蒐集異常事例第2570-0117008号

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以下は世界RT-1910から回収された文書である。
本世界は、SCP-████に指定された「ドレーク彗星」への対応に失敗した世界である。
可読性を踏まえ、適宜漢字の置換等を行なっている。


通達


ハレー彗星は、大正一五〇年に太陽へ接近すると予測されてゐる。近日点は聖上御即位百五十年式典の前後である。益々強大となつたドレーク彗星が地球へ到来して、どのやうな変事が発生するやも分からない。大正一五〇年は国際協調の元、ドレーク彗星に対する対応を第一として、世界の安寧を保護するため最大の努力を図るものとする。蒐集総院は、『国合』の実行を含めあらゆる手段を講じて臣民と皇国幷に世界の安寧を護らねばならない。

資格を有する総ての職員は事例報告書を確認し、各個の指示に従つて対応に当れ。

蒐集総院翰長 宍野将哲


蒐集異常事例報告


番号: 異常事例第2570-0117008号

種別: 外性二類 丙種一等

主管: 天皇機関局蒐集総院 甕星天文研究所

発見時刻: 明治四三年一月

発見地点: 大英帝国ケープ植民地、その他世界各地の天文台、天体観測所

経歴: 明治四三年一月、フランクリン・ドレーク博士が観測。ハレー彗星に接近後、現在までその近傍に存在。

対応指針: 甕星天文研究所及び国内外の天文台、天文学会は協同して、ハレー彗星及びドレーク彗星の追跡と進路予測を行ふ。ドレーク彗星が再び地球に対して甚大な被害を生ずると確信される時は、国際協同して、凡る手段を以てその回避と秘匿を図るものとする。

概説: 本事例はハレー彗星に随伴する異常な彗星「ドレーク彗星」である。光学上は核、コマともに微小である為観測が難しく、当彗星の正確な軌道予測は非常に複雑な計算を要するが、概ねハレー彗星の軌道と同一視できる。

明治四三年一月一二日、大英帝国トランスヴァール植民地で未知の大彗星(1910 I)が発見された。葡異常科学アカデミーザンベジヤ研究所(葡領東アフリカ)のロベルト・イナシオ博士は此の大彗星の観測を行ひ、エーテルスペクトルムの回析に依つて此の彗星が巨大なエーテルエネルギー体であることを明らかにし、此れを報告した。軌道計算に依つて当該彗星は地球へは接近しないと予測され、対応の必要はないと判断された。本彗星は二月の初めまで本邦をはじめ世界各地で観測され、耳目を集めた。1910 I彗星の回帰周期は九二〇〇年程度と計算されてをり、さし当つて問題とならない。

一六日、大英帝国ケープ植民地のフランクリン・ドレーク博士は極微小の小彗星を観測し、此れを報告した。此のドレーク彗星からは1910 I彗星と同一のエーテル相が検出され、先の大彗星から分裂したとみえた。然し此の彗星は天文学的に全く異常な挙動を示しながら、1910 I彗星とは相違する方向へ動ひてゐた。その軌道の予測不能性と先述のエーテル的特性から隠匿が図られた。ドレーク彗星に関する報道は大彗星を"Great Comet"と呼んだものの錯誤であると訂正され、またコマの微小性から来る観測困難性に因つて隠匿は一定の成功を収めた。

ドレーク彗星は二一日ごろ水星近傍を通過し、ハレー彗星へ接近して行つた。観測困難性と太陽の存在により観測結果は乏いが、二月末から三月初めにハレー彗星へ接近したと推測されてゐる。3月中旬の観測に依つて、ドレーク彗星がハレー彗星にほとんど随伴するやうな恰好となつてゐることが初めて分つた。その後ハレー彗星が太陽へ接近する中で、ドレーク彗星特有のエーテル相がハレー彗星の尾からも検出されるのと、地球がハレー彗星の尾を通過する可能性が高いのが明かになつた。

ドレーク彗星が微細な彗星にもかヽはらず強いエーテルエネルギーを発してゐることから、このドレークエーテルエネルギーに「汚染」された尾を地球が通過した場合、地球環境に甚大な被害が生じる恐れがあらふと予測された。此れを受けて諸邦隠秘組織は、北京帷協定の規定に基づき、危機の回避へ最大限の協力と努力を行ふことに合意した。

ハレー彗星の到来は、ハレー博士による予測以来よく知られてをり、すでに四二年末より観測が為されてゐたから、ハレー彗星それ自体を隠蔽することは甚だ難い。その為、以下のような手段を以て此れに当つた。

第一に、ハレー彗星に関する噂を多数流布することに依つて、此れに対する対応を取るのを目立たぬやふにした。その尾に危険物質が含まれてをり地球に重大な被害が発生する恐れがある、ハレー彗星が地球に衝突する恐れがある等々である。ハレー彗星の到来迫つて以来流言蜚語多く、此れらを好く扇動することに依つて、社会大衆から見て珍妙なる儀式の実施や、兇時の備えとするものである。

第二に、凡る手段を以て地球がドレークエーテルの影響を被らぬよう努力した。ハレー彗星の破砕と無聊プロトコールの実施については、異常の発生を禦ぐにそれ以上の異常を以てするは全く本末転倒であるといつて、行はれなかつた。そこで、出来る限り異常を起き得る異常を抑へて、逆相エーテル圏等の法力学的手法や仰力誘導等の神威学的手法に依つて、地球の保護を行つたり彗星軌道を変更させたりすることとなつた。

しかしながら此れらの試みは不完全に終つた。五月一八日から一九日にかけて地球はハレー彗星の尾を通過し、ドレークエーテルが地球の大気を犯した。ハレー彗星幷にドレーク彗星はその後太陽系中心を離れていつた。

我が惑星は星界のエーテルによって汚染されたが、地球全体がこのドレークエーテルを帯びたため、その影響については正確に判断し難い。汚染直後に於ては危惧されていたやうな異常現象はほとんど発生しなかつた。然し長期的には異常現象は増加傾向にあつて、彗星の通過より一〇年が経過した大正の初頭比より顕著となつた。

多くの異常現象は些細な物であつたが、屡々世界の帷協定を震撼せしめる大事件も勃発してゐる。先の大戦の発端となつた墺洪皇儲フエルヂナンド大公の銃撃事件の顛末につひても、その終結を決定的な物としたヴィクトリア女王の降臨につひても、孰れもドレークエーテルの余波ならんと見るのが今日の研究である。また本邦大正一二年聖上の御遭難に於て兇漢の銃弾御頭を貫けども、聖上崩御無さらず益々現人神と御為り給ひて天皇機関を御造り給ふのも、本彗星の余波であることは疑い難い。その他数多の異常事例については数へることもできない。直接若くは間接に、地球上の正常が置換へられたと見るべきであらう。大正一六年の紐育議定書に依つて各国際ブロツク間の協調が確認され、新たな総意現実に関する合意を交された。

同大正一六年、天皇機関局発足に伴ふ整理統合に因つて、異常事例調査局と蒐集院をはじめとする国内諸超常組織を一本化した蒐集総院が同局の下に生つた。以降本邦に於る本事例の管轄は総院と、新たに設置された甕星天文研究所をはじめとする諸下部組織が担ふ事となつて今日に至る。

大正七五年、ハレー彗星は再び太陽系中心へ接近したが、その軌道の問題から、地球に対し影響を及ぼすことはなかつた。本邦を含む諸邦はハレー彗星観測の名目で探査機群を打ち上げ、軌道上及び宇宙の衛星群と共にドレーク彗星の観測を行つた。ドレーク彗星は複雑な軌道を描きながらハレー彗星を周回するやうに動いてをり、依然強大なエーテルエネルギーを有してゐることが明らかとなつた。隠秘技術を用ひた秘匿探査機メチオケがハレー彗星へ帯同することに成功し、観測記録を送信することとなつた。

大正八〇年、メチオケは巨大なエーテルエネルギー反応を観測した後、通信が途絶した。同時期のアストラル観測記録には、ハレー彗星の所在予測地点方面から巨大なエーテル派反応が検出されてをり、ドレーク彗星に異変があつたことが想定される。次の接近となる大正一五〇年に向けて、十全な備えをすることが求められる。現在予測される最大の結果としては、超高度エーテル被曝に因る世界の不安定化乃至崩壊、当院の能力を超へた異常事例の頻出による新帷協定の破綻、皇国及びその勢力圏の真髄たる天皇機関の崩壊、ハレー彗星進路の変化に因る地球環境の破壊等が見込まれてゐる。


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