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「スシブレードは教育上良くない。」

そんな意見が出始めたのはいつからだっただろうか。食べ物を回して戦う、という時点でそのような意見が出ることは覚悟していた。だが、我々にはこの題材で絶対に面白いものを作ることができるという自信があった。突然上司から「寿司を回して戦う漫画を連載する」と言われたときはこいつは突然何を言っているんだ、と思った。しかし、企画の詳細を聞いていくにつれて、私たちはその題材に魅力を感じるようになっていった。批判もあるだろうが、それを読者に感じさせないほどに面白いものを作ってやろう。そう思った。漫画は子どもたちにヒットし、グッズ化、アニメ化などが決定し、全ては順調だった。

その時までは。スシブレードの知名度が上がるにつれて、反対意見も増えていった。編集室の電話がひっきりなしに鳴り、みんな疲弊していた。そんな日が続いた。みんな限界だった。そんな時、スシブレードの休載が決定した。騒動が落ち着いたら連載を再開する。そう言われたが、みんなこの騒動が収まりそうにないことは分かっていた。すでに掲載誌の不買運動なども始まっており、仕方ないと割り切るしかなかった。諦めるしかなかったのだ。



だが子どもたちは違った。大好きなスシブレードを自分たちから奪った大人たちのことが許せなかった。
「どうにかしてスシブレードを取り戻そう!」
「でもどうやって?僕たちお金もないし……できることはないよ……」
子どもたちは薄々わかっていた。自分たちではどうすることもできないと。これは自分たち子どもが首を突っ込む問題ではない、大人の問題なのだと。そして日に日に増えていく批判とは逆にスシブレードのことを口に出す子供たちは減っていった。

ある日のことだった。SNSに「俺たちのスシブレードを取り戻そう」という投稿がされた。その投稿の最後には集合する場所の住所、そして時間が掲載されていた。多くの人々はただのいたずらだと判断し、その投稿を気にも留めなかった。しかしその投稿に釘付けになった少年たちがいた。スシブレードのことを忘れることができなかった少年たちだ。
そしてついに集合の当日が訪れた。集合場所に現れた少年たちはおよそ30人。その数は決して多いとは言えないが、自分以外にもスシブレードを大切に思っている人がいるのだと、少年たちを励ますには十分な人数だった。時間になると、目の前の建物から調理衣を身に纏った男が現れた。男はぎょろりと少年たちを見ると、顎で中に入るように促した。
「さてと、君たちはスシブレードを取り戻したいんだよな?」
全員が中に入り終えると同時に男は少年たちにそう尋ねた。全員が頷くのを確認すると男はこう切り出した。
「スシブレードは実在する。」
何を言っているのかわからなかった。やはり自分は怪しいものに引っかかってしまったのか、と数人が不安に思った。
「どういうことですか?」
一人がそう尋ねると、少年たちは口々に疑問の言葉を男に投げかけ始めた。男は困ったような顔で頭をかくと、懐に手を入れ、何かを取り出した。ナイフか何かを取り出すのではないかという少年たちの不安は、次の瞬間には消えていた。男が手に持っていたのは寿司だった。赤々としたマグロが美しい、美味そうな寿司だった。ため息をつく者、笑い出す者を横目に男は寿司を割り箸で挟み、もう片方の手で湯呑を掴んだ。今度は何をするのだろうか。少年たちの視線は男の手元に集まった。男は湯呑をゆっくりと割り箸に近づけ、そして元の位置へと戻すと、今度は目にも止まらぬ速さで湯呑を割り箸へと叩きつけた。その瞬間……
「3、2、1、へいらっしゃい!」
男は叫び声を上げ、両手を広げた。少年たちがぽかんと気に取られていると、一人の少年が「それ」を見つけ、指さした。全員がその先へ視線を移すと、寿司が回っていた。まるでコマのように。自分たちが漫画の中で見た光景がそこにあった。少年たちは次に男の顔を一斉に見ると、男は何食わぬ顔で、
「言ったろ。スシブレードは実在するって。」
そう呟いた。なぜ回っているのか。この男は何者なのか。それぞれに思うことはあったが、全員が一番に感じていたのはこの人なら自分たちのスシブレードを取り戻してくれるかもしれない、ということだった。
「どうすればスシブレードを取り戻せますか!」
「闇寿司……知ってるよな、今回の騒動は全てあいつらの仕業だ。あいつらを倒せば騒動も収まるだろう。それだけじゃない。あいつらを倒せば俺たちスシブレーダーも安心して暮らせるんだ。」
闇寿司、それは漫画に出てくる所謂悪役と言われるような立ち位置の組織である。そんな組織を自分たちは倒すことができるのか。全員が少なからず不安に思った。
「この戦いは厳しいものとなるだろう。無理強いはしない。降りたい者はここで帰るべきだ。」
その呼びかけに答えるように一人、また一人とその場を去っていった。結局残ったのは10人もいなかった。
「君たち、良いんだな?」
少年たちはゆっくりと頷いた。その様子を見た男は満足そうに頷き、
「早速明日から修行に取り掛かるぞ。俺はマサ。これからよろしくな。」
一人一人の手を固く握った。

それからは地獄の日々だった。マサの修行はとても厳しいものであり、ほとんど休む間もなく修行に取り組んだ。少年たちは寿司を回すことを楽しみにしていたが、最初のうちは寿司には触らせてもらえなかった。まず完璧な割り箸の割り方、そして湯呑の割り箸への当て方を極めることから始まった。ようやくOKが出たかと思うと、次は寿司と心を通わせるよう求められた。何を言ってるのかわからない、と言うと怒鳴られた。寿司と一日を共にし、何かある度にこんな時、寿司ならどう思うだろうか、どう感じるだろうか。そのように考えてみると何となく寿司と一つになれたような気がした。それを伝えると、それでいい。と言われ、ついに寿司を回すことができた。最初のうちはすぐに回転を停止してしまったり、ネタとシャリが分離してしまったが、回数を重ねることでそれを克服することができた。全員が寿司を回せるようになるのは時間がかかったが、今まで一緒に頑張ってきた仲間たちの全員が寿司を回せるようになったことをみんな自分のことのように喜んだ。

そしてついにその日はやってきた。
「いよいよだ、みんな、準備はいいか?」
「はい!師匠!」
「うん、みんないい返事だ。」
マサは地図を広げると、印がついている場所を指さした。
「ここに闇寿司の奴らがいる。ここを叩けば平和な世界が返ってくる。準備はいいな?」
少年たちは頷き、マサたちは早速行動を開始した。

「合図と同時にあの寿司屋に乗り込むぞ。すぐに自分の相棒を撃ち込んでやれ。奴らも卑怯とは言うまい。」
割り箸と湯呑を構えた少年たちが寿司屋を完全に包囲すると、マサから合図が出された。
「「「「「「「「3、2、1、へいらっしゃい!」」」」」」」」
店の中から驚く声や悲鳴が聞こえる。皆そんなことお構いなしといった様子で寿司を操る。やがて、店内からの声が消え、自分たちの寿司が風を切る音だけが響くようになった。
「やったか?」
一人が中を覗き込むと、直後、彼は遥か後方へと吹き飛ばされていた。
「こんな寿司で我々を倒せるとでも?」
そう言い外に出てきた男の箸の先にはガリがつままれていた。寿司ですらないガリで、あの威力。その事実は彼らの戦意を完全に削いでしまうには十分すぎる理由だった。放心状態の彼らをこちらに引き戻したのはマサの叫び声だった。
「お前ら!いったん退くぞ!」
彼らは一心不乱に駆け出した。その後のことはあまり覚えていない。気づくと師匠の店にいて、吹き飛ばされた仲間の治療が行われていた。
「まさかあんなに強いだなんて……」
「本当に勝てるのかな……」
「ガリだけであの威力……」
不安を口にする仲間たち。重苦しい空気がその場に漂う。
「……やむを得ないか。」
マサはそう呟くと店の奥から何か大きなものを持ってきた。それを見た少年たちの間にざわめきが起こった。彼らはマサが持ってきたそれに見覚えがあった。

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