落梅

「そうだ、椎名さん。今日、この後少し話せないかい」
浮田がふと思い出したようにつぶやく。会員のほとんどは今日のメニューを食べ終え、会話も落ち着いてそろそろお開きかという雰囲気が漂ってきたところでの発言だった。会員たちの間に静かに動揺が伝わる。浮田、椎名を除く8人の会員にとって、この2人は最古参でありながら誰も詳しい素性を知らない不気味な存在であった。倶楽部があるからこそつながりを持っているものの、正直に言ってしまえばあまり関わり合いになりたくない……そう考えている者も多い。特に椎名に関しては、彼女の持つ独特の嗜好によって苦手意識を持っている者がほとんどであった。
「うち? 何やろ、まあええよ」
他の会員の緊張など我関せずと言った様子で椎名も答える。何やろ、とは言ったものの要件に想像はついているような声音であった。
「なに、大したことじゃあないさ」

「それじゃあ今日はこのあたりでお開きにしましょうかね。ごちそうさまでした」
手を合わせ、静かに感謝の言葉を口に出す。食材に対して感謝を捧げ、その歩んできた人生に思いをはせる。

「それで、何の用やろか」
薄暗い闇の中で、浮田と椎名が向き合っている。
「うん、まあもうわかってるかもしれないが……椎名さん、倶楽部を抜けてくれないか」
「倶楽部を抜ける? そらまた突然やねえ。半世紀以上の付き合いやのに」
「君は最近一層健啖になったようだねえ。倶楽部の外であれこれと食い散らかしているようで……。私たちは美食家の集まりなんだ、調理もせずに丸ごと貪り喰らう化け物の隠れ蓑じゃない」
「ひどい言い草やねえ。いくら美食家気取ったところで、うちらはみんな人喰いの鬼よ。それを認めもせんと偉ぶって、自分らに酔っとるだけやないの」

「ま、ええよ。うちはもうあんたらとはやっていけんわけやね。今の人たちはええ人ばっかりになってしもうたんやねえ」
「それで、だ。私たちとしては倶楽部の会員でもない化け物を放っておくわけにはいかない。この町で暮らす我々の安全のためにもね」

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