拝観反転衝動A3!灰色愛煙家と最終的ランドマーク

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結界結節点A-8

アイテム番号: SCP-2043-JP

オブジェクトクラス: Ticonderoga1

特別収容プロトコル: 2043年現在、「大結界」(京都市を守護する"マルチタイプ型大規模結界"の一般名称)の保守は民間の企業に委託されています。大結界の保守を完全なものとするために、各企業には財団が5年に1度作成する「大結界保守要項」が配布されます。これらの内容は年により改稿されるものの、その概要はこの特別収容プロトコルに記載されている通りです。

大結界の保守を担当する結界エンジニアは、4人から20人までの現前サンガに所属します。この現前サンガは、大結界の保守において基本的な単位として機能します。大結界は現前サンガの構成員である結界エンジニアが、どのように入れ替わっても基本的に同じ性質を保つという法則により保守されています。本来の想定されている結界の仕様と京都市を取り巻く大結界の事情の著しい相違から、結界結節点において構成員の身体的不調が引き起こされます。身体不調の一時的な緩和のため、財団医療部門から特殊医薬品と記憶処理の提供が行われます。

現前サンガの構成員は必ず同じ企業に所属している必要はありませんが、現前サンガの存在上生み出される結界の性質のため、複数の現前サンガにまたがって登録されてはいけません。現前サンガを統合する場合、両方の現前サンガを解散した上で、それらの構成員と結界を全て含む現前サンガを新しく構成してください(これは大結界の持つ性質から明らかに逸脱しているように見えますが、大結界の設置施行者の初期設定と現在の運用の著しい相違からこの矛盾が生じています)。

自治体の単位で運用される結界に関する法律(通称: 自治体結界法)に基づき、大結界に生じた欠陥、及びそれによって生じた損害に対する責任は財団が負わなければなりません。そのため、通常の枠組みを超えた企業への広範な管理が行われており、財団は京都市内の異常実体の調査を行うことを義務付けられています。


以上の特別収容プロトコルが保守を担当する結界エンジニアに公開されています。

SCP-2043-JPのもたらす壊滅的な被害を抑制するために重視されているのは、大結界の持つシステムを完全なものにすることです。大結界の持つ不調を解決するため、財団の研究チームが結成されました。その理由が大結界の初期設定と現在の運用方法の差によるものだと判明して以降は、著しい不協和を抑えるための方法を研究しています。この活動は最終的にSCP-2043-JPが完全に抑制可能であると確定するまで続けられます。

目下のところ、SCP-2043-JPに対して有用な対抗策は出現する実体群への個別の対応です。機動部隊あ-3("ぶぶ漬け")は京都市に出現した実体と戦闘を行います。排除優先度は、明確な被害を引き起こした/引き起こし得る実体ほど高く設定されます。

説明: SCP-2043-JPは京都市内に存在する非連続小規模次元の総称です。いくつかの記録は、SCP-2043-JPの基本法則が通常次元と反転した性質を持っていることを示します。また、SCP-2043-JP内部には、後述する妖怪実体や怨霊実体が多数存在します。これらがSCP-2043-JPから一気に漏出すれば、京都一帯が致命的な被害を負うと試算されています。しかしながら、平常時においては大結界の作用によりその活動が抑制されています。

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千手観音はいわゆるサーバーの機能を持つ

SCP-2043-JPからの被害による京都市内の呪術的安全性は、マルチタイプ型大規模結界、通称「大結界」により維持されています。他の多くの結界術式が安定性の高い弥勒菩薩を参照している一方で、この大結界は、地蔵菩薩、薬師如来、千手観音、豊臣秀吉などの分散した菩提23を個別に参照しています。大結界内で発生した、呪詛4や怨霊などは、呪術的な作用を通して中和されます。大結界の作用は、対象の空間の「律」に改変を行います。この「律」は古くは仏教の戒律を指していましたが、現在は物理的/奇跡論的な法則を指していると解釈されています。例えば、霊的実体は霊基幹プログラム(いわゆる"生前の恨み")が空間中の霊素に命令を与えることで構成されています。そのため、霊的実体はそれぞれが固有な性質を持ちます。それは目的とされた人物の殺害であったり(抹殺型)、定期的に周囲の物品に干渉を行うことであったり(干渉型)、非常に多岐にわたります。これらは霊的実体の消失と密接に関係しており、目的の達成などの理由により霊基幹プログラムが失われると霊的実体はただちに散逸します。大結界はシステムの中でそれを達成させ、あるいは達成したかのように霊的実体に誤認させることで霊的実体を散逸させます。これは結界工学の基本的な理念でもあり、大結界の主な役割です。結界という単語の持つイメージから相反して、結界工学でもたらされる結界の多くは物理的な実体を有していないことがほとんどです。もちろん、物体の移動の制限や抑止を目的とした、物理的な実体を有する結界を構成することは可能ですが、そのような目的の場合、より有効で効率的な方法が複数存在するため、利用されることは稀です。

結界工学において、1つの結界に与えられる機能は厳密に定義付けられています。新しい機能を付与したいと考えた場合、1度その結界を解除した上で新しく作成することが望ましいとされています。しかしながら、しかしながら、大結界はこの原則に当てはまりません。大結界の持つ機能柔軟性は、既に失われた陰陽寮由来の技術によるものです。大結界は25000以上のルールに対応しています。大結界は、これらの多岐にわたる単発的な組み合わせを、何らかの外部神格からサンスクリット語の文章の形で影響領域に提供させています。その組み合わせの総数は、霊的実体が通常持つプログラムのパターン総数以上に存在するため、大結界の防護能力が保証されていました。

散逸を免れた蒐集院の一部の資料によれば、SCP-2043-JPと大結界の起源は平安時代末期までに遡れます。その時代の最高峰の呪術者として知られる安倍晴明が所属していた陰陽寮は、現在の大結界の基礎となるプログラムを完成させました。これは結界内部の妖怪実体/怨霊実体5の排除/無力化に効果を発揮するのみならず、当時貴族社会に横行していた呪詛を用いた政敵への攻撃に対する防衛策でもありました。この時の結界の規模は平安京を覆う程度であり、現在と比べると小規模であるものの、結果的に大結界は想定されていた機能を果たしました。

歴史的に京都は、大結界によりSCP-2043-JPの被害から免れてきました。SCP-2043-JPはこれまで数度の収容違反を引き起こしましたが、大結界の問題点について具体的に提言されたことはありませんでした。1998年の財団の社会進出を起点として、超常技術の民間への普及/体系化が進み、2028年には大結界の保守が民間に委託されました。この時に京都大結界委員会も設立されました。

補遺2043-JP.1: 大結界の問題点
2046/5/14、大結界の構造的問題について京都大結界委員会6からかねてより危惧されていた結界の不備について提議書がなされました。その内容は、財団に対し追加の研究を要請するものでした。

今の大結界は結界の基本単位である現前サンガ7が50個集まって構成されています。これは基本的な結界工学の理念から大きく逸脱しています。まず、結界工学の大前提として物理的に隣り合う結界を構成してはいけません。これは、原始仏教の律において複数の結界にまたがって存在する結界の参加者がいてはいけないからです。しかしながら、結界の施工実施者である安倍晴明はこれを設定しました。この理由は大結界が元々現在の形で作られたのではなく、呪詛や霊障災害といった事例に個別に対応していたからだと言われています。当時の政治的な情勢は不安定であり、国内の呪術勢力が乱立していた時期でもありました。そのため、現在までに見られる大結界にも蒐集寮が手を加えた痕跡があり(いくつかの資料もその事実を示している)、大結界自体が単一の設計書により作られたものではないことが今の問題を生んでいます。多くの結界エンジニアが結界結節点を移動するとき、頭痛を感じるようになったのはこれが原因です。

また、確実な資料からは、大結界が過去に少なくとも1度、1656年に機能更新を受けたことが判明していますが、そのために必要な血統呪術、儀式方法、特定の呪物などは全て失われていました。 1823年に斎部氏の血統が全て途絶えた後、正式な呪物の後継者として蒐集院の医学を担当する薬師寺家が名乗りを上げ、「班魂岩」を獲得しましたが、結果的にそれらの呪物は戦乱の中失われています。しかし、京都大結界委員会は必ずこれが大結界の更新可能性を否定するものではないとしています。京都大結界委員会は「班魂岩」は"その時代に死んだ人物の魂が記録されている"というデータ媒体であり、何らかの死者の記録をダウンロードすることができれば、大結界の機能を修復することができると結論づけました。

大結界は400年単位で更新が必要なものと推測されます。1668年に蒐集院が執り行った最後の更新以外の記録は存在せず、大結界にもその記録はありませんでした。次回の更新年は2068年であると推測されます。この事実が発見された1980年ごろから更新を実施するための研究が行われていますが、2049年現在その方法は部分的にしか判明していません。

財団は結界の機能更新を行うために必要なものを検討しました。以下の一覧が喪失したものも含めて、必要とされるものです。その内いくつかは完全に同じものを用意することができません。

対象 概要 現状
百人鉾(hyakuninhoko) 「100人いないと持ち上がらない」と言われるほど重い鉾。前近代に行われた蒐集院による科学的実測の際には、2306kgほど重量があった。 サイト-8123所蔵。
班魂岩(hankoniwa) 「近づくと生命を吸われる」と言われる流紋デイサイト 。物質中のケイ素比率が低い。 12個に分割されてその内2個が現存している。1個は薬師寺家、もう1個は財団が所有。
莞爾の鏡(kanjinokagami) 自分の笑っている姿が見える鏡。 1990年の襲撃に以来カオス・インサージェンシー が所持している。
パーリ律・原本 仏僧が守るべきことが書かれた書物。現在知られている版とは異なった記述があった。 藤家の家屋が火災にあった際焼失した。
仏知(butuchi) 四方サンガ8の実質的なリストとなる。 詳細不明。19世紀末に確認されたのが最後である。

補遺2043-JP.2: 歴史

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作者不明「百鬼夜行」実体の漏出の描写

SCP-2043-JPがもたらした収容違反は記録にある限り3回です。1度目の収容違反は鎌倉時代中頃にあるとされています。その時は人口を半減させるほどの被害が及び、出現した実体群は疫病を蔓延させ、女性に姦通を行いました。2度目の収容違反は1656年、江戸時代の初期にあったとされています。町人を中心に大規模な霊障災害が引き起こされましたが、蒐集院は祈祷と術式による律の改変で抑制することに成功しました。被害の記述が名誉を損なうことを危惧した後年の蒐集院により削除されているものの、被害人数はおおよよそ10000人〜25000人程度であると考えられています。3度目の収容違反は昭和20年頃(1945年)の蒐集院解散、財団成立直後にありました。1700以上の実体が京都に出現しました。この現象は、実体に対する物理的攻撃と次元間隙の修復により終結したと記録されています。

収容違反の度に大結界の知識を持った技術者が指揮をとって安全性を回復させてきました。しかしながら、これらは不完全なものであり、次回発生する収容違反はさらに強大なものとなることが推測されています。

補遺2043-JP.3: 事案
2043/9/23、SCP-2043-JPが原因であると考えられるいくつかの異常現象が発生しました。それらは、当初は京都市内で発生した単発の異常現象だと考えられましたが、後の調査でSCP-2043-JPが深く関係していると示唆されたことにより紐づけられました。

以下に示すのはエージェントによる調査の記録です。

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番組の最初に出てくるマーク

異常区分: 改変現象

危険性:

概要: 京都市全域のテレビ番組に影響を与えた異常現象。NHKの「日本語であそぼ」の放送枠に入り込み、番組名を「サンスクリット語であそぼ」に、内容を仏教あるいは神道の神格について紹介するというものに改変した。発信源は明らかになっておらず、その改変された番組の内容にある意図も不明。番組の最後にある「Ttt社映像部門」という言及から、Ttt社(トリスメギストス・トランスポーテション・トランステーション)と呼称される要注意団体との関係性が疑われる。

その内容を以下に記載する。

映像記録

付記: 2043/9/29に放送された。2回目の発見事例。


[左京区浄土寺、大文字山で撮影されたと思わしき風景で男性と女性が話している。男性は外見上幼いように、女性は30歳ほどの外見的な年齢を持つように見える。]

女性: さあ、遍く大地のみんなー!こんにちはー!私はསྒྲོལ་མ་、ええと違った。日本だと多羅菩薩って言ったほうが良かったかしら?私の自己紹介を簡単にしておくと観音菩薩の涙から生まれた三十三観音の一尊、多羅菩薩よ。まあ呼びやすく気軽にターラーとでも呼んでね。今日はテレビの前の皆と仏様について学ぼう!でもまず、仏様って何かなぁ?

[子供の音声が入る。"仏様ってなーに?"]

女性: 仏様っていうのはね、悟りを得た人のこと言うんだ。人類では気づけないような「真理」について悟って、あらゆる悩みや煩悩から解き放たれて自由になった存在、それが仏様なんだよ。

[子供の音声が入る。"じゃあどうやって悟るの?"]

女性: そりゃあもうすごい修行を通してだよ。それ以外に方法はないね。

男性: おっと、その発言は誤解を招くよう。

女性: おお!来たね。今日紹介するのはもう知ってるかな?そう、仏陀様だよ。

男性: 日本の皆様こんにちは!悟りを得ました仏陀です。

女性: 仏陀様は元々インドで生まれたんだけど、すごい修行をして本当に正しいことを悟ったんだ。

男性: その修行について説明させて…。僕は確かに長い間息を止めたり、断食も結構してみたけれど、それが悟りのためにはならないって後から気付いたんだ。過度な快楽も苦行も実は悟りを得るためにはならない。

女性: なるほど!

男性: だから僕は真ん中の道を行くことにしたんだ。「中道」って呼んでるけど。快楽にも偏ってはいけないし苦行をやりすぎてもいけないのさ。

女性: 元々自分の悟りを広めようとはしなかったんだよね?

男性: そうなんだ。だけど天部に強く勧められて…。

女性: 説得されちゃったわけですか。

男性: そう、それが原始仏教の始まりだよ。

女性: そうやって生まれた仏教は中国のチベットや日本、インドやネパールに広がってそれぞれ違う内容に変わっていったんだ。

男性: でもその内に内容の変化もあったんだ。これで結局僕の意思に外れてしまった…。悪いとも良いともいわないけどね。衆生を全員救うのって僕でも難しいことだよ。ターラーは全員救うんだよね?

女性: 私はまさに「全員救えない」という涙から生まれたからね。まあつまりそのために変わっていったルールがあるんだよ。

男性: 確か日本は大乗仏教の国だったはずだ。唱えれば極楽にいける呪文があるんだね?そっちの方が民衆に受け入れられていったということか。

女性: ちなみにチベット仏教でも回せばお経を詠んだのと同じ効果がある車輪があるよ。

男性: マニ車だね。考えてみたらマニ車って随分とシステム的だ。実に僕好みだよ。

女性: [マニ車を取り出す]マニ車はこういう円筒形の仏具で、回したらそれだけお経を読んだのと同じ功徳があるんだ!

男性: はは、見てこれ。

女性: どれどれ。

男性: ソーラーパネルで自動的に回るマニ車だって!

女性: わお!驚きだね。

男性: さすが人間だよ。科学的な文明の方が僕の考えに近いのかな?人間というのは僕らの力を応用するといったことに長けているのか。

女性: そろそろまとめに入らないと。

男性: ええ、と。仏にもいろいろあって、薬師如来とか観音菩薩とかあるんだけど…。

女性: その中でも仏陀様は1番すごいぞ!

男性: そう言われると照れるな…。

女性: おっと!時間切れ。それでは子供達、皆さんばいば〜い。

男性: バイバイ〜。

大結界の機能的脆弱性が拡大するにつれ、京都市内には異常な実体群が発生するようになりました。以下は、財団による実体の分類です。

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実体の例

タイプ-A実体群は外見的にほとんどヒトと相違ないように見えます。頭蓋に5cmから15cmほどの大きさの突起物を有しています。外見上はあくまでヒトと同じように見えるものの、肌が非常に硬い、高い持久力と瞬発力を持つ、一部の個体では火を吹く能力を有している、などの様々な特性がヒトと異なります。頭蓋にある突起物は初等な隠蔽術を用いて隠すことができるため、ヒトとの区別が難しい場合もあります。Agt.結城とAgt.濱田が東山高校で発見した実体αと実体βがこれにあたります。

タイプ-A実体群は他の実体群より低級であるとされています。2〜3人の集団で行動することが多く、普段は社会構造に紛れ込んでいます。東山高校の例に見られるように、集団で何らかの異常な影響を受けた結果、特定の人間がタイプ-A実体群へと変化することがあります。これらの発生は企業や学校、幼稚園など1つのまとまりの団体で引き起こされます。

タイプ-A実体群の出現は結界法則の改変によるものです。大結界は内部の人間を個別に認識しています。この機能は、個人を霊障災害や呪詛から守るために使用されていますが、タイプ-A実体群はこれを逆転し「自分の集団を守られる対象にする」ことで京都市に出現したと考えられています。実際にそのための干渉をどう行ったかは判明していません。

タイプ-B実体群は呪詛あるいはそれに類する命令形から構成される実体群です。単純なサブルーチンから出来ている実体がほとんどであり、それらは大抵知性を持つに至るほど高度なレベルになっていません。ヒトとを簡易的に呪うことができるほか、大結界の内容に限定的に干渉します。いわゆる「妖怪」「付喪神」などといった存在であり、様々な特性を持ちます。

タイプ-B実体群の形態や能力は多岐に渡ります。形態の面から例を挙げると、眼状構造を有する傘、河童、巨大な蜘蛛、などがあります。

タイプ-B実体群の背景には「設計者」の存在があることが窺えます。財団による回収/駆除作業が進んでいるのにもかかわらず、大結界の再編に適応した新しい呪詛を持った実体が出現しています。タイプ-B実体群に自己繁殖能力があるとは認められず、また呪詛を自分で改変することもできないと思われるため、「設計者」は監視をしながら新しい呪詛を組み込める集団ないし高度な技術を有する個人と推測されます。

補遺2043-JP.4: インタビュー等
SCP-2043-JPの収容に関して、研究と並行してインタビューが行われました。薬師寺家、藤家には呪物の完全な喪失に関連しているため、SCP-2043-JPの収容にとって重要な位置づけになりました。また、大結界の保守管理者である企業群にもインタビューが行われました。






補遺2043-JP.5: 異常事態
京都市上京区にある宝鏡寺で火事が起きたことを契機として京都市内の火災発見件数が増大していることが確認されました。その火災現場はいずれも京都市内にある神社仏閣であり、いずれも仏像に被害はないものの、大結界の免疫能力は格段に低下しました。これはさらなる異常現象の発生につながることとなりました。

また、火災現場ではタイプ-B実体が多く見られるようになりました。この現象はタイプ-B実体の中に自身の「律」を改変することができる突然変異体が現れたことにより対処が難航しました。これらの実体はまた神社仏閣を集中的に攻撃します。

「律」の改変は具体的には重力に対する影響や生体物質の必要性などに影響を与えます。つまり、これらを手にした実体群は物理的法則に従わない(自身の「律」には従っている)挙動を見せることになります。形態もその環境にほとんど影響を受けなくなることで、結界の排除や物理的な攻撃を無効化しています。機動部隊によるタイプ-B実体群との戦闘は、いかに実体の「律」を発見しそれに従うかという方向にシフトしました。

財団の研究員は以下のような存在群を京都市内で確認しました。

実体のリスト

主な研究者

  • 主任研究員 ミザリー オーガスト
  • 次席研究員 由良木 留
  • 研究員 マハンベト・イェシモフ

解説

律性発動傾向を有する実体群は、自身に関する外部からの影響をほとんど自由に改変することができます。「外部からの影響」を身近な、そしてかつ致命的な例で例えると、「高所から飛び降りると重力を受けて落下する」あるいは、「水中で呼吸を試みると、肺に水が入って溺れる」といった、極めて当たり前の常識が当てはまります。これらは人間にとっておおよそ抗いようのない現象です。一方、「被害者が3人以上の殺人犯は死刑になる可能性が高い」というように、極めて人間の匙加減の問題であり、人間が定めたルール(法律)に依るにもかかわらず、それが致命的であるケースはしばしば存在します。もちろん、私たちは死刑が実行されなければ死ぬことはありません。しかし、問題の実体群は「ルールに違反したこと」そのものによって致命的な影響を受けることがあります。つまるところ、私たちと機動部隊が相手取る実体群はこの世界のルールに従わなかったり、あるいは独自のルールに半ば強制的に従っていたりするわけです。

結界は「相手が存在してはいけない」というルールを与えます。これは仏教の力を応用した論理的法則性(即ち「法」)から成りたっています。仏教が悪を許さない正義の性質を持つため、SCP-2043-JPから実体群が出てくることはありませんでした。

実体群が独自に持つルールは伝承的な内容に依存しています。龍が酒を怖がるのは伝承において酒を飲んで殺された仲間が多いからかもしれません。このように、ルールを上手く把握する事で、結界による排除がなされるのです。もちろん、鬼や妖怪は仏の力を怖がりますね?

オーガスト研究員の報告

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ハーヴィー霊投射カメラで撮影

私のチームはダルマ人形に酷似した外見を持つ霊的実体の集合を発見しました。この実体群は左京区の寺に広く分布しており、賽銭箱の前に積み上げられるように存在しています。地縛霊的な特徴を有し、その場から撤去できないという収容上の問題のため、また、通行人に対する有害な作用のため、発見場所は封鎖されることになっています。当該実体群は視認/声の認知によって侵略的な作用を発現させます。集合の構成実体の1つが分離し、対象者へのコミュニケーションを試みます。その内容は対象者に対する勧誘であり、集合の構成実体の一部へ引き込もうとするものです。対象者はその意思に依らず、実体群の内部に引き込まれ、集合の構成実体が増加します。

霊視認性18は7であり、通常、視認不可能な状態にあるものの、以下の条件で活性化し、視認可能になります。

  • その24時間を通じて日光時間が9時間を超えること。
  • その暗期のうちごくわずかな時間でも光が霊体に当てられないこと。10分以上の投射で霊体は活性化を失う。
  • これらの条件を満たした日の夜間。

この条件は、霊体が砂時計的に周期を測っているというよりも、霊体が外部の光源に対応して時間を推測しているということを示すものです。つまり、夜間に10分以上光を当てることで活性化を阻止することが可能です。

由良木研究員の報告

泉涌寺に存在する仏殿。いわゆる伽藍堂19であり、内部には伽藍神像が置いてある。しかしながら、反ミーム的な作用によりこれらは認識されず、まさしく伽藍とした空間の広がりが存在する。この仏殿の特筆すべきところは、その面積が常に変動することである。最初に行われた観測ではおよそ20m2あると考えられていたが、2回目の再探索では300m2を超えた。この奥行きのある異常な空間は暗く入り口までしか灯で照らされていない。サーモニタカメラを搭載したドローンの調査から判明したのは、室内に存在する視認不可能な実体とヒトの全身骨格と酷似した怨霊実体の存在である。

3度目の探索においてはこれまでと異なった現象を引き起こした。入り口からの移動距離が1500mを超えた時点で食品が詰められた棚、業務用冷蔵庫、ダンボールが積み上げられた台車などの物品が出現し始めた。ショッピングカートとドローンが衝突すると霊障災害が発現しドローンが破壊された。

4度目の探索ではドローンは2000m地点まで到達した。ドローンはちょうど2000mの地点でこれまで確認されなかった実体に遭遇することに成功した。その実体は複数の部位から成り立っていた。

  • 中心に浮遊するヘレフォード種のウシ(学名:Bos taurus)の頭部。
  • ウシの周囲に循環するヒトの手。左右の区別はなく23本存在し、時折印を結ぶ動作が確認される。
  • ウシの頭頂点から生成されるウメ(学名:Prunus mume)の樹木。常に満開な花が開花している。
  • ウシの周囲を循環する泥の円環。イネ科植物の芽が育成している。

イェシモフ研究員の報告

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金閣寺の火灯窓

鹿苑寺金閣で行われた儀式手順により召喚された怨霊実体。蒐集院分派「新生呪禁道持禁医疾社」の呪術医20である久留米勸太氏の関与が認められた。

2043/10/2、久留米氏は京都に集中するレイラインの霊力を利用し、自身の肉体と金閣を同一視することで、かつて金閣寺に放火して自殺を行った学僧林承賢21の怨霊を召喚した。その日の6時ごろ、金閣寺三層にある火灯窓から直立不動で浮遊する林承賢の怨霊が出現した。怨霊の外見は、自殺時の状態を反映して腕に負傷があるように見え、京都駅まで時速10kmで移動した。この怨霊の霊的視認性は5で、一部の人物がこれを認識したと思われるが怨霊は何ら反応を見せなかった。22いかなる作用力も見せることはなく、京都駅に到達すると京都駅の術式に排除された。

これらの過程は京都駅に固有な術式と金閣寺周辺にある術式の差によるものだと考察された。林承賢の怨霊はその基底プログラムが「金閣寺への嫉妬」にあるという特性上、京都駅の術式である仏教の戒律に反したため、その抵抗性が除去されて中和されたと考えられる。

補遺2043-JP.6: 研究
日本支部理事の全会一致により、大結界の機能更新は失われた物品の代替え品を作成することで決定されました。これの研究成就確率は2050年までに少なくとも50%を超えるとの見通しが立てられました。これ以外にその他の有用な案がない以上、財団はこのまま研究を進める必要に駆られました。

「班魂岩」に関する研究が行われました。これは神々廻重工業、理外研開発、など他5社の共同研究になり、2044年には班魂岩のメカニズムが徐々に判明していきました。

2044/7/6、百人鉾の収容チームから使用許可がおりました。その時行われた会議では班魂岩の記録媒体となる人材と百人鉾の持ち手を決定しました。その際の技術的詳細について以下に記載します。

大結界アップデート手順

概要: 大結界の機能更新に関する最新の研究結果をまとめたものです。これを作成するにあたり、前回の更新の資料などが参考にされたためいくつかの手順においては儀式的な要素も含みますが、その正確性についてはある程度保障されています。大結界は3種の層から成り立っています。

基底現実の京都に露出しているのが「機能層」です。後述する「実行層」「システム層」の1番外側に位置しており、実際に怨霊や呪詛を中和しているのがこの層です。そのほとんどの空間が京都市に重複しているため、もっとも一般的な「大結界」の一面であると言えます。

機能層がある京都市のいくつかのポイントから「実行層」に侵入することができます。これは基底現実の京都市と完全に同一な空間であり、アスペクト放射の発光から全体が赤く見える点以外は標準的な京都市に見えます。実行層は所持する命令系統を保管し、新しく処理している層です。ここを通じて「機能層」に影響を与えることができます。

「実行層」においてさらなる儀式手順を行うと「システム層」に入ることができます。ここに来て大結界は基底現実の京都から完全に分離した空間を保持しており、大結界の法則である原文を閲覧することが可能となります。しかしながら、ここは文書記録に乏しく不明な点は多いと考えられています。ここでコピーされた律は「実行層」に反転した状態で進出し、それからさらに「機能層」において現象として出力されます。

機能更新を行うためには百人鉾、及び班魂岩を所持した上で「システム層」までに侵入し、その機能を完全に発揮させます。その方法については以下のように説明されています。

物品 文献に記された方法 研究で示された方法
百人鉾 「筋骨隆々の男がその中心に投げた。百人鉾は赤く平屋が積まれたその天にも届こうという高い塔の頂点まで突き刺さり、 その塔に吸収された。」 システム層内部に存在する原文の保管庫まで百人鉾を運搬する。
班魂岩 「天まで届く高い塔にその岩を投げ込んで吸収させよ。」 システム層内部に存在する原文の保管庫まで班魂岩を運搬する。

「実行層」には百人鉾を運べるほどの重機を入れることは不可能です。文献で示された通り、大結界の内部には「男1人と女1人」までしか入ることができず、アクセスポイントが狭い横穴にあるという都合上、それより大きな物品を入れることはできません。伝説では力のある男が百人鉾を1人で担ぎ投擲したということになっていますが、現実的には明らかに無理なことであるため、百人鉾の重量が現在と異なったと言われています。

現代の機能更新で提案されたのは魂魄の改造です。人間の魂魄には60%の空き領域があると言われています。その部分に班魂岩と百人鉾のデータファイルを入れ結界に侵入します。機能的に百人鉾と類似したアイテムを持ち、それを投擲する形でシステム層で使用します。この方法ならば、対象の男性と補助監督の同行のみでアップデートを完了できると考えられました。

いくつかの研究と開発を得た後、結界の機能修復に必要な物品(あるいはその代替品)の目処が立ちました。そのリストを以下に示します。

対象 概要
百人鉾 所蔵品を使用。
班魂岩 神々廻重工業の開発した偽印製コンポーズを使用。この技術により、班魂岩の機能を人間に書き込むことができるようになった。
莞爾の鏡 カオス・インサージェンシーとの戦闘で奪還。
パーリ律・原本 大まかな内容を財団歴史部門は復元した。現在普及しているものとの相違率は10%程度であることが判明したが、そのうちのいくつかの文言は未だ未判明である。
仏知(butuchi) 再現不可能。結界エンジニア、日本の宗教関係者のリストを再現したがどの程度有効なのかは不明。

補遺2043-JP.7: 入界
大結界の機能更新の任務を帯びたAgt.灰崎とAgt.陸奥は五重の塔の最上階に存在するポータルから大結界の実行層に侵入しました。音声記録が残っています。以下を閲覧してください。

音声記録#10

日付: 2044/8/15
場所: 大結界 実行層


[大結界の内部は赤みがかったように見える。人は見当たらない。]

Agt.陸奥: 百人鉾、軽くしたって言ってたけどずいぶん重いんですね。[沈黙]先輩?

Agt.灰崎: ん、ああ。ごめんちょっと結界酔いで気持ち悪くなってた。百人鉾それでも3kgあるしな。

Agt.陸奥: この京都には人がいないけどカラスはいるんですね。

Agt.灰崎: いたか?そんなの。

Agt.陸奥: いや、気にしなくていいですよ。行きましょう。京都駅まで行けばいいんですね?

Agt.灰崎: 多分こっちであってたはずだよ。

[しばらく移動]

Agt.灰崎: いつもは観光客でいっぱいだが結界の中には当然誰もいない。と思いきや何かいるな。

Agt.陸奥: あれが件の実体ですね。おーいそこの舞妓さん?

Agt.灰崎: 話しかけるのか?

Agt.陸奥: いいから任せてくださいよ。

[2人の前には「舞妓」のような姿の実体が歩いている。それらは頭部に角を有している。]

タイプ-A実体: 何か御用ですか?

Agt.陸奥: あなた達はどこへ行くんですか?

タイプ-A実体: もちろん現世に現れて逃げるためによ。

Agt.陸奥: 現世?ここがどこか別の場所みたいな言い回しですね?

タイプ-A実体: あなたが何言いたいのか分からないけど勘違いしてるんじゃないかしら?ここが地獄なのよ。だから私たちはここから出て行って自由を取り返すの。私が、閉じ込められたのよ。大昔はもっと自由で私にとっては救われていた。でも憎い大結界のせいでながらく封じ込められてきた。ある日鬼の頭領が外に出て自由を取り返すと決めたの…。私は出るのよ。

タイプ-A実体: あなたの目的地は…一体どこ?

Agt.灰崎: それを言ってしまえばあなたは止めるでしょう。

タイプ-A実体: そんなことないわよ。私は私の好きなように。あなたもそうすれば?

Agt.灰崎: 私たちはさらにこの奥へ行こうとしています。

タイプ-A実体: そうですか。それではお気をつけて。閻魔様がおりますから[笑い]

Agt.灰崎: 閻魔様とはなんですか?

タイプ-A実体: ふふふ…。私たちの「ルール」裁きの「ルール」落ちし者どもの「ルール」彼…いやふさわしくない代名詞でした。それはまさしく巨大なルールそのものでございます。決めたのです。人を裁くと。

Agt.灰崎: 彼が決めたからあなた方は外へ向かうのですか?

タイプ-A実体: この門を潜るものは一切の望みを捨てましょう。地獄違いですが。ふふふ…。

[あたりが急速に暗くなり前が見えなくなる。通行する実体の持つ行燈が唯一の光源である。]

Agt.陸奥: そこに百人鉾を刺せばいいんですか…?

Agt.灰崎: 塔って言ってたぞ…。

Agt.陸奥: 彼って言った後それって言い直しましたからね。人型なんでしょうか。

Agt.灰崎: 巨大な鬼とかでなければいいな。

[空に巨大な「龍」が飛行しているよう見える。その実体は火を京都の街に吐き木造家屋を燃やした。火事が光源となり結果的に明るくなる。龍は遠くに飛んで見えなくなるまで火を吐き続けた。大文字が始まりるが、文字の内容が違う。2人は京都駅にたどり着く。]

Agt.陸奥: つきましたが….。ここで何をすればいいんですか。

Agt.灰崎: 新幹線のチケットを買う。

Agt.陸奥: 結界の中で新幹線に乗れるんですか?

Agt.灰崎: 今と昔だと京都も違うからな。昔は門を潜るって動作だったらしい。

Agt.陸奥: 今は新幹線のチケットを買う、なんでしょうか?

Agt.灰崎: つまりは遠くに行くってことだろ。

[カウンターにはタイプ-A実体が4名並んでいる。]

Agt.灰崎: それで「左から2番目の実体が女性形態の時は左から3番目、男性形態の時は左から1番目の人に話しかける」だったかな。

Agt.陸奥: 左から2番目は女性ですね。

Agt.灰崎: じゃあ3番目だ。

タイプ-A実体: こんにちは。どこへ行きますか?

[2人は声を合わせて「地獄です」と述べる。]

タイプ-A実体: わかりました。お支払い方法は現金、クレジットカード、電子通貨、血の決済などがありますがいかがしますか?

Agt.灰崎: 「血の決済」でお願いします。

Agt.陸奥: 血で払うんですか!?

Agt.灰崎: 単なる儀式だよ。

[Agt.灰崎はカウンターの実体から小型ナイフを受け取り契約書の指定の場所に血を垂らした。]

Agt.灰崎: 陸奥、お前もやるぞ。

Agt.陸奥: はっ、はい…。

[Agt.陸奥は直前の動作をまねる。少し血がはみ出てしまう。]

タイプ-A実体: それでは出発まで待合室でお待ち下さい。

Agt.陸奥: 待合室ってどこですか?

Agt.灰崎: [天井に張り付いた待合室のドアを指して]あれだよ。あれ。

Agt.陸奥: どうやって入れば…。

[天井から降りてきた梯子で待合室に入る。待合室にはタイプ-A実体が6名存在している。その形態も女性男性、老人子供と様々であり、角の大きさや目の数もそれぞれ異なっている。スターバックスのコーヒーを所持した比較的若い女性のタイプ-A実体はエージェント達に話しかけてくる。]

タイプ-A実体: こんにちは、となりよろしいですか?

Agt.陸奥: 構いませんが…。

Agt.灰崎: どうしましたか?

タイプ-A実体: いや、珍しい人たちだなぁって思って、どこ行くんですか?

Agt.灰崎: ちょっと地獄まで。

タイプ-A実体: うわっ、本当に珍しい人たちだったなぁ。何かご用事があるんですか?

Agt.陸奥: 百人鉾を刺しに行きます。

タイプ-A実体: それはいいですね。あなたの欲求はそれなんですか。

Agt.灰崎: 失礼ですがそちらは?

タイプ-A実体: 私はもっと仲間を増やすためにあちこちいくことにしてるんです。さっきまで友人と一緒にいたんですが、八ツ橋を買いに行きまして…。

Agt.灰崎: なるほど。名産ですから買えばいいでしょう。私は京都で育ちましたが未だ八ツ橋を食べたことがありません。市内住みではない上に甘いものが嫌いなので。

Agt.陸奥: 私は好きですよ。八ツ橋。

タイプ-A実体: ええ、楽しみにしてます。あなたも自分の欲求は満たせるようにね。

Agt.陸奥: 私たちはそうですから。

[何かを鈍器で叩いたような音がなり、エージェント両名に待ち時間の終了をアナウンスされる。]

Agt.灰崎: そろそろいかなきゃならないようです。失礼します。

タイプ-A実体: こちらこそ失礼しました。

[手を振って別れる。元のカウンターで地獄行きのチケットが手渡される。エージェントの2人は道中サンスクリット語で表記されていた案内版に戸惑いながらも新幹線に乗車する。]

Agt.陸奥: もしかしたら地獄ってどこにもあったのかもしれませんね。

Agt.灰崎: ここでその考えに至るのは間違いかもな。

Agt.陸奥: そうですか?

[添乗員のタイプ-A実体はAgt.陸奥もつ百人鉾を安全上の理由で咎めようとする。]

タイプ-A実体: できれば持ち込んで欲しくないのですが…。

Agt.陸奥: ああ、大丈夫です。文句があれば全員殺しますので。

タイプ-A実体: そうですか…。

Agt.陸奥: 先輩見てください。山ばっかですよ。

Agt.灰崎: そりゃそうだろう。京都は盆地なんだから。

Agt.陸奥: でも地獄って地下にあったりしないんですね?まったく地下に行ってませんけど。

Agt.灰崎: それも、過去と昔で違うんだよ。門を潜るのが新幹線になったのと同じで、最近の地獄は新幹線で行ける場所にあるのさ。

Agt.陸奥: 今の説明はよくわからないですよ。

[Agt.灰崎は2人分の弁当を現金で購入した。外見上食品に見えない弁当を2人で食べる。]

Agt.陸奥: 食べれないものも食べれます。

Agt.灰崎: バランが実際うまいというのは何かの間違いだろうけどな。

Agt.陸奥: 全部反転してるしいいんじゃないですか?

[30分ほど乗り続けると「地獄」にたどり着く。]

Agt.灰崎: ついたぞ。荷物纏めとけ。この列が出て行ったら俺たちも出よう。

Agt.陸奥: わかりました。

[乗客の集団は体に障害を持つものが多い。エージェント両名は順番を守って新幹線から降りると地獄の駅にたどり着いた。そこは外見上京都駅に酷似していた。]

Agt.陸奥: あれ、もしかして私たちは同じところをぐるぐる回っていたんですか?まったく京都駅と同じじゃないですか?

Agt.灰崎: 違う。ここはやっぱり地獄なんだよ。

[エスカレーターを降りた先には年少男児の人型実体がただ1人存在する。]

Agt.陸奥: すいません。ここは地獄であってますか?

タイプ-C実体: はい。そうですよ。

Agt.灰崎: だそうだ。

Agt.陸奥: そうなんですかね…?

[裸の男児を暫定的にSCP-2043-JP-Aと呼称する。]

Agt.陸奥: あなたが閻魔様ですか?

SCP-2043-JP-A: はい。いいえ。私は自身を「閻魔様」と呼称しておりません。

Agt.灰崎: それでは何と呼べばいいでしょうか?

SCP-2043-JP-A: 「ヤマ」とお呼び下さい。

Agt.陸奥: ではヤマさん。今からこれをあなたに刺しますね。

SCP-2043-JP-A: [沈黙]これがあなた方なのですね。

Agt.灰崎: いや、私は別にそういう風な気持ちでこれに挑んでるわけではありませんね。おそらくはあなたが暴走し始めたのと同じでしょう。

SCP-2043-JP-A: 私が暴走…してるつもりはないですが、あなた方にはそう見えるのですか?

Agt.陸奥: あなたは京の町に悪鬼妖怪を蔓延らせた。それは暴走でしょう?

SCP-2043-JP-A: そんなことは御座いません。私はやるべきことをやっただけです。もしかしたら暴走というのは自分では気づけないものかもしれませんね。だからおやめください。

Agt.陸奥: 多分あなたにも必要なことでしょう。拒む必要はないのです。

Agt.灰崎: それじゃあ百人鉾よろしく。

[投擲された百人鉾はSCP-2043-JP-Aの頭部に命中する。]

Agt.陸奥: 先輩。煙草やめたんじゃなかったんでしたっけ。

Agt.灰崎: ‪禁煙‬はたまに破るからいいんだよな。

補遺2043-JP.8: 結論
Agt.陸奥とAgt.灰崎の作戦は成功したと考えられています。京都市内に存在したあらゆる実体は無力化されるか消滅しました。官僚災害や霊障災害の発生も極めて減少しました。異常性が確認された特定の区域や、被害者ら(東山高校の生徒など)について、非実体的/精神的な異常要素は消失しましたが、物理的/肉体的な変質については依然としてそのままです。大結界の最終的な更新期限と考えられている2056年を財団は可能な限りの戦闘資産を用意して迎えましたが、何ら異常な事態は起きることはありませんでした。大結界の再調査の結果、SCP-2043-JP-Aの存在は確認できず、その他の実体群も大きく減少しました。ただし、例外的に個体数を維持し続けている実体群も存在します。この後の「妖怪」「鬼」と呼称される実体群の社会進出については別紙を参照してください。

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執筆者: carbon13
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最終更新: 15 Apr 2020 01:36
最終コメント: 15 Apr 2020 01:36 by carbon13

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