「共異廻歴」カノンの舞台は、一度文明が崩壊してしまった世界です。国家などの共同体はもちろん、財団などの旧世界の組織はもう存在していません。世界は文字通り"リセット"されてしまったといっても過言ではないでしょう。
辛うじて生き残った人々は、各地で小さな共同体"集村"を作って暮らしています。ただし、彼らの暮らしぶりは想像と少し異なるかもしれません。というのも、この世界に放りだされたのは、人類だけではないからです。そう、かつて異常とみなされたものたちも、この世界に残されています。
当然、異常なもの――このカノンでは"異類"と呼びます――と人々の関係は、大きく変わりました。収容、利用、破壊……人々はかつて異常なものと一方的な関係を結ぼうとしていました。しかしもはや、そのようなことは不可能ですし、賢明でもありません。代わりに人々は、異類との共存関係を築き上げました。共存とはいっても、様々な形があります。意識的・無意識的、支配・従属、協力・敵対…… その在り方は集村によって多様です。中には、表面上、「一方的」な関係にみえるものもあるでしょう。しかしそのような集村でさえも、人々の在り方や文化には、確かな異類の影響があるはずです。そのような意味で、人々と異類は「相互的」な関係を築き上げています。
このような世界では当たり前かもしれませんが、多くの人々は自身の生まれた集村で一生を終えます。しかしその一方で、行商や遊牧の民など、各地を廻る人々も確かに一定数存在しています。そういった人々の中で、このカノンの主役となるのが、"探訪者"と呼ばれる人々です。
彼らは"同盟"と呼ばれる緩やかな組織に所属し、腕時計のような"端末"と共に、各地を旅しています。その目的は、人々と異類の関係を探ること。彼らは集村を訪れ、そこに特有の"異類と人々の在り方"を記録します。その知識は、人類が再び繁栄を取り戻すためだけでなく、かつての世界のような失敗を繰り返さないためにも、とても重要なものとなるでしょう。このカノンでは、彼ら"探訪者"の視点から、集村やそこに住む人々が描かれることになります。
さて、世界観の概要を説明し終えたところで、ここからは執筆にあたっての、少し特別な「ルール」と、「お願い」を説明させていただきます(詳細はハブをご覧ください)。
まず「ルール」です。この世界に登場する「異類」たちは、基本的に既存記事(SCP報告書やGoIフォーマット)に登場するものである必要があります。これは、このカノンがSCP-JPというサイトの「共同創作」という側面を重視していることに由来しています。
次に、「お願い」です。これも「共同創作」という部分につながりますが、「滅びてすべてが失われた世界。残っているものも、かろうじて残っているだけ」「人々は身を寄せ合って素朴に生きている」などの、カノン全体の雰囲気を大切にしていただければと思います。異類が登場する関係上、やろうと思えばどんなことだってやれてしまいます。探訪者や同盟を便利な異類で最強にすることもできるでしょうし、強大な国家がハイテク文明を築くことも可能でしょう。世界を裏で牛耳る団体だって作れるかもしれません。しかしこのカノンは、そのようなことをするためには作られていません。むしろ、それぞれの既存作を尊重し、同じ世界観や登場人物を共有していただきたいという願いが込められています。イメージとしては、「世界の物語」でなく、"集村の人々"や"探訪者"など、「個人の物語」という側面が強いかもしれません。
最後に、僭越ながら執筆に関するアドバイスを掲載させていただきます。このカノンは基本的にTaleという形式を取りますが、執筆でお悩みの際には「4つの魅力」を意識していただければと思います。
まず1つ目が、「展開の魅力」です。物語の基本ではありますが、ハラハラするような危険や気になってしまう謎、驚きの展開や事実など、物語全体に起伏を持たせてみましょう。特にこのカノンは「人」に注目します。人には大なり小なり、隠していることや嘘、勘違があるものですから、そういったところから生まれる認識の齟齬や思惑は、展開を動かす力となります。
2つ目が、「異類の魅力」です。すでに申し上げた通り、登場する異類は既存の作品からお借りすることになりますが、ただ同じような内容を繰り返したり、異常をそのまま(誰でも思いつくような形で)利用したりするだけでは面白くなりにくいでしょう。時間を経たり環境が変わったりしたことで、異類が意外な役割を果たしたり、見えなかった側面が見えてきて印象が大きく変わったりするはずです。読む方が「まさか!」と驚くような活用方法を見つけられれば、それだけで作品全体がグッと面白くなっていくはずです。
3つ目が、「集村の魅力」です。集村や人々は、独自の文化を持っているはずです。しかもその文化は、共存する異類ならではのものになるはずです。単に崇めたり便利に利用したりするだけではなく、人の価値観や生活様式に当たり前のように馴染んでいる異類の影響を描くことができれば、オリジナリティがあって記憶に残る、魅力的な集村を描くことができるでしょう。「この要素がこういう風に異類とつながっていたのか!」という驚きを演出することは、作品を面白くしていくことにもつながります。
最後に、「キャラクターの魅力」です。ハブに探訪者の一覧があることからもわかる通り、このカノンでは同じキャラクターがいくつもの物語に登場することを前提としています。つまり、主人公となる探訪者は何度も登場する可能性がありますから、その魅力も重要になります。話し方や外見的等の表面的な特徴はもちろん、バックグラウンドや物事の考え方、出来事への反応や他の探訪者・端末との関係など、色々な側面から彼らを掘り下げてみましょう(実は「キャラクターの物語」はこのカノンの隠れたテーマでもあります)。読む方から覚えられ、愛されるようなキャラクターを目指してみましょう。
長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。色々と書いてしまいましたが、興味を持ってくださった方はどうぞ肩の力を抜いて、お気軽にご参加ください。共に魅力的なカノンを作り上げられることを、楽しみにお待ちしております。
コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ