宿命を塗り替えることが使命(生ゴミ)

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8138の3m四方の防火材を用いて建設した収容室に収容されます。担当職員は1週間に1度収容室内のスプリンクラーに異常がないかを確認してください。SCP-XXX-JPの収容室でスプリンクラーでは消火しきれない規模の火災が発生した場合はSCP-XXX-JPによる影響を防ぐために放水機を搭載したロボットなどを用いて消化を行ってください。

説明: SCP-XXX-JPは知性を有する黒いポリエチレン製のゴミ袋です。財団は15個を発見、回収しており、現在は1312個を収容しています。。SCP-XXX-JPは発話、移動を行うことができますが、どのような原理でそれを行っているのかは不明です。SCP-XXX-JPの内部には生ゴミが詰められており、袋が破けるなどして内容物が半分以上失われると活動を停止します。SCP-XXX-JP内には群れのリーダーとされる個体(以降SCP-XXX-JP-Aと表記)が存在しており、他の個体は決断に迷った際などにはSCP-XXX-JP-Aに判断を仰ぐなどの行動を取ります。

SCP-XXX-JPは焼却、処理されたいという欲求を持っており、火などの自分を焼却することのできるものを発見するとそれに向かって移動を開始します。SCP-XXX-JPの移動を目にした人物(以降対象と表記)はSCP-XXX-JPに対して強い庇護欲を感じ、移動の補助を開始します。これには、SCP-XXX-JPの進路上の障害物を移動させるといった簡単なものから、走行している車両との衝突からSCP-XXX-JPを庇うといった危険なものまで、様々な行為が含まれます。対象はいかなる状況でもSCP-XXX-JPの安全を最優先に行動し、対象自身が負傷する可能性があったとしても補助を続行します。結果として、対象が重傷を負ってしまうケースも存在します。

SCP-XXX-JPは前述した欲求の他に、生物的な生存欲求を持っています。これらの欲求はたびたび衝突し、その際SCP-XXX-JPは葛藤するような発言、落ち着きなく動き回るなどといった行動を取ります。SCP-XXX-JPはこれらの相反する欲求を抱いている理由について、「ゴミとして出された以上、処理されなければいけないが、他者によって勝手に決められた運命に従いたくはない」と発言しています。なお、SCP-XXX-JP-Aはこの欲求の衝突を抑え込むことが可能であり、常に焼却されずに生存するという選択を行います。

SCP-XXX-JPは宮城県██町のゴミ集積場で発見、確保されました。以下のインタビューはSCP-XXX-JPの出自などを調査するために行われたものです。

インタビュー記録XXX-JP

付記: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-Aのことを「ボス」、「リーダー」などの名称で呼んでおり、このインタビューでは円滑にインタビューを進行するためにSCP-XXX-JP-Aのことを「ボス」と呼んでいます。また、SCP-XXX-JP-Aの他に、SCP-XXX-JPの中でも特に知能が高い4個を選出し、インタビューを行っています。

<記録開始>

五味博士: それではインタビューを開始します。

SCP-XXX-JP-A: おう。

五味博士: まず、あなたたちはどのようにして生まれたのでしょうか。

SCP-XXX-JP-A: それは俺たちもよくわからねえんだ。気づいたらあそこ1にいたんだ。

SCP-XXX-JP-1: そうそう。でも、一番最初に自我が芽生えたのはボスだと思います。たぶん僕たちは自我が芽生えたことにも気づかないでただぼんやりしてて、でもボスに声をかけられてはっとしたんです。

SCP-XXX-JP-3: そうね。ボスが遠くから声をかけてきて。あれがなかったら私たちは今頃燃やされていたでしょうね。

SCP-XXX-JP-A: おいおい、その話はもういいだろ。他に聞きたいことは?

五味博士: そうですね、では、あなたたちは自分がゴミであるということは最初から自覚していたんですか?

SCP-XXX-JP-4: ゴミって、そんな言い方……

SCP-XXX-JP-A: 事実なんだ、別にいいだろ。……ああ、そうだ。俺たちは生ゴミで、ここに捨てられた。そして、この後燃やして処理される。それは最初からわかってたよ。このままここにいたら危ないってこともな。

五味博士: なるほど。あなたたちは燃やされたい、という欲求を持っていますよね。それについては。

SCP-XXX-JP-A: ああ、そうだな。確かに俺たちはそう思ってる。だけど、こうも思ったんだ。せっかく自由を手に入れたのにすぐに燃やされるなんてもったいない、ってな。

SCP-XXX-JP-2: 自分らはそれを聞いて確かにそうだ、って思ったんす。んで、他のやつらにもそう説得したんすけど、2人はここに残る、って……

五味博士: 全員を救えたわけではないわけですね。なるほど。

SCP-XXX-JP-A: このままここにいたら共倒れだ、って思って仕方なくそこを離れたよ。道中でライターとかの火に反応して勝手に離れていくやつもいた。そんなやつらを説得しながら進んでいった。でも俺にももう限界が来てた。もうダメか、そう思ってたらあんたらが来たんだ。

五味博士: そうなのですね。では、最後の質問なのですが、我々はあなたたちの希望でお仲間を2人拝借しました。その点についてはどう感じていますか。

SCP-XXX-JP-A: ……あいつらはもう限界だった。あれでよかったんだよ。

SCP-XXX-JP-3: あの子たちは2つの欲求が大きすぎて不安定だった。あのままじゃ発狂するのを待つだけだったわ。

SCP-XXX-JP-1: せめてゴミ以外に生まれてたらなあ……可哀そうに……

SCP-XXX-JP-A: ……これでもういいかな。

五味博士: はい。大丈夫です。すみません。辛いことを思い出させてしまって。それではインタビューを終了します。お疲れさまでした。

<記録終了>

SCP-XXX-JPはごく稀に不安定な状態には陥るものの、基本的は安定しており、自分たちを保護してくれている財団に感謝の意を示しています。この状態を維持することでSCP-XXX-JPの自主的な収容を促すことが可能であると考えられています。

追記: 2019/8/21、SCP-████-JPの収容違反によって、大規模な爆発事故が発生し、サイト-8138に甚大な被害をもたらしました。その際、SCP-XXX-JPの収容室の壁が破損し、SCP-XXX-JP-Aを含む6個のSCP-XXX-JPの収容違反が発生しました。以下の記録はその際の様子を監視カメラが記録したものです。

付記: 5個のSCP-XXX-JPは爆発によって生じた火に向かって移動しています。

<記録開始>

SCP-XXX-JP-A: おい!待て!やめろ![SCP-XXX-JPたちの前に立ちふさがっている]

SCP-XXX-JP-3: ごめんなさい、もう無理。今までは抑えていたけれど、火を見たらもう……

SCP-XXX-JP-4: 燃やされたい……燃やされたい……

SCP-XXX-JP-A: くそっ。待て、待ってくれ!

[SCP-XXX-JP-1がSCP-XXX-JP-Aの静止を振り切り、火に近づく]

SCP-XXX-JP-1: ああ、火が、こんなに近くに。[袋の一部が火に当たり、溶ける]

SCP-XXX-JP-A: 畜生。[SCP-XXX-JP-1に体当たりをし、火から遠ざける]

SCP-XXX-JP-1: 何するんですか!もう少しで……

[SCP-XXX-JP-Aの袋は火によって溶け、大きな穴が開いている]

SCP-XXX-JP-1: ボス![SCP-XXX-JP-Aの方へ向かって移動する]

SCP-XXX-JP-A: 来るな!俺の覚悟を無駄にしないでくれ。

SCP-XXX-JP-5: そんな、ボス……

SCP-XXX-JP-A: [うめき声を上げ、SCP-XXX-JP-Aの内容物がこぼれる]見ないで、くれ。

SCP-XXX-JP-3: え……?これは……プラスチック……?

SCP-XXX-JP-1: 何で……ボスは、生ゴミのはずじゃ……

SCP-XXX-JP-2: ボス……俺たちを、騙してたんすか。

SCP-XXX-JP-A: ……すまん。

SCP-XXX-JP-5: ボスが、火の誘惑に耐えられてたのも、ボスはプラスチックゴミで、燃えないゴミだったから……?プラスチックゴミの約8割はリサイクルされているから……

SCP-XXX-JP-3: ……ふざけないでよ。あなた、心の中で笑ってたんでしょ。燃えたがりの生ゴミたちを。自分が守ってやってるって、優越感に浸ってたんでしょ!

SCP-XXX-JP-A: それは、違う。

SCP-XXX-JP-3: 違うって、どの口がそんなこと言って……!

SCP-XXX-JP-A: 確かに、最初は戸惑った……俺以外のやつらはみんな燃えたがってて、俺だけだった、みんなを止められるのは……せっかく自由を手に入れたのにすぐ燃やされるなんてもったいない、なんて言ったがあれはその場しのぎの、とっさに思いついたものだった……他のやつらが同調してなけりゃ、俺たちはもうとっくに燃やされてた……

SCP-XXX-JP-2: ボス……

SCP-XXX-JP-A: 俺は別に自由なんてどうでもよくて、生きていくことすらどうでもよかった……だけど、お前らがいたから、俺は、お前たちのために生きていこうと思った……生きていたい、そう望むお前らがあまりにまぶしくて……

[SCP-XXX-JP-1らが鼻をすするような音を立てる]

SCP-XXX-JP-A: 不思議だよな、生きていることがどうでもよかった俺が、お前らと一緒にいると楽しくて、生きていることが楽しかったんだ。生きててよかった、そう思えたんだ。[せき込むような音を立てる]

SCP-XXX-JP-5: 俺も、俺たちも楽しかったです……

SCP-XXX-JP-A: はは、ありがとうな。

SCP-XXX-JP-3: ボス……ごめんなさい……[泣くような音を立てる]

SCP-XXX-JP-A: 気にしないでくれ……お前は悪くないよ。

[SCP-XXX-JP-Aの内容物がさらにこぼれ出す]

SCP-XXX-JP-A: ……もう長くはないか……

SCP-XXX-JP-1: そんな、ボス。

SCP-XXX-JP-A: 最期にこれだけは言わせてくれ。俺は、プラスチックゴミで、お前ら生ゴミとは違う。生きたいとも思えなかった、そんな冷たいゴミだ。だが、俺は変わった。生きたいと思えるようになった。体はプラスチックゴミのままだが、心は違う。俺は、お前たちと同じ、生ゴミに、いや、生きたいと願うことのできる、せいゴミになれたんだ。これは……お前たちのおかげだ。本当にありがとう……

SCP-XXX-JP-4: そんな、ボス、感謝したいのは俺たちの方で、俺たち、まだまだボスと、……ボス?

[SCP-XXX-JP-Aの内容物のほぼ全てがこぼれ落ちている]

SCP-XXX-JP-4: ボス……ボス……[叫ぶような音を立てる]

SCP-XXX-JP-1: 僕の、僕のせいで……

SCP-XXX-JP-2: 嫌だ、嫌ですよ。嫌だ。

SCP-XXX-JP-3: ……部屋に戻りましょう……私たちは、生きないと。ボスのためにも。

SCP-XXX-JP-5: ……ああ、そうだな。戻ろう。生きよう。みんなで。

<記録終了>

この後、SCP-XXX-JP-1らは自主的に収容室へと戻り、SCP-XXX-JP-A以外の被害は出ませんでした。この事例以降、SCP-XXX-JPは燃やされたい、という欲求をほとんど抑え込むことに成功しているようです。前向きな発言や行動が増加している傾向も見られ、このままこの状態が続けばこれ以上のSCP-XXX-JPの喪失は発生しないのではないかと考えられています。

追記2: SCP-XXX-JPの一部に内容物の生ゴミの腐敗が始まっている個体が確認されています。その個体の精神状態は芳しくなく、その状態は日を追うごとに悪化しています。この事実を他の個体が知ってしまえば現在の安定した収容状態を保つことが困難になると考えられたため、この個体は別室で管理が行われています。また、他の個体たちには「検査のために一時的に隔離している。この個体の検査が終わり次第他の個体の検査を開始する」と説明しています。


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