開けずの間

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: None

door_2.jpg

封鎖以前の収容室04(左)。

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPの全面は外側から厚さ5cmの鉄板で補強され、完全に封鎖されています。あらゆる事態においてSCP-XXXX-JPの開放は恒久的に許可されません。

説明: SCP-XXXX-JPはサイト81XX西棟の収容室04および収容室内部のすべての構成要素です。収容室に取り付けられたカメラの映像からは、室内にサイト81XX勤務職員の太田研究員の死体が確認できます。収容室は非常時用の手動ロック機構によって内側から密閉されており、太田研究員の手によって封鎖措置が行われたと推測されています。

特別収容プロトコルの施行以前に実施された電波測定と室内カメラの映像より、室内の構成要素は以下の通り断定されています。

  要素 備考
1 太田研究員の遺体 頭部への発砲による自殺と推測される。左手首が大きく損傷しており大量の出血が確認できる。
2 拳銃 太田研究員の右手に握られている。財団のフィールドエージェントに支給されているものと同型。
3 薬莢 2発分の薬莢が確認できる。
4 文章が記述された紙片 記述内容はカメラの解像度の問題で解読不可。
5 清掃用具 標準的な収容室の清掃用具。
6 未知の金属環  

遺体の他にサイト81XXで採用されている一般的な清掃用具と、エージェントに支給されている拳銃、環状の未知の金属がしていることが判明しています。

収容室04のSCP-XXXX-JPへの指定は、1989年2月15日に発生した超常現象89-D22が契機となりました。超常現象89-D22の発生以来、SCP-XXXX-JPが開放されたことはありません。SCP-XXXX-JPの内部には時空間に対して不明な作用を齎す不特定の要素が存在していると考えられており、超常現象89-D22の事後調査によって確認された様々な状況証拠はこの説の信憑性を飛躍的に高めています。SCP-XXXX-JPの開放はTK-クラス:世界凍結シナリオを発生させる可能性を多分に含みます。

超常現象89-D22は1989年2月15日14時50分10秒に日本の神奈川県で同時発生した人体転移現象です。超常現象89-D22の影響を受けた人物は神奈川県のランダムな位置に転移し、様々な死因により死亡した状態で出現しています。この現象により、サイト81XXの職員2名を含む7名が死亡したことが確認できています。詳細な情報は調査報告:超常現象89-D22を参照してください。

調査報告:超常現象89-D22より抜粋

(前略)


サイト81XXに所属する2名の職員、エージェント・木瀬、太田研究員が死亡しています。エージェント・木瀬は収容室04(現SCP-XXXX-JP)の扉の前で発見されました。太田研究員は収容室04内のカメラの映像から姿が確認できています。また、エージェント・木瀬の遺体の付近からは1冊のメモ帳が発見されています。これは超常現象89-D22の影響を受け死亡した花森 ██氏が所持していたものであることが後の調査によって判明しており、超常現象89-D22の重要な証拠とみなされています。このメモ帳には89-D22-1のIDが付与され、現在サイト81XXに保管されています。

(中略)


89-D22-1は表紙にボールペンで「捨てないでください」と書かれている1、A8サイズ全60枚綴りのメモ帳です。1ページ目から36ページ目までの記述は、花森 ██氏が超常現象89-D22の発生以前に記したと思われる無関係な内容です。

37-40ページ:

警察の人へ

(塗り潰されており解読不能)

私の名前は花森 ██といいます。
このメモに気がついてくれてありがとうございます。
これを絶対に捨てないでください。読んでください。

気が付いたら私の目の前で知らない女の人が倒れていました。(塗り潰されており解読不能)
私は驚いて、大きな声を出したのですが、すぐにおかしいことに気がつきました。
周りからは何の音もしなくて、とても静かでした。よく見るといろんなものが全部、動かなくなっていました。
そして私の腕には変な腕時計のようなものが付いていて、まるで時間が止まっているみたいだと思いました。本当にそうなんじゃないかと思っています。
カバンに入っていたペンとメモ帳は使うことができたので、これを書いています。

(塗り潰されており解読不能)
これは夢だと信じています。
でももし夢じゃなかったら、わからないけど、誰かが私と同じようになるかもしれません。ならないかもしれません。
すみません。許してください。
もし、私と同じことが起こったら、それは私のせいです。
警察の人にお願いするしか思いつきませんでした。
本当にごめんなさい。


このあと、お布団で目が覚めますように。
ダメだったら、父と母にありがとうと伝えてください。よろしくお願いします。
家のドアは動かせなくて入れませんでした。

住所:神奈川県横浜市██████████████████████████

41-44ページ:

エージェント・木瀬 殿

捨てずにお読みいただきありがとうございます。
花森 ██氏が私のポケットにこのメモとペンを入れてくれたのは本当に幸運でした。

状況は理解していただけたかと思います。以下に判明していることを記述します。何かの役に立つと幸いです。
・生物、非生物問わずほぼ全てが停止しています。動かすこともできません。
・所持していた物品は動かせるようです。しかし、手放してから少し時間が経つと動かせなくなります。
・自身の代謝は働いているようです。
・太陽も動いていません。1日ほど経過しましたが気温の変化もおそらくありません。
・左手首に腕時計に似た何かが巻き付いています。外すことが出来ません。

そして、あなたにこれを負わせることになってしまい本当に申し訳ありません。突然目の間に現れた花森氏の遺体と、手に握られていたメモ帳、私の置かれた状況を考えるに、この現象は死亡したときに最も近くの人間に移っていくのではないかと思います。

またこれはお願いですが、妻と娘に、突然逝ってしまうことについての謝罪と、これまで共に生きてきて感謝していることを伝えて下さい。

これをあなたがた財団に託します。私があなたがたの存在を知っている警官であったことを誇りに思います。

山岡 ███

(45-48ページの紙は破り取られています。)

49-51ページ:

サイト81XXの職員の方々へ向けて

概ねの状況は把握していただけたのではないかと思います。多くの幸運と不運の積み重ねの結果、今この状況があります。

何らかの原因によって時空間に影響を与えるアノマリーが出現、もしくは発生したのではないかと推測しています。そして恐らくは、現在私の左手首にある腕時計のような物体がそうです。私がこの状況下に置かれたとき、これが装着されていました。文字盤に数字は使われておらず、針は5つあります。これらの針がどのような基準で周回しているかはわかりませんが、針の1つは私の脈拍と連動しているように見受けられます。

およそ2日程度の時間をかけて周辺地域を見回りましたが、未だ甚大な被害にはなっていないものと思われます。

私が考えうる対処法はこのアノマリーを物理的に破壊、もしくは閉じ込めることです。全くの無駄かもしれません。私は復帰不可能なK-クラスシナリオを体験しているのかもしれません。しかし私は全く何も動かせないこの状況下において、"それ"を行うために理想的な人物・場所を見つけました。この機会を逃したら2度とないかもしれません。私の考えが誤っており、彼が失敗した場合は、そのときはよろしくお願いいたします。

皆さん、ありがとうございました。

エージェント・木瀬 改め 吉瀬 光一

(以降のページは白紙です。)


超常現象89-D22発生時の映像ログ:

<ログ開始>

14:50:00: 2つの定点カメラは収容室04の扉の前と収容室内をそれぞれ映している。

14:50:07: 両手で清掃用具を持った太田研究員が収容室04の扉の前に到着する2

14:50:08: 太田研究員が清掃用具を片手に持ち、収容室04の扉に手をかける。

14:50:10: 扉が半分ほど開いた瞬間に太田研究員が清掃用具と共に扉の前から収容室内に転移し、同時にエージェント・木瀬の死体が扉の前に出現する。

<ログ終了>

収容室内のカメラは室内の手動ロック機構が有効になっていることを示しており、室内には太田研究員のものと思われる血痕と清掃用具が散乱しています。また、破り取られた89-D22-1の45-48ページと推測される紙片が室内にあることが確認できるものの、筆記されている文章は記録映像の解像度では判別できていません。

(後略)

追記: SCP-XXXX-JPの危険性は状況証拠に基づく推測に留まります。現在の収容プロトコルはそれらの状況証拠が示唆する危険性と収容コストを総合的に鑑み制定されたものであり、SCP-XXXX-JPに対しこれ以上の特別な収容措置を講じる必要はありません。超常現象89-D22の解明のための調査は続けられています。

付与予定タグ: ここに付与する予定のタグ
scp jp esoteric-class 移動 寄生 k-クラスシナリオ 時間 時計


以下スポイラー
・人間に寄生する時計のような形のアノマリーが何かしらをきっかけとして発生し、命のバトンがつながり運良く収容されたというストーリーです。
・寄生された人物とその所持物品以外はすべて静止します。(光が止まると暗闇になるだろうという理屈は今回は無視します。あくまで「時間が止まるような現象」という雰囲気で…)
・寄生された人物が死亡すると最も近くの人間にこいつは取り付きます。テレポート的な移動でなく、物理的にピョンピョン飛んだりよじ登ったりして手首に巻き付きます。
・多数のバトンタッチの末にたまたま女の子が筆記具を持っていたため警官へバトンタッチ、警官はたまたま財団を知っていたためエージェントへバトンタッチという流れです。
・エージェントはサイトに戻ると、たまたま収容室の扉を開いている途中だった(=静止した世界で収容室を開閉できる)研究員を見つけたためメモをちぎってバトンを渡しました。

・テーマとしては「財団以外の一般人の活躍を表現する」です。メッセージを残せずに犠牲となった研究員かわいそう/かっこいいみたいな感情も想起させることができたらなあ、という感じです。


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  1. portal:3646960 (31 May 2018 15:21)
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