欲求は、僕を最高峰の大学へと導くガソリンになってくれた。誰より勉強したつもりですれすれの点数で入ったそこは、誰もが個性的な世界だった。勉強しかできない人はいない。みな何かしらの個性を持っていた。僕は妬ましかった。


何かひとつでもいい。僕にしかない個性が欲しかった。


相対的に、僕はいつも無個性だ。何かがあるたびにそう思うようになっていた。そして財団に加入して、僕は絶望した。右にも左にも何かしら「異常」を持つ個性的な職員ばかりで、もはや自分自身の存在がはなはだ場違いな気すらしてきた。財団の職員になれたこと、それだけでも僕の個性になると思えたのに、ここですら僕は超没個性な"普通"の人だった。

配属されたサイト-8181で、初めて自身が実験管理を受け持つオブジェクトに割り当てられた。慎重に行ったつもりのその実験で、僕は予想外の異常性に曝露してしまった。死にはしなかったが、何もできない身体になってしまった。地に足をつきながら、いつまでも落ちる感覚に苦しめられ、床をのたうち回るばかりだった

迂闊だったとは思わない。仕方ないとしか思いたくない。僕は悪くない。そう信じたくても心の奥にある劣等感がいつでも現実を突きつけた。狭い収容室の中で何度も反芻した言葉。

「無能」




それから11年の時が経ち、少し人としての生活ができるようになってきた。当時は糞尿を垂れ流し何もできないまま、日夜落ち続ける感覚に纏われていた。今は少し、飯も食えるし、身の世話も問題なくできるようになってきた。それでも、苦しいことには変わりなかった。その苦しさは異常性だけではなく、無能感からくるものだった。

この呪いさえ解ければ、あの時あの実験さえしなければ、あの時起用したDクラスが変態じゃなければ、回収をDクラスにさせていれば。
れば、れば、れば、ればれば
ぐちゃぐちゃの三半規管の中をIFの思考がぐるぐると巡り続けた。

ふと、この異常性に係わっていることが僕の個性なのではないかと思いついた。報告書に僕の記載があるなら、それが僕の個性だということなのではないのか、と。クリアランスを剥奪されているから確認はできないが……その事実が正しいなら、僕が得てしまった個性は最悪そのものだ。ただでさえ足りない収容室を占有し、死にかけのコガネムシみたいにひっくり返って苦しんで、世話をしてくれる職員に迷惑を掛けることが、個性?

もうすっかり、死にたかった。

なんとなく死んでみたくて、部屋の中でビルから飛び降りるような想像で背中から倒れてみた。死ねるはずもないのに。




そして、呪いは突然に解けた。




弾け散った脳の破片のどれかが、この呪いだけが僕に与えられた唯一の個性だったのか? と思考した。


特定記録1738-JP-20190814


概要: SCP-1738-JPの異常影響下におかれていた神酒研究員が異常性により死亡しました。神酒研究員は異常性への曝露時にSCP-1738-JPの性質に変化が見られたため、サイト-8181の人型実体収容室で監視下に置かれていました。当日はSCP-1738-JPの定期検査日であり、死亡直前にSCP-1738-JPの画面上に赤い文字で「Tired…」と表示されたことが確認されています。

死亡確認から12分後、収容室内にSCP-1131-JP-1~7と見られるプレートが出現しました。この事実から、SCP-1131-JPが神酒研究員の死を自殺であると判断した可能性が考えられています。以下は回収された各プレートの文章の転写です。

SCP-1131-JP-1: 1点 ─随分長く貯めた割には拍子抜けだったな

SCP-1131-JP-2: 0点 ─魅力ゼロマジふつーって感じ

SCP-1131-JP-3: 2点 ─屋内だとどうも微妙ねぇ…

SCP-1131-JP-4: 0点 ─野郎には興味ない

SCP-1131-JP-5: 1点 ─基礎からなっていないと思いました

SCP-1131-JP-6: 0点 ─やる気が感じられませんでした

SCP-1131-JP-7: 0点 ─他人の猿真似など、まるで個性がなく論外です

神酒研究員の死亡後、Dクラス職員によるSCP-1738-JPの映像確認実験が行われました。再生時の画面には白い文字で「Quirkless」と表示され、再生時間は前回同様に「00:00」になっていました。新たに見られた変化として、本編中ではカメラが地面に放置されているような映像が映し出され、撮影者の存在は確認されませんでした。映像に変化が見られなかったため、確認開始から3日後に実験は終了しました。SCP-1738-JPはNagiに再分類されました。




Quirkless.jpg

呪いが解けた日





記録1131-JP-20190817


自殺者: 湯浅美咲 (22歳、大学生)

現場状況等: 3階自宅ベランダからの投身自殺。恋人からの暴力に起因する衝動的な飛び降りと推定。所持品はスマートフォン。

SCP-1131-JP-1: 4点 ─手すりですっ転んだように見えてちょっとださかったな

SCP-1131-JP-2: 5点 ─カワイイのに声うるさすぎ

SCP-1131-JP-3: 6点 ─フォームが崩れたのがもったいないわねぇ…

SCP-1131-JP-4: 8点 ─あんな声デカいと萎えちまいそうだがまあ

SCP-1131-JP-5: 0点 ─個性的な飛び方で憎らしい

SCP-1131-JP-6: 3点 ─もっと高さと静動のダイナミクスが欲しいです

SCP-1131-JP-7: 7点 ─踏み込み失敗からのリカバーがなされなかったのが惜しかったですね



記事ここまで

Taleはとても苦手なので、アイデアや見せ方などの点を特に見てほしいです。
オチへの積み重ねも上手くいっていないような気がするので、アドバイスをください。
よろしくお願いします。

追記 「僕」の頻度が高いとの事で、推敲して減らします。そこは無視して内容を見てもらえると幸いです。推敲完了しました。



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