【夜コン】SCP-xxx-JP - 虚祭

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アイテム番号: SCP-xxx-JP

オブジェクトクラス: Safe Nagi1

特別収容プロトコル: SCP-xxx-JPについて潜在的に言及しているインターネット上の会話や発言は財団ウェブクローラ ("Farewell") によって常に捜索され、発見次第記録および削除あるいは改変が実行されます。

SCP-xxx-JPの存在する地所はLoI-xxx-JPに指定されています。LoI-xxx-JP周辺には鉄柵を設置し、一般人による侵入を防止します。LoI-xxx-JP付近の黒い池の管理者に扮した財団エージェントはSCP-xxx-JPへの侵入を目的とした一般人の行動を制止します。SCP-xxx-JPに侵入した一般人の周辺にはカバーストーリーを流布し、対象者が非異常の原因によって行方不明となった旨を認知させます。

現在SCP-xxx-JPへの進入はDクラス職員にのみ限定されており、探査目的以外での進入は許可されません。

説明: SCP-xxx-JPは日本国北海道日高峠の黒い池から約700 m進んだ地点よりアクセス可能な異常空間です。SCP-xxx-JPへ侵入できる明確なポータルは存在しませんが、LoI-xxx-JPに指定される範囲の地所に侵入した人物はSCP-xxx-JPへと辿り着きます。LoI-xxx-JPはSSUIS12世界重複に類似する性質を有していますが、正確には一致せず、新たな分類の世界重複である可能性が指摘されています。LoI-xxx-JPは主に半径約350 mの円形であると予想されており、その周辺には財団により鉄柵が設けられています。

LoI-xxx-JPに進入した人物 (以下"対象者") は徐々に周辺環境の異常な変化を認識し始めます。これは主に気温の変化や空のグラデーションの変化として認識され、この状況に突入した対象者はLoI-xxx-JPから脱出することが不可能になります。周辺環境は徐々に進入時の季節に関係せず夏の夜に類似した状況へと変化し、この状況において対象者がSCP-xxx-JPへと完全に進入した状態となったと見做されます。SCP-xxx-JP内部は常に気温が25℃前後に維持されており、夜が明けない場合に想定されるような極端な気温の低下などは確認されていません。

SCP-xxx-JP内において、対象者は石によって舗装された一本道を発見します。この一本道は対象者が道を外れるように移動しても結果として繰り返し辿り着くため、また一本道をどのように進んでも最終的にSCP-xxx-JP-Aに指定される地点へと到達するため、SCP-xxx-JP内部には閉鎖的かつ反復的な空間異常が発生していると推測されています。

SCP-xxx-JP-AはSCP-xxx-JP内に存在する地点であり、SCP-xxx-JP-Bに指定される実体らにより祭が行われています。SCP-xxx-JP-Bらは主に一本道の両側に沿った形で屋台を展開しており、非異常な形式で運営しているように観察されています。屋台で配布されている食物や玩具などがどこから仕入れられているかは判明していません。SCP-xxx-JP-A内では祭囃子と推測される音が対象者に対し遠方から聴こえますが、祭囃子がSCP-xxx-JP-Aのどこに存在するかは不明です。

SCP-xxx-JP-BはSCP-xxx-JP内に存在するヒト型実体であり、前述したようにSCP-xxx-JP-A内において屋台を運営しています。SCP-xxx-JP-Bはアニメや漫画のキャラクターを模した玩具の仮面を装着しており、素顔が観察されたケースは存在していません。また、祭の際に着られる法被などの服装をしたSCP-xxx-JP-Bは発見されておらず、不特定の年代の様々な服装を着たSCP-xxx-JP-Bのみが観察されています。

SCP-xxx-JPおよびその構成要素の起源については不明であり、由来に関係すると思われる情報は発見されていません。

SCP-xxx-JP-Cの情報およびNeutralized分類経緯は補遺xxx-JP.2を参照してください。

補遺xxx-JP.1: 発見と初期調査

SCP-xxx-JPは財団に発見される以前にはインターネット上において「黒い池の奥から囃子の音が聴こえる」という都市伝説として言及されていました。この都市伝説は2019年の夏頃からSNSを中心に一部のコミュニティで言及されており、出所に関する調査が行われましたが明確な出所は発見されませんでした。なお、これらの言及より以前に黒い池周辺での行方不明者は報告されておらず、SCP-xxx-JPはこの都市伝説と同時期に出現したか認知されたものと考えられています。

財団による発見より先にSCP-xxx-JPへと侵入したと思われる一般人が2名行方不明になっており、現在まで発見されていません。行方不明者らは前述のコミュニティに加入していたことが確認されており、また囃子に関する情報からネットロアの一種である「きさらぎ駅」との関連性を見出し、調査のためにSCP-xxx-JPへと向かったことが判明しています。この際行方不明者らはインターネット掲示板「5ちゃんねる」上で実況を行っていましたが、途中から書き込みがなくなったことによりSCP-xxx-JPの情報が露呈することはありませんでした3

実際に行方不明者が出たことにより、財団は本格的な現地調査を開始しました。2019/12/10に初期調査としてDクラス職員1名に探査装備を施した上での探索が開始されました。この探査によってSCP-xxx-JP内部の大まかな情報およびSCP-xxx-JPから外部への一方向のみの通信が可能であることが確認されました。このとき投入されたDクラス職員はSCP-xxx-JP-Bの屋台で配布されていた綿飴と思われる食品を摂取した時点から通信が行わなくなり、この時点で初期調査は終了されました。またこのとき、Dクラス職員の所持していた通信機器の音声関係の機能が何かしらの理由によって故障したと思われ、音声記録は得られませんでした。

確認されたSCP-xxx-JPの映像情報とDクラス職員の内部での振る舞いを基に、第2次探査が計画されました。

補遺xxx-JP.2: 第2次内部探査記録

以下は2019/12/17に実行された第2次SCP-xxx-JP内部探査の記録です。探査を行ったのはD-xxx-2でした。なお前回の探査と違いSCP-xxx-JP内部からの音声通信を受信できたため、第1次探査で音声記録が得られなかった理由は機器の故障である裏付けが得られました。

映像記録xxx-JP.2.1
2019/12/17


[記録開始]

D-xxx-2がLoI-xxx-JP内部に進入する。

司令部: D-xxx-2、こちらからの通信は聴こえるか?

D-xxx-2: はい、まだ聴こえます。

司令部: 了解。ではしばらく付近を探索してくれ。何かあれば教えて欲しい。

D-xxx-2: わかりました。

D-xxx-2がLoI-xxx-JP内部の探索を開始する。当初は特に問題なく歩いているように見えたが、徐々に積雪量の減少が見られ始める。

D-xxx-2: なんか……さっきも通った場所だと思うんですが、雪が減ってるように見えます。気温も少しずつ上がってませんか?

司令部: 他に何か気づいたことはないか?

D-xxx-2: ええと……そうですね。わかりません。いや、何か聴こえます。祭囃子のような?

司令部: 了解した。引き続き探査を続けて欲しい。

D-xxx-2: わかりました。

D-xxx-2は探査を継続する。積雪量は目に見えて減少し、虫の鳴き声と思われる音声が徐々に聴こえるようになる。

D-xxx-2: 明らかに暑くなってきたし、セミとかの鳴き声が聴こえます。防寒具脱ぎますね。

司令部: わかった。もう少し探索を続けてくれ。

D-xxx-2: え、何ですか? ノイズが乗ってて上手く聴こえません。

司令部: なるほど。もう少し探索を続けて欲しい。聴こえるか?

D-xxx-2は反応しない。以降司令部からの指示に対しD-xxx-2は応答しなくなった。

D-xxx-2: 駄目だ、何も聴こえない。ノイズしか鳴ってないし。言われた通りもう少し歩いてみるか。

D-xxx-2が探索を続けるにつれ積雪量は減少し、やがて映像上での雪の存在が確認できなくなる。外気温は25℃前後を示している。

D-xxx-2: さっきまで冬だったのに完全に夏みたいになって、熱くて駄目です。聴こえてますか? とりあえずまだ進みますけど……少し奥に開けた場所が見えるので進んでみます。

D-xxx-2が進んだ先に石で舗装された一本道が現れる。道の両端は森の中へと繋がっており、その先は見えない。

D-xxx-2: なんだこれ……どっちに進めば。まあでもこういうときは……右か。

D-xxx-2は進行方向に対し右側へと続く道へと進み始める。

D-xxx-2: しかし、なんか明るいな。今日ってこんな満月だったっけ?

カメラの視界が上空へと向けられる。当日の月齢は20.5であり満月ではないにもかかわらず、木々の隙間から満月が観察される。カメラは再び進行方向へと向けられ、D-xxx-2は前進する。暫くして、開けた地点が見え始める。

D-xxx-2: 見えてきました。あれがSCP-xxx-JPですね? とりあえず向かいます。

D-xxx-2がSCP-xxx-JPに到達する。SCP-xxx-JP内部は緩やかな上り坂が続いており、未知の両脇に隙間なく屋台が陳列しているように見える。各屋台にはSCP-xxx-JP-Bの存在が確認できる。D-xxx-2がSCP-xxx-JPに到達する以前よりも祭囃子と思われる音の音量が大きくなっていることがわかるが、音源の方向は把握できない。

D-xxx-2: なるほど、確かに祭だ。冬だってのに夏祭りみたいだ。そこらへんの屋台にいる人に話しかければいいんだったっけ。

D-xxx-2が最も近くにある屋台へと向かい、SCP-xxx-JP-Bへと話しかける。なお、これ以降はSCP-xxx-JP-Bの各個体を識別するために副番号を記載している点に留意されたい。SCP-xxx-2が話しかけた実体 ─ SCP-xxx-JP-B-1は冬季に着られるような服装をしており、他の実体と違い頭部にバイク用ヘルメットを装着している。

D-xxx-2: こんばんは。

SCP-xxx-JP-B-1: おおう兄ちゃん! ここに来るのは始めてかい?

D-xxx-2: はい。

SCP-xxx-JP-B-1: いいね。よく来たもんだ! うちでは見ての通り林檎飴をやってんだ。

D-xxx-2: 1個1個大きくていい感じですね。

SCP-xxx-JP-B-1: だろう? (笑い声) 御一つどうだい。お題は要らないよ。

D-xxx-2: ああいえ、ごめんなさい。食べるのは禁止されてるんで4

SCP-xxx-JP-B-1: ああー! 残念だ! まあいいよいいよ。祭は長いからね、目一杯楽しんでってくれや。

D-xxx-2: ありがとうございます。

D-xxx-2は道なりに進み、SCP-xxx-JPの奥へと進行を開始する。途中で各屋台からSCP-xxx-JP-BらがD-xxx-2へと話しかけるが、D-xxx-2は軽い会釈をするのみで基本的に無視しながら歩いている。暫く歩いた後、D-xxx-2は何かに気付いたような声を出し、1つの屋台へと向かう。D-xxx-2がSCP-xxx-JP-B (SCP-xxx-JP-B-2) に話しかける。SCP-xxx-JP-B-2は女性実体であり、SCP-xxx-JP-B-1と似た服装かつ同様にバイク用ヘルメットを装着している。

D-xxx-2: あの、さっきも合いませんでし……あ、人違いみたいです。

SCP-xxx-JP-B-2: なんだ、うちの綿飴に興味があるんじゃないの?

D-xxx-2: 食事を禁止されてまして。ああでも、折角だから幾つか質問してもいいですか。

SCP-xxx-JP-B-2: いいよいいよ、なんでも訊いて!

D-xxx-2: じゃあまず……ここはそもそも何なんですか?

SCP-xxx-JP-B-2: つまりこの祭がどういうものかってことかな? うーん、ごめんね。わかんないんだ。

D-xxx-2: わからないんですか?

SCP-xxx-JP-B-2: まあ楽しければいいと思うし……みんなそうだと思うよ。何も考えないで楽しむ、とても大事なことでしょう? 不安なことも何も、すべてから目を背けていられるのがこの祭なんだよね。わかんないかな?

D-xxx-2: わからないこともないですが……あんまり。

SCP-xxx-JP-B-2: そっか。

D-xxx-2: ええと、他に……あなたの素性というか、あなたが誰なのかというのには答えられませんか。

SCP-xxx-JP-B-2: あー、私? 私かぁ……わかんない。

D-xxx-2: うーん、思うにあなたはこの前行方不明になった人だと思ったんですが……バイクに乗った男女がいなくなったと聴いていて、周りと違ってお面も付けてないし──

SCP-xxx-JP-B-2: あー! なるほどね! なるほどなるほど。もうひとりヘルメット付けた人見なかった?

D-xxx-2: いました。最初は気になってなかったんですが、あなたを見つけてもしかしたらと思って。

SCP-xxx-JP-B-2: 彼は私の彼氏だったんだ。私も元々黒い池の奥の祭囃子の噂でここについてきたんだけど、なんか、そんなときもあったなぁって!

D-xxx-2: いまいちよくわからないのですが。

SCP-xxx-JP-B-2: あー、ごめんね! 楽しくないからあんまり前のことは考えたくないや。

D-xxx-2: そこをなんとか──

SCP-xxx-JP-B-2: 楽しくないって言ってんじゃん。あんたも楽しい話題出すべきじゃん。空気読んだら?

両者が沈黙する。

SCP-xxx-JP-B-2: (溜め息) ごめんごめん、まあ楽しんでいってよ! この祭は夜明けまで続くからね、まだまだ夜は長いよう? ほら、綿飴持ってきなよ!

D-xxx-2: い、頂きます。ありがとうございました。

SCP-xxx-JP-B-2: いえいえ!

D-xxx-2がSCP-xxx-JP-B-2に会釈をしたのち、移動を再開する。

D-xxx-2: えー、すみません。食べ物を受け取ってしまったんですが、食べないで捨てようと思います。見た目には普通の綿飴なんですけどね。あと、祭の雰囲気に圧倒されて気付けなかったんですが、恐らくさっき会ったヘルメットを付けた男女の実体は行方不明になっている人たちなんだと思います。もしそれが正しいなら、もしかしたら先にいなくなったDクラスもいるんじゃないかなと。しばらくそいつを目標にして探してみます。

D-xxx-2はSCP-xxx-JPの探索を続ける。途中で複数のSCP-xxx-JP-BらがD-xxx-2に会話を持ちかけるが、主にD-xxx-2に対して祭を楽しむよう促す旨の言葉を投げ掛けている。それ以上に特筆すべき内容の会話は行われない。途中でD-xxx-2は屋台の横に設置されたゴミ箱へSCP-xxx-JP-B-2から受け取った綿飴を廃棄する。D-xxx-2が綿飴を廃棄して以降、SCP-xxx-JP-B-2らがD-xxx-2に声を掛ける頻度が明らかに減少していることがわかる。しばらく歩いた時点で、道の終端に鳥居と思われる人工物の存在が見え始める。D-xxx-2が何かを発見したような反応を示し、特定の屋台へと向かう。屋台にはSCP-xxx-JP-B-3に指定される男性実体がおり、発光するステッキ型の玩具を頒布している。顔はネコを模したと思われる白色の仮面を装着しており確認することができない。

SCP-xxx-JP-B-3: へへっ、兄ちゃんどうしたんだい……いいだろうこれ。キラキラしてて、魔法少女にだってなれる。夜に映えるぜ?

D-xxx-2: お前そのつなぎ……D-xxx-1じゃないのか?

SCP-xxx-JP-B-3: いやぁ、兄ちゃん。ちょっと耳かしな。

D-xxx-2: ああ。

SCP-xxx-JP-B-3: (耳元で) よく来たな。何か食わなかったか。

D-xxx-2: いや何も。やっぱり駄目なのか。

SCP-xxx-JP-B-3: 見ての通りだ。ここのものを食ったら楽しくなってしまう。思考できなくなるというか、常に頭が気持ちよくなってる感覚だ。

D-xxx-2: でもお前、話せてるだろ。

SCP-xxx-JP-B-3: わからない。ここに取り込まれて日が浅いからなのかもしれないが、日に日におかしくなっているのを実感してる。お前とひそひそ話してるのも超ドキドキしてんだ。修学旅行の夜みたいな感覚だ。おかしいだろ。

D-xxx-2: どうにかして戻れないのか?

SCP-xxx-JP-B-3: それが、駄目なんだ。この屋台だって気づいたら運営していたし、出ようにも出られなくて、きっともう二度とここから出られないし、楽しさもぬぐえない気がするんだ。

D-xxx-2: 出られないっていうのは、どういうことなんだ。

SCP-xxx-JP-B-3: 不安なんだ。死んでしまいそうなほどの不安が一瞬で全身を支配する感覚。今にも吐きそうになって、手足の先が痺れてしまう。無理に出ようとする気にもなれない。屋台の中にいれば楽しくなれるんだから、出ようなんて思わなくなる。現にそうなってる。

D-xxx-2: なるほどな。じゃあ、もう戻っては来れないんだな。

SCP-xxx-JP-B-3: そういうことだ。

D-xxx-2: わかった。そもそもとして、この祭がどういうものなのかとか、何かしらの情報はないか。ここに取り込まれる前に調べていたことを教えて欲しいんだ。

SCP-xxx-JP-B-3: そうだな。本題だが……まず、この祭はただ楽しさを具現化したような場所で、意味があって誰もが運営しているわけではないみたいだ。いつからこの祭があるのかもわからない。アイヌの服みたいなのを来た奴もいなかったか? 少なくともそれくらいは前からあったのかもしれないとは思っている。

D-xxx-2: そうなのか。

SCP-xxx-JP-B-3: それで、この祭がそもそも何を祀っているのか、というところなんだが……どうやらそうではないみたいなんだ。俺含めて、誰もが見たくないものを閉じ込めている。あの鳥居の奥にある神社、そこに閉じ込めている。

D-xxx-2: 閉じ込めている?

SCP-xxx-JP-B-3: 見たくないものに蓋をして、どんちゃん騒ぎをするだけの祭。楽しいだけで中身はない。

D-xxx-2: 神社には何を閉じ込めているんだ?

SCP-xxx-JP-B-3: わからない。人それぞれなんだと思う。

D-xxx-2: さっきから誰もかれも、なんかふわふわした解答ばっかしてるように思ってるんだが──

SCP-xxx-JP-B-3: まあ、みんな酔ってると思ってくれ。

D-xxx-2: そうか。他に何かわかったことはないか?

SCP-xxx-JP-B-3: この祭がいつまで続くかは知ってるか?

D-xxx-2: 夜が明けるまでとは聞いた。

SCP-xxx-JP-B-3: ああ。だが気づいてると思うが、ここは夜が明ける気配が微塵もない。月はずっとあそこで満月のままだし、だからいつまでも楽しんでられるわけだが。

D-xxx-2: いつになったら夜が明けるとか、そういうのはわからないのか。

SCP-xxx-JP-B-3: わからない。今となってはどうでもいいし、誰も夜明けなんか求めてない。だが、何かがあるとしたら、あの神社だけだと思う。ここには祭と屋台しかないから、調べるべきはきっとそこだろう。

D-xxx-2: そうか。なら俺がするべきは、その神社を調べることか。

SCP-xxx-JP-B-3: まあ、さっきも言ったが俺はこの祭がずっと続いたらいいなと思っているけども。もし何かあるとすれば、屋台の奴らが追ってくるかもしれない。俺はお前が神社に行くことが不安でたまらない。だがさっきも言った通り、その道に出られない。他の奴らもきっとそうだろうが、もしかしたらそれだけ不安でも必死にお前のことを追うやつがいるかもしれない。だから気を付けてくれ。うわべだけでも楽しんでいるんだ。

沈黙。

D-xxx-2: わかった。ありがとう。お前のことは財団に伝えておくよ。

SCP-xxx-JP-B-3: で、どのステッキがいい?

D-xxx-2: いやいいかな。趣味に合わんや。

SCP-xxx-JP-B-3: かあっ、残念だ! じゃあな、目一杯楽しんでけよな。

D-xxx-2: すまない。

D-xxx-2は鳥居を目標にして進行を始める。

D-xxx-2: 神社、神社か。屋台の奴らがそこに何かを閉じ込めていることが、この場所の鍵になることなら、それを調べないと。司令部、見ていたかもしれませんが、前の探索のときのDクラスがいました。この場所に取り込まれてしまっていたようです。そいつの言ってた通り、これから神社に向かいます。そこに何か重要なものがあるかもしれません。

射的の屋台にいるSCP-xxx-JP-B (SCP-xxx-JP-B-4) がD-xxx-2に声を掛ける。

SCP-xxx-JP-B-4: おい、あんた! どこ行こうとしてんだ!?

D-xxx-2: もうちょい奥の屋台が見たくてですね!

沈黙。

SCP-xxx-JP-B-4: そうなんかい。楽しんでけよ!

D-xxx-2: 言われなくとももう楽しんでますよ!

D-xxx-2が進行を再開する。約100 m先に目標とする鳥居が近づいており、SCP-xxx-JP-BらがD-xxx-2へと大声で声を掛けるがD-xxx-2は無視をしている。

D-xxx-2: もうそろそろ神社です。屋台の奴らの声が明らかに焦ってるように思えて、やっぱり何かあるのは間違いなさそうです。とにかく今は、進みます。

D-xxx-2は歩き続け、鳥居の約5 m手前まで進む。D-xxx-JP-Bらは焦っているような口調でD-xxx-2を引き留めようとしている。D-xxx-2が鳥居を潜った時点で数体のD-xxx-JP-Bらが屋台から飛び出て、D-xxx-2を追い始める。

SCP-xxx-JP-B-5: お前! それ以上は駄目だ! 戻ってこい!

D-xxx-2: 無視だ。意地でも神社に行ってやる。

D-xxx-2は走り始める。鳥居の先には森林が広がっており、未舗装の一本道が続いている。D-xxx-2が歩い程度道を進んだ時点で、緩やかな斜面に設置された石の階段が現れる。D-xxx-2とSCP-xxx-JP-B-5らはこの階段を登り始める。D-xxx-2の進む速度に対しSCP-xxx-JP-Bらは付いてこれていないようであり、徐々に両者の距離が離れる。

D-xxx-2: よし、開けてきた。もう少しで神社だろ!

D-xxx-2は神社と思われるエリアへと到達する。このエリアには末社と思われる比較的小さな建造物のみがある。

D-xxx-2: 神社ってここか? (息切れ) ここに何を閉じ込めてるっていうんだ?

D-xxx-2の背後からSCP-xxx-JP-Bらの声が聴こえる。D-xxx-2は再び走りながら建造物へと向かう。

D-xxx-2: 着いた。着きました。ここが目的の神社だと思います。中は……何だこれ?

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SCP-xxx-JP-C

D-xxx-2が建造物の内部をカメラに映す。内部にはスノーノイズのように見える存在が満たされている。この存在は現在SCP-xxx-JP-Cに分類されている。

SCP-xxx-JP-Bら: 開けるな! 開けないでくれ! 終わってしまう!

D-xxx-2: 終わるって、そうか、そういうことか。

D-xxx-2が建造物の扉に手を当てる。

D-xxx-2: (深呼吸) これで祭が終わるんなら、いいだろ!

D-xxx-2が扉を開く。すぐさま内部よりSCP-xxx-JP-Cが飛び出し、カメラの画面を埋める。D-xxx-2の困惑する声とSCP-xxx-JP-Bらの悲鳴のみが録音される。しばらくして、画面にはスノーノイズ様の存在は映らなくなり、内部が空になった建造物が見えるようになる。D-xxx-2の背後には既にSCP-xxx-JP-Bらが到達しているが、D-xxx-2に接近しようとするものはなく、その場にうずくまりながら泣いているように見える。

SCP-xxx-JP-B-6: 夜が明ける、明けてしまう……もう嫌だ全部嫌だ、終わりだ!

SCP-xxx-JP-B-6に指定される男性実体は嘔吐したようであり、仮面の隙間から吐瀉物が零れ出る。

D-xxx-2: なああんた、どうしてそんなに夜明けがいやなんだ?

SCP-xxx-JP-B-6: お前…… (嗚咽) ふざけんなよ。祭が終わるからに決まってるだろう。いったい誰のせいでこんな!

D-xxx-2: そうか。いや、悪かったな。なあ、あの砂嵐みたいなのはなんだったんだ? 月に向かって飛んで行ったようだが。

SCP-xxx-JP-B-6: あれは……わからない。でも誰も見たくなかったんだ。見たくもないし、何なら忘れたかった。無くなってしまえばいいと思ってた。だから俺たちはあれを閉じ込めて、いつまでも祭が続いてくれればいいと願ってたのに。そうしている間だけが幸せで、楽しかったのに。お前のせいで、なにもかも台無しだ!

D-xxx-2: 結局、あれが何だったのかは誰にもわからないのか。でも閉じ込めておきたかったんだな。

SCP-xxx-JP-B-6: そうだよ。無くなることを願っても無くなりやしない。いつか面と向かって向き合わなければいけないなんて誰だってわかってた。でも嫌だった! 夜の間だけでも楽しんでいたかったんだ! そうしてれば幸せだったのに……

近くに設置されていたサイレンが鳴り、祭の終了を告げる旨の内容が放送される。

D-xxx-2: ああ、本当に終わるんだな。

SCP-xxx-JP-B-6: もう、本当に嫌だ……死んでしまいたい……

D-xxx-2: でも、もう十分楽しんだんじゃないのか?

SCP-xxx-JP-B-6: そんな……そんな……

D-xxx-2: パッと来た俺が言うことじゃないかもしれないが……夢はいつまでも続かないし、楽しいこともいつまでもやってられないだろ。

SCP-xxx-JP-B-6: いったい何の──

D-xxx-2: お前たちが閉じ込めたかったあれが何かは知らないが、きっと見るだけでも、考えるだけでも不安なものだったんだろう。そうやってお前たちは見たくないものから目を背けて、脳死で祭を楽しんでたわけだ。

SCP-xxx-JP-B-6: 何だよ、悪いのか!?

D-xxx-2: 悪いとは言わないし、誰だってそうやって見たくないものに蓋をしてしまうことはあると思う。でもな、そうやっていつまでもいつまでも現実逃避してられないだろ。そううまく行くことなんてないんだから。

SCP-xxx-JP-B-6: この期に及んで説教か? ふざけんなよ。

D-xxx-2: なあ、もう帰ろう。祭は終わったんだ。もういいだろう。帰ってさ、明日のことでも考えようぜ。

SCP-xxx-JP-B-6: (沈黙) ああもう……

徐々に空が白み始める。

D-xxx-2: 見ろよ、夜明けだ。

SCP-xxx-JP-B-6: ああ……ああ……

SCP-xxx-JP-Bらのすすり泣くような声が記録される。この時点でバッテリーが切れたと思われ、通信が遮断される。

[記録終了]

当探査以降、D-xxx-2との通信の再開には成功しておらず、またD-xxx-2含む一切の人物もSCP-xxx-JPより帰還していません。加えて、D-xxx-2がSCP-xxx-JP-Cを内部の建築物から解放したことによりSCP-xxx-JPの性質に何かしらの変化が発生したと思われ、以降SCP-xxx-JPへとアクセスすることが不可能になったことが確認されました。これらの事実とSCP-xxx-JP-Cの存在が発覚したことから、SCP-xxx-JPはNagiに分類されました。

現在のところSCP-xxx-JPへの再アクセス方法の模索とSCP-xxx-JP-Cの解析が進められています。また、収容担当チームはSCP-xxx-JP-CがSCP-1777-JP-Aや[編集済]などの既知の異常存在と関連があると推測しています。特別収容プロトコルは継続されます。



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