それで、貴方はクリシェなセリフを書きますか

※この記事は何某Discordサーバーで突発的に始まった、SCP-JPにおける「セリフ」に関する対談を書き起こし、編集したものです。いわゆる"エッセイ"よりも個人的な意見・思い付きで話している部分が多いので、ご注意ください。また、編集の過程でカットされていますが、それぞれ自分の初期作品を見ながら話しています。偉そうなことを言っていますが、自分の幼少期を振り返って思い出話をしているようなものだと思っていただければ幸いです。

参加者紹介

k-cal(以下ケーカル)
今回の対談の発案者。基本的に聞き手役だが、自我がある。最近創作はめっきりであり、過去の栄光に縋って生きている。

aisurakuto氏(以下アイス)
実力派著者。短編・中編Taleだけでなく、SCP報告書記事においても、登場人物の心情の機微を繊細に描く。表現等についての知識も広く、サンドボックスにおいては、的確な批評で多くの記事に影響を与えてきた。

meshiochislash氏(以下メシオチ)
カノン・筐体作りの作成、ルーキーコンでの飯落ちの提言など、鮮烈なデビューを飾る。近年は"エモ"を描いた短編Taleを多く手掛けている。また、Twitterでは+50チャレンジ1を踏破し、フォロワーたちに感動を与えた。

Pagema157(以下ページマ)
ウルトラスーパーエクストラエリアマネージャー。知らないこと以外すべてのことを知る存在。恐れ多くも本対談にご参加いただいただけでなく、いくつもの有用なご助言を賜った。この場を借りてお礼申し上げたい。

<記録開始>

ケーカル: まずは問題意識の共有からです。最近下書き批評をしているんですが、SCP記事でいらないセリフ2を書いてしまって、記事全体の品質を落としてしまっているような事態が多いと思うんですよ。

メシオチ: まあ、はい。

アイス: 見るには見ますね。

ケーカル: もう1点、Taleにしても、もう少しセリフが上手く書けるといいな、というものもあります。と、そんな感じで数点確認したいことがあるのですが。まず議題1。

アイス: 議題1。

ケーカル: 議題1が、SCP記事でセリフを入れることの危険性についてです。

メシオチ: うん。

ケーカル: そのあとは、逆にセリフを入れることの有用性や、具体的にどんなセリフが問題で、どう改善していけばいいのかな、というところまでを話していければなと思います。

メシオチ: なるほど。

ケーカル: もう録音は始めてますが、できていなかったら僕の記憶から書き起こすので、そこのところよろしくお願いします。

アイス: じゃあ今のうちに。

アイス: ケーカルさんの海馬を無限に拡張しておきます。

 

SCP記事でセリフを使うことの危険性・難しさ

アイス: SCP記事では報告書の文体、つまりクリニカルトーンがほとんどの割合を占めているじゃないですか。それで口酸っぱくクリニカルトーン、クリニカルトーンって注意が飛びますけど、逆に言うと、やるべきことが決まっているので、文の品質は底上げ、というか均質化されていきます。一方でセリフではこの縛りから解放されてしまうわけで。

ケーカル: 決まったレールを歩く人生は平凡な分、楽だけど、自由を求めてレールを飛び出した瞬間、もう安全とは言えない。

アイス: なぜ急に社会の話になったのかよくわからないですけど。

メシオチ: あれなんだよな、セリフがもう良い効果を発揮していないやつがある。

アイス: 例えば、今だともう古くなっちゃったんですけど、研究員がオブジェクトを番号で呼んで、オブジェクトが「俺には名前があるんだ」って反抗するくだりが、昔はあるあるだったんですよ。

メシオチ: あ~、てかまだ残ってる記事でも、あることにはある。

アイス: これがなんで消えていったかというと、無駄だからなんですよ。

メシオチ: その通りで。

ケーカル: そのセリフが悪い影響を及ぼしているってことですか? そこまでいかず、期待された効果を発揮していないという感じですか?

メシオチ: 効果を発揮していない方ですね。たぶん雰囲気作りとして書いていると思うんですけど、別に要らないようねっていう。

アイス: もういらなくなっちゃった。

メシオチ: かつては有効に働いていたかも……しれない。

アイス: やっぱり昔は秘密組織感、拘束されている感ってのが重視されてたんですけど、SCP財団っていう設定がもう受け入れられて当たり前になっているので、わざわざディストピア性を掘り出す必要はあんまりなくなっちゃったんで。

ケーカル: 単純に書く必要がなくなってしまったと。

アイス: はい。

ケーカル: これは結構特定のセリフに特化した話になりましたね。必要がなくなっただけというのなら、もし「俺には名前があるんだ」のくだりがあってもそんなに悪い影響はないはず。でも、実際下書きにそんなシーンがあったら「消した方がいいよ」って批評しますよね。ということは、そもそもセリフが一般的に「悪い影響」をもっているんじゃないでしょうか。

ケーカル: それこそ、さっきアイスさんがおっしゃったように、クリニカルトーンに沿っていれば見えない粗が、セリフでは出てきてしまう…… やっぱり経験とかが出てしまうってことですかね?

アイス: 経験も出ますし、言葉をどう使ったらいいかという技術がモロにでる。

ケーカル: 細かい技術については後で触れるとして、基本的にセリフは諸刃の剣というか、毒。自信がない状態で使うべきではないってことですね。メシオチさん的にはどうですか?

メシオチ: セリフがあるところというのは、シーンになりますよね。ドラマ的というか。インタビューでも、突入記録でもなんでも。

ケーカル: はい。

メシオチ: それなのに、地の文の文体の工夫とか、形容とか、そういう装飾が効かないから、セリフだけで勝負することになるんですよ。

ケーカル: あー、Taleとかと比較してってことですね。Taleならセリフとセリフの間に描写とか、地の文を入れられるけど、SCP記事の記録でそれはできない。なんなら地の文で書ける心の動きとかも、セリフで表現しなくちゃいけないってことですね。

メシオチ: もう、報告書本文がクリニカルトーンであるとかを通り越して、小説より難しいことをさせられているんですよ。例えば小説なら、多少クサいセリフを書いても、地の文であとから考えを付け足してクサみを誤魔化すこともできますし。

ケーカル: その結果、SCP記事ではセリフにクサみやエグみが出やすいと。そんなリスクを冒してまで、セリフを使うメリットってあるんでしょうかね。

 

SCP記事でセリフを敢えて使うなら、何のために使うべきなのか?

アイス: 一番最初に思いつくのは、キャラクターを提示するってところです。

ケーカル: ただ単にキャラクターを登場させる、という意味ではなくて、セリフや喋り方を通してキャラクターの性格や背景を語ろう、ってことですね。

アイス: はい。SCPでキャラものをやりたいって言われたときにいつも例に出すのが、SCP-2094で。

ケーカル: "口車"ですね。

アイス: 今だとさすがにやりすぎ感はあるんですが、こいつが本当にとにかく喋るんですよ。ハーマンフラーの過去を、全部こいつが喋っちゃうくらい。それでも記事が成立しているのは、こいつのセリフ回しの面白さとか、キャラクターの良さのおかげなんですよ。

ケーカル: このキャラの魅力で記事が成り立っていて、そのキャラの魅力を作っているのがまさにセリフであると。

アイス: はい。しかもその中で、ハーマンフラーの色々な構成要素を混ぜ込んで語ってるんですよ。

ケーカル: 例えば?

アイス: 例えば、逆さ面の男ってのがいるんですけど、こいつについて色々語られているんですよ。普通に何かキャラクターについて語ろうとすると、ただの説明になっちゃうんですけど、いろんな状況、奇々怪々なサーカスの情景を色々面白おかしく語っていく中に逆さ面の男の情報を混ぜ込むことで、情景の一部としてこの男を語ることができているんですよ。

ケーカル: はい。

アイス: 逆さ面の男はこの記事の後半でまた登場するんですが、後から登場する主要人物を、浮かずに、印象強く語ることができているわけです。

ケーカル: あーはいはい。物語の途中で「この男はこういうやつだ」みたいな主要人物の説明を無理やり入れると、ただの突然の説明の文章になってしまって浮くし、よくない。それを、オブジェクトの思い出話、小説でいうところの描写のような部分、あくまで人物紹介がメインでない部分で語ることで、違和感を軽減していると。

アイス: はい。

ケーカル: シーンの中であらかじめこれから登場する人物をさらっと出しておく、というのは映画でも小説でもよくやる手法ですが、SCP記事の中では基本的に「シーン」が生じない。だからこれをやれないわけですね。でも、この記事ではセリフを通した「思い出話」で無理やりシーンを生み出して、これを達成していると。

アイス: そういうことですね。

ケーカル: ただこいつはかなり例外的ですよね。さすがに話し過ぎですし。

アイス: もちろん。ただキャラクターものをやりたいというのなら、これくらいキャラクターが魅力的に見える工夫をしなきゃいけないよ、ということです。

ケーカル: キャラクターの魅力を伝える技術の本質は、「たくさん語らせる」ことではなく、「そのキャラクターに合った語りをする」ってことですね。この記事は、こいつがたまたまよく喋る性格をしていただけで。インタビュー、セリフを通してそのキャラクターをたてて、理解してもらうことが一番の目標。そのうえで、さっきまで話していたような技術が活かせそうなら、使ってもいい。

アイス: そういうことですね。

ケーカル: 危ない危ない。これで「オブジェクトは喋れば喋るほどいい」「インタビューで全部語っちゃえばいい」みたいになったらヤバいんで笑

アイス: それは怖いですね笑

ケーカル: メシオチさんはどうですか?

メシオチ: さっきの話と関連してるんですけど、誰かのセリフを使うことで、「その人の目線」でものを語れるんですよ。

ケーカル: なるほど。

メシオチ: そもそも報告書、クリニカルトーンの部分って財団という広い組織の目線でしか書けないわけで。だから、それ以外の組織だったり、個人、例えばオブジェクトや、研究員でもいいんですけど、そういう目線で語ろうと思ったら、セリフが有効で。

ケーカル: なるほど。ちょっと意地悪な質問をしてもいいですか?

メシオチ: あぁいいっすよ。

ケーカル: 財団は自分たちの行為を正義と思っているわけで、そういう前提で報告書を書くわけですね。そこに、「財団は悪だ」と思っているオブジェクトがいたとします。その状況を伝えたいなら、セリフを使わずとも、報告書の地の文に「オブジェクトは財団を、正義にもとる集団であると捉えています」と書けばいいんじゃないですか? その方が臭くならない分、安全ですし。

メシオチ: 確かにそうも書けます。でも、セリフで書いた方が、長くはなりますが、クリニカルトーンよりは伝わりやすくなると思うんですね。なんでかといわれると……確かに難しいですが。

ケーカル: 態度とか、声色とか、そういう感情的な部分も同時に表現できるからですかね。ただ「悪い」って書くより、誰かが明らかに怒りに満ちながら話していたほうが「悪い」というのが実感を持って伝わってくる。

メシオチ: 情報じゃなくて、シーンとして出せるのがデカいです。

ケーカル: あーなるほど、逆さ面の男の話は、思い出話の内容がシーンになっていましたが、「インタビューされている状況」そのものがすでにシーンである、と。なので、やっぱり描写・伝えられることの範囲が広がって、客観的で端的な情報だけでなく、色々な思いや状況を同時に伝えて、複合的な印象を作り出すことができるんですね。

メシオチ: そういうことです。

ケーカル: 他には…… 感動を引き出す、みたいな目的でよく使われているのを見ます。下書きで。

アイス: うんうん。

ケーカル: 実際こういう、独白とか、読者の感情を引き出すみたいなとき、セリフは有効なんですかね?

メシオチ: クリニカルトーンより、馴染みがある話し言葉の方が、入って来やすいっていうのもあるかもしれません。

アイス: ただ、いろんなところで見るんですよね、その、演説みたいな、セリフ回し。特に皮肉とかの文脈ですが。

ケーカル: 主義主張を話したり、嘆く。「絶対に、我々は許さない……」とか、「本当は○○したかったのに、結果として××になってしまった。なんて愚かなことをしてしまったんだ」みたいな。

アイス: でも思うのは、地の文を使えば、わざわざこちらに向けて宣言する必要はないんじゃないか、という。地の文だけで皮肉、アイロニーは演出できるんじゃないかと思うんですね。

ケーカル: セリフでやるとクサくなる危険もありますしね。もう少し詳しく教えてください。

アイス: 自分が書いた記事にSCP-1279-JPっていうのがあるんですけど、これは敢えてセリフを排除しているんですが、それでもアイロニーを出せるように書いていて。

ケーカル: というと?

アイス: ある男がいて、オブジェクトの特性としてその男は絶対何かに失敗することがないんですが、それゆえ失敗することに対する極度の恐れを抱き、常に苦しんでしまっている、というのを、最後の地の文で、ダイレクトに表現しているんです。

ケーカル: なるほど。でもこれ、インタビュー記事で書いちゃダメなんですかね。「俺は、今まで失敗してこなかった。いいことだと思うだろ? だけど今、俺は、失敗してこなかったからこそ、失敗が怖くて、死んでしまいたいんだ……<記録終了>」みたいな笑

アイス: まあできるんできるんですけど、そこは地の文としてある程度強引にもまとめきるのが大事で。

メシオチ: まあ、セリフなしでも感情は引き出せますよね。あんまり強くないような、淡い感情を与えたい、くらいだったら、セリフはいらない。

ケーカル: じゃあ逆に、強い感情を引き出したかったら、セリフを使った方がいいってことですか?

メシオチ: いや、わからん。ほんとにケースバイケースだなこれ。

ケーカル: ではメシオチさんは一旦考えておいていただいて。それで、アイスラクトさんはどうしてこの記事で、この、セリフを使わない終わり方を選んだんですか?

アイス: これは、言い切るほどのことじゃないと思ったからですね。

ケーカル: どういうことですか?

アイス: 失敗できないということは客観的な事実なんですが、これを事実として主観的に認識しているということは、今後も恐怖から逃げられないということですから、あまりに悲しすぎて、強すぎる。だから、「今後も永遠に失敗できない≒恐怖から逃げられないということを彼自身が理解できているか」という主観的な問題は曖昧なまま、地の文に客観的な事実だけを書いたんです。

ケーカル: なるほど。敢えて地の文で書いて、主観的な認識をぼかすことは、登場人物の心情を想像して、共感してもらうことにも役立ちそうですね。

アイス: あとは、セリフで書くと、表現として結局よくある話になっちゃう。クリニカルトーンで書いたほうが表現としては見慣れないし、効果も強くなると思ったんです。セリフでいっちゃうのは、もう、普通のことなんで。面白くない。

ケーカル: インタビューで何か気持ちを吐露させる、というシーン自体がもうチープすぎて、マイナスだから、これを避けたんですね。

アイス: 逆にこれは地の文のメリットと捉えられるかもしれないですね。感情を地の文を使って語ってあげるだけで、他では見ない、面白い表現になるので。

メシオチ: "財団の温度"で書くことで新しくなる、みたいな。

ケーカル: ちなみにメシオチさんは、さっきの話の結論は出ましたか? 感情的なものを表現したいときに、セリフを使うべきか、そうでないかという話です。

メシオチ: 個人的にはやっぱり、クリニカルトーンの限界っていうのはあると思ってて。

ケーカル: なるほど。

メシオチ: セリフのリスクはもちろんあるけど、リターンも大きいから。良いセリフが書けたらそれに越したことはないと。

ケーカル: 良いセリフが思いついて、それを情感たっぷりに書きたいとき、やっぱりセリフの効果は高いってことですね。

メシオチ: 空ぶったときが怖いですけど。

ケーカル: じゃあ、めちゃくちゃ良いセリフが思いついたら、アイスさんのさっきの記事のラストも、セリフで終わってたかもしれないと笑

メシオチ: うーん、わからないんだよな、難しいところですけど。

ケーカル: はい。具体的なセリフが思いつかないから何とも言えないですけど。

アイス: ただ言えるのは多分、インタビューを文字起こしして、そのセリフが滅茶苦茶つまんなかったら、わざわざセリフの形にする必要はないので、ものすごい減点対象になる。

ケーカル: なるほど、つまり、本当にセリフはリスクだということを意識して、自分が本当に使う理由がない時はやめた方がいい。そういうとき、セリフはもうチープなものになってるから。セリフという手法自体が、使い古されているから。

アイス: そうですね。

ケーカル: ちなみにお聞きしたいんですが、小説読んでても、セリフっていっぱい出て来るわけですけど、セリフが出てきたこと自体がチープだな、とは別に思わないじゃないですか。

アイス: それは思わないですね。

メシオチ: うん、思わない。

ケーカル: なんで財団に出て来るセリフってあんなに安っぽくなるんですか?

メシオチ: 溜めて出されるからじゃないですかね。

ケーカル: "溜め"とは?

メシオチ: 報告書ってクリニカルトーンが基本じゃないですか。クリニカルトーンから始まって、セリフが出て来るのは中盤の大事な場面で。そのせいで肩透かしみたいになってしまうんじゃないかなって。

ケーカル: あー、盛り上がってきたと思ったら、そんな面白くもないセリフの羅列が来て、こっちは期待してるのに、何おしゃべりしてんのよ、ってなってしまうと。

メシオチ: 直接的な原因ではないかもしれませんが。

アイス: あとはクリニカルトーンの地の文と比べて、格段に親しみやすいから、ですかね。

ケーカル: 親しみやすいから、ですか?

アイス: 報告書の文体は理解に時間がかかるけど、その分歯ごたえがある。いつも読んでいる小説とはちょっと違うからこそ、気を入れて、深く読み込める。でもそれがセリフになると、いつも使ってる言葉になってしまうんですよ。

ケーカル: 肩の力を入れていたのに、落差がある。

アイス: これがプラスにもマイナスにもなる。ここで普通のことをただダラダラと喋っていると、余計悪く見える。他がクリニカルトーンでかっちりしているのもありますし。

ケーカル: プラスに働く例もありますか?

アイス: 例えばンボボボさんの後半にある報告パートですね。ここはここまでのクリニカルな雰囲気が一変するわけじゃないですか。ここでは、探偵がトリックを解明するシーンを彷彿とさせる演出と、疑似科学的なものが合体して、前半に引けを取らない面白さになっている。

ケーカル: セリフを使う意味としては、そもそも「探偵がトリックを解明するシーン」をやるために、やっぱりセリフじゃないと出せない雰囲気がある。聞き手と探偵が話す、的なやつですね。それに、クリニカルとセリフの間に落差があるおかげで、今までの地の文との雰囲気の違いが際立つという効果もあると。

アイス: そういうことですね。

ケーカル: あとちょっと、アイスさんがさっきおっしゃった「キャラクターの個性」の関連で気づいたことがあって。基本的にSCP記事の登場人物って、研究者も博士も、そんなに個性がないじゃないですか。個性を出す暇もないし、出すことを求められていない。変な個性の博士とか、ノイズでしかないですし。

アイス: そうですね。

ケーカル: だから、SCP報告書では基本的に、キャラクターに個性がない、つまりセリフは個性がないものが基本になるわけです。でも、キャラクターの個性を活かせないセリフは、さっきも話に出ていましたが、面白くない。つまらない人間がつまらないことをしゃべっているだけになってしまうから。

メシオチ: それは本当にそう。

ケーカル: ということは、SCP記事というキャラクターの個性を基本否定していく形式の創作において、もうセリフは面白くなりえない。オブジェクトの個性を出すような例外はありますけど、セリフはもう基本的にどこかでみた、面白くないチープなものになる。運命付けられたチープさ、というのがある。

アイス: あーそれはありますね。

ケーカル: SCP記事はもうセリフを使う場としては詰んでるんだけど、詰みの中でなんとかキャラクターを出したり、キャラクター以外の面白さを演出しているのが、今まで出てきたような作品で。基本的にセリフは安っぽくなる運命にある笑

アイス: もう、その中でどう逃げようか、という話になってきますね。さっきのハーマンフラーの記事みたいに。

メシオチ: オブジェクト側の個性はまだ出せるんですけどね。よくある手法ではあるんですが。

 

安っぽさから逃れるためには?

アイス: 状況自体を変にするか、表現・語彙を変にするか、という選択肢がありますね。

ケーカル: 状況を変にするっていうのは、普通の人を変な状況にぶち込むということですか?

アイス: それもあります。話し相手としてのオブジェクトが変であるとか、そもそも環境が、会話を試みているという状況自体が変な場合というのもあります。例えば、SCP-2053とか。

ケーカル: そういう場合、セリフの表現が面白いとか、状況に翻弄されている姿が面白いという話になりますかね。

アイス: あとは、セリフ自体をどうにかするという話からは少し離れますが、SCP-4153はインタビュー事態に展開があって面白いですよね。同じ手はこれでしか使えませんが笑 展開はとりあえずとしても、特異な状況を作ってしまえば、そこから生まれるセリフも新しいものになるはずです。

ケーカル: なるほど。

アイス: ただ問題になるのは、キャラも変にできない、状況も変にできないという状態で。

ケーカル: 民間人とか、ほぼ民間人のオブジェクトと普通に聴取室でお話する、みたいな。詰みじゃないですか。

アイス: これはほぼ詰みなんですが、それでもどうにかする必要があるんですよ。ここで使う語彙を選ぶっていう話になるんですが。

ケーカル: 語彙、ですか。

アイス: また自分の記事になるんですが、SCP-1238-JP - 消し炭というのがあって。自分の長く持っているものを燃やすと、かつての思い出が見れるというライターなんですけど、これをホームレスの人が持っているんですよ。その人は、幸せな日々を思い出すために、自分の持っている数少ない品を燃やしていってしまう。

ケーカル: はいはい。これはかなり、その人の物語をインタビュー、セリフで語るタイプの記事ですね。

アイス: 炎によって一時的に豊かになっているように見えるんですが、実際は大切なものを失って、貧しくなっていくというところを意識している記事で、それを表現するために、「長続きしたようにみえても炎はいつか消える」という文脈のある言葉をセリフに組み込んでいったんですよ。

ケーカル: 「全部が炎に消えて、消し炭になるだけ」、とか。

アイス: 他にはホームレスとして漂っている自分を指して、消化不良の「燃えカス」といってみたり。セリフに文脈を組み合わせて表現していくと。

ケーカル: ここでいう文脈というのは、その登場人物の持ってる思想とか、経験のことですね。普通の民間人って、やっぱりそんなに目に見える個性はない、というかある方が不自然。でも無個性というわけではなくて、それぞれに独自のバックグラウンドがあって、独自の考えがある。つまり、その登場人物にしか語れない言葉というのがあって、それを表現するのは、その人物の影響が見えるような「言葉、語彙」の選択だと。

アイス: はい。

ケーカル: 例えば「一瞬の快楽もいつかは消える」なんてことは言われつくしているんだけど、敢えてそれを「炎」と関連付けて喋っているから、このセリフはこの登場人物しか話せない、オリジナリティがあるものになっている。逆にそこら辺の、炎とか関係がないどうでもいい人が「長続きしたようにみえても炎はいつか消える」といっても、それはただクサいセリフになってしまう。バックグラウンド関係なく、薄くて、カッコつけているだけだから。

アイス: あとはテーマを表すパンチラインをこういう風に表現できると強いですね。

メシオチ: セリフって、伏線じゃないけども、今までやってきたことのまとめみたいな側面があるんですよね。それを意識して作る必要があって。クサいセリフには納得感が欲しい。

ケーカル: あーなるほど。それは、さっきまでアイスさんがおっしゃっていたようなやつですか。

メシオチ: そうです。その人ならそういうだろう、とか。あとは、どうしてもそのセリフを言う必要があったんだ、ということがわかるとか。とにかく納得感、妥当性が欲しいんです。「こいつはこんなこといわへんやろ、ガハハ」といわれたら終わりなんですよ。

ケーカル: なるほど、リアリティってことですよね。個性を意識しすぎると見逃しがちですけど、いわゆる「一般人の話し方」というのがあって、それを外れると基本的に違和感がある。違和感があることには理由がなきゃいけなくて、その理由は、状況や文脈、バックグラウンドで補っていくし、それを補うことで登場人物の魅力やオリジナリティが出て来る。

メシオチ: あとその納得感を出すためのものは別にセリフの前に置いておく必要はなくて、オチまで読んだときに納得できればいい。最初クサいと思うかもしれないですけど、まあこういうことをいうやつならこういう結末になるよな、とか。

ケーカル: よくみる、なろう系っぽかったり、洋画の翻訳っぽいセリフ、あとはやれやれ系というか、やたら達観しているような、なんにでも呆れているようなセリフ回し、こういうのは納得感がないからクサいんですね。ジェイソンステイサムやジョジョは、あの人柄・能力だから納得できるけど、ちゃんとキャラ付けできていないモブ研究員、浅い主人公には荷が重い。

メシオチ: そういうことです。

ケーカル: やれやれ達観呆れ系のセリフが最近やたら多くて鼻につくことが多いんですが、一般人ああいう話し方しないですもんね。むしろあんな喋り方してる人がいたら友達になりたくない笑 そういう話し方をする以上、納得感がもう著者の責任で必要。一回セリフを読みあげてみて、違和感があったら、クサいチープなセリフになっていることを警戒したほうがいい。

アイス: あとは会話をする以上、ちゃんと受け答えをしてほしいですね。なぜなら、会話だから。

ケーカル: 会話だから。オタクには難しいけど会話ってそういうものだから笑

メシオチ: そんなこと言わなくてもいいじゃないですか笑

アイス: ちょっとでも意識が抜けると、作者の言わせたいことを言わせてしまって、キャッチボールでなくなってしまうので。

ケーカル: 確かに。あと、その人のセリフは、その人の目的が何で、何を言いたくて、何を言いたくなくて、無意識に何を避けているか、無意識に何を望んでいるか、ということを考えないと、作者のご都合しか考えない、リアリティのないセリフになってしまいますね。説明だけとか、応答ができてないとか、格好つけただけのセリフになってしまう。

メシオチ: そう思います。

ケーカル: 自然なセリフを書くために、人と話を、しよう! 友達を作りましょう!

メシオチ: 新入生がこの時期にいわれてそうな笑

ケーカル: オタクにだんだん厳しい対談になってきましたね笑

メシオチ: [画面の前の皆さんへ] ちゃんと現実で話をしているかい? 君たち。

ケーカル: ここ絶対カットしないですからね。

メシオチ: タイトルそれにしますか。「それで、あなたは人と話をしていますか?」

アイス: 最悪の切り抜きだ。

 

やれやれ系の悪口とクリシェの話

ケーカル: Taleにも話を広げたとき、どうしてクサいセリフというのは生まれてしまうんでしょうか。

アイス: 根底にあるのは「このセリフを言わせたい」だと思うんですよ。思いついた最高のパンチラインを言わせたいがために、他のすべてを無視しちゃう。

ケーカル: ここまで語ってきた、クサみを消すためのすべてを無視して、ぽっと出のキャラクターに言わせてしまう、みたいな。

アイス: クサいセリフってかっこいいのはわかると思うんですよ。

ケーカル: かっこよくなる可能性は感じますよね。

アイス: ただより深堀すると、クサいというか、鼻につくんだと思いますよ。

ケーカル: あー、今までの批評で何回か言った気がする。「鼻につく」。

アイス: くそくそ鼻につくんですよ。それは、やっぱりそのセリフを言う資格がない奴が言っているから。

ケーカル: やれやれ達観系のセリフでも、資格があれば大丈夫。「大いなるセリフには、大いなる責任が伴う」と。

メシオチ: そういうことだな。そういうことか?

ケーカル: 等身大のセリフを喋ってほしいんですよね。そのためにはやっぱり、人と話をしようということで。え、それともやっぱり普段からやれやれ系で喋ってるのか?

アイス: 普段どう喋っているか、というより、創作キャラクターは達観してないといけないという思い込みがありますよね。

メシオチ: そう、特に主人公とか、中核を担うキャラクターは全部そうじゃないといけないみたいな固定観念もある気がする。

アイス: でも実は、達観していない、等身大のキャラクターの方が共感はしやすい。

ケーカル: むかつくからなー、とにかく達観してわかったような口きくやつ。浅いことしかいってないのに。

アイス: でも達観系って、別のありがちな主人公のタイプを回避しようとした結果じゃないかと思うんですね。

ケーカル: それ結構興味深いかもしれないですね。

アイス: 昔からありがちでいじられているのが"ルフィ型"の主人公って言うんですけど。

メシオチ: ホビアニの主人公だ。

アイス: 銀魂で散々いじられたので最近避けられているらしいんですけど。とにかく1ページ目で「腹減ったー!」って言わせて、純真無垢で、世間知らずだけど、とにかく良い奴。

メシオチ: カービィだ。

アイス: こいつを回避しようとした結果、性格は悪いんだけど、知能に長けていて、頭脳で周りの状況を制すような主人公が作られるのではないかって。

メシオチ: カービィからマホロアになった。

アイス: でも結局回避しようとして生まれただけなんで、型にはめただけのキャラクターになってしまうってことです。

ケーカル: 我々は「腹減ったー!」と言うか、「やれやれ」と言うか。どちらかを強いられていると思い込んでいるのか。

メシオチ: それ以外も色々あるのに。

ケーカル: でも我々は普段「腹減ったー!」も「やれやれ」も言わないから、適当に使うとリアリティが欠けてくる。

アイス: クソクソ性格悪いけど魅力的なキャラはいます。なんでやれやれ系が悪いというより、やれやれ系以外のオリジナリティがないのが悪いか、よく考えずにやれやれ系のセリフを言わせているのが悪い。

ケーカル: それこそ我々の世代のラノベでそういう頭脳系の主人公が流行りましたけど、その影響で、キャラクターにまともな理由付け、性格付けをしないまま、やれやれ系のセリフを言わせてしまっている。だけど、それはクリシェだよ、と。そう、僕はこの対談で流行らせたい。「クリシェ」という言葉を。

アイス: 来た、流行語。

ケーカル: どっかから取ってきたような、誰でも書けるようなセリフを避けるという意識を持ちたいですね。全部は難しいですけど、特に決め台詞のエリアで。それこそ無個性な主人公を防止することにもつながりますから。

アイス: はい。

ケーカル: セリフは物語の魂。我々は誇りを持って、オリジナリティをもって、セリフを書いている。だからどこかからコピペしたようなセリフに絶対になってはいけない。

メシオチ: 記事の根幹を外注したら、良い記事になるわけがなくねっていう。

ケーカル: 「魂を外注するな!」(ドン!!)

アイス: みたことあるやつを何も考えずに書いたら、それはそれで楽なんですけど。やっぱ技量がないとどうしても面白くないので。

ケーカル: その技量を身に着けるためにも、「このセリフはクリシェじゃないか?」と考えて、クリシェじゃない表現を練習していくことが大切ですね。

メシオチ: 「クリシェかな? と思ったら」

ケーカル: 流行らせましょう。「クリシェ」。

メシオチ: まあ、クリシェって言葉自体がクリシェですけどね。

ケーカル: それはいいでしょ笑 むしろクリシェをクリシェにしていきたい。

ケーカル: ちなみに裏技的な話にはなるんですけど。どうしてもやりたいセリフがクリシェぽかったらどうすればいいんですかね。もしくは、クサいセリフの応急のクサみ消しのテクニックとか。

アイス: 確かに作劇上、どうしても決意を決めるとか、堂々と宣言するシーンが必要になることは多いです。そういうときは、シーンごとクリシェを回避してほしい。

ケーカル: もうセリフをちょこまかいじるのではなくて、状況を変えちゃうのか。「思いを告げられないまま旅立つ同級生に何とか追いつき、駅のホームで思いを伝える」のはクリシェだから、同級生が電車じゃなくて自家用ジェットで旅立とうとしていることにしちゃう。

メシオチ: あとは主人公に地の文で「これは言い古されたセリフだけど」とか言わせちゃえばクリシェじゃないのかもしれないな、誤魔化しは効くのかな、とか。

ケーカル: 「まるで歌詞みたいなセリフを並べて」とか。

アイス: それは逃げですよ。

ケーカル: 逃げっていうか、「この記事はディスカッションが荒れていることを含めて作品です」じゃん。よくないって。

メシオチ: よくないんだけど、本当に無理なときは使うしかない。

アイス: それはもう一連のギャグとして使うしかないですからね。

メシオチ: もうカッコよくすることはあきらめて、主人公をダサくするときしか使えないですけどね。

ケーカル: まあ、クリシェなセリフでも許されるくらいキャラクター好きになってもらえればいいんですけどね。

アイス: 状況さえ変えれば、セリフ自体がクリシェでも印象は変わりますし。

ケーカル: セリフはあくまで全体のクリシェ感の一要因なので、それだけにこだわらず、色々な視点を持つことが大事ですね。そして、やっぱり一朝一夕にクサみ消しはできないということで。

メシオチ: やっぱり前日から漬けて。

ケーカル: クリシェに漬けこんで。

メシオチ: クリシェに漬けこんだらクリシェになりますよ。

ケーカル: そうだ、ダメだ、クサくなるわ笑

メシオチ: 結局クリシェはダメだってことですよね。クサいセリフが悪いのはそういうこと。

ケーカル: お前の魂の声を聞かせろ!

アイス: お前、何が言いたい?

メシオチ: お前が消えて喜ぶものにお前のオールを任せるな。

アイス: 歌詞みたいなセリフだな。

ページマ: クリシェw

<記録終了>

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