創作論 

アイテム番号: SCP-3000-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3000-JPに関連する情報は隠匿されます。SCP-3000-JPを利用する団体に向けては、いくつかの協定が設けられています。

説明: SCP-3000-JPは諸分野の創作行為によって生じる多元的空間、心臓世界(heart universe)です。

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fig.1 葛飾北斎「富嶽三六景 神奈川沖浪裏」より。波が砕け散る瞬間を切り取っている。西洋の絵画にも影響を与えたことでもよく知られる。

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fig.2 ハーマン・メルヴィル「白鯨」初版表紙より。モビィ・ディックと呼ばれるマッコウクジラと片足を奪われたエイハブ船長の戦いを描いた作品。

SCP-3000-JPは「創作行為」という語彙の範囲を広く取ります。文芸では神話、民話、古典文学、詩文、散文小説、時代ごとの流行語、(意図された配置を持つ)単語、落書き、インターネットミームなどを含みます。また、絵画、彫刻、写真などの造形芸術、無数のサブタイプを内包する音楽、演劇や映画といった総合芸術もSCP-3000-JPを誕生させる創作行為の対象となります。概して、人間が何らかの感情を動かすために行う凡ゆる行為がSCP-3000-JPの対象となるのであって、規模の大小や公開の有無は問われません。

基底現実はSCP-3000-JPの形態の1つです。財団は以下の手順をとって上位の現実にアプローチしました。

日本国神奈川県内にある任意の本屋において、光り輝いた書籍を購入する。この書籍を藤沢市にある古書店「」に持っていく。500円ほどで売却したいと店主に懇願すると店主は快諾し、100円玉で金銭を支払う。その100円玉で外にある自動販売機で「さらっとしぼったオレンジ」を1缶、「BOSS プレミアム微糖」を2缶購入する。親しい人物にこれを1つずつ提供し、完全に飲み干されたことを確認する。友人に別れを告げ、小田急線で町田に向かう。町田駅は西口で降り、「」「」「」それぞれの本屋で好きな本を買う。そのまま町田駅付近にある任意のラーメン屋に移動し、好みのラーメンを食べる。

これらの工程を済ませた後、町田に沈む太陽を見る。

この工程は、2022/11/26 16:59に全ての財団職員の頭の中に響きました。内容は正確に理解され、わずか2日後にはO5評議会の全会一致を得た上で、日本国神奈川県での特別作戦3000-JPが実行されました。特別作戦3000-JPに参加した財団職員の人数は、3000人にも登ると考えられています。これらの人員の職務構成は多岐に渡り、エージェント、研究員、Dクラス職員などが含まれました。工程が完遂され、町田市小田急線町田駅周辺の日が沈んだことが確認されると、JR町田駅の上空約100mに「扉」(別個のSCP-3000-JP同士が接触した際に生じる境界面の口語的な通称)が出現し、全ての工程完遂者が内部に移動しました。直後、サイト-8181、サイト-01、サイト-56は合体し、円錐状の形態を取って「扉」に移動しました。

補遺-1: SCP-3000-JP-1

SCP-3000-JP-1へ移動した財団職員は、サイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

財団職員は、辺り一面の暗闇を認識しました。発光器具を用いて辺りを照らすとSCP-3000-JP-1空間は洞窟によって構成されていることがわかりました。23分間移動を続けると、一行はやや大きな空間に出ました。

以下は、財団職員が遭遇した重要人物3000-JP-1との会話記録です。

対象: お前は、お前は誰だ?何でこんなところにいるんだ?

職員: 私は財団職員です。この空間は何ですか?

対象: ここは俺の《絵》だ。狩りの前にここで力をもらう。そうすると精霊は俺のことを助ける。狩りは上手くいく。皆で肉を食える。今日も狩りの日だった。いつものように力をもらう。俺は洞窟に入って行って、精霊に会おうとしていた。[間]もしかしてお前が精霊か?ああ、精霊よ。俺と俺の家族のために、大自然の偉大な力くれたまえ。

職員: 質問をします。この絵を描いたのは、あなたですか?

対象: [間] 俺が描いた?いや、俺は描いてないな。

職員: 「俺の絵」ではなかったのですか?

対象: 妹や母さんや父さんには内緒だからな。ここは他には誰も入らない。

職員: なるほど。あなたはここを発見した、そして自分のものにしたということですか。

対象: いや、精霊は人のものにならない。

職員: そうですか。ではこの絵はどこからきたとお考えですか?

対象: [間] 内側から。

職員: 内側とは?

対象: あなたのところだ。昔、野苺の月に傷を負った。血をびしょびしょに流し、這々の体で家族の元へ帰ろうとしていた。その帰途にこの洞窟を見た。精霊が鳴り響いていた。混乱の中、チョークの石を手に持つとそこには風景があった。さっきまで戦っていた敵と男の風景だ。さっきまでの戦いを精霊が見ていて、その姿を現したのだと漠然に思った。それが「俺」なのだ。風景の中には俺があった。さっきまで戦っていたのは、他でもない俺そのものなのだ。精霊によってそれが明らかとなった。集落では俺以外俺と呼ばない。

職員: なるほど。

対象: どうやらお前は精霊ではないらしい。それでいい。俺は獣でも賢いものがいるということを知っている。そうだ、妹や母さんや父さんは知らない。光をもっと明るくしてくれ。見よ、この絵は俺の風景を表している。絵がなければ、わからなかったことがたくさんある。横から見ると獣が細長い形をしていたことや、俺が勇敢に戦っていることだ。だから絵は素晴らしい。お前には絵はないのか?

職員: 似たようなものならばあります。私たちはそれをもっと増やすことが目的です。

対象: もっと増やす?お前たちは絵を増やせるのか?……それは考えたことなかったな。確かに、こんなんだけで満足してたらもっと強くなれないか。俺ももっと祈ってみるよ。お前も絵が増えるといいな。

職員: ありがとうございます。私たちもがんばります。

補遺-2: SCP-3000-JP-2

SCP-3000-JP-2へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

SCP-3000-JP-2は古代ギリシャのアテネと類似した景色を有した空間でした。財団職員は建物に入って、複数名の男性の会合を発見しました。

[質素な部屋]

男: 若いうちは女だとか金だとかそういった喜びを楽しんでいたのだよ。だが衰えるにつれそれらが全く良いものと感ぜられなくなった。老いは悪いものだ。喜びを人間から奪う。ハデスの足音が今にも聞こえてくるよ。

対象: ぼくはそう思わない。老いて得るものもあるはずだよ。それに肉体の喜びが失せていくにつれ、談義とかの喜びは増していくようにも思えるのだ。おや、これはまた新しい来客かな。私は歓迎するよ。

職員: 私は財団職員です。どうやらあなたは議論に長じているようですが、あなたは誰ですか?

対象: それは光栄だね。遠い‪異国人バルバロイ‬よ。この夕べは、議論の時間なのだ。ひとつお聞きするのだが、あなたは正義とはなんなのかわかるのかな。

職員: 正義……ですか?規則を守ることでしょうか。

対象: おお、あなたも議論に長じているではないか。そうだな。では極めて悪い国があって、それらが設けた規則などはどう思うかな。ぼくが思うに、悪い国は悪い規則を設ける。この〈悪い〉とは国とって良いものではないという意味だ。すなわち、国の守護者に勇気がないようにと命じ、神に対して不躾で捧げ物をするなと言う。そのことを認めていただけるならば、正義とは曖昧なこともわかっていただけるだろう。

職員: なるほど。弁証法ですね。

対象: その通りだ。私が長じているというのは、そういったことごとに対してだ。とはいえ、今は一介の老人と捉えてくれ。栄光なのは、疲れるのだ。

職員: わかりました。

対象: それで、君は何か悩みがあるのではないかと思うのだがどうかね?

職員: 良いものを作るにはどうすればいいでしょうか。

対象: なるほど。君は故国では職人なのだ。職人にありがちな悩みだな。だがそれこそが良いことだと人は言うだろう。ぼくもそう思う。より良いものを目指さなければ、良いものなど作れない。職人が職人の、農民が農民の、国の守護者が守護者の、良いことを追求しなければ国は悪くなってしまうだろう。それが国にとっての良いことだと、いま話がまとまりかけていたのだ。

職員: 私たちは常に新しいものを作ってきました。しかしこれからもさらに良いものを作れるか心配なのです。

対象: 君は何者なのだ?何を作る職人なのだ。

職員: この国の言葉でどうなのかわかりませんが、小説を書く職人です。

対象: 小説とは。

職員: 文章を並べて過去の話を物語ることです。

対象: それは〈真似事〉だな。模倣と言っても良い。

職員: ええ……?いや、何かの真似をしているわけではありません。

対象: 例えばあなたは「彼の祖父に毒を飲ませたのだ」と喜劇風に言うわけだ。小説は、そう言っていることを真似するわけだ。だから真似事だ。違うかね?

職員: その通りですが、あったことのみを真似するのではありません。私たちは、新しいものを作らなければ遅れていくのです。

対象: では嘘の真似事だ。今国家の正義について話していたところだよ。真似事が国家の正義に叶うものか?政治家や、王が、これはどちらでもいいが、国の管理者が真似事をしていたらたちまち国は潰れてしまうだろう。

職員: いえ、私は正義に叶うと思います。そう信じないとSCP-3000-JPの先にはいけないのです。

対象: 靴の職人だって節操のある言い方をするだろう。あなた方はよくわからないな。

職員: まだ私にもよくわかりません。

[SCP-3000-JP-2の太陽が落ちる。やがて職員とサイト円錐状融合体の移動が始まる]

補遺-3: SCP-3000-JP-3

SCP-3000-JP-3へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

SCP-3000-JP-3はまばらにある家々を囲う草原が広がっている空間でした。気温がやや低く、財団職員はアウターを着込みました。財団職員は進んだ先に石碑を発見し、その前に立っている重要人物3000-JP-3に話しかけました。

対象: 話そう。物語のお方。私たちの家系の話を。

職員: ありがとうございます。お聞かせください。その前におひとついいですか。これはどのような話なのですか?

対象: ……血を子は継ぐ。そして話も継ぐ。偉大な過去の話を語り、日がな弔うことが私の仕事だ。幻想のうちに過去が行ってしまわぬよう。

対象: なるほど。

[対象は"幸運な男"とその意志を継いだ"探索者"の話をする。探索者は新大陸を発見し、渡航したのだと述べる]

職員: これはあなたの先祖の話なのですね。そしてあなた自身の話でもある。

対象: ああ、そうだ。これを語り継げることが我々の幸せ。あなたはどうか?

職員: 私たちは財団職員です。私も私たちの話が長い間語られることを望みます。そして、もっと多くの人に知ってもらえるよう日々努力をしています。

対象: それは誰かの偉大な話や弔いの話なのだ。そうなのだろう?

職員: そのようなものも含まれます。

対象: つまりお前の‪サガ物語‬を聞いた人は感動するのだ。

職員: ええ、そうですね。私はもっと良い話を作ることが夢です。

対象: 我々もそうだ。偉大な話に感動した男は、自らもサガの船に乗りたいと思って戦争に行くものだ。それでいい。それでいいのだ。

職員: ですが、ひとつだけ違うところがあるように思われます。それは、私たちが未来の話を語っていることです。

対象: それは、すごいことだな。


補遺-4: SCP-3000-JP-4

SCP-3000-JP-4へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

財団職員らは室内に出現しました。壁にスザニ刺繍の布が飾られ、重要人物3000-JPと確信される女性がもたれかかって裁縫を行っていました。

職員: こんにちは。私たちは財団職員です。あなた方はどのような創作をしていられるのですか。

対象: 私は布支度をしています。この刺繍は花の形です。幸福を表しています。この形は流れる水の形です。意志の強さを表しています。これは果物です。果物の刺繍は良い結果の象徴。

職員: 私はこういった技巧に詳しくありませんが、すごいと思います。このやり方をどこで習ったのですか?

対象: 母から教わったものです。私たちは昔から、母は自分の娘に刺繍のやり方を教えるものです。そして娘はその娘に、自分のやり方で刺繍を教えるものです。だからこれには特別な意味があります。母も嫁いで来ましたが、最初はやはり寂しかったそうです。私も嫁ぎ先でそう思うに違いありません。ですが、幼い頃からちゃんと布支度をしていたおかげで大丈夫だったそうです。それは、繋がりが感じられるからだと思います。この文様は、このやり方は、自分の母から教わったものです。そしてその母もまた母から教わったのです。そうして私たちは糸を受け継いできたと言えるのかもしれません。

職員: あなたは受け継いできたことをそのまま持てることが拠り所なんですね。

対象: [笑い声]ふふっ。確かにそうかもしれませんね。空気も、馬も、人も変わっていくのに変わらないことを安心するなんておかしいことです。でも私は、それが嬉しいんですよ。

補遺-5: SCP-3000-JP-5

SCP-3000-JP-5へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

SCP-3000-JP-5は木造の長屋の並ぶ町でした。往来には、着物を着た町人たちが商取引や移動のために歩いていました。財団職員は揉め事を起こしている町人を重要人物3000-JP-5と確信し、話しかけました。

男: 江戸のお方は言葉が上手ですなあ。かの有名な作者様がこんなところにおるはずありませんでしたわ。

対象: いやいや、俺はちゃんと本を描いてる。最新作!やじきたの二人が実は愛し合ってたって話でさ……。

男: そんなものがあるかいな。ぶぶ漬けどす。

[間。職員は対象を連れて外へ出る]

対象: 財団職員です。あなたは誰ですか?

男: 私はしがない物書きだよ。詩がない、ね。いやはや、これまでの人生で1番驚いた。事実は滑稽本より滑稽、奇々怪界。次回作の展開に云々悩んでいたらば、本に穴が空いて吸い込まれたってわけだ。だからまあここは私の世界なんだろうな。試しに主人公の二人を真似してみたら案の定嘘だとバレてしまった。いやこの場合嘘じゃないのか?

職員: あなたは滑稽本の作者なのですね。

対象: ああ、そうだよ。何とかやらせてもらっているよ。江戸の世になって天下は退屈さ。だから私のような仕事をするものも生まれるのだ。

職員: あなたとしては、この仕事はどうでしょうか。どのようにしてあなたはこの仕事を始めましたか。

対象: それは簡単だ。私が他人のまともな仕事ができなかったからよ。絵やら文字やらそればっか考えてたらマジでそれだけになってしまった。嘘の男二人の旅を考えて、リアルに投射してみればそれが面白かった。それをさらに文字に起こして見れば滑稽で、絵にして見れば面白かった。まあ絵とか文とかってのは偉大だね。

職員: 実は、私たちも滑稽本の製作者なのです。しかし、次に書くべきものがわからないのです。どうしたらいいでしょうか。

対象: へー。そんな悩みがあるのかい。未来の世には、私と似た悩みを持つ人がいるのか。私もな、もう言うことやること全部やり切ったってのに、版元やら本屋やら、そして読者が止めってくれねえんだよな。だからないことあることを振り絞って騙し騙しやってる。常に新しいこと考えるのは大変だ。

職員: ええ、そうですね。私たちも新たなものを考えないといけないのです。教えてくださると嬉しいのですが、「騙し騙し」とはどのようなものを指すのですか。

対象: 風景に描いた絵が本になっていた。いつのまにか物語になっていた。そんな感じだな。生活の中にある滑稽さこそ俺の人生だ。

補遺-6: SCP-3000-JP-6

SCP-3000-JP-6へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

重要人物3000-JP-6は老人の絵描きで、水路に落ちた財団職員を支援しました。財団職員は彼の家に案内され、乾いた衣服を提供されました。

 
[財団職員は"隣の部屋"に入る]

対象: ああ、君たちか。まあ見ててもいいだろうが、顧客に聞かんとな。おーい、お貴族様。これがさっきお話しした奇妙な風体の男たちです。

男: 君も貴族だろうに嫌味なやつだな。

職員: 財団職員です。あなたは絵描きだったんですね。

対象: かっかっかっ。わからんかったか。こんなに油塗れの格好で、辺りを彷徨いているのに。

職員: 見たところ、油絵ですね?あなたは油絵を描く画家だ。

対象: その通り。では目の前の男がわかるかな?

男: 嫌味だな、君は本当に。

対象: 申し訳ありません。お答えできないようです。

対象: 彼はこの街の‪元首ドーシェ‬になったのだ。その祝い、祝い、祝い……?記念?記録?のために私は絵を描くのだ。

男: 私にこんな口を聞くのもこの男だけだよ。本来、画家というのは職人にしかすぎないのだからな。

対象: それはわかっているが、私は同時に創作が切り開く未来もあるのだと思うのだ。まあ細かいところはわからないだろうが、軽く紹介するとこの肖像は古代ローマ帝国に憧れて描いている。それはな、気持ちのことだけじゃないぞ。まるで彼が偉大かのように未来の人々に思わせる、テクニックだ。そりゃ、伝統や形式など守らないといけないことの方が多い。だが、形式も極めれば良いものだ。一周回ってそう思うがね。

職員: 実は私たちも形式や伝統に悩んでいるのです。この額縁を取り払ってしまえればと思わざるをえません。

対象: おお、君もそうなのか。おお、おお。私にも偉大な形式があったのだよ。私の父親は未来の職人にもやるべきことを示した。それは彼の絵の凄さがこれからも示し続けるだろう。だが、形式は多くの要素を削ぎ落とす。さぞかし悩んだろう。

職員: 私たちは、父親を超えたい。SCP-3000-JPにはそれが求められているのです。

対象: [沈黙]

補遺-7: SCP-3000-JP-7

SCP-3000-JP-7へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

SCP-3000-JP-7は暗闇の空間でした。空間には男性小便器が横たわっており、1人の男性がそこに座っていました。

対象: お前もどうせ「こんなものは認められない」と言うのだろう?

職員: 私たちは財団職員です。そのことについてお話を聞かせてください。

対象: 良いだろう。だが、その高圧的な態度をやめたまえ。吐き気がする。

[沈黙]

職員: そうですね。あなたは何の創作者なんですか?

対象: すまないが、それには答えられない。なぜって、私にすらわからないからだ。私はある日男性小便器の下にサインをしてニューヨーク・アンデパンダンに出展したのだ。そしたら拒否されてしまった。なぜだかわかるか?

職員: いえ、申し上げられないようです。

対象: それはこれが芸術ではないからだ。あまりにも突飛すぎるからだ。突然、歴史の流れからすれば本当に突然、作者の感動を表せることが良いこととなった。印象派とか、キュビズムだが。私だって昔は油絵をやった。私が絵を辞めたのは、良いことには限界があると思ったからだ。言い換えれば、良いことの先の良さを探したのだ。枠内の基準で戦っているうちは、枠内の良さしか生まれ得ない。

職員: 枠内で良いことを探すということはできなかったんでしょうか。

対象: それもできたはずだが……もう遅い。私は、やがて空虚な鳥となって空を飛んださ。

職員: 私も色々見て回ったようです。

対象: [沈黙]

補遺-9: SCP-3000-JP-8

SCP-3000-JP-8へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

財団職員は独特な建築様式で建てられた建物の中に入りました。これらは、まとめてSCP-3000-JP-8の空間的な特徴と考えられました。財団職員は内部で重要人物3000-JP-8を発見しました。

対象: 爆発だ!お前は爆発しているか。

[対象は財団職員を引き連れて"キッチン"に寄せる]

対象: さっきからお前らのくだくだしいやりとりを見ていたが、それに何の意味があるのかね?

職員: 私は財団職員です。今こうして、SCP-3000-JPのための情報を集めているのです。

対象: そんなことはわかっている。おそらく私の衝動が次元の壁を突き抜けてお前らを呼び寄せたのだ。それならば、全てのことに納得が行く。お前らと会うついでに未来にも影響を与えてきたよ。自己模倣は業腹だが、まあこれくらいはいいだろう。泉の持ち主にも会ってきたな。色々な人がいただろう。だが、先人の模倣を真似するだけではダメだ。

職員: ええ、そのようにします。

対象: その言葉もダメだ。自分の中の衝動が結びついていなければ。実質は伴わないだろう。

職員: ですが、自身がなくなってしまったのです。無制限な成長にいつか限界が来るのではないか、そう尻込みする気持ちはわかりませんか。

対象: わかる。が、私たちはできる。前例を破壊しなければ。

補遺-9: SCP-3000-JP-9

SCP-3000-JP-9へ移動した財団職員は、上空に浮かぶサイト円錐状融合体の開口部から再出現しました。

財団職員はSCP-3000-JP-9の中心地点にある舞台で重要人物3000-JP-9を発見しました。

対象:わたくし‬も配信でSCPの話をしたことがあります。21世紀を象徴しているんです。

職員: 私たちは財団職員です。今お話をしてもいいですか。SCP-3000-JPを作らなければいけないのです。

対象: なるほど。じゃあお話ししましょう。私もずいぶんと昔から居ますからね。このステージで昔ライブをしたんですよ。‪配信ストリーミング‬でなくて、舞台の上で歌を歌ったり踊ったりするライブです。楽しかった……。今でもその舞台はありありと思い浮かべられます。あの子が見せたアンコールの咆哮が世界中に響きました。でもいない人もいますね。彼女も彼女も引退してしまいました。

職員: それは申し訳ありません。嫌なことを聞いてしまいましたか。

対象: 嫌なことなんてないです。私たちは私たちのいいところに進むだけです。その覚悟は、引退していったライバーたちにもあるはずです。私にできるのはそれ祝福するだけです。確かに、置いてかれるものも多くありますが。

[SCP-3000-JP-9の風景が移り変わる]

対象: 進んで進んでいくしかない。私が学んだのはとりも直さずそのことばかりです。喪失を抱えながら新たなものと出会い続ける。新たなものはやがてインターネットの海に広がります。そこからまた新たなものが生まれると、私は嬉しく思うんです。だから、私は私に起きることの外側に行くんです。

補遺-10: SCP-3000-JP-10

SCP-3000-JP-10に降り立った財団職員は、機動部隊あ-1("インフニティ")を展開しました。観測機器の情報から15km先にサイト円錐状融合体と類似した物体が存在することが確認されました。物体は円筒状で、地面に接している部分から50mの高さを持ちます(以下、円筒状構造物)。円筒状構造物唯一の開口部から機動部隊あ-1と類似した装備の部隊(以下、類似機動部隊)が展開されました。接触の失敗により機動部隊あ-1は類似機動部隊と交戦しました。

機動部隊あ-1は、類似機動部隊を殲滅しました。財団職員は円筒状の構造物に侵入し、重要人物3000-JP-10との会話を行いました。

対象: お待ちしておりました。ここは美術館なんです。見てまわりませんか。

[移動の時間]

対象: ここは全てのSCP-3000-JPと接している多面的な空間です。あらゆる芸術の中心世界。SCP-3000-JPの究極中心。それゆえ、まるで美術館のように芸術が見られるということなんです。

職員: ゴッホ、ピカソ、葛飾北斎。小説は太宰治、井伏鱒二。それは聖書ですか?並びが悪いですね。

対象: 完全にランダムですので。

[小説の並べてある棚に対象は行き着く。職員は順番に確認していく]

職員: これの何がランダムなんですか?ランキングでなくて?

対象: 何せ、有名な順というのがありますので。

職員: SCPが……ない。

対象: ああ、あなたは!

[財団職員が壁に持っていた絵の具を塗る。掘削器具で壁に穴を開け、対象を壁に埋め込む。スザニ刺繍の布を飾り付け、古代ギリシャの刀剣を壁に刺す。爆薬を円筒状構造物の周囲に設置し、全員退避の後に爆破させる]


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執筆者: carbon13
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最終更新: 11 Dec 2022 07:46
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