SCP-2043-JP 哀願燦然衝動B3!灰色料理人と

アイテム番号: SCP-2043-JP

オブジェクトクラス:

特別収容プロトコル:

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鈴鹿つむぎ氏(コマーシャルより抜粋)

説明: SCP-2043-JPは京都府内に影響力を保持する妖怪実体です。伝説的/文化論的には‪日本の伊勢国と近江国のにおける鬼神として知られる「大嶽丸」との関連性が見られています。財団の計測によれば、SCP-2043-JPは独自の次元的構造と概念的形態を有しています。これはSCP-2043-JPの財団による排除が難しい理由の1つです。最新の結界工学を用いれば、SCP-2043-JPの活動をある程度抑制することは可能であり、その次元的構造を通常次元の範囲内に収めることができます。これは後述する人物の腕部との物理的な融合という形で認められています。しかしながら、現在までの最大限の努力にも関わらず、SCP-2043-JPを完全な収容状態に置くことは成功していません。

SCP-2043-JPは、アイドルグループ「アルテナの眼」のメンバーである鈴鹿つむぎ氏の肉体に同居しています。鈴鹿つむぎ氏の肉体を通してSCP-2043-JPは奇跡術や反結界術を行使することが可能です。精神的には鈴鹿つむぎ氏の肉体は彼女自身のものであり、SCP-2043-JPは彼女に無断で自身の活動を行うことができません。これは、鈴鹿氏とSCP-2043-JPとの初遭遇時に彼女に有利な「契約」が行われたことに典拠されます。鈴鹿氏の証言によれば、SCP-2043-JPは救出した鈴鹿氏に対し、右腕を回復材料として要求する代わりに身体の不変性を約束しました。鈴鹿氏はこれを受諾し、自身の腕部とSCP-2043-JPを融合させました。

SCP-2043-JPは鈴鹿氏の肉体の一部を自分の物に変換することができます。もっとも典型的な例では右腕部の変化であり、これを使用することにより奇跡術の行使が可能であることが確認されています。これまでに確認された奇跡術の内容は、離れた場所にある物体への作用、暴風雨やカミナリなどを伴う天候の悪化、直径5〜15cmほどの火球の召喚などが挙げられますが、これに限りません。鈴鹿氏は一時的に肉体の操作権をSCP-2043-JPに移譲することで、身体能力を飛躍的に向上させることが可能となります。しかしながら、これが強いる動きには耐えられず、身体に強い負荷をかけることになります。

SCP-2043-JPはそれに加え、鈴鹿氏の肉体で引き起こす認識災害的な異常を持っています。鈴鹿氏の外見を視認した人物は、鈴鹿氏の肉体が燃焼しているように認識します。この認識災害的異常は、鈴鹿氏、あるいはSCP-2043-JPの意思によって抑制することが可能である他、その時の体調や状況に変動してその燃焼度合いが異なっているというような特性を持ちます。

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氷室高校

補遺2043-JP.1: 経緯
SCP-2043-JPの発見は大結界の機能的脆弱性が指摘され始めた2032年にまで遡ります。大結界については以下の記録を参照してください。

大結界概要
財団結界工学部門作成


京都は歴史的に霊的実体や妖怪実体の被害が多い地域でした。古くは平安時代からそれらの被害についての問題が頻出し、対処を行なってきた呪術師などの記録が残っています。平安時代後期、その時代の最高峰の呪術師として知られる安倍晴明が所属していた陰陽寮は、現在の大結界の基礎となるプログラムを完成させました。これは結界内部の妖怪実体/霊的実体の排除/無力化に効果を発揮するのみならず、当時貴族社会に横行していた呪詛1を用いた政敵への攻撃に対する対抗策としても機能しました。結果的に大結界は想定されていた機能を果たしました。

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結界結節点α-26

‪大結界内で発生した霊的実体や妖怪実体は、結界の作用によって抑制/分解されます。この過程については様々な種類に分けられる方法で行われており、その対象によっても様々です。大結界の主なシステムは、実体が持つそれぞれの固有な性質を利用することによってその機能を達成しています。例えば霊的実体の場合、目的とされた人物の殺害であったり(抹殺型)、定期的に周囲の物品に干渉を行うことであったり(干渉型)、非常に多岐にわたる性質を持ちますが、これらは霊的実体の消失と密接に関係しており、目的の達成などの理由により霊基幹プログラムが失われると霊的実体はただちに散逸します。大結界はシステムの中でそれを達成させ、あるいは達成したかのように霊的実体に誤認させることで霊的実体を散逸させます。これは結界工学の基本的な理念でもあり、大結界の主な役割です。結界という単語の持つイメージから相反して、結界工学でもたらされる結界の多くは物理的な実体を有していないことがほとんどです。もちろん、物体の移動の制限や抑止を目的とした、物理的な実体を有する結界を構成することは可能ですが、そのような目的の場合、より有効で効率的な方法が複数存在するため、利用されることは稀です。

大結界によって京都の呪術的安全性は保たれてきましたが、2037年現在大結界は機能的脆弱性が指摘されるようになりました。これは市内における霊的実体出現事例、妖怪実体に関連する事件2の有意な増加につながっています。これらを受けて京都結界委員会3は研究を開始する声明を出しました。以下はその大まかな概略です。

‪今の大結界は結界の基本単位である現前サンガ4が50個集まって構成されています。これは基本的な結界工学の理念から大きく逸脱しています。まず、結界工学の大前提として物理的に隣り合う結界を構成してはいけません。これは、原始仏教の律において複数の結界にまたがって存在する結界の参加者がいてはいけないからです。しかしながら、結界の施工実施者である安倍晴明はこれを設定しました。この理由は大結界が元々現在の形で作られたのではなく、呪詛や霊障災害といった事例に個別に対応していたからだと言われています。当時の政治的な情勢は不安定であり、国内の呪術勢力が乱立していた時期でもありました。そのため、現在までに見られる大結界にも蒐集寮が手を加えた痕跡があり(いくつかの資料もその事実を示している)、大結界自体が単一の設計書により作られたものではないことが今の問題を生んでいます。多くの結界エンジニアが結界結節点を移動するとき、頭痛を感じるようになったのはこれが原因です。‬

また、蒐集院の散逸を免れた史料によれば大結界が過去に少なくとも1度、1656年に機能更新を受けたことが判明しています。しかしながら、現在までにそのために必要な血統呪術、儀式方法、特定の呪物などは全て失われています。

そのような理由から、京都における妖怪実体の不安定な出現が始まったのがおよそ2037年からです。これはSCP-2043-JPの出現事例につながりました。2037/7/14、鈴鹿氏と接続する前のSCP-2043-JPが左京区の街路に出現しました。実体は「燃焼する鎧」のように認識され、10〜30の霊的実体/妖怪実体を引き連れていました。それに対して、民間人の通報から機動部隊ひ-3("茶柱")が出動しました。戦闘はこちら側に被害のないまま進行し、なおかつSCP-2043-JPの下半身部を本体から離脱させることに成功しました。SCP-2043-JPの頭部および胴体部分は、擬似的なテレポーテーションによりその場から消失し、しばらくの間その行方がわからないことになりました。それと同時刻、テレビコマーシャルの撮影中であった鈴鹿氏がSCP-2043-JPを発見しました。以下はその状況を含む撮影された映像です。

映像記録#289


日付: 2037/7/14

付記: 製薬企業「ハルコロ」の秋季に販売する新商品に向けたインフォマーシャルの映像。この記録は正式なものとして使用されていない。


[002S] 鈴鹿氏が街中の雑踏の中を歩いている。この時点においては、彼女はいかなる異常性も発露していない。

[006S] 鈴鹿氏が規定の演技通り上を向いて叫ぶ。するとその声に呼応して鈴鹿氏のを中心に火球が列を成して出現する。この火球は青色を呈している。カメラの不調からか、鈴鹿氏の周りが著しく暗くなったように見える。

[010S] 鈴鹿氏の背後に燃焼した鎧(=SCP-2043-JP)が出現する。機動部隊からのダメージをまだ負っているように見える。胴体部と脚部を持っていない。実体は鈴鹿氏の首をつかもうとする。

[012S] 鈴鹿氏のマネージャーが映像内に入り、実体を蹴り飛ばす。さらに燃焼が激しくなったように見え、鈴鹿氏の首の部分にも燃焼が発生する。

[019S] 画面外部からの怒号、叫び声が聞こえ始める。鈴鹿氏は中に浮き、もがいている。

[021S] 鈴鹿氏とSCP-2043-JPは融合する。その時、彼女の肉体は燃焼しているように見える。

[029S] SCP-2043-JPは鈴鹿氏とともに消失する。SCP-2043-JPの燃焼によってダメージを受けたように見えた関係者もいたが、実際に残る傷として火傷をした人間はいない。

補遺2043-JP.2: 史料
SCP-2043-JPは文化学的には「大嶽丸」と呼称された三代妖怪の1種であるとされています。このことについては以下の史料を閲覧してください。

痘瘡神蒐集物覚書帳目録第一七八三番

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七三八年七月補足。近頃巷で流行りたるもの。古代の記録には、瘡を発すると、激しい苦痛と高熱が伴われるという疫病であるという記述が残されている。これは痘瘡神なる疫神が都において悪さしているものとされる。

七三六年、帝は新羅に阿倍継麻呂を中心とする使節団を派遣した。一行はその道中において、痘瘡神に遭遇し死者を出した。その後、阿部継麻呂はその道中の対馬において死亡し、残った一行は都に痘瘡神を持ち込んだこととなる。これにより、官人にも大きな被害があり、朝廷は政務の停止を行った。民への被害も著しく、大和国、伊豆国、若狭国、伊賀国、駿河国、長門国などが尋常ではない被害を報告した。

七三七年、藤原四子が病に伏した。あらゆる加持祈祷など手を尽くしたが、その全ても目に見える効果はなかった。彼らが死亡した後、橘諸兄が政権を握る。一部の貴族からは反感を買っている。

痘瘡神が悪さをすると、頭痛や腰痛などの症状が高熱を伴って現れる。この段階は研議官島氏永曰く初期の症状である。しばらくするとこれはややおさまったかのように見える。しかしこれは悪さをする痘瘡神が、一時的に眠りについただけである。本格的な症状は、発熱から7日に至るまでに現れる。その時になると、発疹が爛れ膿疱の様子を呈し始める。あたかも、痘瘡神が自身の外見を真似させたかのように見え、酷く爛れた膿疱は膿や穢れを持つ。蒐集院の研議によればこれは目に見える外見だけではなく、内面の臓にも甚大な影響があるとわかっている。

島氏永研議官の報告


痘瘡神が取り憑いた人物に対し、蒐集院の巫女や一族による祈祷が行われた。祈祷はまる一昼夜一度も中断されることなく続き、満月が患者を照らすまで行われたが、いかなる症状の改善も見られなかった。

加持祈祷以外には漢方による治療などが行われたが、具体的な症状の回復を示すものはなく、今の技術では治療が根本的に不可能なものであることがわかっている。

私は蒐集院の指定した加持祈祷が有用なものであるか疑っている。確かに巫女や一族の持つ能力は稀有なものであり、実際に存在するものだが、この「痘瘡神」とは別枠の何か見えない存在が関与しているのではないかと思うことがある。疫神は目に見えぬもの、とよく言われる。それは実際、疫神の実体が見つかっていないということならばそれまでだが、目に見えぬだけでそこには相変わらず疫神が存在するのではないかと思っている。これまで祈祷が有用であるとみなされていたのは、もしかしてそれが目に見えぬ「疫神」に影響があるのかもしれない。目に見えぬ、というのは空気や水などが思い起こされる。水は見えないわけではないが、透明であるために極めて見づらい。また、空気は確かに在るが、それの実体は捉えられることもない。まさしく疫神とはそのようなものであるのではないだろうか。

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