竹槍三百万本論

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地対空爆竹

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飛箭ひせん (帝国異常事例調査局),
SCP-518-JP (看守たち),
イ式対空爆竹 (遠野妖怪保護区)

概観

戦前、竹槍が300万本あれば国防に足りると宣った陸相が居たらしい。その真偽や真意はここでは重要ではない。俺たちは軍人でも史学者でもないからだ。だが、この言葉を額面通りに受け止め、本気でそれを実現しようとした者がどうやら存在したようだ。この竹林の敷設に成功していたら、大日本帝国は空襲に悩まされることがなくなっていたに違いない。

知識

特徴: 遠野妖怪保護区と長野県のある山中に存在する竹林。後述の条件を満たさない限り、一般的な竹と同じように振る舞う1

性質: 竹林よりも高い標高を飛行する何らかの動力機関を搭載した物体が竹林の周囲の上空に進入すると、この竹は枝葉をパージさせ稈鞘よりも上の部位を射出する。射出された稈は凄まじい速度で飛行物体に迫り、接触と同時に爆発する234。この時、物理学的に発生すべき轟音や衝撃波は生じない。特筆すべきはこのスピード、そして迎撃反応の高性能さだろう。迎撃対象の大きさにより起動する竹の本数は変動する。更には対象の速度に応じてリード射撃すら行い、おまけにホーミング機能つきだ。

この性質は、起動以外の原因により地下茎から完全に切り離されることで完全に消失する。

接触: 書くまでもないだろうが、この竹林の近くで浮遊したり飛翔したりしないこと567

歴史と関連組織: 1945年、遠野妖怪保護区が成立した時の話だ。調査局の妖怪大隊から離反した妖怪たちが群れを成して遠野に逃げ落ちた。この時に、遠野は宮沢賢治氏の遺産の一つである銀河鉄道8を足として提供したらしい。銀河鉄道は妖怪たちを乗せて日本列島上空を運行し、長野県9を通り過ぎようとした時にこの対空斉射に晒されることになった101112
そして、妖怪大隊の隊員だった妖術者が倉庫番からの離反者と共同で、車体に突き刺さったサンプルから復元・繁殖させたものが遠野妖怪保護区の竹槍防空林だ131415。外敵の攻撃に対抗するための手段として品種改良を重ね16、現在はト式が用いられている。

原種は異常事例調査局により1945年に開発され、防空のために要地に配備された17。そちらは1980年代に発生した旅客機撃墜事件をきっかけに1819看守たちにより「収容」され、現在に至っている。

イラストレーション

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遠野でできた友人、ソンが防空林で採れた筍をご馳走してくれた20。味は普通の筍だったけど、新鮮で美味かった2122。 — AO

観察と物語

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『SCP-518-JPに遺伝子学的な異常性は見られず、一般的なタケ亜科マダケ属種との一致が断定されました。 (中略) 環境条件に左右されず、一般的な土壌さえあれば成長する23という異常性からも、本オブジェクトの異常性は地下茎あるいは根に依存しているものであると考えられます。』

遺伝子解析報告518-JP

一部の例外を除き24、看守たちの科学的分析は頼りになる。データとして参考にする分には非常に有用だ25。 — C.X.


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『五月雨計画の成功が、もう少し早ければと嘆かずにはいられない。いかなる爆撃機も、飛箭の前では鉄屑も同然だと言うのに。どれほどの国土と臣民を救えただろうか。護国が為に飛箭の人柱となった同胞を、小官が忘れることは無いだろう。
 米兵どもが喉元にまで迫って来ている。今から無理に飛箭林の面積を増やしたとしても、都市一つを囲うのが間に合うかどうか。せめて、陛下がおわす都だけでも護らねばならない。』

渡辺将軍による手記、昭和二〇年

ギンナン26272829の人間は愛国心だとか大和魂だとかですべてを解決できると思っている節がある、竹だけに3031。これは精神論的な話じゃない。勿論そういう側面もあったように思うが、少なくともこの場合は愛国者が望んで贄になることでこの凄まじい防空兵器が誕生したのだろうということだ3233。当時誰しもがギンナンを警戒すべき相手として認識していたのは、実際に連中がそれらで問題を解決する実行力を持っていたからに他ならない。 — Shr.


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『竹槍防空林は、大結界と並ぶこの郷の守りの要です。私はこの仕事に誇りを持っていますし、全霊で当たっています。まだまだ未熟ですが、父様から竹守を継いだのですから。早く完全に隠居させてあげるのが子の務めってものです。そうでしょう?私の目の黒いうちは空路での侵入は許しませんとも。父の代からはめっきり襲撃も減ったそうなので、もしかしたら野蛮な結社の人たちも諦めつつあるのかもしれませんけどね。もしそうだったら喜ばしいことです。あ、でもお祭りの時の花火はちゃんと完璧に演出して見せます。次の新作は凄いですよ。お客さん、よければ感想をお聞かせくださいね。』

籠守343536 令佳

彼女と会話をした時、俺は変な顔をしていなかっただろうか。俺と同じ、調査局の「隠れ」ではない血筋と会うのは初めてのことで、変に意識していた。例の輸送計画以来、調査局の影に触れることが一気に増えた。妖怪保護区が調査局に由来する場所であるのだから、当たり前なのだけれど。まだ気持ちの整理は完了していない。彼女のことを疎ましくも羨ましくも思う。俺は自分の生き方を変えるつもりは無いが、親孝行者ではない。ああ、何を書こうとしたんだっけ、いや、そもそも私情を書くべきじゃなかった。あとで消しておく。37

保護区への陸路38・海路39・空路での「道」のうち、招かれざる客が最も入り込んでくるのが空路らしい40。そして敷設以降の数十年間、そのすべてを竹槍41424344防空林は撃墜してきた。だが、遠野妖怪たちの銀河鉄道がかつて調査局の飛箭林を突破したように、突破する手段自体は存在するということだ。あの日奉区長がそれを想定していないとは思えないが45、その脅威のことは頭の片隅に置いておいて損は無い。 — AO

疑念

遠野で聞き込みをして、一つ分かったことがある。それは、誰もこの竹に花が咲いたところを見たことは無いらしいということ。地上に生え俺たちが竹と認識している部分は、全て地下で繋がっている。生物的には竹林全体で一つの個体なんだ。竹の花は、竹が近いうちに枯れることを示す。
何が言いたいかというと、枯れる時は竹林の竹すべてが同時に枯れるということだ。これはだいたい120年周期で起こるらしい。もし竹槍防空林が一斉に枯れたなら、生え変わる一年ほどの間、遠野はその対空力を失うことになる。

杞憂かもしれない。改造して枯れないようにしている可能性もある。だが、そんなに都合のいいものは得てして存在しないことを俺たちは知っている。そして襲撃頻度が下がっているという五行結社、看守の何倍も執念深い彼らがただ諦めるなど有り得ない。遠野の竹槍防空林はできて70年ほどだ。彼らが別のアプローチでの「破壊」を試みているのでなければ、数十年後に遠野妖怪保護区は設立時に比肩する規模の動乱を迎えることになるのではという嫌な予感がある。


goi-format jp 遠野妖怪保護区 青大将 ijamea 五行結社 蛇の手



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執筆者: Nanigashi Sato
文字数: 8912
リビジョン数: 156
批評コメント: 3

最終更新: 31 Jan 2021 13:18
最終コメント: 29 Jan 2021 12:47 by Nanigashi Sato

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