球児たちの夏

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20██年7月某日、東京都神宮球場にて。多くの観客が見守り緊張に包まれる中、甲子園出場校を決める戦いが今、幕を開けようとしていた。
一塁側、プリチャード学院高等学校。
三塁側、グローリーオース中央学園高等学校。
この二校には浅からぬ因縁がある。学業、スポーツ、芸術等々幅広く生徒たちは競い合ってきた……いや、競い合うというよりも、戦ってきた。
その原因はプリチャード学院の母体が財団であり、グローリーオース中央学園の母体が世界オカルト連合であるということである。世界の平穏を異常存在から守るという目的は共通すれど、思想も手法も異なる両者。母体そのものが大っぴらに戦うことは少ないが、フロント企業が多様な分野においてしのぎを削っていた。そしてその流れは教育、さらには高校野球へと伝わり、何の因果か決勝戦で、甲子園出場をかけて戦うこととなったのである。
もちろん両校の監督、選手たちもそのことは了解済みで、決して負けられないという決意を胸にこの決勝戦に臨んでいる。大会史上類を見ない緊張感の中、高らかにプレイボールが宣言された。

この試合、両校ともに勝利が異常の隠蔽に優先するという決定を下している。観客席には認識改変薬が散布され、テレビ中継はリアルタイムで編集される。記憶処理のリスクとコストを負ってでも、使える力をすべて使って勝利するべきであると両上層部は判断した。

先攻はグローリーオース中央学園。
彼らの確かな力と技術は大会参加校の中でも随一である。その超攻撃的なプレーで、これまでの試合のすべてを二桁得点で勝利してきた。しかし今回相対するのはプリチャード学院。丁寧な守備と機動力が売りで、今大会無失点で決勝戦まで進出してきている。まさに最強の矛と最強の盾の対決。事情を知らない市民からもここ十年最高のカードだと注目されている。
そんなプリチャードのピッチャーが繰り出すのは、反ミーム投法による認識不可能の魔球。1番バッターを三球三振に抑え、余裕の笑みを浮かべている。
2番バッターもあえなく三振に倒れたが、3番バッターは様子が違った。ピッチャーが反ミーム投法を使用してくることがわかってから、ベンチにいたグローリーオースの選手たちは即座に反ミーム対抗エージェントを摂取した。これでボールははっきりと見えるようになり、その打撃力をいかんなく発揮できる。外角低めを的確にとらえてライト前ヒット。この試合初のランナーとなった。

4番バッターが打席に入る。その恵まれた体格と筋肉から繰り出されるスイングは、ボールを弾丸のようにスタンドへと運ぶだろう。プリチャードのバッテリーにも緊張が走る。
初球外してボール。キャッチャーはピッチャーにボールを投げ返そうとして───驚愕した。いつの間にかランナーがセカンドにいる。盗塁されたことに、全く気が付かなかった。
それもそのはず、グローリーオースの選手たちが身にまとうのは、ユニフォームタイプの潜入擬装衣グレイ・スーツ。適応型迷彩システムによる不可視の盗塁は、マスクで視界の狭まったキャッチャーを簡単に欺いた。

改めて第2球、内角ギリギリのストレート。バッターは見逃して1ストライク1ボール。
3球目、甘く入ったカーブをとらえ、ボールは高く上がってそのままレフトスタンドへ───と、その時、レフトが跳んだ。財団神拳基本技の一つ、空中ジャンプ。特殊な足の回転によって空中に足場を作り出し、高く高く跳ぶ技である。レフトはそのまま空中でボールをキャッチし、これで3アウトチェンジとなった。確保・収容・保護を旨とする財団の下で訓練を受ける者にとって、ただ高いところを飛ぶだけのボールを確保することなど朝飯前なのだ。

後攻はプリチャード学院。
財団は前もって球審に認識災害を仕掛け、際どいボールをプリチャード学院が有利になるように判定させるよう仕組んでいる。1番が四球を選んで出塁、2番バッターが丁寧に送りバントを成功させ、あっという間に1アウトランナー二塁のチャンスを作り出した。

続く3番バッターが左打席に入ると、観客席に座るGOCの職員たちがざわめいた。そこに立っていたのは半透明の人型霊的実体。粛清対象となりうる存在であった。普段操っているウィンストン式人間型偽装人形の殻を脱いだ彼は、そのポルターガイストでバットを浮かべ、ピッチャーをまっすぐに睨んでいる。内角高めをしっかり見極め、ライト前に飛ばしてきれいなヒット───と思われたが、ここでライトが急加速。スパイクに仕込まれた魔術論的加速機構によってボールが落ちる前に落下地点にたどり着き、ギリギリながらもダイレクトキャッチ。セカンドランナーは何とか戻ってセーフだったが、これで2アウトランナー二塁。

しかしまだチャンスは続く。このタイミングでバッターボックスに立つのは今大会6ホームランの4番バッター。彼が使うバットはボールにあてるとボールを問答無用でスタンドに飛ばすAnomalousアイテムである。
あてさえすればホームラン。2ストライク2ボールから、相手のピッチャーが投げたのはど真ん中のストレート。バッターは思いっきりバットを振った。

バキンッ!

およそ金属バットからは本来生じるはずのない音がして、彼のバットは折れ、ボールはキャッチャーのミットに収まっていた。世界オカルト連合緊急破壊術の七、異常存在破壊投法である。この投法により特殊な回転をかけられ放たれたストレートは、異常存在をその異常性もろとも破壊してしまうのだ。
異常存在の破壊を旨とする世界オカルト連合の下で訓練を受ける者にとって、ボール一つで低脅威度のバットを破壊するなど造作もない。これによって3アウト、チェンジとなった。

1回裏が終了し0対0、試合はまだまだ始まったばかりである。


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