「アラームを止め、起床する。」
2MeterScale
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著者ページ
aisurakuto
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著者ページ
Come_Dream
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著者ページ
GermanesOno
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著作
Jiraku_Mogana
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
meshiochislash
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著者ページ
momiji_CoC
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著者ページ
notyetDr does not match any existing user name
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著者ページ
pictogram_man
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著者ページ
Ruka_Naruse
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著作
seail-ssm does not match any existing user name
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著作
souyamisaki014
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著者ページ
stengan774
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みんなの予想
Kuronohanahana / Mishary / Jiraku_Mogana / souyamisaki014
アラームを止め、起床する。おはよう、と相手もいないのに呟いて、その声が私のものであることを確認する。大丈夫、ヒトの挨拶だ。差し込む朝日を見て、ようやく安堵のため息がこぼれ落ちた。
まだ、生きている。自分が何者で、どうするべきかを私はちゃんと知っている。私は狂っていない。私の肉体も私の精神も、ちゃんと私のかたちを保っている。
あんなものを見聞きした後だから、どうしても不安にはなってしまう。月に狂わされた人狼の噂。食い散らかされた村長の亡骸。それを見下ろす、黄昏の月。
気持ちの悪い空だった。紫を帯びた、胸焼けするような紅。異常な眩さを抱いた、終末を告げる黄昏。嫌になるほど清廉な月が私たちを見下ろしていた。この村は月に魅入られたのだ。
自分だって呑まれているのかもしれない。狂ったのが自分ではないことにまず安堵しているのだから。それでも、私たちは思考し、勝たねばならない。
私は思考の整理を済ませ、広場にたつ。息を吸う。
「私は占い師です。その人は、狼だ」
適当に指さされた人間が、ぎょっとして目を見開いた。
大丈夫。勝利を捧げねばならないと私にはわかっている。私は狂ってなんかない。
アラームを止め、起床する。
やはりスマートフォンでは味気ない、次の機会にでもちゃんとした目覚まし時計を入手しておこう。けたたましく鐘を連打するタイプのやつだ。
ベッドから上体を起こし、部屋を見渡す。家具は少なく雑貨も無いため殺風景な白色が目に刺さる、昨日単身赴任してきたばかり故仕方ないのだが。
外は真っ暗、日が昇るにはまだまだ掛かりそうだ。重い腰を上げ苦労しつつ顔を洗い、用を足す。ハンガーからずり落ちていた白衣を回収し、生活着の上から羽織った。背にでかでかと刺繍された盾に三ツ矢のマークが棚引く。
寮内に起床時間を告げるクラシック調の音楽が流れた。私は音楽に造詣がないためこれが何という曲かは知らないが、こういう優雅な曲は少なくとも悪い気はしない。これに淹れたての紅茶が有れば文句なしだったのだが…まあ、贅沢は言えまい。
軽くストレッチをこなしてから自室を後にし、覚束ない足取りで食堂へ向かった。バターロールと冷たいカフェラテを手に取り、適当なスペースに陣取って口に詰め込む。そうして朝食を手早く済ませた私はゴミをダストケースに収納し、オフィスに向かった。
今日が火星センター勤務初日だ、締まっていこう。
アラームを止め、起床する。棚上の置時計でその日課を思い出し、私はうつ伏せになった。携帯電話のアラームが鳴るのは五分後。意識は夢の世界から靴を揃えて出て行こうとして、現実との間に敷かれたぬかるみに脚を取られている状況下にある。
私の体内時計はアラームを先回りするのを好む。三文の徳を得るでもなく、二度寝するでもなく。昨日の自分の計画設定に阿呆と言ってやる。寝坊という杞憂をビンタする感覚。お前が心配しているほど私の生活習慣は乱れていない。
当然ながら、勝利から始まる一日は格別だ。適度な緊張感に身を浸らせて時を待ち、音が鳴ると同時に液晶画面を叩く。残念無念、過去から委託された役割を果たせず、また果たす相手も見つけられず、彼はスリープさせられる。待機電力分の無駄な徒労をさせられていて、ときどき可哀そうに思うこともある。
本当に妙な習慣がついてしまった。誰だって時間いっぱい眠りたいに決まっている。この直感的習性がなぜ生まれたかは調査中の段階だ。現在はアラームに驚かされるのが怖いからという説が濃厚である。
アラームが鳴る。アラームを止め、起床する。カーテンの隙間から、陽光が朝を知らせていた。
アラームを止め、起床する。
昔から、たったそれだけのことが彼女にはできなかった。
『じゃあ、毎朝起こしに来てよ』
『おれが?』
『それなら、きっと起きられると思うの』
それから数年間、約束を律儀に守っていた自分も我ながらどうかと思う。多分、あの頃からずっと好いていたんだろう。
一般人が聞くこともないような名前の奇病であると知ったのは、あの寝坊助がいくら揺すっても目覚めなかった日のことだ。中学生の時だった。
病室で目を覚まして、ごめん、起きられなかった、と申し訳なさそうに言う彼女に、安堵するような、苛立つような、形容しがたい気持ちが込み上げたことをよく覚えている。
『あのね、もう朝の約束は 』
『お前用の目覚まし時計を作る!』
『え?』
『もうお前の面倒を見るのは飽きたから、自分で起きられるようにしてやる!アラームも自分で止めろ!』
彼女は珍しく呆けた顔をして、数秒後に笑いをこぼした。
『一回やってみたかったの、それ』
「よし、脳波の変調パターンは大体掴めてきたから、あと何パターンか試せばいけると思う」
「もし起きられるようになったら、今度はわたしが起こしに行ってあげる」
新しい約束は今も続いている。
アラームを止め、起床する。
寝ぼけ眼を擦りながらロックを解除して、開いた時計アプリが、今のアラームが3番目に設定したアラームであると教えてくれる。
どうやら今日はゆっくり食事もできなさそうだ、という事実に気づいた私は、パジャマをベッドの上に放り投げて、下着姿で学校の支度を開始する。
卓上のものを全部リュックに放り込んで、朝食と昼食分のお金が財布にあるか確認。制服を着る。そして確認作業をパス。支度終了。リュック片手に階下の洗面所へ向かう。
つくづく思うのだが、急いでいる日に限って、寝癖が付く気がする。本来、寝癖というものは、よく髪を乾かさずに横になると出来るらしいので、これはマーフィーの法則というやつなんだろうけど。そういやマイロ・マーフィーの法則面白いよね。
もう、少量のワックスをつけてごまかすことにした。バレなきゃ校則違反じゃないんですよ。
リュックを背負って、ようやく玄関に辿り着く。この分なら走れば、電車にギリギリ乗れるだろう。靴を履きながら、朝食に買うおにぎりの具を想像する。
そしてドアノブを握ってふと気づいた。なんかさっきからズボンのポケットが軽いな…。ああクソ。鍵取りに上がらなきゃ。
アラームを止め、起床する。
随分と嫌な夢を見ていた。冷えた金属が四肢を切り落とそうとしている、そんな夢。幸いにもそれは夢であり、切り落とされる前に目が覚めた。拳を握りしめ、脚を曲げ、四肢の存在をしっかりと確かめる。
夢だとわかっているのに、なにをしているのだろう。
のそのそとベッドから出て、目を覚ます為に1杯の水を飲む。ごくり、と冷えた水を飲み下すとようやく目が冴えてきたようだ。そういえば昨日は随分疲れていたから帰ってきてすぐ寝てしまったんだった。風呂にも入っていない。今日の午後は予定があるし、シャワーくらいは浴びておかないと。
服を脱いで浴室に入ると、鏡に映った自分の裸体が見えた。よく見ると、左腕の付け根になにか引っ掻いたような傷がついていた。こんな傷がつくようなこと、何かあっただろうか。でも腕を動かしても特に痛みはないし、気にするほどでもないか。
翌日、傷はきれいさっぱり消えていた。一体あれは何だったのだろう。
アラームを止め、起床する。最近は目覚ましに頼らないと起きることができなくなった。
そのことをお姉さん(シスター)――おれを拾ってくれた人だ。姉弟で通るくらいの見た目だからか、そう呼ぶように言われている――に話すと、なぜか泣いて手を取ってくるので不思議だ。
「いつかアラームなんて無視できるくらいになろうね」と話してくれるが、流石にそれは無理な気がする。……でもまぁ、それもいつかは叶うのかもしれない。けれどおれが起きなければこの家は朝の仕事が成り立たないのでやはりおれが起きるしかない。……「私が朝に弱すぎて、君が早起きなだけで、別に家事はできるもん」とは言うが、拾ってもらった身なのだから、家事くらいはしなければ。
お姉さんは相変わらず起きない。アラームは止めておいてあげよう。スヌーズが作動すると、不機嫌になるから。
少し、もう一度この人の横で眠ろうかという気になった。火薬と砂埃の匂いがするこの手にこの人が触れるのは嫌だけれど、この人の手は暖かくて気持ちがいいので、たまにはおれの方から手をつないでみたい。
動く人と動かない人では話は別だ。手を伸ばして――お姉さんの肩が跳ねたので、驚いて手をひっこめた。
アラームを止め、起床する。同時に小さな違和感。
寝台から降りる。間違いなく自室だがおかしい。
喉が渇いて洗面所へ。鏡に映るのは自分の顔。その筈だ。重なるように表れる文字。
《君は監視されている。おっと動きには出さないで》
蛇口をひねる。透明な水。コップに注ぐ。
《よっしその調子。ついでに歯磨きなんてどうだい》
歯ブラシの封を開ける。ホテルにあるような使いきりの品。
《時間がないので手短に。君は実験台だ》
《実験台》
《何人もの人間が今もどこかの部屋で目覚めている》
《君は誰だい》
《すまないが答えられない。はい、歯磨き終わり》
文字は光を反射する物に表れる。部屋の随所に出現する指示に従い、寝間着を着替え、果実を齧り、学校へ向かう。
《データ集めだよ、やつらの》
《ふむん》
《結果次第では世界が終わる。で、介入中》
《介入すると》
《戦略を狂わせられる、かも》
《頼りないなぁ》
《うるさいな、これでも精一杯だ》
校舎へ着く。指示に従い屋上へ。
《よし、飛び降りてくれ》
《は?》
《時間がない。ほら、世界の為に一歩踏み出そう!》
《いや、普通に嫌だよ》
沈黙。
《失敗か。じゃ、元気で》
文字の正体は聞けずじまいだった。世界はまだ続いている。
男はアラームを止め、起床した。6:00。缶詰にされて早一ヶ月、今日も特にすべき事があるわけではない。しかし一日中寝床の中で過ごしては仕事に戻った時に支障をきたすだろう。そんな考えから彼は健全な生活サイクルを崩さぬよう早寝早起きを心掛けていた。
今日は溜まりに溜まった本の山を片付けようなどとと考えながら身支度を整える。財団職員は忙しい。こうして強引に仕事から引き剥がされなければ趣味の読書もままならないのだ。全くの外出禁止というわけでもないのでマスクをして散歩でもとも考えたが、やめた。色々と面倒だ。案外引きこもりの暮らしというのも悪くない。強いて不満を挙げるなら同僚と会えないことくらいである。生活感のない小綺麗な部屋を眺めながらそんなことに思考を巡らせた。単調な換気扇の音が、静寂の不愉快さをかき消していた。
・
・
・
・
唐突に扉が開く。ガスマスクを付けた2人組の男が入ってきた。
「こんにちは、SCP-███-JP-1。」
「それが私のオブジェクト番号かい?なるほど、中々いい数だ。それに久々に君に会えて良かった。」
「冗談はよして下さい。こっちは仕事なんです。……では、これよりインタビューを開始します。」
「アラームを止め、起床する…」
そこまで文章を読んだところで、終業のベルが鳴った。黒板消しを掛けながら教師が叫ぶ。
「来週は期末試験です!赤点を取るようなことが無いように頑張ってくださいね!」
それを聞いた生徒たちの顔には何ら不安の影は無い。全員が教師への信頼と尊敬の眼差しを向けていた。
そんな生徒たちの中に合ってただ一人、僕は不安を抱えていた。ある致命的なエラーが起きていたからだ。教師に質問すればいいだけなのだが、彼の纏う独特の雰囲気がそれをためらわせる。
結局いつまでも聞かずにいるわけにもいかず、喧騒漂う教室の最後方の席から教壇まで移動し、質問を投げる。
「すいません、先生様。プリントが足りないので私にも下さいませんか?」
アラームを止め、起床する間もなく胸部に凶器が突き刺さった。滴り堕ちる赤黒はシーツとまぐわい、独善的な色へと塗り替えていく。バタつく手足は犠牲者の生への藻掻きだろうか、それとも天への羽搏きだろうか。
何故加害者はナイフで哀れな肉を貫いたのか。犠牲者には理由に心当たりがない。ひょっとすると黒鉄の刃はその理由を胸の中から抉り出そうとして割いたのではないか?そんな自家撞着が許されることもなくナイフは奥へと沈み込んでいく。
ナイフを握る加害者は言葉とも呪詛ともつかぬ、犠牲者を苛む音を漏れ出させる。少なくともその音が言葉と解るならば、犠牲者の温もりは失われていくことはなかっただろう。そして、その温もりは加害者が最も冀望するものであった。
犠牲者の体から抜かれた刃は、何度も何度も鞘である肉に舞い戻る。その度加害者からはかつて呑み込まざるを得なかった言の葉が溢れ出していく。「ひとごろし」という声から先、ベッドの上には静寂のみがあった。犠牲者が刺した狂気は加害者の胸からもう抜けない。
アラームを止め、起床する。ゆらゆらと風に揺れるカーテンを開けると、眩しい朝日が僕を迎えてくれた。霞がかった記憶にも光が灯る。ああ、気持ちのよい朝だ。
一階のリビングから、母さんの呼び声が聞こえてきた。壁掛け時計は7時を示している。もう時間はない、早く下りなければ。
リビングの扉を開けると、ふわっと卵の匂いが優しく鼻腔を刺激した。フライパンの上で転がるソーセージのじゅわじゅわと焼ける音が何とも心地よい。朝食に間に合うといいのだけれど。
「いつまで寝てるのよ、全く。ちゃっちゃと食べて早く学校行きなさい」
母さんは怒りながらも、僕の前に料理を並べていく。スクランブルエッグ、焼きソーセージ、サラダ、味噌汁、ライス。各々の香ばしい匂いが織り交ざり、食欲そそる素晴らしい朝食を演出した。母さんも対面に座り、手を合わせる。いただきま────
ピピピピピピピピピピピピピ
突如、アラームの音が鳴り響く。母さんには聞こえない。ああ、間に合わなかった。
今までありがとう母さん。こんな弱い僕でごめんなさい。
ピピピピピピピピピピピピ────ボンッ
アラームを止め、起床する。隣に眠る彼女の柔肌に触れる。どうやら彼女はもう起きていたようで、こちらに笑いかけている。その笑顔は昨晩の彼女の乱れた顔とはまるで真逆で、そんなギャップにまた少し心臓と下半身が跳ねる。
[adult only]
周囲に漂う汗と愛の匂い。俺は彼女の腹を優しく撫でた。彼女は大人しく顔のまま、俺の俺を握る。右手で房をなぞりながら、俺は左手を彼女のもっとも優しい所に手を伸ばした。布団で見えないところにいきなりだったためか、彼女の反応する声は驚きが混ざっているようだった。
彼女は激しく俺を擦る。俺は優しく彼女を撫でてやる。窓は締め切っている、官能的な匂いは逃げることなくこの部屋を覆っている。
彼女の手が一瞬跳ねた。先程のような笑顔はもうすでに彼女にはない。しかしその顔を見られるのが恥ずかしいのか、俺を抱きしめるように顔を隠してしまった。
俺は彼女の背中を撫でる。朝食も食べていないというのに、俺は最高の充足感に浸っていた。背中から手を下ろして、彼女の尻を掴む。彼女は何かを期待している声色で、小さく肯定を呟いた。
俺は頷き、自分の体勢を入れ替える。お互いにもう準備は充分。さあ本番を始めよ
アラームを止め、起床する。
錯誤の空を飛ぶ私のニューロンのパルスはドンドンパチパチとショートを繰り返し、今まで見ていたものが夢であるとようやく知る。
このざまではないグロテスクな巾木を走る電車の影を食らうジュラ紀のモンスターはソフィストを背に乗せ、錯誤の空を闊歩する。
正義をうたう隣人はその背にカーニヴァルを導き、享楽の道の先で今か今かと人を待つ。
『完全に安全』『リスクはない』とうたう広告はφの導きに従いヒトの脳を食らうだろう。
あ、まだ夢を見ているみたいだね。
そうか、そうか。
ならばこれを飲むといい。
この人参みたいなのは『秩序』だよ。
そしてこのクモヒトデみたいなのは『混沌』だね。
こいつらを粉にして飲むと飛べるのさ。
錯誤の空をね。
あはは、気にしないでくれ。
もうすぐ君はここから蹴っ飛ばされるだろうね。
参った。
飲む時間がないじゃないか。
まあいい。
キミはようやくここから象徴と想像を結んであるべき場所に行けるんだから。
さようなら。
アラームを止め、起床する。レースのカーテンを通じて、暖かな日の光が差し込んでいた。目を擦り、昨晩の記憶を辿ろうと試みるも、隣で眠る彼女を見れば何が起こったかは一目瞭然だった。
小さく欠伸をする彼女の頬に手をかける。柔らかな髪の毛が少々くすぐったい。昨日はすぐに寝ちゃったね、と彼女は少々意地悪そうに微笑んだ。悔しいので、お返しに唇を重ねた。動揺で彼女は瞳を一瞬開くも、すぐに目を細めた。音を立てて舌が絡み合う。
彼女の細くて綺麗な手が、僕の股間の上に置かれる。下着を通じて擦られる感覚がどこかもどかしく、いやらしかった。暫くすると彼女は僕の前に擦っていた手を持っていき、糸を引くそれを見せつけた。また意地悪そうに微笑むその顔が、僕の羞恥心をくすぐった。
室内に下品な音が響き渡る。ベッドがきしきしと軋む。時々見上げるその瞳が、僕の興奮をさらに煽った。我慢の限界だ、彼女の頭に手をかけ、かるく押さえつける。ほんの少しの静かな一時。
彼女は僕の手を振り払い、顔を上げる。唇の端から垂れる白い雫を拭い、また意地悪そうに目を細めた。太陽を背景に、また私の勝ち、そう言った彼女はどこか幻想的で、美しかった。
アラームを止め、起床する。
昨日居酒屋で隣に座った人。酔っていてとんでもないことを話していた。
「お尻を舐めてみたい」
「お尻でしたいってこと?」
「いや、ただ舐めたいだけ」
SEXの前戯では少ししか舐められない。それが不満だと。
「なんだ、いいよやる?」
そう言った記憶はある。ただ起き抜け直ぐは思い出せなかった。
「なに?なにこれ!」
「おはよー」
とりあえず現状把握に30分。頭がぼーっとしていたこともあり身を任せる。好みのタイプであるというのもある。直ぐに終わると思った。
…終わらない。
いじられすぎて敏感になったお尻。我慢してふきだすモノ。今までの何よりもキモチイイ。腹の中身が空っぽになって終わると思ったけども、まだ舐める。意識も飛んだ。
目が覚めたとき、部屋は真っ暗。今は7時過ぎくらい。まだ舐めてる。
「あの、今日はもうあれですけど、今度普通にしてみませんか…?」
日を改めて別の日にデート。
「ごめん飛び入りの仕事が入っちゃって」
だめだめ普段着すごく好み。本気になりそう。
「またお尻舐めてもいいから、今日はこのままデートしません…?」
アラームを止め、起床する。耳障りなアラーム音は朝から僕を不快な気分にさせた。カーテンから差し込む優しい朝日が、どうしようもなく憎い。ベッドの中でもぞもぞと体を動かしていると、ドアの向こうから罵声が聞こえた。
言い合いをする両親を横目にパンを咥え、身支度をする。ドアを開いて一言、「行ってきます」
もちろん返事は無い。いつもと何ら変わりない日常。殺風景で、退屈で、孤独。僕はそんな日常が大嫌いだった。
歩道を歩いていると、どこからともなく小石が飛んできて額にぶつかった。痛みに顔を顰めると、笑い声が聞こえた。公園の木の傍に立ったクラスメイトは下品な笑みを浮かべていた。
いつの間にか僕は見慣れない路地裏にいた。下を向いて歩いているうちに迷ってしまったのだろうか。顔を上げると、ありえないものが視界の中央にあった。
おぞましい見た目で、口に出すのも憚られるような怪物。もし僕が普通だったなら、恐れ慄いてこの場から逃げ出すだろう。でも僕はそうせずに、立ち止まったままその怪物を見つめていた。怖かったからじゃない、嬉しかったからだ。非日常がこんなに近くにあったなんて。
「はじめまして。」
僕は笑顔で手を差し出した。
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みんなの予想
Dr_Kudo / meshiochislash / Dr_Kudo
アラームを止め、起床する。身を切るような冷水で顔を洗い、身支度を整えて厨へと向かう。夜明けにはまだ早い時期である。寿司職人の朝は早い。
厨の掃除を手早く済ませ、調理の仕込みを行ってゆく。薄く焼いた黄金色の卵を、細く細く切ってゆく。日が登りきる頃には、ふんわりとした錦糸卵に彩られた、美しい散らし寿司が出来上がっていた。見下ろして、ひとつ息をつく。申し分のない出来映えである。
回すには重く、大きすぎる代物。だがいいではないか、回らなくとも。
寿司を回して戦うのは東のお山のお人たちにでも任せておけばいいのだ。もし戦う必要があったとしても、足が早いことだけが売りのどこぞのバッテラが蹴散らすことだろうし。彼女は自分の散らし寿司に誇りを持っていた。それに、今日はこの散らし寿司が主役の日である。
三月三日、桃の節句。ふと、自分が幼い子供であった時の事を思い出した。雛人形のきらびやかさに目を輝かせていた日々。少しばかり頬を緩ませてから、店の玄関に向き直る。そろそろだ、と思った矢先に馴染んだ足音が駆け寄ってきた。笑顔で、一言。
「おこしやす」
へい、らっしゃい、とは言ってやらない。
アラームを止め、起床する。
パソコンを起動する。パスワードを入力し、ホーム画面を見て、すぐ電源を落とす。パソコンを畳み、窓の方を見る。そこに窓はない。赤褐色の縦線が並立している。その後ろには灰色の壁がある。四方を確認する。白い壁が見える。黒い手形が映える。指紋が見える。俺の指紋が見える。
ここは牢屋だろう。看守はいないし、錠もない。では、ここは牢屋じゃない。場所なんてどこでもいいじゃないか、大和。お前は仕事に戻ればいい。否、俺は仕事を終えている。だからパソコンを畳んだんだろう、大和。否、俺は仕事を確認するためにパソコンを起動したはずだ。俺は部屋を出る。腐った鉄の擦れる音が聞こえる。頭痛がする。お前は生きているぞ、大和。否。
階段を上がる。廊下を歩く。誰かが俺に挨拶をしたが無視する。誰かの足が俺の足元に出現する。俺はその足を踏む抜く。そして俺は俺を見つける。俺は死んでいる。俺は死んでいない。そうして俺は勘違いに気付く。俺はアラームなんてかけちゃいない。アラームは、最初から鳴っていない。
アラームを止め、起床する。
うんと伸びをして東の窓に目をやった。
しっとり濡れたベランダの手すりとまばらに降る雫が寝起き眼にぼんやりと映り、昨夜の気象予報がよぎる。
「九月一日は早朝に雨が降るでしょう」
しまった、一日寝過ごした。
時計を見れば七時半。十分もすれば遅刻ラインだ。
慌てて歯を磨き、やりかけの宿題をカバンに詰める。
バス定期、電車定期、財布、学生証と指さし確認して帽子を被る。
一度しか開いていないビニール傘を手に取り、しっかり戸締りしてエレベーターホールへ走る。
降りると同時に駆け出して、マンションのロビーを出ると外は鮮やかな晴れ模様。
ふと上を見ると向かいの棟のおばさんがホースで鉢植えに水をやっていた。
八月三十一日、今日は日曜日。
アラームを止め、起床する。ベッドから下りて、ぐーっと伸びをする。カーテンの間から射す日光がとても気持ちいい。
朝の支度を済ませ、学校へ向かう。その途中、クラスメイトの山田くんに会った。
「おはよー。数学の宿題やったか?」
「あー忘れてた。あとで写させてー。」
と他愛のないトークで盛り上がっていると、後ろから声をかけられた。そこにはなんと、クラスのアイドル・深山美代が立っていた。
「おはよう!二人で何話してたのー?」
「え、ええとその……。」
「もしかして、エッチな話?」
「ち、違うよ!」
じょーだんだよ、と深山は微笑みをこぼして先に行ってしまった。まだ心がドキドキしている。本当に可愛いなあ。こうして僕の一日は、今日も始まる。
アラームを止め、身体を起こす。
黒の隙間から差す光に、朝だという事を告げられた。
仄かな眠気と独特の焦燥感から、割り切りの良さが問われるこの瞬間、いつもそうだ。
振り切り本格的に身体を動かす。ちょっと伸びをしてみる。
さあこれでいいだろう、問題はないな。
気づけば部屋からでも聞こえる音が耳に入る。
心地よい小刻みな音。いい匂いだ。
妻が朝食を作っているのだろう、居間へ急ぐ。
居間、そこには1匹のヘビがいた。
異様だと思われるだろうが、彼女が私の妻だ。
「おはよう!よく眠れた…?」
昨日の噛み跡はまだ残っている。が、もう眠気は晴れてしまった。
「大丈夫さ。まだ関節は痛むが…」
「ご…ごめんなさい!」
彼女の抱擁は全身を使う。故に力が入り過ぎるんだ。
思えば熱い夜だった。
「いいっていいって」
「うん…」
彼女は謝罪しつつも照れている。そんな彼女が大好きだ。
異様に思われるだろうが、そう思っても言わないでくれ。
俺は彼女がどんな姿だろうがずっと愛し続ける…
俺は彼女をこんな境遇にしたヤツらを許さない…
俺はハルを愛している!
ぶっ潰す…
ニッソをぶっ潰す…!
アラームを止め、起床する。寝る前に思い出したはずの記憶は、どうにも溢れてしまったみたいで。そこら辺に落ちちゃいねえかなと布団を退けながら寝ぼけた頭で探す。もちろん、落ちているわけもない。
顔を洗い、トースターにパンを投げた。焼き上がるまでの短い時間で、寝巻きを着替える。そういえばこのトースターは貰いものだったな……誰から?わからない。わからないけど、パンを焼けるならそれでいいだろう。返すつもりもないし。
トースト二枚を食べ切って、2つある歯ブラシの片方を取る。あまり好きではないのに、なぜか使い続けている歯磨き粉の味に顔をしかめて、歯を磨く。
これで、朝の支度は終わり。仕事に向かうため、寝室に置きっぱなしのスマートフォンを取りに行く。
取る。何かを踏んだ。拾い上げたら、それは僕と誰かのツーショット写真のようで。
記憶、ちゃんと落ちてたな。そんなことを考えながら写真をポケットにしまった。
アラームを止め、体を起こす。横に目をやると、彼もまた同じように目を覚ましたようだった。
「おはよ」
「ん、おはよう…」
大きく欠伸をする彼と、いつも通りの挨拶を交わす。とここで、彼の目が覚めそうな悪戯を思いた。
「ねぇ」
「ん?なぁ…」
無防備な顔に一気に近づき、軽く唇を重ねる。彼は数秒ポカンとした後、一気に顔を赤らめた。
「ずるいよ…」
「ごめんごめん。とりあえず、朝ごはん食べよっか」
こうして、今日も彼との日常が幕を開けた。
「…なーんて、できたらいいなぁ」
一通り妄想し終えたところでそうぼやきながら、トーストに噛りつく。そんな時、スマホに一件の通知が入った。どうやら彼も目を覚ましたようだ。アプリを開き、すぐに「おはよう」と返信する。1分ほど経って、彼から返ってきた「おはよ~ヽ(*´∇`)ノ」という緩い返事に思わず笑みが零れた。
早く文字じゃなくて、言葉で伝えられるようになればいいのに。そう思いながら、甘ったるいアイスコーヒーを一気に飲みほした。
アラームを止め、起床する。けだるげに背筋を伸ばし、今日の予定について思考を巡らせた。
──ええっと、今日は二コマ目から講義があって、それから──
ふと違和感を感じてスマホで今の時間を確認する。やっぱり、講義が始まる30分前だ。どうやら自分は1つめのアラームじゃなくて予備の予備の目覚ましでようやく起きたところだったらしい。
焦ってベットから飛び起き小物だらけの床をおぼつかなく進み洗面台で顔を洗う。アパートから講義室までは大体10分も歩けば着く。遠くはないが、悠長にしている時間はなかった。視界がはっきりしてきて自分の寝ぐせの酷さに気づく。こういう時に限って鳥の巣みたいなあんまりな寝癖が付くのはどうしてだろうか。
朝ご飯を食べるのを諦め、少ししわのついた洋服を引っ張り出した。寝癖はどうにもならないところが一か所だけあったが諦めた。多分、酷い見てくれにはなってないだろうと自分に言い聞かせ、乱雑にテキストを詰め込んだかばんを持って家を出た。
少し歩いたところでふと思い出す。公共料金の振込用紙を持ってくるのを忘れた。振り返ったアパートは帰るには遠すぎて、私は黙って大学へ向かった。
アラームを止め、起床する。
茹るような頭の痛さ。
昨日、飲みすぎてしまったのだろうか。
私の隣に人はいない。
何か過ちを犯したわけでもなさそうだ。
私をじっと見つめるテレスクリーンが起床とともに点灯する。
曰く、「今日も頑張りましょう」。
いつもと変わらぬ通達だ。
手早く顔を洗って歯を磨き、寂しい冷蔵庫の中から味気ない食料を取り出す。
食った気がしないが、実はこれで十分な朝食となっているのだ。
朝食を食べ終わったころで、居間でも私を見つめるテレスクリーンが再び点灯する。
朝の体操の時間だ。
無理やり笑顔を作り、画面の中のお姉さんの動きを精一杯模倣する。
余計なことは頭からはじき出すべきだ。
タンクトップを流れる汗が本当に、鬱陶しい。
変わらぬ一日だ。
ただ変わらぬ一日がまた始まるのだ。
濡れタオルで軽く汗を拭き、『正義』とラベリングされたスキットルをスーツのポケットに忍ばせ、扉を開く。
そこにはいつもと変わらぬ活気的な街が広がり、空には『ようこそ█████へ』とやかましい飛行船が浮かんでいる。
いつもと、何も変わらない。
私は仕事場に向けて歩みを進めた。
アラームを止め、起床する
██にとってアラームとはやって来るものだった
時折やってきて、身動きできない程の不快な音を鳴らしつづける
何よりも耐え難い苦痛であった
しかし、アラームはしばらくすると止まり、その隙にスイッチ—特定の場所—をひねれば二度と鳴らなくなる救済を██は知っていた
██が世を統べていた時代は簡単に止める事が出来た
しかしアラームは増え、力をつけ、██を狭い、とても狭い惑星の核で出来ている檻に閉じ込めた
更に██を閉じ込めるばかりか、成長すべき██の皮を時折剥ぎにくるようになった
皮を剥ぎに来るとき、アラームは必ず複数なり、途切れる事がほぼ無くなった
地獄の日々が続いた
だが天は██を救いたもうた
酸に眠る地獄の悪鬼を目覚めさせ██の檻を破壊させた
██は咽び泣いた
止めよう
減らそう
殺そう
復讐を
██は玩具箱の原理に覚醒し
最高の完成に向つて突進す
アラームを止め、起床する
アラームを止め、起床する。
とは言えこの部屋に目覚まし時計の類は置かれていないので、単純に、夢の中で聞いた音が止まっただけだ。
見慣れた夢だから、醒める方法すらすっかり身に染みてしまった。
飛び起きるように無理やり起こした上半身を、決して室温のせいだけではない汗が濡らしている。
「ふぅううう……」
息を吐いて、ゆっくり立ち上がる。急な起立は立ち眩みで倒れる元なので、慎重に。
窓の外は燃えるような朝焼けで――あの時のことを、夢にまで見るあの時のことを、思い出す。
脱衣所へ。汗を吸った寝間着を、洗濯機に。
もう慣れたものだけれど、火傷と裂傷のあとが、まぁ、客観すると痛々しいのだろう。鏡に映った自分を、他人事のように思う。
うっかり、傷に触れてしまう――痛くはないが、傷を負った時の記憶が、痛む。
橙色の視界。眼球の裏まで焼かれるような熱。呼気のせいで肺の内側まで熱い。倒壊する建物。警告を発するアラーム。必死で走って流れていく風景。破裂音。探してもいない君。死ぬかもという恐怖。失ってしまったのだという恐怖。
身震いが、意識を現在へ引き戻す。首を振って、風呂場へ。
冷汗は引かず、今日もまだ、アラームは止まない。
アラームを止め、起床する。
南東向きの窓から差し込む光に目を細め、少し痛いとすら感じる冬の冷たい空気を肺いっぱい吸い込むと、夢の靄は晴れ、私の脳は現実の抽象さを感じることができるのだ。
心臓がはちきれんばかりに動く。
冬の空気の酸素を私の肺胞が取り込み、それを心臓が精いっぱい血流の風を筋肉から内臓から、隅々まで吹かせようとしている音だ。
凝り固まった筋肉に力を入れると、酸素の喜びがひしひしと伝わってくる。
上体を起こし、腰をひねると背骨の小気味よい音が響く。
こきっ、こきっ、こきっ。
全身の心地よい熱を味わいつつ、冷たいマホガニーの床に足をつける。
不思議とゴムのような感触を帯びるそれは、私の体重を支えるいい仕事をしてくれている。
階下から声が聞こえた。
どうやら朝食はもうできているらしい。
部屋の扉を開けると、洗濯物を干そうとしている母の影が見えた。
何度も転げ落ちそうになりながら階段を降りると、私は崩れ去ってしまった。
アラームを止め、起床する。
南東向きの窓から差し込む光に目を細め、少し痛いとすら感じる冬の冷たい空気を肺いっぱい吸い込むと、夢の靄は晴れ、私の脳は現実の透明さを感じることができるのだ。
アラームを止め、起きた貴方へ。今日への希望はありますか?
アラームをかけ、眠る貴方へ。今日の疲れは取れそうですか?
産声をあげ、生まれたあなたへ。何故泣いているんですか?
天寿を全うし、死んだあなたへ。人生の答えは出ましたか?
今日も何処かで、生きているあなたへ。苦しいのに何故生きるんですか?
今日も何処かで、死にゆくあなたへ。走馬の灯には誰が映りましたか?
生まれて死ぬ、全ての人へ。人間の愚かさに果てはありますか?
これを無言で、書いている俺へ。この問いに意味はありますか?
今、これを読んでいる貴方へ。この問いに意味なんて必要ですか?
アラームを止め、起床する有機機械は順調に性能評価試験を突破していった。試作品とは言え、まずまずの仕上がりであった。後頭部豊博は、照明を反射する頭皮を撫でながら、アクリル板で仕切られた殺風景な部屋を眺める。中では有機機械が、黒焦げの食パンを口に突っ込み、鍵も忘れてドアから飛び出して行く所である。豊博士は白衣のポケットからリモコンを取り出すとボタンを一押し。アクリル板はゆっくりと有機機械を追いかけ始める。
色彩が滲んだ街の風景がアクリル板の向こう側を流れていく。いつの間にか、雑踏を駆ける有機機械の後ろ姿は灰色の塊の中に消えてしまった。豊博士が再びリモコンのボタンを押す。移動速度が増し、周囲は色彩の濁流となった。
有機機械は上司の平手打ちを喰らい、地に伏している画面となる。リモコンを操作すると描写が巻き戻り、有機機械に骨張った手が直撃する瞬間で停止する。目尻には僅かに潤滑液が溜まっている。社会に耐えうる大卒新入社員の開発は佳境、豊博士は初期化タブが開く。タブレットに情報を打ち込み、『設定321』のパラメータを調整すると、再び朝のアパートの一室、アラームを止め、起床する有機機械の姿がある。
アラームを止め、起床する。
この布の外は存外に寒く、布団と外界が共謀し私をここから逃がすまいと拘束しているようであった。私はこの拘束に抗う術を持ちながら、然して今日の予定がないことを想起し、拘束に従う。微睡みが再び私を襲う。無意識の世界へと誘う。
さて私は無意識下、夢想の世界へと到達した。混沌の織り成す光景が私を捕らえる。渦を巻くように、意識そして場面は二転三転とし、私の前に繰り広げられる。
色彩は交ざり、音楽は交錯し、風が私の肌を撫ぜる。全てに規則性はなく、然して秩序を保っていた。情報が溢れ出し処理が不可能となってきた所で、私の意識は再び現実へと浮上していく。
スヌーズ機能のついたアラームを止め、私は起床する。
現実は全く味気ないものだ。私は易々と拘束を解き、冷えた床をリビングへと歩んで行った。
アラームを止め、起床する。
天井のガラスから、青空の光が差し込んでいた。
窓の向こうで麦畑がざわめいている。
一面の黄金色に見入りながら、パンとスープを咀嚼する。
乾燥した空気と温い食事が僕の目を醒ます。
そうして日課の運動と資料整理にとりかかった。
——————
数時間経ってどれも終わってしまうと、もうやることがない。
書庫へ行ってもそこには擦り切れるほど読んだ本しかなく、遊ぶにしてもどの電子遊戯もやりつくしてしまった。
手を伸ばしても、溜息と共に力が抜けるばかりだ。
空しさに通信機を手に取るけれど、着信はない。
深く息を吐き、ベットに腰掛ける。
スクリーンの電源を切る。景色は夢のように儚く去る。
何処までも続く暗闇に、数多の星々が輝いている。
冷たい風景と生温い液晶が、僕の心を冷ます。
ここがどこかなんて、僕にはわからない。
麦畑は何光年も彼方に消えた。
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みんなの予想
highbriku / Seail_ssm
アラームを止め、起床する
眠い、このまま二度寝してしまおうかも思ったが布団から出て朝食の準備をとることにした
食パンにイチゴジャムを塗っただけの簡素なものを皿に用意し、急いで食べ終えて服に着替える
もたもたしていたら遅刻しかねない
行ってきます
と一人で呟いてドアを閉め、鍵を掛けた
ここから私の1日は始まる
アラームを止め、起床する。
空は昨日と変わらず透き通っていた。
気持ちの良い光が、窓から差し込んでいる。
時間は朝の七時。この上なく健康な生活だ。
鼻をくすぐるバターの良い香りは朝食だろうか。洗面台で顔を洗う。
これで、一日がようやく始まるのだ。最高においしい朝食を食べたら、着替えの時間。
セーラー服に身を包む。
華の女子高生とは私のことだ。ローファーを履いて、親に行ってきますのあいさつ。
そして、扉を開ける。すると、暖かい春の陽気が私を包む。
新しく始まる一年への期待に胸が膨らむのを感じた。
桜が散る道に響くコツコツという足音がなんとも楽しい。
同じ制服の人を見かけても、会話が始まることはなかった。
でも、みんなの晴れ晴れとした表情が素敵だ。しばらくして目に飛び込むのは光を放っているかのような校門。
それにぞろぞろと吸い込まれる生徒。
春の陽気を胸いっぱい吸い込む。
私は意を決して、校門をくぐった。
アラームを止め、起床する。
夢を見ていた。夏の、草原に立ち、吹き抜ける風を受けながら空を見ていた。
太陽に背を向けると、後ろには崖が/異形が/母親が/秋が/死体がいた。
?
混濁した思考を反芻し、理解しようとするが、その度にそれは薄れゆく。
ベッドから降りる頃には、なんとなく嫌な気分だけが残されていた。
アラームを止め、起床する少年に博士が呼びかける!
「マサオ君、ついたぞい!」
「博士、僕の名前はマサキだよ!でもここは?」
「うむ。あれを見よ!」
「うわぁ……!」
「そうだマサオ君、ここは回転寿司じゃ!」
「凄いね!でも僕の名前はマサキだよ!」
「さあ好きなのを頼みなさい!」
「よぉし。じゃあトロにしようっと!」
「駄目だ」
「え」
「マサオ、寿司は白身などから食べた方がいいんだ。最初に味の強いのを食べるとその後に影響が出てしまうからね」
「じゃ、じゃあヒラメ……」
「うん!ヒラメは淡泊でいいぞい!」
「わかった!博士は寿司に詳しいんだね!僕の名前は覚えないくせに!」
「さあ来たぞい!マサオ君はワサビはいらんか?」
「なめるなよ博士!わさびぐらいへいちゃらさ!」
「待て」
「え」
「マサオ、醤油にワサビを溶かしたな?」
「う、うん」
「重大なマナー違反だ。ワサビの本来の風味が薄れ──」
ドン!
「うるせ~~~!!!」
「なんだこの闇の気配は……!」
「いちいち文句つけやがって!寿司なんて楽しく食べれりゃいいじゃねえか!」
こうしてまた一人の少年が寿司の闇へと堕ちてしまった。その闇は深く、そしてとても深い。
アラームを止め、目を開く。
指先についていた乾いた血を爪で剥ぎながら、拘束されている目の前の男へと近づいた。
頬を掴み口を開かせる。口の中は自信の血液でその赤さを増しており、不ぞろいになった歯の白さがよく際立った。ぶつ切りになっている舌が言葉を掴もうと芋虫のようにもぞもぞと動くが、発せられるのは豚よりも醜い唸り声だった。
「しまったなあ。ちょっと舌を切りすぎたか?まあ、まだ喋れるはずだろ。多分。」
ぽっかりと開いた口に錆びた漏斗を入れ、その上に水の入ったペットボトルを逆さに置いた。どぽどぽと水が一直線に落ちていき、男は生きるため嚥下を開始する。鼻からどこかの体液が混ざった汚い汁が水と共に垂れていく。
それを確認すると私はまたアラームをかけなおして、19回目の仮眠を始めた。今度の男は、いつまで私を眠らせれるか、とても楽しみだ。
アラームを止め、起床する。なんて事ない、いつも通りの1日の始まりを憂鬱に告げる電子音は、しかしどこまでも私を安心させてくれる。寝間着を脱ぎ、まだ硬めの制服を羽織って、教材が揃っているか確認する。なんて事ない、いつも通りのルーチンワークだ。自室を出て、1階のキッチンへ行けば、母が図ったように朝食のトーストと牛乳を出してくれる。いつも通りのメニューを腹に収めて食器を片付けたら、席に戻って一息つく。そして、いつも通りに、ディティールが緑色に発光するブレスレットを外す。計数機を胸元にむけて、なるべく何も考えないようにしながら測定開始のボタンに触れた。直ぐに電子音が聞こえて、私は急がずしっかりとブレスレットをはめ直す。横目に見る計数機のディスプレイが、「Hm 3.17」と表記している。なんて事ない、いつも通りの私だと冷淡に告げる文字列は、しかしどこまでも、私を安心させてくれた。
いつも通りの時間に家を出て、学校へと向かう。道中で、いつも通りの顔ぶれが揃ってくると、朝起きるのが辛いとか、宿題が難しいとか、収容体験が楽しみだとか、他愛もない会話が始まる。
なんて事ない、いつも通りの1日は続いていく。
アラームを止め、起床する。無理に起きたせいでぼやけた視界のまま、ふらふらと顔を洗いに行った。今日の朝食はどうしようか。冷蔵庫に昨日の残りが入っているから、それを少し温めて食べようか……。そうゆっくりと考えながら着替えを済ませて、キッチンへと向かった。小窓からまだ柔い朝の光が入ってきて、小ぢんまりとしたキッチンを照らしている。冷蔵庫を開けると、そこには皿ごとラップで覆われた肉が入っている。昨日初めて1人で調理した肉だ。あんまりに不器用で時間がかかり、遅い夕食になってしまったのを覚えている。外したラップから淡い色の血が滴り落ち、調理の不得手さを物語っている。もっと表面を瞬間的に焼き上げるべきだったろうか? 冷え切った肉と皿がレンジで温められるのを見ながら、これからはもっと料理の練習をするべきだろう……そう考える。
何はともあれ、食べるものは自分でもそれなりの形に出来たのだ。今はそれを喜ぼう。一つだけの椅子に腰掛けて、手を合わせる。
「いただきます」
暖かいローストビーフと水道の水。それが一人暮らしが始まって初めての朝食になった。
アラームを止め、起床する。おかしい。目覚まし時計の頭をいくら叩いても音が鳴り止まない。叩く、叩く、叩く。何回か叩いてからようやく音が手元から出ていないことに気づいた。枕の周りを探る。ない。よく耳を済ませて音の発信源を探る。ベッドの下に手をやると感触があった。大方昨日寝返りを打った時にでも手から落としたのだろう。
人差し指でロックを外し耳に当てる。懐かしい声がした。
「おい、篠崎。何回コールしたと思ってんだ。」
「ん?先輩ですか?確か自分、今日は非番だと思ってたんですが。」
「呼び出しだよ。緊急とまでじゃないが、軽い収容違反があったらしい。大方SafeかAnomalous、手間だけがかかる代物だ。」
「なるほど、すぐ行きます。」
「おぅ、今はとにかく人手が足りなくてな。よろしく頼む。」
そう言って先輩はなけなしの休日と共に通話を切った。まぁ、手当が出るからいいか。そう思い、服を着替えながら菓子パンを口にする。おっと、いけない。犬に餌をあげないと。
ドアが閉まり、家主が仕事に向かう音と共に家には餌に首ったけの犬だけが残された、かのように見えた。ベッドの下から覗く黒い影、家主が必死でこれから探すであろうモノは、昼食を頬張る昼食を見て、少しだけほくそ笑んだ。
「アラームを止め、起床せよ。」
スピーカーから流れてきた指令に彼は従う。今日もまた、同じように。
これが、財団のエージェントとして本当に必要な訓練なのだろうか?
そうした疑問よりも先に、体は停止ボタンを叩き、動き始める。
「アラームを止め、起床せよ。」
財団が彼に何を求めているのか、彼には考えることも許されない。
Need to know.
「アラームを止め、起床せよ。」
世界を救う計画の一部なのだと博士は言う。
君にしか出来ないことなのだと。
「アラームを止め、起床せよ。」
ならば、尋ねる必要も無かった。
彼は財団のエージェントだ。”そのとき”をただ、待ち続ける。
「アラームを止め、起床せよ。」
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