集村:9 - 遊記"エルフ様"

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眼前に水平線が広がっていた。海は草原とは異なる不思議な匂いを運んでくる。ウルグは数体の駄馬を引き連れながら、どこまでも広い海を眺めていた。

「この海って奴はどこまで広がってるんだろうな」
「ウルグが想像できないくらい広いよ」

ウルグの問いかけに、ウルグの腕に巻かれた端末が音声で反応した。この端末は異類の影響を受けており、人間と同じように会話することが出来る。この音声の主は自身の事を"タキナ"と自称している。

「それなら大きい魚もいるんだろうな」
「いるんじゃないかな?今の時期は河口辺りで大きな魚が採れるらしいよ」
「そいつは楽しみだ」

食事の事を考えた瞬間に、腹の虫が鳴き始めた。サルモには幾度となく着ていたが、今回は最悪とも言える旅路だった。用事に間に合うよう無理をして出発した結果、大雨が続き食料の大半が腐り、途中で食料が枯渇した。痩せた土地が多く途中で採取できる食材も少なかったため、下手をすればのたれ死にをしていたかもしれない。それでもウルグが無理を押し通して撤退しなかったのには理由がある。

以前ウルグは遊牧民として生活していたが、馬などの家畜の取引を通じて"同盟"と言う組織にスカウトされて以降は、"探訪者"として各地で異類と共生する人々を調べ回っていた。

遠い昔、人類は異類を支配または駆逐しようと試みていた。昔の人類はそれが可能だと思わせる程の力を持っており、現代から見るとまるで魔法のような技術を駆使して異類と相対していた。しかし、どこで道を間違えたのだろう。人類は失敗して全てを失い、文明も文化も途絶える事となった。同盟はかつての人類が失敗した道を再び歩むことがないように、異類との関わり方を模索する組織だ。

ウルグが訪問する予定のサルモの村では、"エルフ様"と呼ばれる異類の神を信仰している。異類は人知を超えた存在であり信仰の対象にされるのは良くある話だ。例えば、ウルグが腕に巻いている端末のタキナが神の演技をすればそれだけでどこかの集村の神に祭り上げられるだろう。だが、サルモの場合は少し事情が違う。

各地で発掘された古文書の情報をかき集めた結果、サルモは旧時代における神、もしくはそれに関連する存在を信仰している可能性が高いようだ。ここで言う神とは現代の神とは訳が違う。魔法のような技術をもってしても神としか表現出来なかった存在と言う事だ。そのような存在とサルモの村人がどのように共生しているのか、貴重なサンプルとなる。

こうしてサルモは同盟にとって重要な調査ポイントとなったが、その調査には時間がかかった。サルモは高度な加工技術を背景に工芸品の交易で栄えており、商人であれば村へ訪問する事自体は難しくない。だが、村の中で商人が出入り出来る場所は限られており、表面的な情報以上の事を調べようと思うと村との関係を深める必要があった。ウルグは同盟や遊牧民の伝手を使い、遠方から希少価値の高い物品を仕入れてはサルモの市場に流し人気を博した。やがて村の指導者の大司教の目に留まるようになり、個人的な親交を深めてエルフ様の情報を調べていった。エルフ様は金属を食べる性質があるらしく、サルモは儀式のために精錬された金属を他の村から購入していた。今年は偶然、そう偶然にも普段サルモに金属を納入していた村が金属を用意出来ず、儀式が中止されてしまう可能性があった。そこでウルグは同盟が精錬した純度の高いインゴットを提供する事を提案し、エルフ様へのお目通りを許される運びとなった。ここまで来て失敗する訳にはいかない。その思いがウルグの疲弊した体を動かしていた。

◇◇◇


集村の入口には大きく堅牢な金属製の門がそびえたっている。門の柱には精密な歯車の意匠が施されており、機能的な意義は皆無だが高度な加工技術が伺える。その金属加工技術を用いて作られた刃物の性能は異常と言っても良いほどで、切れ味の良さと刃こぼれの少なさは旧時代の遺物に勝る性能だ。ウルグも交易の際に手に入れており、その使い勝手の良さから重宝している。

門の近くまで来ると、門番2名に声をかけられた。門番はウルグと異なりのっぺりとした顔立ちで背は低く、黒髪で日に焼けた浅黒い肌をしている。ウルグの顔を見ると門番は顔をほころばせ、両手を広げて歓迎の言葉を述べた。お互いハグをしてねぎらいの言葉をかけあうと、門団はウルグが運んできた荷物に目を向けた。

「今日は何を仕入れてきたんだ?」
「西方の織物とかあったら欲しいんだが」
「いや、今日持って来た物は売り物じゃない。全部エルフ様への贈り物さ」
「ああ、例の儀式の件か。今から大司教様を呼んでくるから待っててくれ」

門番の内の一人は走って村の中に行き、もう一人はウルグのために湯呑のお茶を入れている。門の物々しさに比べると門番は軽装だ。清潔感があり動きやすそうな白装束を身にまとっている。腰には2本の警棒のような物を挿しているが、武器としては不十分な大きさで、護身用としてもいまいち心もとない。高性能な刃物が名産なのだから身に着けても良さそうなものだが不要なのだろうか。少し気にはなったが、それだけ信頼して貰えているのだろうと思い、特に指摘しない事にした。

お茶を飲みながら他愛のない話をしていると、門番が大柄で筋骨隆々な男性を連れて戻ってきた。この男がサルモの大司教だ。門番と同じ衣装を身にまとっており、見ようによっては神職に見えなくもないが村一番の戦士とでも言った方がしっくり来る。

「ウルグ様、ようこそいらっしゃいました」
「大司教様もお久しぶりです」
「つもる話もありますが、長旅でお疲れでしょう。宿へ案内しましょう」
「いえ、その前にエルフ様への捧げものを見分していただけませんか」
「では、私の工房まで運んで頂けますか。付いてきてください」

門をくぐり商人用の地区を抜けると、のどかな街並みが広がっていた。村の中は綺麗に整備されており、住宅、倉庫、酒場など様々な用途の建物が並んでいる。村の中心部には教会があり、子供たちが机の前で大人の説法を聞いている。ウルグがサルモに訪問する度に子供たちが冷やかしで群がっていたので、教会に座っている子供の顔には大体覚えがある。ウルグが教会をチラチラと覗いていると、大司教が説明を始めた。

「神職に就ける子は才能を持つ一握りの子ですが、子供たち全員がエルフ様への信仰心を正しく持てるよう教育しています」

子供たちが真剣そのものと言った表情で話を聞く中で、大司教の一人息子だけが大きな欠伸をしていた。そのやる気の無さそうな態度を見て、大司教は苦々しい表情をしている。

「あの子はその才能を持っているのですが、反抗期のようでして」
「色々と大変そうですね」
「この村の工芸品の評価が高く、不自由ない生活が出来るのもエルフ様のお陰なんですよ。それをあの子は分かってないんです」

次から次へと文句が飛び出してくる。ウルグは当たり障りのない返事を返し続けた。教会の裏手には大司教の工房が設置されている。工房の中心部には旋盤や研磨用の道具が置かれていた。壁にはナイフや鉈などの刃物が飾られている。ウルグが手に入れたナイフもこのような工房で作られたものだろう。大司教は運び込まれたインゴットをひとしきり撫でまわすと、満面の笑みを浮かべた。

「素晴らしい純度です。さすがは同盟の技術ですね」
「ありがとうございます。それでは、儀式に参加させていただけると言う事でよろしいでしょうか」
「ええ、喜んで。前例はありませんが、エルフ様もお喜びになるでしょう」

◇◇◇

儀式が開かれたのは、ウルグがサルモに来てから2週間後の事だった。大司教やその部下の司教6名とウルグは儀式のために村から離れ、エルフ様がいると言われる離れ小島に来ていた。小島は近隣の浜辺からおよそ10分ほど船を漕いだ先にあり、ゴツゴツとした岩場だらけで気を付けて歩かなければ危険な場所だ。司教達はウルグが持参したインゴットを抱えており、重そうに歩いている。浜辺から大きく回り込み、島の裏手側に行くと小さな洞穴が見えた。

「海は時間帯によって高さが変化します。ほら、岩礁のこの高さまで貝が付いているでしょう」
「なるほど、この位置まで海になると」
「この小島では1年に1度、最も水面が低くなった時に洞窟が出現します。エルフ様はその最奥部にいらっしゃいます」

洞窟内は狭く、水位が低い状態でもひざ元まで海水が残っていた。足元には多数の貝がへばりついており、踏んで怪我をしないように気を付けなければいけない。壁面はところどころに旧時代の人工構造物らしき痕跡が残されている。人工構造物が長年の潮水による浸食で風化し、人が通れるほど広い洞窟になったのだろう。最奥部は人工構造物の原型をとどめており、天井が高く吹き抜けの部屋のようになっていた。その中心部には貝がへばり付き赤さびた歯車や滑車、ベルトなどがランダムに組み合わさった謎の機械が置かれている。この外観は、同盟が発掘した旧時代の記録に書かれている特徴に合致している。はやる気持ちを抑えながらウルグは大司教に尋ねた。

「こちらにおられる方がエルフ様と言う事でよろしいでしょうか」

大司教は神妙な面持ちで頷いた。ウルグのため、これから行う事について簡単に説明していく。

「我々は1年に1度、エルフ様が動くことが出来るよう錆付いたお召し物を取り換えています」
「錆付いているのは表面だけと言う事ですか」
「はい」
「どのようにお召し物を取り換えるのでしょうか」

人間の服を着替えさせるのとは訳が違う。歯車などの部品はがっちりと噛み合っており、道具を使っても外せそうには見えない。

「この祝詞は部外秘ですが、今日は特別にお見せしましょう」

祝詞とは?と言う疑問を後目に、大司教は歯車や滑車、ベルトなどの位置を確認すると、司教達にあれこれと指示を出し、エルフ様の周囲に配置した。司教達はインゴットと共に持って来た2本の棒と湯呑を取り出すと、2本の棒を器用に操ってエルフ様の歯車部分を挟み込み、もう片方の手で湯呑を振りかぶった。大司教が合図をすると、全員が同時に湯呑で棒の後ろ側を叩き、祝詞を口にした。

3、2、1、へいらっしゃい!

すると、奇妙な事に静止していたはずの歯車がギシギシと音を立て始めた。どのような原理かは分からないが、祝詞を用いて歯車に強烈な回転力を与えているらしい。それ一発ではなく、大司教の合図に合わせて皆が繰り返し祝詞を唱え続ける。

「もう一丁!」
「へいらっしゃい!」
「まだまだ行くぜ!」
「へいらっしゃい!」

大司教達は軽快な掛け声とともに歯車へ回転を加え続けており、歯車は悲鳴のような音を立てている。回転力を加える度に大きく体力を消耗するらしく、大司教達の肌は赤く火照り吹き出た汗が湯気のように立ち上がっている。

「まだまだいけるか!?」
「へいらっしゃい!」
「こいつでどうだ!」
「へいらっしゃい!」
「もひとつおまけに!」
「へいらっしゃい!!!!」

最後のへいらっしゃいと同時にエルフ様の外殻部分が大きく歪み、限界を超えてバラバラにはじけ飛んだ。錆の無い美しい金属光沢が現れると同時に、歯車はゆっくりと回転を始め、掘削と機械音を鳴らし始めた。

「大司教様、これがエルフ様本来の姿なのですね」

ウルグの問いかけに大司教の反応が無い。目を向けると、顔色は土気色で今にも倒れ込みそうな表情をしている。祝詞が体に負担をかけたのだろうか。体を支えようとすると、大司教はそれを手で静止した。

「今、エルフ様から神託を受けています。早急にインゴットをエルフ様へ投げ入れてください。早く!」

言われるがままに司教達とインゴットを投げ入れると、大司教は今まで苦しんでいた姿が嘘のように元気になった。その後、ウルグ達は引き潮が終わり水没する前にエルフ様がはじけ飛んだ歯車や滑車、ベルトなどを回収し、その場を後にした。

村に戻ると、村人たちが教会の周辺に集まっていた。大司教が儀式の成功を報告すると、どっと歓声が沸き上がり、村人たちによる祝祭が幕を開けた。数々の魚介料理や、この日のために仕込んでいたお酒などの嗜好品が食卓に並べられていく。ウルグは大司教と同じ食卓で、儀式の成功を祝いながら食事に舌鼓を打っていた。

「この鮭って魚、美味しいですね」
「そうでしょう、この辺りでとれる自慢の魚なんです」

ウルグは握り飯にかぶりつきながら鮭の刺身を平らげていく。

「陸の方から来た方は鮭に抵抗を感じる方も多いんですよ」
「何故ですか?」
「ほら、オレンジ色の肉ってあまり見る機会が無いでしょう」
「私は食べられる物だと分かっていればあまり気にならないですけどね」
「あちらのエビも大丈夫ですか?」

見ると、赤い巨大な虫のような生き物が茹でられて食卓に上がっている。

「サルモに来るまでに食料が無くなったって言ったじゃないですか。虫食ならそこで慣れたので大丈夫ですよ」

そう言って胸を張ると、大司教に可哀そうな人を見るような目で見られた。何故だろうか。

「私も今まで色々な村を見てきましたが、これだけ安定した暮らしが出来る村はそうそうないですよ。食糧事情も治安も良いですし」

これは嘘偽らざる気持ちだ。特に大きな問題も無く異類と共生しており、不自由なく暮らせている。大司教はその言葉を聞いて、遠い目をした。

「全てはエルフ様の賜物です。今でこそ安定した暮らしが出来ていますが、エルフ様と出会う前はそれはもう大変だったと聞かされています」
「何があったのでしょうか」
「昔、この村は漁業で生計を立てていたのですが、中々生活が安定せず不漁が続いて餓死する人も多かったとか。私のご先祖様は食料を探して舟を出した際に、貝が豊富に採れる場所を発見し、そこでエルフ様と偶然出会ったらしいのです」
「祝詞もそこで発見されたのですか?」
「いえ、そちらは別途村から出土した古文書に書かれていました。長らく旧時代の奇行として扱われていましたが、エルフ様の歯車を見た際に、ふとその奇行が頭によぎり、繰り返している内に現在の儀式の原型が出来ていきました」
「なるほど、分かれていた物が偶然一つになったと」
「はい。その後、エルフ様がお目覚めになった事で、祝詞を使ってあらゆる物体を回すことが出来るようになりました。それ以来、サルモでは代々エルフ様のお召し物を変え続けています」
「もしかしてサルモの高い加工技術はその祝詞の力を使っていると言う事ですか」
「そうです。それから、エルフ様のお召し物は極めて強靭でして、素材に使ったり研磨に使ったりとあらゆる用途に用いられています。工芸品の村として栄えているのは全てエルフ様のお陰です。全てはエルフ様の賜物と言った理由、分かっていただけましたか」


◇◇◇

儀式も祝祭も終わり、ウルグは村のはずれで端末のタキナと大司教から借りた本2冊を読んでいた。これはサルモに伝わる祝詞について書かれている古文書の写しで、部分的にしか解読出来ていないらしい。これは本来貸しが許されるような物ではないが、エルフ様をより深く理解するためだと言いくるめて何とか借りる事が出来た。古文書の解読は同盟の十八番だが、写しをする前に大部分が風化しているため、推測しながら読んでいくしかない。古文書の解読が得意なタキナの力を借りて何とかと言った所だろう。

「大司教様から聞いた話で終わりじゃダメ?そろそろ遊んでもいいんじゃないかな」
「話の裏取りをしていかないとダメだろう。そもそも、大司教の話はあやふやな内容だらけだ」
「えー、どこ?」
「エルフ様が目覚めた結果、祝詞が使えるようになったのならエルフ様を目覚めさせる時は何故祝詞が動いたんだ?」
「なんか不思議な力で。愛のパワーとか?」

あまりにも雑なタキナの意見だが、それがあり得ないとも言い切れないのが異類の厄介な所だ。

「まあ、それは置いといて、エルフ様が目覚める前に祝詞を使った事が無い以上、エルフ様が祝詞と影響しているかなんてわからない訳だ」
「それはそうだね。サルモでそこの所をはっきりさせるメリットは全く無いし」
「俺としては、エルフ様と祝詞は全く無関係な異類じゃないかと考えている」
「おお、言うねー、それ大司教様に言わないようにね」
「誰が言うか。とにかくこの聖書を読んでみろ」

タキナは文書を一通りスキャンして解読しようとしていたが、残念そうに言った。

「ダメだねこれは。まだ途中だけど、大部分が風化している上に専門用語だらけでいまいち良く分からないや」
「そうか、残念だ」
ただね、これはエルフ様の話だと思うよ。機械の話をしてるし、回すものみたいだから
「祝詞とエルフ様は関係あるのかもしれないな」
「ウルグの予想外れちゃったね」
「いや可能性が少し高くなっただけだからな」
「あ、一つ気になったんだけど、この本ではエルフじゃなくてトラックって書かれてるんだよね。エルフって呼び方どこから来たんだろ?もう一冊も見せて」

ウルグはもう1冊の方の聖書を開いた。こちらは手記のような形式となっており、筆者は先ほどの聖書と同一人物のようだ。

「あ、分かったよ。トラックは種族名でエルフは名前みたいな感じだね。エルフ様は筆者の大切な相棒だったみたい」
「エルフと言うのは愛情を込めた呼び名だったわけだ。機械と人間で良いコンビだったのかもな」
「タキナって名前をもっと愛情込めて呼んでくれてもいいんだよ?」
「この文書を早く訳してくれたらな」
「えっとね、あ、ここに『エルフ最高、エルフは神。だけど輪止めは勘弁な』って書いてある」
「輪止めは良く分からんが神そのものか。同盟が見つけた文書では神と関連していると書かれているが」
「解釈のぶれじゃないかな?ほら、同盟の文書ともリンクしたしエルフ様と祝詞はセットだったんだって」
「うーん、違う気がするんだがなあ。聖書内では神らしい扱いされてないだろう」
「神らしい当たり前の出来事ならあえて書かないかもじゃん。予想外れたって早く認めなよ」

タキナとウルグは順調に読み進めていたが、タキナがある一点で突然黙り込んだ。

「どうしたんだ?」
「あのね、この筆者の人、異端だって言われて追放されてる」
「異端?何が異端なんだ?」
「話の意味が良く分からないから宗教団体だと思うんだけど、スシの研究をする団体があってそこで異端認定されたみたい」
「スシって何だ?」
「ご飯に魚介類とかを乗せた物だと思ってたんだけど、文脈から考えると回せる物の総称みたいだね」

なぜ回すのかさっぱりわからないが、タキナが宗教団体と言っている辺り深く考えても無駄なのだろう。

「回せる物を研究する団体からエルフ様が異端認定されたのか。錆を取らなければエルフ様は回らないからだろうか。他に何か分かる事はあるか?」
「エルフはスシなのに誰も認めてくれない、味方してくれないって悲しんでたみたい」
「なるほど、見えてきたぞ」
「どういう事?」
「大司教は錆取りを数人がかりで行っていた訳だが、筆者は一人だ。これだとエルフ様がスシである事を証明できない」
「本当はスシなのに可哀そうだね」

筆者はエルフ様がスシだと言い続けて最終的に追放されたらしいよ
その後も一人でエルフ様の世話をし続けて、最後はサルモの辺りでこの手記とエルフ様を残して亡くなったんだって

ウルグは思わず天を仰いだ
彼の無念はいかほどだったろうか。

筆者の人もエルフ様も可哀想…本当はスシなのに
彼らが遺した物は無駄にならなかったのが救いだな
うん、そうだね

これで古文書の解析は終わったかな
解析は終わったが後一つ大事なことが残ってるぞ
どれの事?うーん、そこの茂みにタカオ君が隠れてるって話かな?

ウルグが何の話だ?と思った瞬間、茂みからガサリと音が鳴った
数秒後、バツの悪そうな顔をして、大司教の一人息子のタカオが茂みから顔を出した

上手に隠れていたつもりだったんだけどな
ふふ、一般人にしては上手いけどね、探訪者ならこの位くらい分かっちゃうよ。ね、ウルグ
ああ、そうだな

全然気付かなかった。今後は教えてくれと後で頼んでおこう

率直に聞かせてもらうけど、タカオ君はお父さんに頼まれて来たのかな?
違うよ、話をしたい事があって
何だい?
僕は探訪者になりたい。この退屈な村を出て、外の世界を見たい

ウルグは予想外の話に言葉を詰まらせた。
大司教に監視などを頼まれたのかとも思っていたが、よく考えたら監視役ならもっと適任者がいるだろう。
探訪者の仕事に強い興味があり、有能な人材なら同盟に引き抜くのも仕事のうちだ。
だが、二つ返事で了解するわけにもいかない。

「探訪者に憧れがあるようだが、楽しいことばかりでもないぞ」
「それは分かってるよ」
「食べ物が無くなったら虫とかも食うぞ。今回だってサルモで飢饉が起こっていれば俺は餓死していた」
「その覚悟はあるよ」
「野盗に襲われたり、訪問先の村が旅人を殺して物を奪うような所かもしれない。タカオ君、きみには自分の身を守るだけの力はあるか?」
「それは祝詞の力って事か?」


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