沼蜂
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アイテム番号: SCP-xxx-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-xxx-JPの収容室の床には半径3 m、深さ4 mの円錐状の窪みを設けます。収容室内には緊急退避空間とスクラントン現実錨が設置されます。また、蜂型実体の収集活動の対象として、収容室内では花をつける植物を栽培し、常に30 kg以上の木材を設置します。

蜂型実体の攻撃的反応を抑制するため、SCP-xxx-JPの各要素への接触は可能な限り避けられなければいけません。攻撃行動の対象となった場合は、スクラントン現実錨を起動した後に緊急退避空間へ移動し、収容室と退避空間を隔離、退避空間内に侵入した蜂型実体を破壊したのちに収容室を脱出します。

"沼"から何らかの実体が出現した場合、それらの実体は即座に"沼"へ戻される必要があります。

説明: SCP-xxx-JPは複数要素に対する包括指定であり、泥土状物質で構成された蜂型実体、巣要素(以下単に巣と記載)、沼要素(以下"沼"と記載)の3要素からなる異常機能体、および"沼"の底に存在するヒトの男性(SCP-xxx-JP-1に指定)がその対象です。

巣はトウヨウミツバチ(Apis cerana)の巣板に類似した平板状の構築物で、収容室の天井から釣り下るように生成されます。主な働きは蜂型実体の収集物を後述の泥土状物質に変換することであり、収集物の供給がある限り常に直下の"沼"へと泥土状物質を漏出しています。巣板の個数や形態はしばしば変化しますが、機能上の変化はみられません。また、蜂型実体が巣内部から出現することから、蜂型実体の生産、個体数調整も担っていると考えられています。

蜂型実体は巣への供給及びSCP-xxx-JP全体の防衛として機能する要素です。形態的にはトウヨウミツバチの個体に類似しますが、泥土状物質で構成されるために形態は安定しません。基本的には巣の周囲を探索し、花類からの採蜜を行います。花類がない場合はその他植物を削り取り、巣へ供給します。非植物へは基本的に無反応ですが、SCP-xxx-JPに対する攻撃や"沼"への侵入が発生した際は、アゴを肥大化させ、周囲の存在に対して攻撃行動を取ります。これらの攻撃はスクラントン現実錨による現実性安定によって軽減できることが知られています。

泥土状物質は、すべての要素の基本的構成物質です。各要素から切り離される、もしくは沼要素から溢れた泥土状物質は短期間で不安定化、消失するため、詳細な構造は明らかになっていません。巣および蜂型実体を構成する場合は概ね固体ですが、巣から分泌された直後と"沼"を構成する場合は擬塑性流体(通常高い粘度を持つものの、力を加えると粘度が低下する流体)として振舞います。特筆すべき点として、摂取者を昏睡させる効果があり、また生体と接触した場合、生体が受けている損傷の悪化を防ぎ、接触部の損傷をわずかに回復させる効果が確認されています。

"沼"は巣の直下に位置する要素で、地面に存在する窪みを巣から漏出した泥土状物質が満たすことで構成されます。任意の物体・生物が侵入し、一定以上沈降した場合、その擬塑性から即座に脱出することは困難です。この要素は自然界で、いわゆる流砂や底なし沼のように敵対生物を足止めし、蜂型実体の攻撃行動を補助する役割を持っていたと考えられています。"沼"の底には現在後述のSCP-xxx-JP-1が存在しています。

SCP-xxx-JP-1は見た目上20代から30代にみえるヒトの男性で、"沼"に侵入しても蜂型実体の攻撃対象にならない現状唯一の存在です。SCP-xxx-JP-1は外部由来であり、厳密にはSCP-xxx-JPの構成要素ではないと考えられていますが、蒐集院からの引継ぎ手順に従って"沼"の底に安置されています。SCP-xxx-JP-1は泥土状物質の影響を非常に強く受けることが知られており、老化の兆候が観察されない他、全身が泥土状物質に覆われている状態では瞬時に損傷を回復します。SCP-xxx-JP-1の身元について公式の記録は存在しませんが、断片的な記録の復元から、日奉家の非嫡出子であり、蒐集院に所属していた日奉蚣氏と考えられています。SCP-xxx-JP-1は泥土状物質によって常に昏睡状態にあります。

収容以前の記録: SCP-xxx-JPの収容は、財団による蒐集院統合の際、いくつかの断片的な資料及び収容方法と共に蒐集院から回収されました。以下は蒐集院が本オブジェクトを収容するに至った経緯及びSCP-xxx-JP-1の由来、オブジェクトの知られていない性質に関連する非公式な資料(現代語訳/各所修正済み)です。各文書は主に1930年から1940年ごろに書かれたものと推測されています。

調査日誌-1

泥の蜂が人を攫うという情報を得て、調査のために██山にある村落を訪れた。

村の住民は明らかに怯えている様子であったが、ただの旅人を名乗る私を歓迎してくれた。暖かい料理を食べたのはいつ以来だろうか。

今日から数日滞在し、村で何が起こっているかを観察することにする。ただの噂で終わってくれることを願おう。

- 記・蚣

調査日誌-2

滞在から5日が経過した。住民は相変わらず部外者の私に優しく接してくれる。最初は裏があるのかと警戒したが、どうやら杞憂のようだった。子供たちも心を開いて、私を遊びに誘ってくれることがある。

貧しいものは働かないわけにはいかない。仮に怪異の影があったとしても、畑に出なければ飢えが待っているだけだ。家に閉じこもることなどできない。大人たちは不安に駆られながら仕事をしている。そんな危険な環境で子供を働かせねばならない負い目も感じているようだ。

そんな中で、無知ゆえに、無邪気ゆえに、仕事の合間に楽し気に畑を駆けまわる子供たちの姿は、大人たちの心理的な支えになっているのかもしれない。こんな過酷な環境のなかでも、子供たちには役目があり、それを果たす力があった。だからこそ、彼らはこんなにも認められ、愛されているのだろう。日奉の血を継ぎながら、大した力もない私とは大違いだ。

調査としては住民への聞き込みが進行中である。集まった噂は主に「山に入った者が土で出来た蜂が飛んでいるのを見た」、「村で泥の蜂が目撃された後、行方不明者が出た」などであった。目撃証言の信憑性は不明だが、老齢の住民が一人消息を絶っていることは事実のようだ。目撃情報をもとに、一度蒐集院が集めた情報を整理しておく必要があるだろう。

- 記・蚣

蒐集対象候補記録 - 泥蜂

記録1 - 文政6年(1813年)頃: 土塊の蜂の集団に巫女が連れ去られ、沼に引きずり込まれたとのこと。その後蜂は目撃されなかったという。

記録2 - 天保6年(1835年)頃: 泥蜂の目撃情報。ただし泥で出来た蜂を見かけたという噂で、詳細はなし。また付近の調査で得られた情報では、泥蜂の目撃以前に、伐採のために森に入った親子が木から垂れている一枚の美しく透き通った布を発見し、見上げたところ、布の正体は人の2倍以上はあろうかという大きく奇怪な虫の羽であった、とのこと。

記録3 - 天保9年(1838年)頃: 僧たちの間で流れた風説。最近、地域を訪れていた高名な僧がその土地に憑いた蜂の神を鎮めるために身を捧げたとのこと。記録2の付近で得られた情報。

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記録4のスケッチ

記録4 - 明治15年(1882年)頃: 過去から来た人物についての風説を調査している過程で発見。時間転移者と疑われていた人物は、大きな羽虫に食われて死んだとのことであった。その羽虫は月を隠すほど巨大で、月の光を全身に青く反射させ、いくつかの建物に損害を与えたあと空を飛んで消えていったとのことである。容姿は、歪に大きな頭をもった蜂のようであったといわれる。目撃者には、記憶をもとにスケッチを作成させた。一連の情報が得られた地域は、記録2が得られた地域と近接している。

調査日誌-3

数日分の記録をまとめて記載。ここ数日の間に犠牲者が複数発生。

第一例の被害者は住民の子供の一人とその父親。

畑仕事の最中、目を離した隙に子供が泥蜂の集団に捕まれ、山の中に運ばれていったという。

母親は子を追おうとしたが蜂の移動は早く、また子供もぐったりとして抵抗のそぶりをみせなかったため、追いつけなかったと語った。

父親がその痕跡を追ったと聞き、私もすぐに父親の後を追跡した。山中に入ってすぐ、悲鳴と大量の羽音が聞こえたため身を隠しながら接近したところ、子を追ったという父親が羽虫に囲まれ、切り刻まれている様をみた。私は足が震えて、その場から動けなかった。蜂はそれらの欠片を回収しどこかへ消えた。その場に残った衣服の欠片をもち、その場を離脱した。

第二、第三例は共に大人で、自宅で就寝している隙に連れ去られたとみられる。

これらの痕跡をもとに追跡を行ったところ、山中に巨大な底なし沼と異様な蜂の巣を発見した。おそらくこれが泥蜂の住処で間違いないだろう。

家にいても安全ではないことが知られ、村人の間には不安が広がっている。子供たちも虫を恐れ、村落からは活気が失われた。

第一例の子供はこんな私に懐いてくれた子供の一人だった。私はその父親を見殺しにした。

私にはやはり、何もできない。

- 記・蚣

調査日誌-4

本部から返信あり。泥蜂の実在が確かめられ、巣の存在が明らかになったことで一旦の目的は達成されたとのこと。帰還命令が出た。

村人たちの私を見る目が冷たい。私がやってきてから被害が急増したのだから、当たり前だろう。子供たちも私に寄り付かなくなった。

結局こうなることはわかっていた。私は何も為せない凡人であり、そのためにどこにも居場所がない。この村に留まろうが蒐集院に戻ろうが、結局のところ、生きるというのは抜け出せない底なし沼――深まっていくばかりの孤独と苦痛でしかない。ただ、私には留まる、戻る以外に、もう一つの選択肢があるようだ。

集められた伝承には、神なり仏なりに仕える職務の人間が身を捧げることで、事態は沈静化したとあった。無能だとしても、私も神に仕える血の末端だ。生贄になることくらいはできるかもしれない。

やっと理由ができたのだ。それならば、いっそもう、飛び込んでしまおうか。

- 記・蚣

注記: これらの一連の記録の後、沈静化したSCP-xxx-JPは蒐集院によって確保、移動されたと考えられています。


補遺1: 以上の記録をもとに、生物学部門ハチ亜目研究室に所属する██研究員より以下の提言がなされました。

SCP-xxx-JPの現状について


我々は、SCP-xxx-JPをよく知られたトウヨウミツバチと関連させてきました。しかし今、SCP-xxx-JPが本質的には別の昆虫とより深く関連している可能性を私は提案します。

疑念の始まりは、蒐集院が回収していた目撃情報でした。

この目撃情報には明らかに2種の虫が存在します。泥で出来た小型のハチと、少なくとも人より大きな巨大な羽虫です。蒐集院はこれら2つの実体が地理・時期的に近接して発見されることを受け、何かしらの関連を見出して1つの記録にまとめたのが見て取れます。ここで私が主張するのは、泥で出来たハチ――これは我々がSCP-xxx-JPとしてよく知る実体ですが――はあくまでこのオブジェクトの機能的な模倣の結果であり、本質的な生態を探るためにはむしろ巨大な羽虫の目撃焦点に着目すべきであるということです。

特に1882年の記録は興味深いものです。証言によると、巨大な羽虫は月光を青く反射していたといいます。確かにミツバチの体表にも光沢はありますが、全身に毛が生えているために印象に残るほど強い反射は得られないでしょう。

また巨大な頭というのも不可解です。スケッチを確認すると、その頭部は胸部を十分に超えるほど広いことが確認できますが、これはミツバチの特徴と一致しません。

最後にミツバチとしては羽も大きすぎます。このスケッチに含まれるだろう誇張や記憶の誤りを考慮しても、これらの項目はミツバチの容姿と全く一致しません。他の目撃情報においても羽が一枚の布として形容されていますが、当該実体がミツバチの姿をしていたのなら、羽を一枚の布と表現することはないでしょう。彼らは何かに止まるときも、左右の羽がぴったりと重なることはありません。

我々はこれらの特徴(青っぽい光沢、広い頭部、大きな羽、ぴったりと重なる羽)から、SCP-xxx-JPがコガネコバチ科(Pteromalidae)とより関連深い存在であると推測します。

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コガネコバチ科の一種

コガネコバチ科の特徴は、その寄生性です。他の昆虫の幼虫に卵を産み付け、幼虫が蛹化すると、蛹内部を食い尽くし、成虫まで成長したコガネコバチは宿主の蛹を突き破って現れます。もしこの特徴がSCP-xxx-JPに引き継がれていると考えるのならば、いくつかの不可解な点を説明可能になります。

なぜSCP-xxx-JPは記録上で村落まで降りて"人狩り"をしていたのか。そうして、なぜ宗教的な役割をもった人々が沼に身を投じることでこの"人狩り"が収まるのか。おそらくそれは、SCP-xxx-JPがこれらの人々(おそらくは比較的高い現実性を持つ人物)に寄生する特性を有しているからではないでしょうか。"人狩り"は条件に合う適切な宿主を探すための行為であり、適切な宿主が確保できれば、"人狩り"は止むのです。

この仮定のもとでは、"沼"の底に沈む男性、すなわちSCP-xxx-JP-1は、新たな宿主となっていると考えられます。つまり、現在のSCP-xxx-JPは安定した鎮静状態にあるというよりむしろ、幼体の成長期間にある可能性を考えておく必要があるでしょう。

またさらに加味すべき点は――情報の少なさから断言は難しいですが――成虫の出現スパンが拡大しつつ、それに伴って報告された体長も増大傾向にあることです。成虫の最初の報告は人の2倍ほどの大きさと記述されていますが、次の報告では詳細はわからないものの、"月を隠すほど"と形容されています。出現間隔については、約20年、約50年と増加し、現在のSCP-xxx-JP-1はおおよそ80年間宿主であり続けていると考えられます。これらの点を総合しても、SCP-xxx-JP-1に幼体が寄生している場合、それが成虫として羽化したときの大きさやもたらす影響は計り知れません。


補遺2: 2015/██/██、SCP-xxx-JP-1が"沼"から脱出するインシデントが発生しました。以下は収容室に設置されたカメラの映像です。

映像記録

<記録開始>

[SCP-xxx-JP-1が"沼"から出現する。即応チームが対応し、SCP-xxx-JP-1は収容室内に留められる]

[担当研究員と通訳者が到着。対話と状況説明、サンプル採取が実施される。]

[即応チームによってSCP-xxx-JP-1が新しい収容房に移動される。]

<記録終了>


補足: SCP-xxx-JP-1は上に向かって泳ぐように動作することで上昇が可能であったと説明しました。また、SCP-xxx-JP-1は泥土状物質内でも窒息しないことが明らかになりました。


補遺3: SCP-xxx-JP-1に対して全般的な異常性検査が行われました。その結果血液中から、幼若ホルモン(詳しくは後述)と類似した物質が検出されました。本物質はSCP-xxx-JP-1の生体活動に伴って分泌され、また泥土状物質の昏睡作用を抑制していることが確認されています。加えて、██研究員の以前の提言をもとに検査が実施されたところ、体長5 cmほどの幼虫様実体(SCP-xxx-JP-2に指定)が体内に存在していることが判明しました。それ以外の点に関しては、通常よりわずかに現実性強度が高いことを除き通常のヒトとの相違は見られませんでした。この結果をもとに、██研究員より以下の追加の仮説が提出されました。

SCP-xxx-JP-2の羽化に関する仮説


我々の以前の提案は、一つ重要な部分の考察を欠いていました。それは、成虫の羽化タイミングです。蒐集院の最後の記録で触れられている「過去から来た人物」というのは、長い間沼の底で昏睡状態にあったために、習慣や知識が以前の状態で止まったままの人物を指している可能性があります。この人物が沼から這い出て人の住む領域まで戻り、やがて体を食い破って成虫が現れたのではないでしょうか。

この推論はその根拠の薄弱さから以前の提案には含まれませんでした。しかし、今やこの仮説は現実味を帯びています。というのも、幼若ホルモンは昆虫の幼体の成長を促進するホルモンですが、一方で蛹化や脱皮を抑制する物質でもあります。この物質が分泌されなくなることで、昆虫は蛹化以降の成長プロセスを開始させることができるのです。この幼若ホルモンがSCP-xxx-JP-1の生体活動に依存するならば、SCP-xxx-JP-1の死はすなわちSCP-xxx-JP-2の蛹化、そして続く羽化を引き起こすでしょう。

未知のSCP-xxx-JP-2の成体への対抗策が不十分である現在、我々はSCP-xxx-JP-1を生かし続ける必要があります。


補遺4: 以下はSCP-xxx-JP-1に対して行われた一連の対話の記録です。

対話記録 - 1

付記: 本対話はSCP-xxx-JP-1に対する現状の説明を目的として行われた。


<記録開始>

[担当研究員によってSCP-xxx-JP収容までの経緯と、SCP-xxx-JP-2に関する説明が行われる]

SCP-xxx-JP-1: 結局私は、死ぬことさえ満足に達成できず、ぶくぶくと危険な幼虫を太らせるための宿主になっているんですね。

担当研究員: そこまで後ろ向きに考えないでください。我々はあなたが生きていてくれたおかげでこうして情報を得ることができているんです。

SCP-xxx-JP-1: いいえ。結局私はこの蜂について何も知りませんでした。お役に立てているとは思えません。

担当研究員: そんなことはありません。それに、あなたの勇気ある行動のおかげで、あの村落はあれ以上犠牲者を出さずにすんだのです。

SCP-xxx-JP-1: それは――

担当研究員: 私はあなたが無力だとは思いませんよ。本当に無力なら沼に飛び込むことなどできなかったはずです。きっとあなたは特別な存在になれるはずです。

SCP-xxx-JP-1: どうしてそんな、私のことを――うっ

[突然SCP-xxx-JPが腹部を押さえてうずくまり、吐血する。研究員が収容チームに連絡]

[人員が到着し、SCP-xxx-JP-1が救護室に運ばれる]

<記録終了>


終了後報告: 検査の結果、吐血の原因はSCP-xxx-JP-2が移動し、SCP-xxx-JP-1の胃を食い破ったためであることが明らかになりました。また、SCP-xxx-JP-2の体長はさらに伸長しており、SCP-xxx-JP-2が成長を重ねて徐々に活発化している可能性が示唆されました。


対話記録 - 2

付記: SCP-xxx-JP-1の安定した生命維持のため、SCP-xxx-JP-2への効果的な対応が決定されるまでの方策として、収容チームは可能な限りSCP-xxx-JP-1を"沼"内部に留めることが最善と判断しました。本対話は本計画に対するSCP-xxx-JP-1の意思の確認を目的として実施されました。


<記録開始>

[担当研究員によって計画の概要が説明される]

SCP-xxx-JP-1: 少し、お話を聞いていただけますか?

担当研究員: もちろんです。

SCP-xxx-JP-1: 以前の私は、人生はあまりに長い苦痛だと思っていました。自分が何の力もない凡人で、それゆえに誰からも認められなかったからです。だから、死ぬことによってその孤独から逃れようとしました。

担当研究員: ええ。

SCP-xxx-JP-1: ですが、あなたに励まして頂いて、そうして今回の話を聞いて、やっと希望ができたんです。私も生きることを通して誰かの役に立てると。私にしかできないことをして、つまりは特別な存在になって、死ぬのではなく、生きることによってずっと抱えてきた孤独から抜け出すことができると。――きっと、私が耐えれば、私は色々な人々から認めてもらえますよね?

担当研究員: はい。もちろんです。少なくとも私は、あなたがきっとやりきれると信じていますよ。

SCP-xxx-JP-1: ――ありがとうございます。これで、決心ができました。もちろん、喜んでご協力致します。なにより、私が私を認めるために。

担当研究員: ご協力、感謝いたします。さっそく準備を始めますね。

SCP-xxx-JP-1: はい。ああ、なんとも嬉しい皮肉ですね。沼に沈むことで、ずっと浸っていた苦しみから抜け出せるとは。

<記録終了>


終了後報告: SCP-xxx-JP-1の本人の同意によって、定期検査等を除き、今後SCP-xxx-JP-1は"沼"内部で収容されることが決定しました。


補遺5: 以下はSCP-xxx-JPが"沼"内部に収容されて以降の対話、およびそれに伴う提言の記録です。

対話記録 - 3

付記: 本対話は、"沼"内部での収容が開始されて以降、最初の定期検査に際して実施されたものです。


<記録開始>

担当研究員: 最近の様子はどうですか?

SCP-xxx-JP-1: ときどき体の中を何かが這いずりまわるような感覚があります。それと、痛みも。

担当研究員: つらいですね。必要であれば定期的に痛み止めを用意しましょうか?

SCP-xxx-JP-1: いいえ、大丈夫です。むしろ嬉しいんです。

担当研究員: 嬉しい、とは?

SCP-xxx-JP-1: 痛みに耐えている間は、私は特別だということを実感できるんです。凡人ならばやがて耐えられなくなるはずですから。

担当研究員: それは――強いですね。

SCP-xxx-JP-1: きっとこれからもっと痛みも強くなるのでしょう。だけども、耐えてみせますよ。

担当研究員: 心強いです。信じていますね。

SCP-xxx-JP-1: ええ。やっと抜け出せたのですから、この虫に対する対策が見つかるまで、いつまでだって足掻いてみせますよ。

<記録終了>


終了後報告: 検査の結果、SCP-xxx-JP-2がおおよそ体長10 cmまで成長していることが確認された。


SCP-xxx-JP-2の効果的な収容について


我々はSCP-xxx-JP-2の対策を練るための一時的な仮の収容プロトコルとして、現在SCP-xxx-JP-1を"沼"内部で収容しています。しかし、未知の実体に対する完璧な対策など存在しないことに、今一度我々は向き合うべきです。真に必要とされるのは、現状存在する実体に対する最も効果的な収容です。

さて、幼若ホルモンと類似した物質は実際に防虫剤として利用されています。これらの防虫剤は即効性を狙うものではなく、昆虫の幼体期間を引き延ばし、幼体のままでの死亡や脱皮や蛹化、羽化の妨害を目的としています。我々はSCP-xxx-JP-1の生存を引き延ばすことによって、疑似的にこの防虫剤の効果を再現しているのです。

したがって、我々が現在採るべきもっとも安定した方策は、可能な限りSCP-xxx-JPの幼体期間を引き延ばすことです。この方策の目的は問題を先送りにすることだけではありません。幼体の想定を超えた成長の促進や生育不全は彼らの通常の成長を妨げることにもつながります。つまり、SCP-xxx-JP-2の成体の出現を妨げることができる可能性が高いのです。

以上の理由から、現状の"沼"内部での収容を恒久化することを提案します。


対話記録 - 4

付記: 以下は██回目の定期検査の際に実施された対話の記録です。


<記録開始>

担当研究員: 大丈夫ですか? 沼から上がるときも辛そうでしたが。

SCP-xxx-JP-1: 動くと虫も反応するのか、痛みが強くて。

担当研究員: そうでしたか。それは苦しいですね。検査への協力、本当にありがとうございます。

SCP-xxx-JP-1: いえいえ、沼の底でじっとしている分には痛みも和らぎますから。大丈夫です。ただ――

担当研究員: はい?

SCP-xxx-JP-1: 痛み止めをいただけませんか。陸に上がっているときは、酷く痛むので。

担当研究員: そういうことでしたか、もちろんです。すぐに用意しますよ。

SCP-xxx-JP-1: ――ありがとうございます。

<記録終了>


終了後報告: 担当研究員により、今後SCP-xxx-JP収容室内部には経口摂取の鎮痛剤を常備することが決定されました。


収容チームからの提案


収容室の映像から、SCP-xxx-JP-1が頻繁に"沼"から浮上し、鎮痛剤を摂取している姿が観察されています。

事故リスクの増加と薬剤耐性の観点から、現状の収容方法は更新される必要があります。

担当研究員による提案への返答


本計画初期から予想されていたリスクについてはすでに対策が決定しています。ただし、まだ現状は維持でき、それが最善です。

収容方法の更新タイミングは我々でなく、SCP-xxx-JP-1の意思に依存しています。


補遺6: SCP-xxx-JP-2の成長により、地上での定期検査の際に生じるSCP-xxx-JP-1の生命に対する危険性が高まったため、定期検査の中止が決定されました。またこの決定以降、SCP-xxx-JP-1の浮上頻度は著しく低下しました。現在、SCP-xxx-JP-1は長期間"沼"の最下部に留まっていますが、これは浮上に伴う苦痛がSCP-xxx-JP-1の許容可能な閾値を超過しているためだと考えられます。


補遺7: 以下はSP-xxx-JP-1の"沼"内部での収容開始から、3年後に発生したインシデントの映像記録です。

映像記録

<記録開始>

["沼"からSCP-xxx-JP-1の手が出現し、淵を掴む。警備システムが緊急アラートを発する。]

[SCP-xxx-JP-1が自身の体を"沼"からゆっくりと引き上げていく。]

[SCP-xxx-JP-1が"沼"から完全に脱出する。SCP-xxx-JP-1の腹部や脚部は、SCP-xxx-JP-2による移動とそれに伴う再生・過形成が繰り返されたために、歪に肥大化している。腹部では幅10 cm、長さ20 cmほどの隆起部が蠕動し、SCP-xxx-JP-1の体内をSCP-xxx-JP-2が絶えず移動していることがわかる。SCP-xxx-JP-1はカメラに向かって何かを叫んでいる]

[担当研究員と収容チームが到着。SCP-xxx-JP-1は担当研究員に接近するが、バランスをとれず担当研究員の足元に転倒する]

SCP-xxx-JP-1: ああ、██さん、来てくれたんですね。

担当研究員: 大丈夫です。ずっと見ていますよ。辛いですね。痛いですね。それなのに、よく耐えていますね。やはり、あなたは特別ですよ。

SCP-xxx-JP-1: ごめんなさい。ごめんなさい。だけど、もう――

[SCP-xxx-JP-1は痛みのために悲鳴をあげ、大量に吐血する]

担当研究員: お気持ちはわかります。ですが、――申し訳ありません。

[収容チームにより、SCP-xxx-JP-1の両手、両足が拘束具で固定される]

SCP-xxx-JP-1: あ、あ、なにを――

担当研究員: もはや、あなたがどう思おうと、あなたは特別であり続ける必要があります。それはあなたが最初に沼に飛び込んだときから決まっていたことであり、そして再び沼に沈んだあなたが選んだ道でした。私たちが唯一選ぶべき道でもあります。

[収容チームはSCP-xxx-JP-1を担ぎ上げる。SCP-xxx-JP-1はもがきながら叫んでいる]

担当研究員: だからせめて私は、この選択をしたあの日のあなたを誇りに思います。

[SCP-xxx-JP-1が"沼"の中央に投げ込まれ、沈み始める]

SCP-xxx-JP-1: いやだ、そんな言葉、こんな私、私が求めていたものじゃない。どうして、やっと抜け出せたと思ったのに。

[SCP-xxx-JP-1は脱出しようと体をうねらせるが、そのために急速に"沼"に沈み込みはじめる]

SCP-xxx-JP-1: 助けて、もう沈みたくない。どこまで沈むんだ、底はどこに――

[SCP-xxx-JP-1の顔は泥土状物質に覆われ、発声は途絶える]

<記録終了>


補足: これ以降、SCP-xxx-JP-1の浮上は確認されていません。

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